急性リンパ芽球性白血病(ALL)とリンパ芽球性リンパ腫(LBL)の診断基準と鑑別診断

2020-05-20

T-ALL Giemsa x40

 

急性白血病疑いで骨髄検査を行ったら、その結果をみて診断をすすめていきます。

塗抹標本やフローサイトメトリ、病理などの結果で診断を確定するのですが、急性白血病にはそれぞれのタイプについて国際的に診断基準がつくられています。

この診断基準は、新たな医学の発見を取り込んで改訂することにより、精度を増してきています。

本項では、急性リンパ芽球性白血病(ALL)/リンパ芽球性リンパ腫(LBL)の診断の基準について解説します。

また急性リンパ芽球性白血病/リンパ芽球性リンパ腫は悪性リンパ腫と類似した検査結果を呈することがあり、その区別を行うことも重要です。本項ではその区別についても簡単に解説します。

 

診断の違いは適切でない治療につながる可能性がありますが、本項で解説するWHO分類に沿ってみていけば、診断が異なることはまずないでしょう。

 

急性リンパ芽球性白血病の診断基準 2016年改訂WHO分類

急性リンパ芽球性白血病(ALL)と診断するためには以下のすべての基準を満たす必要があります。

● 骨髄検査で骨髄に白血病細胞が20%以上ある

● 白血病細胞はCD19陽性もしくはCD3陽性(細胞内含む)である

● CD19陽性の場合は、CD79a, 細胞内CD22, CD10のうち1つが少なくとも陽性である

● ミエロペルオキシダーゼは陰性である

さらに厳密には以下のすべても含みます。

● エステラーゼ染色, CD11c, CD14, CD64, lysozymeのうち、陽性は1つまでである

● CD19の陽性が通常のB細胞よりも弱い場合はCD79a, 細胞内CD22, CD10のうち2つが少なくとも陽性である

 

2016年に改訂WHO分類という基準が発表されました。急性白血病の診断基準も2016年改訂WHO分類にしたがいます(Blood. 2016 May 19;127(20):2391-405).

The 2016 revision to the World Health Organization classification of myeloid neoplasms and acute leukemia.

急性白血病では、急性骨髄性白血病のほうが急性リンパ芽球性白血病よりも頻度が高いのですが、これらは治療方法が全くことなりますので、区別することが重要です。

これらはほとんどの場合でミエロペルオキシダーゼ染色TdT染色で区別できますが、まれにそれだけでは不十分なときがあります。

 

急性リンパ芽球性白血病ではミエロペルオキシダーゼ染色で陽性になることはありません

一方で急性骨髄性白血病ではミエロペルオキシダーゼ染色で多くが陽性ですが、陰性になることもあります。

その場合でもエステラーゼ染色, CD11c, CD14, CD64, lysozymeのうち2つ以上陽性であれば急性骨髄性白血病です。

どちらも満たさないときは急性骨髄性白血病ではありません。

 

急性リンパ芽球性白血病ではほとんどの場合でTdT染色に陽性になります(下図 上)。

急性骨髄性白血病ではほとんどの場合でTdT染色は陰性ですがまれに陽性になります(下図 下)。

必ずしもTdT染色のみで急性骨髄性白血病と急性リンパ芽球性白血病を区別することはできません。

T-ALL 骨髄 病理標本 TdT染色

急性骨髄性白血病 骨髄生検 TdT染色 x200

 

WHO分類でも由来細胞の基準を上記解説のように定めています(下図)。

WHO2016 lineage assignment criteria

 

ただし急性リンパ芽球性白血病の診断を確定させるためには、以下の悪性リンパ腫などの他の血液疾患の可能性を検討する必要があります。

 

急性リンパ芽球性白血病の鑑別診断

他の血液疾患の可能性を検討し、否定的かどうか確認することを「鑑別診断」と言います。

上記記載の基準だけでは、悪性リンパ腫でも満たしてしまうことがあります。

 

例えばバーキットリンパ腫という疾患がありますが、細胞の形態だけでは急性リンパ芽球性白血病と区別が困難です。

2008年よりも前はFAB分類という診断基準を用いていました。急性リンパ芽球性白血病はL1、L2, L3などとされていましたが、実際にはL3はバーキットリンパ腫というB細胞悪性リンパ腫であり、急性リンパ芽球性白血病とは病態が異なります。

現在はFAB分類で診断を確定するということはありません。

 

バーキットリンパ腫はアフリカなどの一部の地域を除いて、非常にまれな疾患です。

バーキットリンパ腫はB細胞悪性リンパ腫なので、細胞表面に免疫グロブリンが発現します。急性リンパ芽球性白血病は細胞表面に免疫グロブリンを発現しません。

またバーキットリンパ腫ではMYC遺伝子の再構成が通常みられますが、急性リンパ芽球性白血病ではMYC遺伝子の再構成は通常ありません(数%のみ)。

 

 

似たような疾患で慢性リンパ性白血病という疾患があります。

慢性リンパ性白血病は急性リンパ芽球性白血病と名前は似ていますが、慢性リンパ性白血病もB細胞悪性リンパ腫です。病態は急性リンパ芽球性白血病とは異なりますが、どちらも骨髄や血液中に腫瘍細胞が多数みられます。

