濾胞性リンパ腫 (FL) 進行期症候性の場合の初回治療

2020-03-22

濾胞性リンパ腫 R2 vs R+chemothearpy, RELEVANCE

濾胞性リンパ腫(FL)の進行期で治療があきらかに必要となった場合は、本格的な化学療法を行うことになります。

本項では、濾胞性リンパ腫(グレード1~3A)の化学療法について過去の歴史から振り返りながら、最新の臨床試験まで解説しています。

濾胞性リンパ腫に対しては新規の治療が次々と登場しています。それらの治療がどのくらい有効なのか確認していきます。

進行期でも最初の治療については、いつ何を行うのかということが極めて重要です。初回の治療はその後のすべての治療計画に影響します。

本項でも国内と国外のガイドライン・論文を参照しつつ解説していきます。

 

進行期症候性濾胞性リンパ腫の初回治療 リツキシマブの登場

あきらかな「治療適応」となったステージ2~4の濾胞性リンパ腫に対しては、治療開始の検討が必要となってきます。直ちに治療開始というわけではありません。治療開始の目安です。

しかしながら、症状が強くでているまま日常生活に支障があるのに経過観察することはおすすめしません

治療は抗がん剤治療(化学療法)です。

 

濾胞性リンパ腫の治療については、以前はびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫と同様の治療が行われてきました。

抗がん剤治療にリツキシマブを追加することにより全生存率は明らかに改善します。

びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫の治療でCHOP療法というシクロホスファミドドキソルビシンビンクリスチンプレドニゾンからなる化学療法が行われていました。

これにリツキシマブを追加したR-CHOP療法は、濾胞性リンパ腫に対してもCHOP療法より良好な治療です。

 

2005年に濾胞性リンパ腫に対してCHOP療法R-CHOP療法を比較した大規模ランダム化臨床試験の結果が出版されました(Blood. 2005 Dec 1;106(12):3725-32)。

この臨床試験ではグレード1か2の濾胞性リンパ腫の症例を対象としました。

結果、全奏効率はCHOP療法で90%でしたが、R-CHOP療法で96%と、統計学的にも明らかにR-CHOP療法のほうが高い奏効でした(p=0.011)。

完全奏効率はCHOP療法で17%、R-CHOP療法で20%でした。有意な差はありません。

全生存期間は2年時点でCHOP療法で90%でしたが、R-CHOP療法で95%と、統計学的にも明らかにR-CHOP療法のほうが良好でした(下図 p=0.016)。

濾胞性リンパ腫 CHOP vs R-CHOP, OS

重症な好中球減少はR-CHOP療法のほうが多くみられました。

致命的な合併症はどちらの群も1%でした。

 

濾胞性リンパ腫の場合は、CHOP療法から最も毒性の高いドキソルビシンを除いたCVP療法というものが行われるときもあります。

これにリツキシマブを追加したR-CVP療法は、CVP療法よりも良好な治療です。

2008年のCVP療法R-CVP療法を比較した大規模ランダム化臨床試験の結果が出版されています(J Clin Oncol. 2008 Oct 1;26(28):4579-86)。

治療が必要な濾胞性リンパ腫の症例を対象とました。

結果、全奏効率はCVP療法で57%でしたが、R-CVP療法で81%と、統計学的にも明らかにR-CVP療法のほうが良好な奏効でした(p<0.0001)。

完全奏効率はCVP療法で10%、R-CVP療法で41%と、R-CVP療法のほうが高い結果でした(p<0.0001)。

全生存率は4年時点で、CVP療法で77%でしたが、R-CVP療法で83%と、統計学的にも明らかにR-CVP療法のほうが良好でした(下図 p=0.0290)。

濾胞性リンパ腫 CVP vs R-CVP, OS

抗がん剤治療にリツキシマブを追加することにより、治療が必要な濾胞性リンパ腫の全生存期間は明らかに改善します

 

進行期症候性濾胞性リンパ腫の初回治療 ベンダムスチンの登場

では、リツキシマブと組み合わせる化学療法はCHOPCVPのどちらが良いのでしょうか?

