再発・難治性急性リンパ芽球性白血病(ALL) 新規抗体薬治療の実際の投与と注意点

2020-06-25

イノツズマブ・R-mini-Hyper-CVD 投与スケジュール 奇数

 

急性リンパ芽球性白血病(ALL)・リンパ芽球性リンパ腫(LBL)の初回再発に用いる新規薬剤は複数あります。

フィラデルフィア染色体陰性の症例では、イノツズマブ オゾガマイシンブリナツモマブを用いた治療を行い、その後同種移植ドナーリンパ球輸注などを行います。

可能であればこの時はR-mini-Hyper-CVD療法と併用することをすすめます。

急性リンパ芽球性白血病再発の治療については「急性リンパ芽球性白血病(ALL)の再発・難治性症例の予後と新規治療」をご覧ください。

本項では、イノツズマブブリナツモマブの実際の投与スケジュールや有害事象、注意点などについて解説します。R-mini-Hyper-CVD療法と併用する場合についても記載しています。

本項で解説する投与スケジュールや有害事象は実際の臨床試験に基づいています。一般に臨床試験に参加する症例は実際の症例よりもやや全身状態がよい傾向にあります。全身状態が悪いと有害事象の発生率が上がります。開始時点の状態にも注意して行います。

 

再発・難治性急性リンパ芽球性白血病に対するイノツズマブ オゾガマイシンの投与

イノツズマブ オゾガマイシン(商品名:ベスポンサ)は、CD22に対する抗体薬に抗腫瘍効果を持つ薬剤をくっつけた薬です。CD22が陽性の急性リンパ芽球性白血病症例に用います(N Engl J Med. 2016 Aug 25;375(8):740-53, Cancer. 2019 Jul 15;125(14):2474-2487)。

イノツズマブ オゾガマイシンを単独投与する場合は、以下のようなスケジュールになります(下図)。

ベスポンサ 投与スケジュール

イノツズマブ オゾガマイシンを開始する前に、血液中の急性リンパ芽球性白血病細胞が10000/μL以上ある場合は、先にヒドロキシカルバミド(商品名:ハイドレア)副腎皮質ステロイド(とビンクリスチン)を用いて血液中の急性リンパ芽球性白血病細胞の数を10000/μL未満に減らしてから、イノツズマブ オゾガマイシンを投与します。

ヒドロキシカルバミドは抗腫瘍薬の一種です。

ヒドロキシカルバミドと副腎皮質ステロイドの投与だけでも腫瘍崩壊症候群をおこしますので、「大量輸液」尿酸を下げる薬剤もあらかじめヒドロキシカルバミドと副腎皮質ステロイドの投与前から開始しておきます。

十分に予防しておけば、腫瘍崩壊症候群をおこすことはまれです。

イノツズマブ オゾガマイシンを開始するときも腫瘍崩壊症候群予防を行います。

 

イノツズマブ オゾガマイシンの1サイクル目は21日間です。1週間に1回投与します。

イノツズマブ オゾガマイシンそのものの投与時間は1時間程度です。

イノツズマブ オゾガマイシンを投与する前に、アセトアミノフェン抗ヒスタミン薬を内服し、「輸注反応」予防とします。

それでも発熱などの「輸注反応」を起こしたら、一時停止し症状が落ち着いてから再開します。イノツズマブでは重症な輸注反応はまずありません。

 

2サイクル目からは休薬期間がのびて、1サイクル28日間となります。

骨髄検査と採血の結果によって投与量が変わるため、骨髄中の急性リンパ芽球性白血病細胞が5%未満になるまでは、骨髄検査が1サイクルごとに行われます。

3サイクルが終了するまでの時点で効果がみられなければイノツズマブの投与は終了します

 

同種造血幹細胞移植を予定している場合は、投与開始前から準備を開始します。

イノツズマブが2サイクル終了した時点で同種造血幹細胞移植です。準備に時間がかかっている場合は3サイクルまで投与します。

同種造血幹細胞移植を予定していない場合は、6サイクルまで投与します。

 

肝障害が規定以上あるとイノツズマブの投与はできません。

イノツズマブの投与により肝機能障害が発生することがあります。採血でビリルビンAST, ALTの値を確認します。

これらの値が悪化すると、一時休薬となります。

イノツズマブの投与により肝類洞閉塞症候群(SOS)という重症な肝障害がおこるときがあります。ビリルビン値の増加に加えて体重増加腹水の出現などが肝障害によって発生することを言います。

