急性骨髄性白血病 (AML) 寛解後療法の実際と治療終了後効果判定

2019-11-19

急性骨髄性白血病 AML Giemsa 400 拡大

 

急性骨髄性白血病(AML)の寛解導入療法で完全寛解に到達したら、「寛解後療法」を行い、再発しないようにします。どのような寛解後療法がよいのかについては「急性骨髄性白血病 (AML) 完全寛解に到達後の寛解後療法」をご覧ください。

寛解後療法は主に2つあります。「大量シタラビン療法」「同種造血幹細胞移植」です。

本項では「寛解後療法」の実際のスケジュール、副作用と注意点について解説します。同種造血幹細胞移植の全体の流れは複雑です。移植片対宿主病(GVHD)という同種造血幹細胞移植に特有の合併症もあります。

寛解後療法でも、全身状態を管理する医療などにより、生存率が大きく変わります。とくに同種造血幹細胞移植では同じ化学療法と移植でも、サポートする医療の発展でも生存率が年々改善しているような状態です。

また本項では治療終了後の最終効果判定とその後の通院についても解説します。

 

急性骨髄性白血病の寛解後療法 大量シタラビン療法の実際

大量シタラビン療法は、シタラビンを1日2回朝夜で投与します。下図のように行います(N Engl J Med. 1994 Oct 6;331(14):896-903)。

大量シタラビン療法 スケジュール

1サイクルのシタラビン投与総量は18 g/m2です。日本では5日間連日投与する方法もありますが、総量は多くなり20 g/m2になります。

開始して10日くらいで血球が下がってきて、開始して1ヶ月くらいで血球が回復します。この間は血球が回復するまでずっと入院です。

これで1サイクルになりますが、3サイクル行いますので、計3か月以上かかります。2サイクル目以降は血球が回復して1週間以上経ってから開始です。

 

腎機能が著しく低下している場合は大量シタラビン療法はできません。

大量シタラビン療法は高齢であることだけで減量します。高齢者では中枢神経系の副作用が多いため減量します。60歳以上で66%,に減量し 70歳以上では投与量は半分です。ただしこの減量方法には医学的根拠は乏しく慣習的です。

 

大量シタラビン療法は、寛解導入療法と比較して安全です。致命的な合併症の発生率は3サイクル合わせても数%です(J Clin Oncol. 2013 Jun 10;31(17):2094-102.)。適切な全身状態を管理する医療によりほぼ0%まで低下させることができます。

大量シタラビン療法の有害事象として、最も問題になるのは感染症です。

白血球は1000 /μLを下回る期間が1サイクルにつき2週間くらいあるため、よく感染症を起こします。感染症を予防するために寛解導入療法のときと同様の予防目的の抗生剤の内服を行います。

寛解導入療法の時と異なり、G-CSFという好中球を上昇させる注射を使用することができます。

それでもよく感染症が起こります。好中球が少ない状態での発熱は「発熱性好中球減少症」とよび、早急に抗生剤点滴の開始が必要です。

大量シタラビン療法 好中球の推移

 

次に問題となる有害事象は中枢神経系の障害です。大量シタラビン療法特有の有害事象で、小脳に毒性が起こる場合がまれにあります。大量シタラビン療法の投与日には小脳機能評価のための診察を行います。

下の動画のような検査です。開始30秒くらいから始まります。

小脳に障害がおこると上記動作ができなくなります。その場合は大量シタラビン療法は即時中止です。

 

大量シタラビン療法特有の有害事象として、結膜炎があります。大量シタラビン療法開始から投与終了して24時間以上経過するまでは、1日に4回以上の点眼を行います。きれいに洗うことで結膜炎を予防することができます。

他、大量シタラビン療法特有の有害事象として、発熱します。投与開始6日間は大量シタラビンによる発熱がおこることがあります。

 

吐き気や脱毛は寛解導入療法と同様に起こります。適切な吐き気止めにより悪心・嘔吐の発症率・重症度を大きく低下させることが可能です。

赤血球や血小板も大量シタラビン療法により低下しますので、輸血も必要です。

 

急性骨髄性白血病の寛解後療法 同種造血幹細胞移植の実際

同種造血幹細胞移植は大量シタラビン療法などの化学療法に比べて、かなり複雑です。

 

「移植前処置」という抗がん剤化学療法(+全身放射線照射)を移植前1週間くらいに行います。「移植前処置」だけで1週間くらいかかります。

その後免疫抑制剤を開始し、ドナーから採取した「造血幹細胞」を投与(移植)します。移植そのものは輸血のように投与するだけなのであまり時間はかかりません。

白血球は徐々に低下し、移植して3週間後くらいに「ドナー由来の白血球」が上昇してきます。

同種造血幹細胞移植 好中球数の推移

同種造血幹細胞移植は大量シタラビン療法と比べて有害事象はかなり多く、致命的な合併症も多くなります。これらは適切な全身状態を管理する医療により年々改善してきています。

