急性リンパ芽球性白血病(ALL)の治療効果判定 完全寛解と測定可能残存病変

2020-06-15

急性リンパ芽球性白血病PCR MRD 0.01% OS

 

急性リンパ芽球性白血病(ALL)リンパ芽球性リンパ腫(LBL)の初回治療をすすめていったら治療効果判定が必要になります。完全寛解は最初の治療目標になります。

本項では完全寛解の基準とその重要性について解説します。

完全寛解に到達した後は測定可能残存病変(MRD)の有無が予後にさらに影響してきます。本項では測定可能残存病変の測定方法やその重要性についてさらに解説していきます。

本項でも医学文献を参照にしつつ記載しています。完全寛解や測定可能残存病変陰性に到達すると予後はよくなります。治療の結果をみるためのとても重要な指標です。基準と重要性を理解いただき治療をすすめていきましょう。

 

急性リンパ芽球性白血病の完全寛解(CR)の基準とその重要性

急性リンパ芽球性白血病(ALL)・リンパ芽球性リンパ腫(LBL)の最初の治療目標は完全寛解 Complete Remission (CR)に到達することです

完全寛解は昔から治療目標とされてきました。判定には骨髄検査が必要で、骨髄中の急性リンパ芽球性白血病細胞の割合確認が必須項目となります。

急性リンパ芽球性白血病の場合、完全寛解の基準は統一されたものは実はありませんそれぞれの臨床試験で完全寛解の基準が少し異なります。

MDアンダーソンがんセンターの基準では、骨髄中の急性リンパ芽球性白血病細胞は5%未満であることに加えて、採血検査で十分な量の好中球数と血小板数が回復していることと、骨髄以外の病変(髄外病変)が消失していることも完全寛解の基準に含んでいます(Cancer. 2016 Dec 15;122(24):3812-3820)。

具体的な完全寛解(CR)の基準は以下のようになります。

  • 採血で好中球数が1000/μL以上
  • 採血で血小板数が100000/μL以上
  • 骨髄中の急性リンパ芽球性白血病細胞が骨髄穿刺と骨髄生検でともに5%未満
  • 骨髄以外の病変(髄外病変)がない

好中球というのは白血球の一部で、細菌感染などを防ぐ働きをします。

好中球数は白血球数に好中球割合をかけて算出しますが、好中球には桿状核球(StabもしくはBand)分葉核球(Seg)にわけて割合が出ています。

好中球数 = 白血球数 ×(Stab + Seg)

たとえば白血球数が4000/μLで、桿状核球が5%, 分葉核球が45%だったら、好中球数は2000/μLです。

 

髄外病変については、診断時に悪性細胞が腫瘤を形成していたらCT検査などで消失していることを確認します。診断時に中枢神経系浸潤があったら、それが脳脊髄液検査で消失していることを確認します。

急性リンパ芽球性白血病の完全寛解の基準には末梢血中の急性リンパ芽球性白血病細胞の割合は含まれていません。

完全寛解の基準のなかで、好中球数1000以上もしくは血小板数100000以上のいずれかを満たさない場合は「血球数回復が不完全な完全寛解(CRi)」となります。

初回化学療法ではCRもしくはCRiに到達することが最初の目標です。

 

初回治療で完全寛解に到達しない場合は極めて予後不良です。

大規模前向き臨床試験で、フィラデルフィア染色体異常陰性の急性リンパ芽球性白血病の初回化学療法で完全寛解に到達した症例と到達していない症例の予後を比較した結果が2005年に報告されています(Blood. 2005 Dec 1;106(12):3760-7)

CRに到達した症例の5年生存率は45%であったのに対して、CRに到達しない症例の5年生存率は5%と、明らかに予後不良でした(下図).

Ph negative ALL, CR vs not CR, OS

CR, CRiに到達することが極めて重要と言えます。

 

まれにヘマトゴーンという正常なBリンパ球の前駆細胞が検出されるときがあります(Blood. 2001 Oct 15;98(8):2498-507)。

塗抹標本などでみると急性リンパ芽球性白血病細胞と区別はつきません。5%を超えるときもあります。

ヘマトゴーンと悪性細胞の区別は、骨髄検査のときにフローサイトメトリ検査PCR検査も併用しておけば通常は間違うことはありません。

 

フィラデルフィア染色体陰性の急性リンパ芽球性白血病の測定可能残存病変

同じ完全寛解の状態でも、骨髄中に測定可能残存病変(Measurable residual disease, MRD)がある状態とない状態では予後が変わってきます。奏効は深ければ深いほど予後はよいです。

測定可能残存病変は微小残存病変と以前は言われていましたが、測定可能残存病変のほうが意味をより正確にあらわしているとされ、近年では微小残存病変という呼び方は少なくなってきています。

 

高感度のフローサイトメトリを用いて、測定可能残存病変を測定することが可能です。

成人の急性リンパ芽球性白血病に対する前向き臨床試験で、高感度フローサイトメトリによる測定可能残存病変(MRD)の測定が行われました(Br J Haematol. 2008 Jun;142(2):227-37).