 

2013年にR-CHOP療法と他の治療の組み合わせを比較した大規模ランダム化臨床試験の結果が出版されました(J Clin Oncol. 2013 Apr 20;31(12):1506-13, J Clin Oncol. 2018 Mar 1;36(7):689-696)。

FOLL05試験と名付けられたこの臨床試験では、R-CHOP療法と、R-CVP療法と、R-FM療法(リツキシマブ、フルダラビン、ミトキサントロン)の3つを比較した, 3群のランダム化臨床試験でした。

結果、全奏効率はR-CVP療法で88%、R-CHOP療法で93%、R-FM療法で91%であり、統計学的な差はありませんでした(p=0.247)。

完全奏効率はR-CVP療法で67%、R-CHOP療法で73%、R-FM療法で72%であり、統計学的な差はありませんでした(p=0.543)。

8年時点での再発なく生存している確率(無増悪生存率)はR-CVP療法で42%、R-CHOP療法で49%、R-FM療法で52%であり、統計学的に明らかにR-CVP療法が低かったのですが、R-CHOP療法とR-FM療法は差はないという結果でした(下図)。

濾胞性リンパ腫 R-CVP vs R-CHOP vs R-FM, PFS

しかしながら、最も重要なのは全生存率です。

この臨床試験での8年時点での全生存率は、R-CVP療法で85%、R-CHOP療法で83%、R-FM療法で79%で、統計学的には差はありませんでした(下図)。

濾胞性リンパ腫 R-CVP vs R-CHOP vs R-FM, OS

長期的な全生存率に差がみられないのであれば、有害事象が重要になります。

重症感染症はR-CVP療法で2.4%、R-CHOP療法で3.0%、R-FM療法で4.7%でした。血球減少がR-CHOP療法とR-FM療法で強く、それが感染につながっていると考えられます。

またR-CHOP療法とR-FM療法はアントラサイクリン系という心臓への毒性をもつ薬剤を使用しており、治療による心不全を起こす可能性が上がります。脱毛もほぼ全例で発生します。

 

さらに2020年に、R-CHOP療法R-CVP療法を比較した大規模ランダム化臨床試験の結果が出版されました(Br J Haematol. 2020 Mar;188(6):898-906)。緩徐進行型のB細胞性リンパ腫を対象としたこの臨床試験では、濾胞性リンパ腫症例は約42%でした。

5年以上の観察期間の結果、全奏効率はR-CVP群で97.1%, R-CHOP群で94.5%と、どちらがよいとも言えない結果でした。完全奏効率はR-CVP群で 36.3%, R-CHOP群で43.6%でした。

また再発なく生存している割合(無増悪生存率)は5年時点でR-CVP群で69%、R-CHOP群で71%と統計学的な差はありませんでした(下図, p=0.849)。

PLRG4 濾胞性リンパ腫 R-CVP vs R-CHOP, PFS

全生存率も5年時点でR-CVP群で89%、R-CHOP群で84%と統計学的な差はありませんでした。

重症な有害事象はR-CVP療法よりもR-CHOP療法のほうが2倍くらい多くみられました。

長期的な全生存率に有意な差がみられないのであれば、たとえ再発率が多少高くても不必要な副作用は避けたほうがよいと考えられ、R-CVP療法のほうがR-CHOP療法やR-FM療法よりも優先されます

 

 

そのような状況の中、ベンダムスチン(商品名:トレアキシン)という薬剤が登場しました。

2013年に出版された大規模ランダム化臨床試験です。ベンダムスチンとリツキシマブの組み合わせであるBR療法R-CHOP療法と比較した臨床試験です(Lancet. 2013 Apr 6;381(9873):1203-10)。

StiL試験と名付けられたこの臨床試験では、再発なく生存している確率(無増悪生存率)はBR療法によりR-CHOPの倍以上の改善がみられました(下図)。

濾胞性リンパ腫 StiL BR vs R-CHOP, PFS

しかしながら、全生存率には差はありませんでした。10年生存率はR-CHOP療法で66%, BR療法で70%でした。

有害事象については、重症の白血球減少はR-CHOP療法の半分くらいの発生率となり、同時に感染症の割合もR-CHOP療法で50%でしたがBR療法で37%と明らかに減少しました。

そのほか脱毛がR-CHOP療法で100%だったのに対してBR療法では0%でした。BR療法で多いのは皮膚の発赤で16%でした(R-CHOP療法で9%)。

BR療法はR-CHOP療法よりも良い奏効にもかかわらず、有害事象は軽減されました

 

さらにBR療法R-CVP療法とも比較した大規模ランダム化臨床試験が2014年に出版されました(Blood. 2014 May 8;123(19):2944-52, J Clin Oncol. 2019 Apr 20;37(12):984-991)。

BRIGHT試験と名付けられたこの臨床試験ではBR療法R-CHOP療法もしくはR-CVP療法と比較しました。濾胞性リンパ腫の症例は約70%でした。

全奏効率はBR療法が約95%、R-CVP療法が約85%と、BR療法のほうが奏効率は良好でした。

長期追跡の結果、5年の無増悪生存率はBR療法群で65.5%、R-CHOP/CVP群で55.8%と、統計学的にも明らかにBR療法群のほうが良好でした(下図).

