急性リンパ芽球性白血病(ALL)の診断のための検査 骨髄検査

2020-05-19

骨髄生検 病理標本 HE x100

 

急性リンパ芽球性白血病(ALL)を含む、白血病などの血液疾患が疑われたら、診断のための検査を行います。
本項では急性リンパ芽球性白血病と診断するために必要な、「骨髄検査」について解説していきます。

急性リンパ芽球性白血病の症例で、どのようにして検査をすすめ、結果をどのように解釈していくのか、どの時点で診断の確定度合いが上昇するのか、といったことについて実際の骨髄の写真を含めながら解説します。

 

急性リンパ芽球性白血病の診断のための検査 骨髄検査・塗抹標本

急性白血病が疑われる場合は、骨髄検査が必要になります。

白血球、赤血球、血小板などの血球は骨の中である「骨髄」でつくられています。急性リンパ芽球性白血病などの細胞も骨髄によく集まり、そこで増殖します。

骨髄検査では、骨髄に針を刺して骨髄の中の液体(骨髄液)や組織を採取し、白血病細胞の検出や精査を行います。

骨髄検査では「腸骨」という骨盤を構成する骨に局所麻酔を行ったうえで針を刺して検査をします。

骨髄液を採取する検査を「骨髄穿刺吸引」、骨髄組織を針で採取する検査を「骨髄生検」といいます。これらの検査自体は10分くらいで終了します。骨髄液を吸引するときは痛みが強いです。

骨髄検査についての詳細は、「骨髄検査(骨髄穿刺吸引・骨髄生検)の手技の実際 痛みや安全性は?」をご覧ください。

 

この骨髄検査で骨髄液塗抹、フローサイトメトリ、染色体・遺伝子検査、病理などの検査を行います。診断だけでなく、白血病細胞の発現蛋白や遺伝学的性質なども調べていきます。これらは予後評価や治療方針決定にも用います。

このうち骨髄液塗抹検査はその日のうちに結果がわかります。

 

急性リンパ芽球性白血病では骨髄液塗抹標本をみると、白血病細胞が多数みられます。

白血病細胞の形態は同じ標本でも小型の細胞から大型の細胞まで様々ですが、症例ごとにも形態は様々です。

とはいえ正常であればみられないくらいに「おかしな細胞」が多数ありますので、正常な骨髄でないことは比較的簡単にわかります(下図)。

急性リンパ芽球性白血病 Giemsa x200 1

急性リンパ芽球性白血病ではこれらの異常細胞は、ミエロペルオキシダーゼ染色で陰性になります。

もしミエロペルオキシダーゼ染色が陽性になれば急性骨髄性白血病を考えます。

 

骨髄液塗抹標本のみで、急性リンパ芽球性白血病と診断することはできません。他の検査結果が診断には必要です。

またB細胞性急性リンパ芽球性白血病とT細胞性急性リンパ芽球性白血病の細胞形態で区別することもできません(下図 上:B細胞性急性リンパ芽球性白血病, 下:T細胞性急性リンパ芽球性白血病)。

B-ALL Bone marrow smear Giemsa x400

T-ALL Bone marrow smear Giemsa x400

骨髄に白血病細胞が多くみられず、「しこり」が主な病変である場合は、「しこり」を採取して同様の検査に提出します。これを「生検」と言います。

急性リンパ芽球性白血病が疑われている場合は、あらかじめCT検査で腫瘤の有無を確認します。

 

急性リンパ芽球性白血病の診断のための検査 フローサイトメトリ

次に早く結果がわかるのはフローサイトメトリと呼ばれる検査です。

フローサイトメトリ検査は細胞に発現している蛋白を確認する検査で、白血病細胞に発現している蛋白を何種類も同定することができます。

フローサイトメトリ検査により、白血病細胞が急性リンパ芽球性白血病なのかそれとも別の腫瘍細胞なのか、ほとんどの場合で確定することができます。

また同じ急性リンパ芽球性白血病でも、B細胞性なのかT細胞性なのかということまで確定することができます。

フローサイトメトリの結果は数日以内にわかります。

 

B細胞性急性リンパ芽球性白血病の場合はCD19が必ず陽性になります。

さらにCD79a、CD10、細胞内のCD22のうち1つ以上は必ず陽性です。

これに加えて、ミエロペルオキシダーゼが陰性で、TdT(Terminal Deoxynucleotidyl Transferase)という幼弱リンパ系細胞に発現する蛋白が陽性であれば、診断はほぼ確実です。

B細胞性急性リンパ芽球性白血病ではCD3は必ず陰性です。

 

T細胞性急性リンパ芽球性白血病の場合は、CD3細胞表面もしくは細胞内で必ず陽性です。CD7も陽性になります。

これに加えて、ミエロペルオキシダーゼが陰性TdTが陽性であれば診断はほぼ確実です。

T細胞性急性リンパ芽球性白血病ではCD19は必ず陰性です。

 

いずれの急性リンパ芽球性白血病でもCD13、CD33, CD34、その他の蛋白は陽性だったり陰性だったりします。診断にはあまり役に立ちません。

 

200症例以上の急性リンパ芽球性白血病症例のフローサイトメトリの結果をまとめた研究結果が1999年に報告されています(Am J Clin Pathol. 1999 Apr;111(4):467-76).

