急性リンパ芽球性白血病(ALL)の維持療法と経過観察

2020-06-20

同種移植5年無再発生存者のその後の生存

 

急性リンパ芽球性白血病(ALL)・リンパ芽球性リンパ腫(LBL)の化学療法や同種造血幹細胞移植を終えたら、維持療法・経過観察となります。

本項では、地固め化学療法後の維持療法同種造血幹細胞移植後維持療法とその有効性、治療終了後の経過観察について解説します。

同種移植をしないときは維持療法を行います。同種移植後はイマチニブなどを使用するときがありますが、抗がん剤による維持療法は行いません。

維持療法を行う場合は年単位の期間になります。本項でも文献やガイドラインを参照にしつつ解説します。

 

急性リンパ芽球性白血病の初回化学療法後の維持療法

急性リンパ芽球性白血病(ALL)の初回化学療法で移植をせずに化学療法を継続して行った場合は、地固め化学療法を終えたら維持療法を行います。

急性リンパ芽球性白血病の維持療法は各治療方法によって異なります。例えばHyper-CVAD療法であればPOMP療法を2年間行います。

 

成人の急性リンパ芽球性白血病に対する維持療法の有効性はランダム化試験に基づいた有効性が証明されているわけではありません。

1975年に小児では治療を継続することで寛解を維持している期間が長くなることがランダム化試験で指摘されていました(Cancer. 1975 Aug;36(2):341-52)。

 

1991年に急性リンパ芽球性白血病に対するダウノルビシンとミトキサントロンの効果を比較するランダム化臨床試験の結果がでました。この臨床試験は早期中止になっています(Leukemia. 1991 May;5(5):425-31)。

この臨床試験はこれ以前のCALGBの臨床試験と異なり1年以上の維持療法を両群とも行わない試験でした。そして両群とも寛解を維持している期間が明らかに以前の臨床試験よりも短く、臨床試験は早期中止となりました。

ダウノルビシンとミトキサントロンの効果はどちらが良いかははっきりしませんでした。

これ以降、成人の急性リンパ芽球性白血病の臨床試験では維持療法が行われつづけます。

 

維持療法の必要な期間についても、はっきりしていません。

1996年に小児の急性リンパ芽球性白血病について、メタ解析の結果が報告されています(Lancet. 1996 Jun 29;347(9018):1783-8).

維持療法の期間が3年もしくは2年で比較しています。

再発率や生存率は維持療法の期間が2年でも3年でも有意な差はありませんでしたが、強力化学療法(強化療法)があると有意に生存率は上昇しました

 

維持療法や維持療法中の強力化学療法(強化療法)については、各治療方法によって異なりますが、期間は2年間行われます。

フィラデルフィア染色体陰性の急性リンパ芽球性白血病の場合は、POMP療法といってメルカプトプリン、ビンクリスチン、メソトレキセート、プレドニゾンを用いた維持療法が多いです。途中に強化療法も入ります。

(R-)Hyper-CVAD療法での維持療法は「急性リンパ芽球性白血病(ALL)に対するR-Hyper-CVAD療法の実際と注意点」を、GRAALL-2005(/R)療法での維持療法は「急性リンパ芽球性白血病に対するGRAALL-2005療法の実際と注意点(前半)」「急性リンパ芽球性白血病に対するGRAALL-2005療法の実際と注意点(後半)」を、ご覧ください。

 

フィラデルフィア染色体陽性の急性リンパ芽球性白血病の場合は、チロシンキナーゼ阻害薬を含む維持療法を2年間は行います。測定可能残存病変が残存している場合は2年以降も継続したほうがよいでしょう。

GRAAPH-2005療法での維持療法は「急性リンパ芽球性白血病に対するGRAAPH-2005療法の実際と注意点(前半)」「急性リンパ芽球性白血病に対するGRAAPH-2005療法の実際と注意点(後半)」をご覧ください。

 

急性リンパ芽球性白血病の同種造血幹細胞移植後の維持療法

同種造血幹細胞移植後は、POMP療法などの抗がん剤を用いた維持療法は行いません。抗がん剤治療による有害事象も発生しやすいです。

フィラデルフィア染色体陽性の急性リンパ芽球性白血病に対する同種造血幹細胞移植後のチロシンキナーゼ阻害薬による維持療法については、有害事象が比較的少なく、いくつかの臨床試験で検討されています。

 

フレッドハッチンソンがん研究センターで少数例に試験的に行った前向き臨床試験では、同種造血幹細胞移植で生着後から約1年間イマチニブの内服を行いました(Blood. 2007 Apr 1;109(7):2791-3)。

消化器症状が比較的多くみられましたが、安全に投与可能とされました。

 

2013年にランダム化臨床試験の結果が出版されました(Leukemia. 2013 Jun;27(6):1254-62).

