急性骨髄性白血病 (AML) 寛解導入療法の実際と治療効果判定

2019-11-09

寛解導入療法 day 14 骨髄生検 弱拡大

 

急性骨髄性白血病(AML)寛解導入療法は最初の治療であり、最も重要な治療でもあります。

どんな寛解導入療法を用いるかにより寛解率、生存率がかわってきます(詳細は「急性骨髄性白血病 (AML)の寛解導入療法」をご覧ください)。

それに加えて、寛解導入療法をサポートする医療もまた重要です。適切なサポートにより生存率が変わります。特に寛解導入療法は急性骨髄性白血病の治療全体で1ヶ月当たりの致死的な合併症が最も高いものです。

 

本項では寛解導入療法の実際の投与スケジュール、副作用、医療によるサポートについて解説します。

また寛解導入療法の効果判定についても解説します。効果判定も基準があり、それに沿った説明を行います。国内・国外の文献やガイドラインも参照します。

本項により寛解導入療法の全体の流れが理解できるでしょう。

 

急性骨髄性白血病 寛解導入療法の投与の実際

急性骨髄性白血病(AML)の寛解導入療法は、多くの場合アントラサイクリン系抗がん剤(ダウノルビシンなど)3日間、同時にシタラビン持続点滴で7日間行います(下図)。「3+7」(スリーセブン)とも呼ばれるときがあります。

急性骨髄性白血病 寛解導入療法 スケジュール

ダウノルビシンは、腎臓や肝臓の機能が低下しているときは、投与量の調整が必要です。

重篤な肝不全もしくは重篤な心不全の症例ではダウノルビシンを使用することができません。治療開始前に心臓超音波検査で心機能を必ず確認します。

高齢であることだけを理由に減量することは推奨しません。治療効果が低下するだけです。

 

急性骨髄性白血病の寛解導入療法は血球が回復するまでずっと入院です。

正常な白血球は初めからずっと低い状態であるため、感染症に極めてかかりやすいと言えます。正常な白血球が回復してくるまで「少なくとも1ヶ月くらい」の時間がかかります。

また、急性骨髄性白血病の寛解導入療法は、治療全体の中で1か月あたりの致命的な合併症が最も多くなります。全身状態を管理する医療も生存率上昇のためには極めて重要です。

 

治療開始時点で、全身には大量の急性骨髄性白血病細胞が存在します。寛解導入療法開始から数日でそれらの白血病細胞は大幅に壊れます。

あまりにも大量に白血病細胞が壊れるため、白血病細胞の中身が血中に大量に放出されます。

適切な予防を行わないと、急激な電解質異常、致死的な不整脈、心不全、腎不全、けいれんなどを起こし、生命に関わります(腫瘍崩壊症候群といいます)。

腫瘍崩壊症候群を適切に予防すれば、ほぼ全例で腫瘍崩壊症候群の症状を起こしません

急性骨髄性白血病は腫瘍崩壊症候群を起こしやすい疾患なので、十分に予防しましょう。

 

腫瘍崩壊症候群の予防で最も重要なのは、大量輸液です。1日に約4Lもの点滴を行います。中心静脈カテーテルが挿入されている場合が多いと思いますが、24時間ずっと大量点滴が続きます。

この大量点滴により白血病細胞の中身が血中に大量に放出されても、電解質異常は起こりにくくなります。尿としてそのまま排泄しますが、尿量も1日約4Lになります。昼夜問わずトイレに行くことになります。

転倒には気をつけてください。血小板が少ない状態で頭を打って出血すると命にかかわります。睡眠薬の使用は転倒の可能性を上昇させるため推奨しません。

大量点滴をアルカリ化させる必要はありません。尿量が少ないときは利尿剤を使用する場合もあります。

大量点滴は寛解導入療法開始前から行い、少なくとも数日間は継続します。この数日間は毎日採血です。1日に複数回の採血を行う場合もあります。

 

腫瘍崩壊の産物の一つである尿酸を下げる薬剤もよく使用します。ラスブリカーゼ(商品名:ラスリテック)は尿酸を低下させ、腫瘍崩壊症候群の発症率を低下させます。

大量点滴ほどの効果はありませんが、大量点滴と併用すると、重篤な腫瘍崩壊症候群の発生率はほぼゼロになります。急性骨髄性白血病ではラスブリカーゼを使用する場合が多いです。

そのほかアロプリノールもしくはフェブキソスタットを内服することもあります。

 

寛解導入療法は吐き気を起こすことがあります。吐き気止めの使用も最初に行います。

吐き気止めの中ではパロノセトロン(商品名:アロキシ)の使用を推奨します。大抵はこれだけで吐き気は抑えることができます。ただし食欲はアントラサイクリン系抗がん剤使用後数日間くらい低下したままです。

 