B細胞性急性リンパ芽球性白血病と診断された症例では、CD19陽性は100%, CD10陽性は85.7%, TdT陽性は97.7%でした。CD20陽性は44.5%です。

CD13は24.8%、CD33は28.4%, CD34は77%にそれぞれ陽性でした。

 

T細胞性急性リンパ芽球性白血病と診断された症例では、細胞表面CD3陽性は68%CD7陽性は100%でした。

TdTは90%, CD13は15%, CD33は12%, CD34は32%にそれぞれ陽性でした。

 

急性リンパ芽球性白血病の診断のための検査 病理標本

以上までで急性リンパ芽球性白血病の診断は固まってきますが、少し遅れて病理結果も出てきます。

病理標本でも腫瘍細胞が多数確認されます。明らかに正常ではないことがわかります。

細胞の大きさは小型から中型ものが多くなります。

とくに骨髄生検の病理標本では腫瘍細胞が高密度に存在することがわかります(下図)。

骨髄生検 病理標本 HE x100

病理標本でもCD3、CD19, CD10, TdTなどの検査を行います。病理標本でこれらの発現を確認するには、「免疫染色」という手法を用います

細胞内でも細胞表面でも免疫染色で確認できます。免疫染色は診断のためには非常に有用です。

 

例えばT細胞性急性リンパ芽球性白血病の場合に、たとえフローサイトメトリで細胞表面のCD3陽性率が低く、細胞内CD3のフローサイトメトリが必要になる症例であっても、病理標本の免疫染色ではどちらの場合も簡単にわかります(下図)。

T-ALL 骨髄 病理標本 CD3染色

茶色に染まっている細胞が陽性細胞です。

TdTも同様に陽性かどうかすぐにわかります(下図)。

T-ALL 骨髄 病理標本 TdT染色

 

病理標本では骨髄中の急性リンパ芽球性白血病細胞の割合を測定することが可能です。フローサイトメトリではこの腫瘍細胞割合の測定はあてになりません

骨髄塗抹標本でも可能ですが、検査者による誤差が大きいことと、骨髄穿刺吸引の塗抹なので末梢血などの混入により、本来よりも低い結果がでやすいという欠点があります。

骨髄穿刺吸引の病理標本でも末梢血の混入があり得ます(下図 骨髄穿刺液の病理標本)。

骨髄穿刺 病理標本 HE x200

 

骨髄生検の病理標本であれば、末梢血混入による影響をほとんど受けないため、比較的正確に腫瘍細胞割合を出すことができます(下図 骨髄生検の病理標本)。

骨髄生検 病理標本 HE x200

 

白血病細胞の割合は診断に必須です(Blood. 2016 May 19;127(20):2391-405)。

骨髄中の急性リンパ芽球性白血病細胞が20%以上であれば,「急性リンパ芽球性白血病」の診断になります。

白血病細胞が20%未満の場合は骨髄でないところに同様の白血病細胞が腫瘤形成していることを確認し「リンパ芽球性リンパ腫」と診断します。名前は異なりますが同じ疾患です。

とはいえ骨髄中の白血病細胞が20%未満だった場合は、「急性リンパ芽球性白血病」とは言えないことになってしまいますので、腫瘤形成の有無にかかわらず診断時に「骨髄生検」も行っておくことを推奨します。

 

 

次項では急性リンパ芽球性白血病/リンパ芽球性リンパ腫の診断基準(WHO分類)や類似疾患との区別などについて解説します。

T-ALL Giemsa x40
急性リンパ芽球性白血病(ALL)とリンパ芽球性リンパ腫(LBL)の診断基準と鑑別診断

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まとめ 急性リンパ芽球性白血病の診断のための検査 骨髄検査

● 急性白血病が疑われる場合は、診断のために骨髄検査が必要になります。骨髄液を採取する検査を「骨髄穿刺吸引」、骨髄組織を針で採取する検査を「骨髄生検」といいます。

● 骨髄液のフローサイトメトリ検査により、異常細胞が急性リンパ芽球性白血病なのかそれとも別の腫瘍細胞なのか、調べることができます。さらに急性リンパ芽球性白血病の中でも、B細胞性なのかT細胞性なのかということまでわかります。

● 病理の結果も少し遅れてわかります。病理標本での「免疫染色」は診断に非常に有用です。また病理標本では骨髄中の急性リンパ芽球性白血病細胞の割合を測定できます。

参考文献

Khalidi HS, Chang KL, Medeiros LJ, et al.
Acute lymphoblastic leukemia. Survey of immunophenotype, French-American-British classification, frequency of myeloid antigen expression, and karyotypic abnormalities in 210 pediatric and adult cases.
Am J Clin Pathol. 1999 Apr;111(4):467-76.

Arber DA, Orazi A, Hasserjian R, et al.
The 2016 revision to the World Health Organization classification of myeloid neoplasms and acute leukemia.
Blood. 2016 May 19;127(20):2391-405.

 

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