同種造血幹細胞移植後に、予防的にイマチニブを内服する群測定可能残存病変が出現してからイマチニブを内服する群にランダム化して比較しました。

どちらの群もイマチニブの内服期間は、測定可能残存病変が1年以上陰性を維持できたことが確認できるまででした。

実際にイマチニブの投与を行った症例は、予防的投与群で92%, 測定可能残存病変出現後投与群で48%でした。測定可能残存病変が出現後に内服する群は約半数が内服を必要としましたが、残り半数はそうではありませんでした。

実際に内服して途中で有害事象などにより中止する割合は、予防的投与群で67%, 測定可能残存病変出現後投与群で71%でした。消化器症状が多くみられました。

無再発生存率は両群であまり変わりありませんでした(下図 p=0.89)。

急性リンパ芽球性白血病 移植後イマチニブ維持療法 予防 vs 先制, DFS

全生存率も両群であまり変わりありませんでした(下図 p=0.84)。

急性リンパ芽球性白血病 移植後イマチニブ維持療法 予防 vs 先制, OS

 

イマチニブは比較的安全に投与可能な薬剤ですが、同種造血幹細胞移植後となるとそれでも継続が困難な場合もあります。

高い有害事象の発生率から、同種造血幹細胞移植後のチロシンキナーゼ阻害薬による維持療法は、測定可能残存病変が陽性になったときでもよいでしょう。

測定可能残存病変が陰性を維持できている場合に、チロシンキナーゼ阻害薬による維持療法が必要かどうかについてははっきりしていません

 

2020年12月時点でのアメリカのNCCNガイドライン(NCCN Guidelines)では、フィラデルフィア染色体陰性の急性リンパ芽球性白血病に対して地固め化学療法後の維持療法を推奨していますが、同種造血幹細胞移植後の維持療法を推奨はしていません。

一方で、フィラデルフィア染色体陽性の急性リンパ芽球性白血病に対して地固め化学療法後の維持療法を推奨しています。同種造血幹細胞移植後も維持療法の検討をすることを推奨しています。

 

日本血液学会の2018年造血器腫瘍診療ガイドラインでは、フィラデルフィア染色体陰性の急性リンパ芽球性白血病に対して地固め化学療法後の維持療法を推奨しています。

フィラデルフィア染色体陽性の急性リンパ芽球性白血病に対して地固め化学療法後の維持療法を推奨しています。

同種移植後の維持療法については特に記載はなく推奨されてはいません。

 

急性リンパ芽球性白血病の治療終了後の通院経過観察

すべての治療を完遂したらそのまま経過観察となります。

通院時には採血検査診察があります。測定可能残存病変を調べるための骨髄検査を行う場合もあります。

化学療法のみで治療している場合は、再発する場合は2年以内(維持療法中の再発)が80%をこえます。再発する症例で維持療法終了後再発は比較的少ないと言えます。

 

同種造血幹細胞移植後であったとしても、移植後2年以上してから再発することもあります。

移植後2年以上生存した症例の10年以上の長期経過をみた後ろ向き研究が2007年に出版されています(Blood. 2007 Nov 15;110(10):3784-92).

2年時点で完全寛解を維持している症例では、15年生存率はおよそ80%でしたが、その後の主な生存率低下の原因は、再発が最も多く、つぎに慢性GVHD感染症がつづきます。

比較的高い生存率ですが、同種造血幹細胞移植後の場合は、GVHDの発生やその治療で副腎皮質ステロイドを用いることもあり、糖尿病、骨粗鬆症、感染症のリスクが明らかに高くなります(Leukemia. 2010 Dec;24(12):2039-47)。

同種造血幹細胞移植後はそれらについても通院時に確認していきます。

 

化学療法のみや同種造血幹細胞移植後のどちらであっても、長期生存する可能性は十分にあります。長期生存症例では、治療による臓器障害などの合併症が問題になりえます。特に同種移植後は化学療法のみで治療した時よりも合併症が多いです。

たとえ5年間無再発で生存した症例でも、その後の生存率は一般の人よりも少し低くなります(下図, J Clin Oncol. 2010 Feb 20;28(6):1011-6).