濾胞性リンパ腫BRIGHT BR vs R-CHOP or R-CVP, PFS

5年の全生存率はBR療法群で81.7%、R-CHOP/CVP群で85.0%であり、有意な差はありませんでした(下図)。

濾胞性リンパ腫BRIGHT BR vs R-CHOP or R-CVP, OS

有害事象については、重症の白血球減少はR-CVP療法と同じくらいの発生率となり、感染症の割合も同じくらいでした。

そのほか脱毛がR-CVP療法では約20%、BR療法は4%でした。

以上よりBR療法はR-CVP療法と同程度の副作用にもかかわらず良好な奏効であると考えられます。

 

進行期症候性濾胞性リンパ腫の初回治療 その他の治療について

オビヌツズマブ(商品名:ガザイバ)はリツキシマブより後に登場したB細胞に対する抗体の新規薬剤です。

オビヌツズマブがリツキシマブよりも有効かどうかについて、濾胞性リンパ腫で大規模ランダム化臨床試験が行われ、2017年その結果が出版されました(N Engl J Med. 2017 Oct 5;377(14):1331-1344、J Clin Oncol. 2018 Aug 10;36(23):2395-2404.)。

GALLIUM試験と名付けられたこの臨床試験では、抗がん剤に加えてリツキシマブもしくはオビヌツズマブをランダム化して投与し比較しました。

全奏効率はオビヌツズマブ群で84%、リツキシマブ群で79%でした。

3年無増悪生存率はオビヌツズマブ群で80%, リツキシマブ群で73.3%であり、統計学的にも明らかにオビヌツズマブのほうが良好でした(下図)。

濾胞性リンパ腫 GALLIUM O vs R, PFS

 

全生存率については差はまだみられません(下図).

濾胞性リンパ腫 GALLIUM O vs R, OS

 

重症な有害事象については、オビヌツズマブ群で74.6%, リツキシマブ群で67.8%でした。

重篤な感染症がオビヌツズマブ群で18.2%, リツキシマブ群で14.4%でした。

有害事象はオビヌツズマブのほうが多い結果でした。

以上から現時点ではオビヌツズマブはリツキシマブよりも良い治療とは必ずしもいえません長期追跡の結果を確認する必要があります。

 

そのほか放射性同位元素を用いた抗体療法(商品名:ゼヴァリン など)、レナリドミド(商品名:レブラミド)、ボルテゾミブ(商品名:ベルケイド)、自家造血幹細胞移植などの臨床試験も行われていますが、既存の治療以上の成績は出ていません。

 

たとえば、放射性同位元素を用いた抗体療法製剤の一つである「トシツモマブ/ヨウ素131」リツキシマブを比較した大規模ランダム化臨床試験の結果があります(J Clin Oncol. 2013 Jan 20;31(3):314-20, J Clin Oncol. 2018 Mar 1;36(7):697-703).

SWOG S0016試験と名付けられたこの臨床試験ではR-CHOP療法「トシツモマブ/ヨウ素131」-CHOP療法を比較しました。

10年の長期追跡の結果、10年の無増悪生存率はリツキシマブ群で42%であったのに対して、トシツモマブ群では56%と、統計学的にも明らかにトシツモマブ群のほうが良好でした(下図 p=0.01)。

濾胞性リンパ腫 SWOG S0016, R vs RIT, PFS

 

10年の全生存率は、リツキシマブ群で81%、トシツモマブ群では75%と、有意な差はありませんでした(下図 p=0.13)。

濾胞性リンパ腫 SWOG S0016, R vs RIT, OS

初回治療の放射性同位元素を用いた抗体療法はリツキシマブよりも良い治療というわけではありません

 

 

レナリドミド(商品名:レブラミド)は免疫調節薬と呼ばれる薬剤の一種です。多発性骨髄腫や骨髄異形成症候群の治療に用いられます。

濾胞性リンパ腫ではレナリドミドリツキシマブを併用してR²(アールスクエア)という名前の治療で臨床試験を行いました。

 

2018年にリツキシマブ+化学療法と比較する大規模ランダム化臨床試験の結果がでています(N Engl J Med. 2018 Sep 6;379(10):934-947)。

RELEVANCE試験と名付けられたこの臨床試験では、治療適応の濾胞性リンパ腫の症例を対象とし、維持療法も含めて120週間の治療期間で行われました(下図)。

濾胞性リンパ腫 R2 vs R+chemothearpy, RELEVANCE

リツキシマブ+化学療法群では、約70%でCHOPを、約25%でベンダムスチンを、約5%でCVPを選択しました。

結果、治療開始120週後の全奏効率は、R²で61%, R+化学療法で65%でした。

治療開始120週後の完全奏効率(CR/CRu)は、R²で48%, R+化学療法で53%でした。

いずれも有意な差はありませんでした。

3年での無増悪生存率は、R²で77%, R+化学療法で78%となり、有意な差はありませんでした(下図).