急性骨髄性白血病の寛解導入療法は、数ある血液内科の治療の中で最も長い期間、正常白血球少ない状態が続きます。

白血球のうち好中球が著しく少ないと、感染症にかかりやすく、また重篤化しやすいため、発熱には注意が必要です。好中球が少ない状態での発熱は「発熱性好中球減少症」とよび、早急に抗生剤点滴の開始が必要です。

好中球はそもそも発症時からほとんどの症例で低い状態です。そして正常な好中球が回復してくるまでずっと低いままです。1回の寛解導入療法でも正常な好中球が上昇するまで約1ヶ月かかり、その間は正常な好中球はほぼゼロです(下図)。

急性骨髄性白血病 寛解導入療法 好中球の推移

好中球が上昇するまで別の細菌や真菌などによる感染を何度か繰り返すことが多いので、常に新しい感染の有無に注意しましょう。寛解導入療法中は感染症が最も命にかかわります。感染予防のための内服も行います。

中心静脈カテーテルはよく感染源になります。不要になれば感染する前に早めに抜くことを推奨します。感染が疑わしくなってしまったら直ちに抜去するよう依頼してください。

帯状疱疹もよく起こります。帯状疱疹予防のための抗ウイルス薬の内服を行っておけば帯状疱疹の発症率はかなり下がります。帯状疱疹になると、神経痛が残る場合があります。

帯状疱疹後神経痛はその後の人生でずっとピリピリした痛みが持続するため、帯状疱疹はできる限り予防しましょう

 

白血球だけでなく、赤血球血小板も低い状態が続きます。これらが上昇してくるまでは輸血が必須です。十分に回復するまで1回の寛解導入療法で開始から約1ヶ月です(下図)。

急性骨髄性白血病 寛解導入療法 血小板の推移

 

アントラサイクリン系抗がん剤は心臓に毒性があります。数%で重症な心不全や不整脈をおこす時があります。高齢者では注意が必要です。

脱毛します。寛解導入療法開始から2週間くらいからばっさりと抜けはじめます。覚悟しておいてください。

 

上記の治療期間中は、好中球が上昇するまで個室管理です。高性能フィルター(HEPAフィルター)のついた個室です。お見舞いの花束は持ち込みできません手洗いは丁寧に行って下さい。スマートフォンなどのデバイスもこまめに掃除して下さい。

 

食事は「生もの禁止」とほとんどの施設で指導されます。ただし「生もの禁止」にしたからといって、感染症の発症率がさがるわけでも、生存率が上昇するわけでもありません。

2008年に「生もの禁止」についての大規模ランダム化臨床試験の結果が報告されました(J Clin Oncol. 2008 Dec 10;26(35):5684-8)。

この臨床試験では寛解導入療法をおこなう症例を対象として、「生もの可」と「生もの禁止」の2群にランダム化して結果を比較しました。

結果、感染症発症率や全生存率は「生もの禁止」にしても、明らかな改善はありませんでした

生ものについてはどちらでもよいと考えます。治療している施設の指示に従ってください。

 

寛解導入療法の初回治療効果判定 14~21日目骨髄検査

寛解導入療法の最初の効果判定は、寛解導入療法を開始して14日目ごろに行います。

この時点での採血では、正常な血球はかなり少ない状態です。この時期に骨髄検査を行い、最初の効果判定を行います。ミドスタウリンを使用している場合は寛解導入療法開始21日目に骨髄検査を行います。

 

この時期の骨髄は正常細胞がほとんどありません。もし残存細胞が多ければ、それは急性骨髄性白血病の残存細胞である可能性が高いです。

残存白血病がこの時点で確認できる場合は、数週間待ったとしてもさらに白血病細胞が増えていると考えられますので、血球回復を待たずに2回目の寛解導入療法をこの時点で開始します。

この時点で2回目の寛解導入療法を行い完全寛解に到達すれば、1回の寛解導入療法で完全寛解に到達した症例よりも予後が悪いということにはなりません (Cancer. 2010 Nov 1;116(21):5012-21)。

 

では残存病変の確認はどのようにして行うのでしょうか? 以下解説していきます。

残存病変の評価は、骨髄穿刺骨髄生検を合わせて行います。とくに骨髄生検が重要です。

骨髄生検検体で「細胞密度」5%未満まで減少していれば、残存病変は明らかではないと判断し、数週間後の好中球と血小板の上昇を待ちます。

もし「細胞密度」が5%を超えている場合は、残存細胞をよく確認します。診断時の白血病細胞であれば、残存病変ありと判断し、この時点で2回目の寛解導入療法(1回目と同じ治療)を行います。

「細胞密度」が5%を超えても、別の細胞であれば、1~2週間後に再度骨髄穿刺・骨髄生検を行います。

 

下図の症例では診断時と14日目骨髄生検を比較しています。

左は診断時で細胞密度は90~95%とかなり高い状態ですが、右の14日目骨髄生検では細胞密度はほぼゼロ(5%未満)です。

寛解導入療法 day 14 骨髄生検 弱拡大

 