同種造血幹細胞移植でも感染症は大きな問題となります。よく感染症を起こします。感染症を予防するための抗生剤の内服を行います。G-CSFという好中球を上昇させる注射を使用する場合があります。

それでもよく感染症が起こります。「発熱性好中球減少症」に対しては早急に抗生剤点滴の開始が必要です。

吐き気や脱毛もおこります。赤血球や血小板も低下しますので、輸血も必要です。

移植前処置が強い場合は、肝類洞閉塞症候群という肝障害を起こすことがあり、予防が必要です。前処置開始前にウルソデオキシコール酸などの内服を始めます。

 

同種造血幹細胞移植に特有の問題として、移植片対宿主病(GVHD)があります。

ドナー由来の白血球が、正常細胞を異物として認識し攻撃し、臓器障害などを引き起こすことですが、このGVHDは発症すると生存率を低下させます。日常生活にも大きな支障が発生します。非常に問題となる問題の一つです。

もし免疫抑制剤で予防していなければ、ほぼ全例でGVHDが発生します。十分に予防することによりGVHDの発症率と重症度を大きく低下させ、生存率と日常生活の質を上昇させることができます

GVHD予防についての研究はどんどんすすんでおり、移植の成績は年々改善しています。

 

1986年ごろの時点で、シクロスポリンとメソトレキセートの併用は、シクロスポリン単独やメソトレキセート単独予防よりもGVHDの発症率・重症度を低下させること、全生存率を改善させることがわかっています(N Engl J Med. 1986 Mar 20;314(12):729-35, Blood. 1986 Jul;68(1):119-25.)。

 

シクロスポリンに変わるタクロリムス(商品名:プログラフ)という薬剤がその後登場しました。

2000年ごろの大規模ランダム化臨床試験で、シクロスポリンとタクロリムスを比較すると、急性GVHDの発症率はタクロリムスのほうがシクロスポリンよりも低い結果となりましたが、2年生存率がタクロリムス群で低くなりました(Blood. 1998 Oct 1;92(7):2303-14)。

 

ミコフェノール酸モフェチル(商品名:セルセプト)がメソトレキセートに変わる薬剤としてその後検討されました。

ランダム化臨床試験では、GVHDの発症率をメソトレキセートよりも低下させることはできませんでした(Biol Blood Marrow Transplant. 2010 Jul;16(7):937-47)。

 

このころまでは、シクロスポリンとメソトレキセートの併用が最も良好でした。ときにタクロリムスとメソトレキセートの併用が行われました。

タクロリムスは日本国内で発見されたことから、日本では多く使用されるようになりました。

 

2016年ごろに抗胸腺細胞グロブリン(ATG)を使用した大規模ランダム化臨床試験の結果が報告されました。

通常のGVHD予防に抗胸腺細胞グロブリンを追加するかしないかで比較しています。

抗胸腺細胞グロブリン(ATG)の追加により、急性GVHDと慢性GVHDの発症率の低下が認められました(下図)。

ただし最も重要な全生存率は明らかな改善というわけではありませんでした(N Engl J Med. 2016 Jan 7;374(1):43-53, Lancet Oncol. 2016 Feb;17(2):164-173.)。

ATG 慢性GVHD発症率

2020年12月時点で抗胸腺細胞グロブリンは日本ではウサギ由来のもの(商品名:サイモグロブリン)しかありません。

 

2019年にはシロリムスの追加についての大規模ランダム化臨床試験の結果が報告されています(Lancet Haematol. 2019 Aug;6(8):e409-e418)。

この臨床試験では、移植前処置の強度の低い移植例を対象に、シクロスポリン+ミコフェノール酸モフェチルに、シロリムスを追加するかしないかで比較しています。

結果、シロリムスの追加により、統計学的にも明らかに急性GVHDの発症率を低下させ、全生存率も改善させました。

 

その他にも、メチルプレドニゾロンによるGVHD予防や、移植後シクロホスファミド、T細胞除去などいろいろなGVHD予防の臨床研究が進んでいますが、本項では割愛します。

 

GVHDを発症してしまったら、副腎皮質ステロイドの投与が必要になります。副腎皮質ステロイドが奏効しない場合はあまり有効な治療がないためかなり難渋します。

上記薬剤の他エタネルセプト、ペントスタチン等々、多くの臨床研究が行われましたが、明らかに有効といえる薬剤は乏しいです。

GVHDは予防を適切に行うことが最も重要です。極力発症しないようにしましょう。

 