同種移植5年無再発生存者のその後の生存

治療後は長期的に通院が必要になると考えてください。

 

もしも採血や症状などで再発を疑った場合は、骨髄検査を行います。

急性リンパ芽球性白血病が再発するとき、90%の症例で骨髄に病変が見つかります。このとき、ヘマトゴーンという正常のリンパ前駆細胞がみられることがありますので、フローサイトメトリ検査なども同時に行います。

約10%は骨髄に病変がなく中枢神経系浸潤や腫瘤形成で病変が見つかります。症状に応じて腰椎穿刺CT検査などを行います。同種移植後ではこのような場合が比較的多いです。

 

まとめ 急性リンパ芽球性白血病の維持療法と経過観察

● 急性リンパ芽球性白血病の地固め化学療法を終えたら維持療法を行います。維持療法の有効性はランダム化試験で有効性が証明されているわけではありません。維持療法の期間もはっきりしていません。維持療法や維持療法中の強力化学療法(強化療法)は各治療方法によって異なります

同種造血幹細胞移植後は抗がん剤を用いた維持療法は行いません。同種造血幹細胞移植後のチロシンキナーゼ阻害薬による維持療法は有害事象から測定可能残存病変が出現してからでもよいでしょう。測定可能残存病変が陰性を維持できている場合にチロシンキナーゼ阻害薬による維持療法が必要かははっきりしていません。

● すべての治療を完遂したらそのまま経過観察となります。化学療法のみや同種造血幹細胞移植後のどちらであっても長期生存する可能性は十分にあります長期的な通院が必要になります。

参考文献

D Lonsdale, E A Gehan, D J Fernbach, et al.
Interrupted vs. Continued Maintenance Therapy in Childhood Acute Leukemia
Cancer. 1975 Aug;36(2):341-52.

Cuttner J, Mick R, Budman DR, et al.
Phase III trial of brief intensive treatment of adult acute lymphocytic leukemia comparing daunorubicin and mitoxantrone: a CALGB Study.
Leukemia. 1991 May;5(5):425-31.

Childhood ALL Collaborative Group
Duration and intensity of maintenance chemotherapy in acute lymphoblastic leukaemia: overview of 42 trials involving 12 000 randomised children.
Lancet. 1996 Jun 29;347(9018):1783-8.

Paul A Carpenter, David S Snyder, Mary E D Flowers, et al.
Prophylactic Administration of Imatinib After Hematopoietic Cell Transplantation for High-Risk Philadelphia Chromosome-Positive Leukemia
Blood. 2007 Apr 1;109(7):2791-3.

H Pfeifer, B Wassmann, W Bethge, et al.
Randomized Comparison of Prophylactic and Minimal Residual Disease-Triggered Imatinib After Allogeneic Stem Cell Transplantation for BCR-ABL1-positive Acute Lymphoblastic Leukemia
Leukemia. 2013 Jun;27(6):1254-62.

Bhatia S, Francisco L, Carter A, et al.
Late mortality after allogeneic hematopoietic cell transplantation and functional status of long-term survivors: report from the Bone Marrow Transplant Survivor Study.
Blood. 2007 Nov 15;110(10):3784-92.

Baker KS, Ness KK, Weisdorf D, et al.
Late effects in survivors of acute leukemia treated with hematopoietic cell transplantation: a report from the Bone Marrow Transplant Survivor Study.
Leukemia. 2010 Dec;24(12):2039-47.

Martin PJ, Counts GW Jr, Appelbaum FR, et al.
Life expectancy in patients surviving more than 5 years after hematopoietic cell transplantation.
J Clin Oncol. 2010 Feb 20;28(6):1011-6.

NCCNガイドライン(NCCN Guidelines)

2018年造血器腫瘍診療ガイドライン

 

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