慢性リンパ性白血病はCD5が陽性となりますが、B細胞性急性リンパ芽球性白血病はCD5陰性です。

加えて慢性リンパ性白血病では多くの場合CD23が陽性になります。CD23とCD5がどちらも陽性になる異常B細胞は慢性リンパ性白血病に特徴的です。細胞表面に免疫グロブリンの発現は慢性リンパ性白血病では弱めです。

 

 

さらに似たような疾患でB細胞性前リンパ球性白血病という疾患があります。非常にまれな疾患ですが、骨髄や血液中に腫瘍細胞が多数みられます。B細胞悪性リンパ腫の一種です。

B細胞性前リンパ球性白血病では細胞表面に免疫グロブリンが強く発現します。急性リンパ芽球性白血病は細胞表面に免疫グロブリンを発現しません。

 

 

成人T細胞白血病・リンパ腫(ATLL)という疾患があります。T細胞悪性リンパ腫です。

human T-cell leukemia virus type-I(HTLV-1)というウイルスによって引き起こされます。日本の九州地方に多く、日本人によって提唱された疾患です。

急性リンパ芽球性白血病と同様に成人T細胞白血病・リンパ腫でも骨髄や血液中に腫瘍細胞が多数みられることが多いです。

成人T細胞白血病・リンパ腫ではHTLV-1に感染している症例で発症します。

 

 

急性リンパ芽球性白血病は悪性リンパ腫と異なり、多くの場合でTdT染色に陽性となります。しかしTdTが陰性の症例もありますので、TdTのみに診断を依存することはできません。

 

急性リンパ芽球性白血病とリンパ芽球性リンパ腫の区別

リンパ芽球性リンパ腫(Lymphoblastic lymphoma, LBL)という概念があります。

リンパ芽球性リンパ腫は急性リンパ芽球性白血病と同様の悪性細胞が増殖する疾患ですが、骨髄検査で骨髄に白血病細胞が20%未満です。そのかわりに体のどこかに悪性細胞の腫瘤を形成しています。

急性リンパ芽球性白血病でも腫瘤を形成することはしばしばあります。そもそもこの悪性腫瘍は腫瘤をどこにでも形成しますので、同じ悪性細胞による腫瘍である急性リンパ芽球性白血病とリンパ芽球性リンパ腫を区別することにあまり医学的な意味はありません。

診断技術の向上によりこれらのことがわかってきましたが、それまでの歴史的な経緯から区別しています。

2016年のWHO分類では、どちらも「リンパ芽球性白血病/リンパ腫」としています(下図)。

2016 WHO分類 リンパ芽球性白血病 リンパ腫

B-リンパ芽球性白血病/リンパ腫T-リンパ芽球性白血病/リンパ腫の分類の下に多数の亜分類がありますが、この亜分類は改訂の度によく変更されます。

 

急性リンパ芽球性白血病とリンパ芽球性リンパ腫の治療も、同様の治療になります。

リンパ芽球性白血病/リンパ腫であったとしても治療方法が異なるのは、B細胞性かT細胞性か、BCR-ABLという遺伝子異常を伴っているか、予後不良因子の有無、などによる場合です。

診断時の骨髄検査では染色体・遺伝子検査を提出していますが、これは鑑別診断のためだけでなく、その結果によって治療方法や予後が異なってくる可能性があるからです。

例えばBCR-ABLの遺伝子異常(フィラデルフィア染色体異常)がある場合は、その他のリンパ芽球性白血病/リンパ腫と治療方法は大きく異なります。特効薬と呼べるものが存在するためです。

したがって治療を開始するまでに診断だけでなく、B細胞性かT細胞性か、BCR-ABLという遺伝子異常を伴っているか、予後不良因子の有無まで必ず確認しておく必要があります。

 

次項では、急性リンパ芽球性白血病・リンパ芽球性リンパ腫の染色体や遺伝子の異常と予後因子について解説します。

成人急性リンパ芽球性白血病 染色体異常 頻度
急性リンパ芽球性白血病(ALL)の染色体異常、予後、リスク分類

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まとめ 急性リンパ芽球性白血病とリンパ芽球性リンパ腫の診断基準と鑑別診断

急性リンパ芽球性白血病の診断は2016年改訂WHO分類にしたがって行い、骨髄に白血病細胞が20%以上存在し、それらがBもしくはT細胞性の急性リンパ芽球性白血病細胞であることを確認します。

● 同時に悪性リンパ腫などの可能性の有無について「鑑別診断」を行い、他の疾患の可能性が低いことを確認することが重要です。

● 急性リンパ芽球性白血病とリンパ芽球性リンパ腫の区別にはあまり意義がなくなっていますが、2016年改訂WHO分類では、どちらも「リンパ芽球性白血病/リンパ腫」としてまとめられています。

参考文献

Arber DA, Orazi A, Hasserjian R, et al.
The 2016 revision to the World Health Organization classification of myeloid neoplasms and acute leukemia.
Blood. 2016 May 19;127(20):2391-405.

 

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