急性GVHD慢性GVHDにはそれぞれ基準があります。

2020年12月時点では「2014年NIH基準」を用います(Biol Blood Marrow Transplant. 2015 Mar;21(3):389-401.e1.)。

かなり複雑で長くなるため詳細は割愛しますが、GVHDは発症すると生活の質が大きく低下するため、悪化する前に早期に発見し治療を行いましょう

急性GVHDは皮膚・肝臓・消化管によく起こります。

慢性GVHDは皮膚や肺、肝臓、消化管に多いですが、体のどこにでもおこります。

 

急性骨髄性白血病の寛解後療法終了後の治療効果判定

Diagnosis and management of AML in adults

寛解後療法が終了したら、最終治療効果判定です。

目標は完全寛解を維持していること(もしくはCRiを維持していること)ですが、もし可能であれば「微小残存病変(測定可能残存病変)」の検査を行います。再び骨髄検査です

治療効果判定は寛解導入療法後に用いたものと同じ基準(2017年ELN基準)を用います(Blood. 2017 Jan 26;129(4):424-447). 

 

完全寛解 (CR)の基準は以下のすべてを満たすことです

・好中球が1000/μL以上

・血小板が100000/μL以上

・骨髄液の塗抹標本で芽球が5%未満

・採血検査で血液中に芽球(アウエル小体を持つ芽球も含む)がない

・骨髄以外にも白血病細胞の腫瘤がない

 

血球数の回復が不完全な完全寛解 (CRi)は完全寛解の基準のうち、好中球数か血小板数のどちらかのみ足りない状態です。

 

急性骨髄性白血病 完全寛解の基準

「微小残存病変(測定可能残存病変)」遺伝子検査マルチカラーフローサイトメトリで行います。急性骨髄性白血病の種類によって可能なものが異なってきます。

完全寛解の状態で「微小残存病変」が陰性になったら「微小残存病変陰性の完全寛解 (CRMRD-)」となります。

2017年ELN基準では微小残存病変ですが、「測定可能残存病変」のほうが適切な名称とされるようになってきています。

 

CRMRD-に到達しているほうが、その後の生存が良いことがわかってきています。

2019年の臨床研究ではCRMRD-に到達している症例はCRまでしか到達していない症例よりも明らかに予後良好でした(下図、Blood. 2019 Nov 7;134(19):1608-1618)。

測定可能残存病変有無別の全生存率

ただし完全寛解であれば、測定可能残存病変があったとしても、2020年12月時点では追加治療の適応にはなりません。通院をつづけ慎重に再発の有無に注意してください。

測定可能残存病変も陰性になっていれば、そのまま定期通院となります。

 

最初の2年間は再発が多いため、1~2か月に1回の通院が必要です。同種造血幹細胞移植後はもっと頻回に通院してください。

再発を疑う所見がなければ、定期的に骨髄検査を行う必要はありません。採血検査は毎回行うと思ってください。

もし再発を疑う所見があれば、骨髄検査などの精査を行います。

治療終了後5年経過しても再発がない場合、急性骨髄性白血病では「治癒」とされますが、実際には5年以上経ってからも再発することが、少数ですがありますので、絶対に再発しないとは限らないことにご留意ください。

 

まとめ 急性骨髄性白血病 寛解後療法の実際と治療終了後効果判定

大量シタラビン療法は1サイクルに約1ヶ月かかります。計3サイクル行います。感染症や小脳障害などに注意して治療を継続しましょう。

同種造血幹細胞移植はかなり複雑です。使用する薬剤の種類も多いです。感染症やGVHDなどに注意が必要です。

● 寛解後療法が終了したら、治療効果判定を再度行います。可能であれば微小残存病変(測定可能残存病変)の確認も行います。

参考文献

Intensive postremission chemotherapy in adults with acute myeloid leukemia. Cancer and Leukemia Group B.
N Engl J Med. 1994 Oct 6;331(14):896-903

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J Clin Oncol. 2013 Jun 10;31(17):2094-102.

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Addition of sirolimus to standard cyclosporine plus mycophenolate mofetil-based graft-versus-host disease prophylaxis for patients after unrelated non-myeloablative haemopoietic stem cell transplantation: a multicentre, randomised, phase 3 trial.
Lancet Haematol. 2019 Aug;6(8):e409-e418.

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Biol Blood Marrow Transplant. 2015 Mar;21(3):389-401.e1.

Diagnosis and management of AML in adults: 2017 ELN recommendations from an international expert panel.
Blood. 2017 Jan 26;129(4):424-447.

Measurable Residual Disease Monitoring in Acute Myeloid Leukemia with t(8;21)(q22;q22.1): Results of the AML Study Group.
Blood. 2019 Nov 7;134(19):1608-1618.

 

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