肝類洞閉塞症候群(SOS)と診断されたらイノツズマブの投与はその時点で終了し、再投与することはできません。

10~15%の症例で肝類洞閉塞症候群(SOS)となりますので、あらかじめ予防内服を行うことがあります。

 

血球数が低下することがあります。各サイクルで血球数を確認しますが、低すぎると開始を延期します。

感染症もおこります。好中球数が少ない状態での感染症は生命に関わることがあります。好中球数が少ない状態での発熱を「発熱性好中球減少症」といいます。イノツズマブの投与ではおよそ12%にみられます。

感染症の予防内服も行っておくことを推奨します。

 

イノツズマブの投与では心電図検査が各サイクルで行われます。まれに「QT延長」という心電図異常がみられるためです。悪化すると致命的な不整脈をおこすときがありますので、定期的な確認が必要です。

 

イノツズマブで治療している期間でも、急性リンパ芽球性白血病が悪化することもありますので、奏効については慎重に確認しながら治療を行っていきます。

 

再発・難治性急性リンパ芽球性白血病に対するブリナツモマブの投与

ブリナツモマブ(商品名:ビーリンサイト)はCD19を発現する細胞とCD3陽性のT細胞を接続する二重特異性抗体製剤(BiTE)と呼ばれる薬です。

ブリナツモマブを投与することによって体内のT細胞CD19陽性の急性リンパ芽球性白血病細胞を攻撃することができます(N Engl J Med. 2017 Mar 2;376(9):836-847)。

ブリナツモマブを単独投与する場合は、以下のようなスケジュールになります(下図)。

ビーリンサイト 投与スケジュール

ブリナツモマブを開始する前に、骨髄中の急性リンパ芽球性白血病細胞が50%以上、もしくは血液中の急性リンパ芽球性白血病細胞が15000/μL以上ある場合は、先に副腎皮質ステロイドを用いて血液中の急性リンパ芽球性白血病細胞の数を減らしてから、ブリナツモマブを投与します。

副腎皮質ステロイドの投与だけでも腫瘍崩壊症候群をおこしますので、「大量輸液」尿酸を下げる薬剤もあらかじめ開始しておきます。

十分に予防しておけば、腫瘍崩壊症候群をおこすことはまれです。

ブリナツモマブを開始するときも「大量輸液」で腫瘍崩壊症候群予防を行います。

 

最初の5サイクルまでは1サイクル42日間です。

初回投与開始前に副腎皮質ステロイドの投与があります。1サイクル目の最初の1週間は少量から開始し、特に問題がなければ2週目から通常量になります。通常量になる前にも副腎皮質ステロイドの投与があります。

ブリナツモマブにより重症な「輸注反応」を起こすことはまれ(数%)です。

 

ブリナツモマブは28日間の持続点滴です。4週間ずっと1日中点滴が続きます

6サイクル目からは84日間のサイクルになります。28日間の持続点滴のあと、56日間の休薬期間が入ります(下図)。

ブリナツモマブは最大9サイクルまで行います。

同種造血幹細胞移植を予定している場合は、ブリナツモマブ開始前から準備をして、数サイクルの後に準備ができ次第、同種移植を行います。

 

肝機能障害が強い場合は、ブリナツモマブの投与はできません。

ブリナツモマブにより肝機能障害を起こすことがあります。採血でビリルビンAST, ALTが大きく上昇した場合は休薬です。およそ10%の症例で肝機能障害により一時休薬になります。

 

ブリナツモマブはT細胞を活性化させ急な炎症反応を起こし、発熱や血圧低下、臓器障害などを起こすことがあります。「サイトカイン放出症候群」といいます。

ブリナツモマブによるサイトカイン放出症候群は多くの場合は一時的です。重症化する可能性は低い(5%)です。

サイトカイン放出症候群がみられたら、ブリナツモマブを一時中止して副腎皮質ステロイドを投与します。落ち着いたら少量から再開し、1週間特に問題なく経過すれば通常量に増量します。

重篤なサイトカイン放出症候群によりブリナツモマブ投与が継続できなくなることはまれです。

 