寛解導入療法後に完全寛解となった症例を対象に高感度フローサイトメトリをおこない、測定可能残存病変(MRD)が0.1%以上と0.1%未満の症例を比較しました。

結果、MRDが0.1%以上の症例では0.1%未満の症例に比べて統計学的にも明らかに再発率が高い結果でした. 3年累積再発率は0.1%以上で81%, 0.1%未満で26%でした(下図, p<0.0001)。

急性リンパ芽球性白血病 MRD 累積再発率

同様に3年無再発生存率も0.1%以上では17%、0.1%未満では61%と、MRDが少ないほうが明らかに無再発生存率が良い結果でした(p=0.0002).

 

一般に測定可能残存病変の検査は、感度が高いほど正確です。

2016年にMDアンダーソンがんセンターから高感度フローサイトメトリの結果が出版されました(Br J Haematol. 2016 Feb;172(3):392-400)。

急性リンパ芽球性白血病でHyper-CVAD療法を行い完全寛解に到達した症例を対象に、高感度フローサイトメトリで測定可能残存病変(MRD)を0.01%のレベルで検出される症例とされない症例を比較しました。

MRDが0.01%未満の症例は0.01%以上の症例と比較して、統計学的にも明らかに無再発生存率がよい結果でした(下図, p=0.004)。

急性リンパ芽球性白血病 MRD 0.01% DFS

全生存率についても同様にMRDが0.01%未満の症例は0.01%以上の症例と比較して、統計学的にも明らかに良好でした(下図, p=0.03)。

急性リンパ芽球性白血病 MRD 0.01% OS

高感度フローサイトメトリ検査による深い奏効が確認できれば、再発率が低く生存率もよいと言えます。

 

PCR検査は感度が高く、測定可能残存病変(MRD)の検査として用いられます。

急性リンパ芽球性白血病では、診断時にPCR検査可能な悪性細胞の特定の異常遺伝子配列を確認しておき、完全寛解に到達した時などにその配列をPCRで検出できるかどうか検査します。

 

2009年にPCRを用いて測定可能残存病変を調べた結果が出版されています(Blood. 2009 Apr 30;113(18):4153-62)。

治療開始後10週間時点で、PCRでMRDが0.01%未満の症例は0.01%以上の症例と比較して、無再発生存率は統計学的にも明らかに良好でした。5年無再発生存率は0.01%未満で72%、0.01%以上で14%でした(下図, p<0.0001)。

急性リンパ芽球性白血病PCR MRD 0.01% DFS

 

別の前向き臨床試験でも同様の結果が報告されています(Blood. 2012 Aug 30;120(9):1868-76).

治療開始71日と16週時点で、PCRにより測定可能残存病変の検査を行いました。

PCRでMRDが0.01%未満の症例は0.01%以上の症例と比較して、無再発生存率は統計学的にも明らかに良好でした。16週時点の結果で、5年無再発生存率は0.01%未満で67%、0.01%以上で25%でした(p<0.0001).

さらに全生存率についてもMRDが0.01%未満の症例のほうが統計学的にも明らかに良好でした。

16週時点のPCRの結果で、5年全生存率は0.01%未満で80%、0.01%以上で42%でした(下図, p<0.0001)

急性リンパ芽球性白血病PCR MRD 0.01% OS

PCRで測定可能残存病変が陰性であれば、再発率が低く生存率もよいと言えます。

 

フィラデルフィア染色体陽性の急性リンパ芽球性白血病の測定可能残存病変

フィラデルフィア染色体陽性の急性リンパ芽球性白血病・リンパ芽球性リンパ腫でも同様のことが言えますが、フィラデルフィア染色体異常のある場合は抗がん剤の奏効がやや劣るためか、タイミングが少し異なります。

 

MDアンダーソンがんセンターではチロシンキナーゼ阻害薬と化学療法(Hyper-CVAD療法)を併用して治療した症例に対して、高感度フローサイトメトリPCRによる測定可能残存病変の検査を行いました。

2013年に結果が出版されています(Blood. 2013 Aug 15;122(7):1214-21)。

完全寛解に到達した時点高感度フローサイトメトリによる測定可能残存病変の検査を行いましたが、陰性でも陽性でも生存率や再発率にはあまり影響はありませんでした。

しかしながら、3か月時点で高感度フローサイトメトリ陰性になっている症例は陽性の症例よりも統計学的にも明らかに生存率が良好でした(下図)。

Ph+ MRD FCM OS

 

2016年にはPCRによる測定可能残存病変の検査による予後について詳細に報告されています(Blood. 2016 Jul 28;128(4):504-7)。

完全寛解に到達した時点でPCRによる測定可能残存病変の検査を行いました。無再発生存率はPCRで0.1%以下に到達した症例(MMR達成)はそうでない症例よりも良好でした(下図, p=0.04)。