濾胞性リンパ腫 R2 vs R+chemothearpy, RELEVANCE, PFS

3年での全生存率は、両群とも94%であり有意な差はありませんでした(下図).

濾胞性リンパ腫 R2 vs R+chemothearpy, RELEVANCE, OS

重症な有害事象は両群ともおよそ70%でした。

好中球減少や感染症はR+化学療法のほうが多く、皮膚障害はR²のほうが多くなりました。

 

R²はR-CHOPと効果も有害事象も有意な差はみられていません。BR療法はこの臨床試験では割合が少なかったためR²よりも有害事象や効果が良いとも言えません。

ただしR²が既存の治療よりもよいことは証明できていませんし、同等性を検証する試験でもなかったため同等であるとも言えず、初発濾胞性リンパ腫に対してR²を用いることは推奨されません

 

2019年にリツキシマブ単剤を比較するランダム化臨床試験の結果が出版されました(Blood. 2019 Jul 25;134(4):353-362).

このSAKK 35/10試験では、治療が必要な濾胞性リンパ腫の症例を対象としました。

治療開始23週時点での奏効率はリツキシマブ単独で61%, R²で81%完全奏効率(CR/CRu)はリツキシマブ単独で25%, R²で36%と、R²のほうが良好な奏効でした(p=0.056).

無増悪生存期間は中央値でリツキシマブ群は2.3年でしたが、R²群では5.0年と、統計学的にも明らかにR²群のほうが良好でした(下図)。

濾胞性リンパ腫 R2 vs R, SAKK 35 10, PFS

 

全生存率は4年時点で、リツキシマブ群で90%, R²群で91%であり、有意な差はみられていません(下図).

濾胞性リンパ腫 R2 vs R, SAKK 35 10, OS

重症な有害事象R²群にリツキシマブ単独群の倍以上多くみられました

長期的な全生存率に有意な差はみられていませんので、無増悪生存期間が良好でも有害事象の少ない治療が優先されます。

そもそも治療が必要な濾胞性リンパ腫の症例に対してリツキシマブ単独で治療することはそれほどありませんし、初発濾胞性リンパ腫に対してR²を用いることも現時点では推奨されません

 

 

ボルテゾミブ(商品名:ベルケイド)は多発性骨髄腫の治療薬として登場した薬剤ですが、一部のリンパ腫でも有効性が確認されています。

濾胞性リンパ腫に対するボルテゾミブの治療効果についてランダム化臨床試験がおこなわれました(Cancer. 2019 Oct 1;125(19):3378-3389)。

このCALGB 50904 Alliance試験では、リツキシマブではなくオファツムマブ(商品名:アーゼラ)という新規のCD20に対する抗体薬を用いました。

オファツムマブ+ベンダムスチンボルテゾミブを追加するかしないかでランダム化して比較しました。

結果、全奏効率はボルテゾミブなしで95%, ボルテゾミブありで90%でした。

完全奏効率はボルテゾミブなしで62%, ボルテゾミブありで60%でした。

いずれも有意な差はみられませんでした。

2年の無増悪生存率は、ボルテゾミブなしで80.3%, ボルテゾミブありで75.6%であり、有意な差はみられませんでした(下図).

濾胞性リンパ腫 OfaB vs OfaBB, CALGB50904 Alliance, PFS

2年の全生存率は、ボルテゾミブなしで96.8%, ボルテゾミブありで91.2%であり、有意な差はみられませんでした(下図).

濾胞性リンパ腫 OfaB vs OfaBB, CALGB50904 Alliance, OS

重症な有害事象はボルテゾミブの追加により明らかに上昇します。治療の脱落率もボルテゾミブの追加により増加しました。

濾胞性リンパ腫に対するボルテゾミブの追加投与は行わないほうがよいです。

 

2020年にBR療法ボルテゾミブレナリドミドを追加した大規模ランダム化臨床試験の結果が出版されました(Clin Cancer Res. 2020 Sep 1;26(17):4468-4477).

