急性リンパ芽球性白血病(ALL)の症状、血液検査、疫学

2020-05-19

急性リンパ芽球性白血病(ALL) Giemsa x400 1

 

急性リンパ芽球性白血病(Acute lymphoblastic leukemia, ALL)は、急性リンパ性白血病(Acute lymphocytic leukemia)とも呼ばれる血液の悪性疾患です。

急性リンパ芽球性白血病は発生してから数週間の単位で症状が徐々に進行します。進行が比較的はやいため、「急性」とされます。

本項では、急性リンパ芽球性白血病の症状について解説します。病院を受診するとその症状から血液検査などへ進みますが、どのようなときに急性リンパ芽球性白血病が疑われるのかについても解説します。

急性リンパ芽球性白血病の発生頻度などの疫学についても記載します。

急に「血液疾患かもしれません」と言われて大きな病院を受診するように指示されることもしばしばあります。この唐突さが「急性」の特徴とも言えます。

本項では国際研究を中心とした医学文献を参照しつつ解説しています。

 

急性リンパ芽球性白血病の症状

急性リンパ芽球性白血病(ALL)の症状として、比較的多く生じやすいものは、労作時の疲れやすさ出血あざができやすいといった、赤血球数や血小板数の低下による症状です。

また骨の中で急性リンパ芽球性白血病細胞が急増するため、骨の痛みが生じることがあります。

急性リンパ芽球性白血病でも悪性リンパ腫のように、リンパ節腫大・発熱・体重減少・夜間の大量発汗をおこすことがあります。

しかしながら、これらの症状は血液疾患の可能性を考えるものではありますが、急性リンパ芽球性白血病にだけ特別起こりやすいというわけではありません。

したがって、これらの症状がでたときは採血などの検査を行う必要があります。

 

急性リンパ芽球性白血病の診断時に発熱を伴う症例はおよそ50%です(Blood. 1995 Apr 15;85(8):2025-37)。

首や足の付け根に「しこり」があるといったリンパ節腫大を伴っている症例は、およそ20%~40%です(Blood. 1995 Apr 15;85(8):2025-37, J Clin Oncol. 2000 Feb;18(3):547-61)。

リンパ節腫大は高齢者よりも若年者のほうが2倍くらい多く発生しやすいです(Br J Haematol. 2012 May;157(4):463-71).

 

こういった症状はあまり重篤でない場合も多く、近医に受診して採血などの検査を行って初めて急性リンパ芽球性白血病が疑われます。検査をしなければ通常の風邪と区別がつかないこともあり得ます。

採血を行うと以下に記載するように、通常の風邪ではあり得ない明らかに血液疾患を疑わせる異常がみられます。

 

急性リンパ芽球性白血病の血液検査

急性リンパ芽球性白血病の症例では、採血を行うとほとんどの場合で血球の値に異常がみられます

白血球数の正常値はおよそ4000~8000/μLですが、急性リンパ芽球性白血病では約20~30%の症例で50000/μLを超えます(Br J Haematol. 2012 May;157(4):463-71, Blood. 2010 Jan 14;115(2):206-14, Blood. 2003 Sep 15;102(6):2014-20)。

10000/μLを超える症例も含めると50%以上になります(Blood. 2010 Jan 14;115(2):206-14).

逆に白血球数が明らかに少なすぎる症例も約20%でみられます(J Clin Oncol. 2000 Feb;18(3):547-61)。

この白血球数には、血液中の急性リンパ芽球性白血病細胞も含みます

急性リンパ芽球性白血病細胞は正常の白血球と全くことなるため、「白血球分画(血液像)」という血液中の白血球を顕微鏡で見て割合を出す検査を行うと、「芽球」・「分類不能細胞」・「異常リンパ球」などとして分類されます。

「芽球」・「分類不能細胞」・「異常リンパ球」は正常な血液検査ではまずみられません。下の写真のような細胞です。

急性リンパ芽球性白血病(ALL) Giemsa x400 1

診断時に赤血球数が少なくなっている(貧血になっている)症例では労作時に疲れやすくなりますが、採血では症状が出る前から貧血の有無がわかります。

貧血は赤血球のなかのヘモグロビンという蛋白の濃度で確認します。ヘモグロビンの正常値は男女差ありますがおよそ12~16 g/dLです。10 g/dLを下回ると明らかな貧血です。

急性リンパ芽球性白血病の約70%の症例で診断時に10 g/dLを下回っています(J Clin Oncol. 2000 Feb;18(3):547-61)。

 

血小板数も異常がみられます。血小板は止血などに関わる細胞で、血小板数が著しく低下すると出血しやすくなります。

血小板数の正常値はおよそ130000~400000/μLです。50000/μLを下回ると出血がみられる頻度が高くなります。

約75%の症例で100000/μLを下回り、約40%の症例で50000/μLを下回ります(J Clin Oncol. 2000 Feb;18(3):547-61, Blood. 1995 Apr 15;85(8):2025-37).