Ph+ MRD PCR at CR DFS

しかしながら、完全寛解に到達した時点でのPCR結果は、全生存率にはあまり影響はありませんでした(下図, p=0.11)。

Ph+ MRD PCR at CR OS

3か月時点で、PCRで測定可能残存病変が0.01%未満に到達した症例(CMR達成)は、MMRまでもしくはMMR未達成の症例よりも統計学的にも明らかに無再発生存率・全生存率ともに良好でした(下図、上 無再発生存, 下 全生存)。

Ph+ MRD PCR at 3m DFS

Ph+ MRD PCR at 3m OS

 

フィラデルフィア染色体陽性の症例では、完全寛解に到達時点よりも地固め療法をある程度行った後(治療開始3か月くらい)の測定可能残存病変が予後に関係していると言えます。

3か月時点では、PCRで0.1%ではなく0.01%未満を達成するかどうかが重要と言えます。

 

次項以降では急性リンパ芽球性白血病・リンパ芽球性リンパ腫に対する造血幹細胞移植・維持療法について解説します。

ALL HE BMB 100 4
急性リンパ芽球性白血病(ALL)に対する自家および同種造血幹細胞移植

続きを見る

同種移植5年無再発生存者のその後の生存
急性リンパ芽球性白血病(ALL)の維持療法と経過観察

続きを見る

まとめ 急性リンパ芽球性白血病の治療効果判定 完全寛解と測定可能残存病変

● 急性リンパ芽球性白血病・リンパ芽球性リンパ腫の最初の治療目標は完全寛解 (CR)に到達することです。骨髄検査などが必要です。初回治療で完全寛解に到達しない場合は極めて予後不良です。

● 同じ完全寛解の状態でも、骨髄中に測定可能残存病変がある状態とない状態では、予後が変わってきます。奏効は深ければ深いほど予後はよいです。高感度フローサイトメトリPCRで測定可能残存病変を検査します。

フィラデルフィア染色体陽性の急性リンパ芽球性白血病・リンパ芽球性リンパ腫でも同様のことが言えますが、完全寛解に到達時点よりも地固め療法をある程度行った後の測定可能残存病変がより予後に関係しています。

参考文献

Short NJ, Kantarjian HM, Sasaki K, et al.
Prognostic significance of day 14 bone marrow evaluation in adults with Philadelphia chromosome-negative acute lymphoblastic leukemia.
Cancer. 2016 Dec 15;122(24):3812-3820.

Rowe JM, Buck G, Burnett AK, et al.
Induction therapy for adults with acute lymphoblastic leukemia: results of more than 1500 patients from the international ALL trial: MRC UKALL XII/ECOG E2993.
Blood. 2005 Dec 1;106(12):3760-7.

McKenna RW, Washington LT, Aquino DB, et al.
Immunophenotypic analysis of hematogones (B-lymphocyte precursors) in 662 consecutive bone marrow specimens by 4-color flow cytometry.
Blood. 2001 Oct 15;98(8):2498-507.

Holowiecki J, Krawczyk-Kulis M, Giebel S, et al.
Status of minimal residual disease after induction predicts outcome in both standard and high-risk Ph-negative adult acute lymphoblastic leukaemia. The Polish Adult Leukemia Group ALL 4-2002 MRD Study.
Br J Haematol. 2008 Jun;142(2):227-37.

Ravandi F, Jorgensen JL, O'Brien SM, et al.
Minimal residual disease assessed by multi-parameter flow cytometry is highly prognostic in adult patients with acute lymphoblastic leukaemia.
Br J Haematol. 2016 Feb;172(3):392-400.

Bassan R, Spinelli O, Oldani E, et al.
Improved risk classification for risk-specific therapy based on the molecular study of minimal residual disease (MRD) in adult acute lymphoblastic leukemia (ALL).
Blood. 2009 Apr 30;113(18):4153-62.

Gökbuget N, Kneba M, Raff T, et al.
Adult patients with acute lymphoblastic leukemia and molecular failure display a poor prognosis and are candidates for stem cell transplantation and targeted therapies.
Blood. 2012 Aug 30;120(9):1868-76.

Ravandi F, Jorgensen JL, Thomas DA, et al.
Detection of MRD may predict the outcome of patients with Philadelphia chromosome-positive ALL treated with tyrosine kinase inhibitors plus chemotherapy.
Blood. 2013 Aug 15;122(7):1214-21.

Short NJ, Jabbour E, Sasaki K, et al.
Impact of complete molecular response on survival in patients with Philadelphia chromosome-positive acute lymphoblastic leukemia.
Blood. 2016 Jul 28;128(4):504-7.

 

「急性リンパ芽球性白血病・リンパ芽球性リンパ腫 診断と治療の概要」に戻る

 

© 2021 Cwiz Hematology