この臨床試験(ECOG-ACRIN E2408試験)では、初回治療をBR療法もしくはBR療法+ボルテゾミブでランダム化しています。

完全奏効率はBR療法群で62%だったのに対してBR療法+ボルテゾミブでは75%と有意に上昇しました(p=0.04)。

しかしながら、3年無増悪生存率と3年全生存率はあまり変わりありませんでした。

維持療法でリツキシマブ単独かもしくはR2でランダム化されていますが、1年無病生存率はリツキシマブ単独で85%だったのに対してR2群では67%と統計学的にも明らかに悪化しました(p=0.0009).

さらに重症な好中球減少や発熱性好中球減少症はR2群のほうが有意に多い結果でした。

初発濾胞性リンパ腫に対してボルテゾミブの追加投与やR²を用いることは推奨されません

 

 

自家造血幹細胞移植は血液疾患の治療として多発性骨髄腫や悪性リンパ腫などによく行われます。

濾胞性リンパ腫に対する自家造血幹細胞移植については、昔から臨床試験が何度も行われてきていますが、全生存率を改善するというわけではありませんでした。

リツキシマブが登場後の自家造血幹細胞移植の効果について、大規模ランダム化臨床試験が行われました(Blood. 2008 Apr 15;111(8):4004-13)。

このGITMO/IIL試験では、CHOP療法後にリツキシマブを投与する群化学療法後にリツキシマブ投与と自家造血幹細胞移植を行う群の2群にランダム化して比較しました(下図)。

濾胞性リンパ腫 GITMO-IIL

結果、完全奏効率は化学療法のみの群では62%でしたが、自家造血幹細胞移植群では85%と、統計学的にも明らかに自家造血幹細胞移植群のほうが良好でした(p<0.001).

13年という長期の追跡の結果も報告されています(Haematologica. 2019 Nov;104(11):2241-2248).

13年無増悪生存率は化学療法のみの群では28.8%でしたが、自家造血幹細胞移植群では59.1%と、統計学的にも明らかに自家造血幹細胞移植群のほうが良好でした(下図, p<0.001).

濾胞性リンパ腫 GITMO-IIL CHOP-R vs R-HDS, PFS

13年の全生存率は化学療法のみの群で68.5%、自家造血幹細胞移植群では64.5%と、有意な差はみられませんでした(下図, p=0.523).

濾胞性リンパ腫 GITMO-IIL CHOP-R vs R-HDS, OS

自家造血幹細胞移植は無増悪生存率を大きく改善しますが、全生存率の改善はみられません。有害事象は自家造血幹細胞移植に明らかに多く発生します

濾胞性リンパ腫の初回治療として自家造血幹細胞移植を追加することは推奨しません

 

 

あきらかな「治療適応」となったステージ2~4の濾胞性リンパ腫に対しては、BR療法を推奨します。BR療法が何らかの理由でできない場合はR-CVP療法を推奨します。

無増悪生存率を改善する新規治療はいろいろ臨床試験が行われていますが、全生存率の改善がみられていないことと有害事象が増えることから、既存の治療以上に推奨できるものはありません

 

2020年12月時点でのアメリカのNCCNガイドライン(NCCN Guidelines)では、リツキシマブかオビヌツズマブに加えてベンダムスチン、CHOP、CVPのいずれか、もしくはR²を推奨しています(カテゴリー2A)。

日本血液学会の2018年造血器腫瘍診療ガイドラインでは、リツキシマブ+化学療法を強く(カテゴリー1)推奨しています。オビヌツズマブは推奨とはなっていませんでしたが、補訂版でオビヌツズマブも追記されました。R²は記載されていません。

 

次項では濾胞性リンパ腫の化学療法の実際の投与・注意点および治療効果判定について解説します。

濾胞性リンパ腫 HE 40 Grade 1
濾胞性リンパ腫(FL)の化学療法 実際の投与と治療効果判定

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まとめ 濾胞性リンパ腫 進行期症候性の場合の初回治療

● リツキシマブが登場に濾胞性リンパ腫の予後は明らかに改善しました。既存の化学療法に併用します。

● ベンダムスチンにより、化学療法の副作用を軽度にしたまま良い奏効を得ることができます。BR療法はR-CVP療法と同程度の副作用にもかかわらず良好な奏効です。

● あきらかな「治療適応」となったステージ2~4の濾胞性リンパ腫に対しては、BR療法を推奨します。BR療法ができない場合はR-CVP療法を推奨します。

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2018年造血器腫瘍診療ガイドライン

NCCN Guidelines

 

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