ブリナツモマブにより神経毒性が生じることがあります。重症な神経毒性は10%くらいにみられますが、ブリナツモマブそのものによる影響とはあまり言えません。臨床試験では対象薬である抗がん剤化学療法でも同じくらいの発生頻度でした。

神経毒性はサイトカイン放出症候群と関連していることもあります。

重症な神経毒性がみられたら、ブリナツモマブを3日以上休薬します。神経毒性が改善したら再開可能です。

重症な神経毒性やけいれんが起きた場合は、ブリナツモマブ投与はもうできません。

 

臨床試験ではブリナツモマブ治療期間中にも感染症がおよそ35%にみられています。

好中球数が少ない状態での感染症は生命に関わることがあります(発熱性好中球減少症)。

ブリナツモマブによる治療でも感染症の予防内服も行っておくことを推奨します。

 

ブリナツモマブ投与中は、数日に1回点滴の交換が行われます。

この交換の時に点滴が早まって入ってしまうと、その瞬間「過量投与」になってしまいます。ブリナツモマブは非常にゆっくり投与する薬剤ですので、一瞬の過量投与でも有害事象を引き起こす可能性があります。交換のときは注意して確認してください。

 

ブリナツモマブで治療している期間でも、急性リンパ芽球性白血病が悪化することもありますので、奏効については慎重に確認しながら治療を行っていきます。

 

イノツズマブ・R-mini-Hyper-CVD・ブリナツモマブによる治療

イノツズマブ オゾガマイシンやブリナツモマブを抗がん剤化学療法と併用する場合は、R-mini-Hyper-CVD療法を推奨します(Cancer. 2018 Oct 15;124(20):4044-4055)。

mini-Hyper-CVD療法Hyper-CVAD療法を大きく減量させた減弱化学療法です。

MDアンダーソンがんセンターではいくつか投与方法を改訂していますが、イノツズマブにR-mini-Hyper-CVDを併用する場合は、以下のようなスケジュールで投与します(1サイクル目3サイクル目)。

イノツズマブ・R-mini-Hyper-CVD 投与スケジュール 奇数

シクロホスファミドは1日2回投与で3日間投与します。Hyper-CVADの半分の投与量です。

ビンクリスチンは初日と、8日目に投与します。投与量はHyper-CVADと同じです。

デキサメタゾンは最初の4日間と、11日目から14日目の4日間の投与です。Hyper-CVADの半分の投与量です。

イノツズマブは2日目と8日目に投与します。イノツズマブ単独で投与する場合よりも投与量は少なくなります。

CD20が陽性の症例では、リツキシマブも使用します。初日と11日目です。R-Hyper-CVADと同じ投与量です。

中枢神経浸潤予防の髄腔内投与もあります。2日目にメソトレキセートを、7日目にシタラビンを髄腔内投与します。

中枢神経系に浸潤している場合は、髄腔内投与は週2回を細胞診で検出されなくなるまで継続し、その後は週1回を4回行い、中枢神経系予防投与と同じスケジュールに入ります。

mini-Hyper-CVD療法では毒性の強いアントラサイクリン系薬剤は使用しません。

 

R-mini-Hyper-CVD療法は28日サイクルです。Hyper-CVADよりも1週間休薬期間が長くなります。

主な有害事象は上記のイノツズマブの投与と同様です。腫瘍崩壊症候群・輸注反応・肝障害・感染症・心電図異常などに注意が必要です。

イノツズマブとR-mini-Hyper-CVD療法の併用では、肝類洞閉塞症候群(SOS)の予防として、ウルソデオキシコール酸の内服を初日から行います。

同種造血幹細胞移植などを予定している場合は、投与開始前から準備を開始します。数サイクル終了した時点で、同種造血幹細胞移植です。

 

イノツズマブにR-mini-Hyper-CVD療法併用の2サイクル目4サイクル目は以下のようなスケジュールになります。

イノツズマブ・R-mini-Hyper-CVD 投与スケジュール 偶数

メソトレキセートは初日に投与します。かなり投与量は減量となり、Hyper-CVADの25%の投与量です。

シタラビンは2日目と3日目に1日2回投与します。シタラビンもかなり減量し、Hyper-CVADの1/6の投与量です。

イノツズマブは2日目と8日目に投与します。

リツキシマブは1日目と8日目に投与します。

中枢神経系浸潤予防の髄腔内投与は、シタラビンが2日目メソトレキセートが7日目です。1サイクル目と投与の順番が逆になりますので注意してください。

 