拡大して細胞を確認します(下図)。細胞の確認は骨髄液の塗抹標本でも行います。

左は診断時でほぼすべて大型の細胞(急性骨髄性白血病の細胞)ですが、右の14日目骨髄生検では形質細胞やリンパ球が多くなっています。このような場合はそのまま好中球などの回復を待ちます。

寛解導入療法 day 14 骨髄生検 強拡大

 

14日目ごろの骨髄穿刺+骨髄生検を行うことを推奨します

とくに残存があった場合は、急性骨髄性白血病の細胞が少ない状態で2回目の寛解導入療法を行うことができるため、完全寛解への到達率が上がると考えられます。

2020年12月時点でのアメリカのNCCNガイドライン(NCCN Guidelines)でも、14日目ごろの骨髄穿刺+骨髄生検を推奨しています。

日本の2018年造血器腫瘍診療ガイドラインでは、14日目骨髄検査についての記載はありません。

 

寛解導入療法の治療効果判定 完全寛解の基準 2017 ELN基準

Diagnosis and management of AML in adults

1回目もしくは2回目の寛解導入療法を開始してから好中球が1000/μL、かつ血小板が100000/μLくらいになるまで平均で30~35日かかります。

好中球が1000/μLかつ血小板が100000/μLくらいで完全寛解かどうかの判定のために、再度骨髄検査を行います。

完全寛解の基準は国際基準を用いますが、2020年12月時点で最新のものは2017年ELN基準です(Blood. 2017 Jan 26;129(4):424-447.). 世界中の専門家が集まって作成したコンセンサスによる基準です。

Response criteria, ENL 2017

 

完全寛解 (CR)の基準は以下のすべてを満たすことです

・好中球が1000/μL以上

・血小板が100000/μL以上

・骨髄液の塗抹標本で芽球が5%未満

・採血検査で血液中に芽球(アウエル小体を持つ芽球も含む)がない

・骨髄以外にも白血病細胞の腫瘤がない

 

血球数の回復が不完全な完全寛解 (CRi)というものもあり、完全寛解の基準のうち、好中球数か血小板数のどちらかのみ足りない状態を言います。

急性骨髄性白血病の寛解導入療法の治療目標は「完全寛解 (CR)」もしくは「血球数の回復が不完全な完全寛解 (CRi)」に到達することです。

CRはおよそ70%, CRiもあわせるとおよそ85%の症例で治療目標に到達します。

2回の寛解導入療法を行ってもCRもしくはCRiに到達しない症例を、「難治性」急性骨髄性白血病と言います。急性骨髄性白血病のなかでも特に治療に抵抗性を持っています。寛解後療法の適応にはなりません。はやめに次の治療の準備を行います。

 

骨髄検査の結果が出るのに1~2週間かかりますが、その結果を待っている間は一時退院です。10~14日後には再入院となります。CR/CRiに到達していればそのまま寛解後療法に進んでいきます。

 

急性骨髄性白血病の寛解後療法については次項「急性骨髄性白血病 (AML) 完全寛解に到達後の寛解後療法」で解説します。

急性骨髄性白血病 Giemsa Blast 30%
急性骨髄性白血病 (AML) 完全寛解に到達後の寛解後療法

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まとめ 急性骨髄性白血病 寛解導入療法の実際と治療効果判定

● 急性骨髄性白血病の寛解導入療法は、治療全体の中で1か月あたりの致命的な合併症が最も高いです。特に感染症が高いです。全身状態を管理する医療も生存率上昇のためには極めて重要です。

● 寛解導入療法を開始してから14日目ごろに骨髄検査を行い、最初の治療効果判定を行います。残存白血病細胞が明らかでなければ血球数回復を待ちますが、残存白血病細胞が明らかなときは、その時点で2回目の寛解導入療法を行うことを推奨します。

● 血球数が回復してきたら、完全寛解を確認するために骨髄検査などを行います。完全寛解の基準は2017年のELN基準を用います。寛解導入療法の治療目標は「完全寛解 (CR)」もしくは「血球数の回復が不完全な完全寛解 (CRi)」に到達することです。

参考文献

Randomized comparison of cooked and noncooked diets in patients undergoing remission induction therapy for acute myeloid leukemia.
J Clin Oncol. 2008 Dec 10;26(35):5684-8.

Adult patients with acute myeloid leukemia who achieve complete remission after 1 or 2 cycles of induction have a similar prognosis: a report on 1980 patients registered to 6 studies conducted by the Eastern Cooperative Oncology Group.
Cancer. 2010 Nov 1;116(21):5012-21.

Diagnosis and management of AML in adults: 2017 ELN recommendations from an international expert panel.
Blood. 2017 Jan 26;129(4):424-447.

造血器腫瘍診療ガイドライン

NCCN Guidelines

 

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