10000/μLよりも低くなると重篤な出血を起こしやすくなるため血小板輸血の適応となります。

 

まれに血液では異常が乏しく、「しこり」だけが主な異常という場合もあります。その場合は悪性リンパ腫が疑われ、そのしこりを検査したら急性リンパ芽球性白血病細胞が集まっていることがわかることがあります。

 

白血球、ヘモグロビン、血小板の異常、もしくは「しこり」により急性白血病やその他の血液疾患が疑われ、血液内科の対応が可能な病院に紹介されることになります。あまりにも異常な値であれば直ちに入院となります。

可能であればこの時点で有名な血液内科のある病院を受診することを推奨します。急性リンパ芽球性白血病の治療は、初回の治療の時点で生存率に大きく関与します。

 

急性リンパ芽球性白血病の疫学

急性リンパ芽球性白血病は血液内科では比較的まれな疾患です。

1年間で発症する頻度は10万人に1~1.5人で、類似疾患である急性骨髄性白血病の約1/3の頻度です(Blood. 2010 Nov 11;116(19):3724-34, Br J Cancer. 2011 Nov 22;105(11):1684-92)。

発症頻度は日本でもアメリカでもヨーロッパでも同じ程度ですが、ヒスパニックではやや高めです(Blood. 2012 Jan 5;119(1):34-43, Lancet Haematol. 2018 Jan;5(1):e14-e24)。

 

全白血病のうち急性リンパ芽球性白血病は約10%ですが、小児では全白血病のうち急性リンパ芽球性白血病は約80%と、年齢で割合が異なります(Eur J Cancer Care (Engl). 2005 Mar;14(1):53-62)。

類似疾患の急性骨髄性白血病は年齢とともに発症頻度が上昇しますが、急性リンパ芽球性白血病は年齢とともに上昇するわけではありません(下図, 左:男性, 右:女性, 上:急性骨髄性白血病 下:急性リンパ芽球性白血病, Blood. 2012 Jan 5;119(1):34-43).

急性リンパ芽球性白血病 年齢別発生頻度

 

急性リンパ芽球性白血病はリンパ系の細胞が由来の悪性腫瘍ですが、とくにB細胞性のものが多くT細胞性のものは比較的少数です。4:1くらいの頻度です(Br J Cancer. 2011 Nov 22;105(11):1684-92, Blood. 2012 Jan 5;119(1):34-43)。

男女比はB細胞型とT細胞型で異なり、B細胞性急性リンパ芽球性白血病ではほぼ同程度ですが、T細胞性急性リンパ芽球性白血病では男女比は約2:1になります。

 

次項では、急性リンパ芽球性白血病の診断のために必要な「骨髄検査」について解説します。

骨髄生検 病理標本 HE x100
急性リンパ芽球性白血病(ALL)の診断のための検査 骨髄検査

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まとめ 急性リンパ芽球性白血病の症状、血液検査、疫学

急性リンパ芽球性白血病の症状には労作時の疲れやすさ、出血、あざができやすい、骨の痛み、リンパ節腫大・発熱・体重減少・夜間の大量発汗、首や足の付け根などの「しこり」があります。

● 急性リンパ芽球性白血病の採血結果では、白血球、赤血球、血小板の値に異常がよくみられます。「白血球分画(血液像)」で白血病細胞がみられる場合があります。

● 急性リンパ芽球性白血病は血液内科では比較的まれな疾患で、1年間で発症する頻度は10万人に1~1.5人です。

参考文献

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A five-drug remission induction regimen with intensive consolidation for adults with acute lymphoblastic leukemia: cancer and leukemia group B study 8811.
Blood. 1995 Apr 15;85(8):2025-37.

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J Clin Oncol. 2000 Feb;18(3):547-61.

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Blood. 2010 Nov 11;116(19):3724-34.

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Epidemiological patterns of leukaemia in 184 countries: a population-based study.
Lancet Haematol. 2018 Jan;5(1):e14-e24.

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A systematic literature review of the clinical and epidemiological burden of acute lymphoblastic leukaemia (ALL).
Eur J Cancer Care (Engl). 2005 Mar;14(1):53-62.

 

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