2サイクル目、4サイクル目も、1サイクルは28日間です。

点滴メソトレキセートの投与量は多くはありませんが、大量輸液やメソトレキセート血中濃度採血、ロイコボリン投与なども行います。

シタラビンも投与量は多くありませんが、結膜炎予防の点眼も行います。

同種移植などを予定している場合は、4サイクル目終了時点までにおこないます。

予定していない場合は、このまま地固め療法として以下の5~8サイクルを行います。

 

イノツズマブにR-mini-Hyper-CVD療法併用を4サイクル後は、地固め療法としてブリナツモマブの投与を4サイクル(5~8サイクル目)行います。

ブリナツモマブの投与スケジュールは上記の投与方法とほぼ同じです。

初回サイクル(5サイクル目)の最初の4日間だけ少量投与を行い、5日目から28日目まで通常量で投与します。

以降のサイクル(6~8サイクル)では通常量で28日間投与します。

1サイクルは42日間です。

注意点も上記のブリナツモマブ投与の場合と同様ですが、腫瘍崩壊症候群予防については必要ない場合が多いです。サイトカイン放出症候群や神経毒性、感染症に注意してください。

 

8サイクルまで完遂したら、以降は維持療法になります。イノツズマブ・R-mini-Hyper-CVD・ブリナツモマブによる治療後の維持療法はPOMP療法3年間です。1サイクルは1ヶ月です。

このときのPOMP療法は以下のようになります。

ビンクリスチンをサイクル初日に投与します。最初の1年間のみです(1~12サイクル)。

プレドニゾンをサイクル初日から5日間内服します。最初の1年間のみです(1~12サイクル)。日本ではプレドニゾロンで代用します。

メルカプトプリンをサイクル初日からずっと内服します。3年間継続します。

メソトレキセートをサイクル初日から毎週内服します。3年間継続します。

POMP維持療法中も感染症を起こしやすいです。POMP療法ではST合剤などでニューモシスチス肺炎を予防します。

 

イノツズマブ・R-mini-Hyper-CVD・ブリナツモマブによる治療では、抗がん剤化学療法よりもイノツズマブブリナツモマブが治療のメインです。

いずれの薬剤も単独では奏効維持期間が短いため、急性リンパ芽球性白血病が悪化し始める前に両方使用することで治療効果を強化しています。

 

まとめ 再発・難治性急性リンパ芽球性白血病 新規抗体薬治療の実際の投与と注意点

イノツズマブ オゾガマイシン(商品名:ベスポンサ)ブリナツモマブ(商品名:ビーリンサイト)は単独でも使用されます。それぞれの投与スケジュールは全く異なります。

● イノツズマブ オゾガマイシンやブリナツモマブによる治療でも腫瘍崩壊症候群や輸注反応や感染症などに注意してください。薬剤によっては肝類洞閉塞症候群やサイトカイン放出症候群、神経毒性にも注意が必要です。

● イノツズマブ オゾガマイシンやブリナツモマブを抗がん剤化学療法と併用する場合は、R-mini-Hyper-CVD療法を推奨します。

参考文献

Kantarjian HM, DeAngelo DJ, Stelljes M, et al.
Inotuzumab Ozogamicin versus Standard Therapy for Acute Lymphoblastic Leukemia.
N Engl J Med. 2016 Aug 25;375(8):740-53.

Kantarjian HM, DeAngelo DJ, Stelljes M, et al.
Inotuzumab ozogamicin versus standard of care in relapsed or refractory acute lymphoblastic leukemia: Final report and long-term survival follow-up from the randomized, phase 3 INO-VATE study.
Cancer. 2019 Jul 15;125(14):2474-2487.

Kantarjian H, Stein A, Gökbuget N, et al.
Blinatumomab versus Chemotherapy for Advanced Acute Lymphoblastic Leukemia.
N Engl J Med. 2017 Mar 2;376(9):836-847.

Jabbour E, Sasaki K, Ravandi F, et al.
Chemoimmunotherapy with inotuzumab ozogamicin combined with mini-hyper-CVD, with or without blinatumomab, is highly effective in patients with Philadelphia chromosome-negative acute lymphoblastic leukemia in first salvage.
Cancer. 2018 Oct 15;124(20):4044-4055.

 

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