急性骨髄性白血病(AML)の診断 診断基準と鑑別診断

2021-03-31

急性骨髄性白血病 骨髄塗抹標本 Giemsa 91

 

急性白血病が疑われて血液検査や骨髄検査などを行ったら、その結果を確認し診断へと進んでいきます。

急性骨髄性白血病(AML)と診断するためには検査結果をきちんと解釈する必要があります。急性骨髄性白血病の診断自体はそれほど難しくはありません。

急性骨髄性白血病の診断は「2016年改訂WHO分類」に基づいて行います。20%以上の骨髄系統の芽球というのが典型的ですが、これらの基準や例外について解説します。

また急性骨髄性白血病の「鑑別診断」についても解説します。

 

急性骨髄性白血病の血液検査・骨髄検査については「急性骨髄性白血病(AML)の血液検査・骨髄検査」をご覧ください。

 

急性骨髄性白血病の診断基準 2016年改訂WHO分類

急性骨髄性白血病(AML)の診断は2021年2月時点では「2016年改訂WHO分類」に基づいて行います(Blood. 2016 May 19;127(20):2391-405)。

WHO分類 2016 急性骨髄性白血病

WHOは国際連合の世界保健機関(World Health Organization)です。世界中の血液疾患の専門家が集まってWHO分類を定期的に更新しています。

 

「2016年改訂WHO分類」での急性骨髄性白血病の診断は原則として以下のようになります。

● 骨髄もしくは末梢血で、核のある細胞のうちの20%以上が芽球である
● それらの芽球はミエロペルオキシダーゼ染色で陽性である
● それらの芽球がミエロペルオキシダーゼ染色で陰性の場合は、非特異的エステラーゼ染色、CD11c, CD14, CD64, lysozymeのうち2つ以上が陽性である

この基準の下2つは、骨髄系統であることの定義となります。

 

急性骨髄性白血病の診断時の注意点として、この芽球がリンパ系由来でないことも同時に確認することが重要です。リンパ系統にはB細胞系統とT細胞系統の2種類あります。

Bリンパ系統の定義は以下のいずれかになります。

● CD19に強く陽性であると同時に、CD79a, CD10, 細胞内CD22のいずれかが陽性である
● CD19に弱陽性の場合は、CD79a, CD10, 細胞内CD22のうち2つ以上が陽性である

Tリンパ系統の定義は以下のいずれかになります。

●細胞内CD3に強く陽性である
●CD3が陽性である

WHO 2016 系統の基準

 

20%以上の芽球が骨髄系統であると同時に、上記の定義でリンパ系統(BやT)でないことが確認できれば、急性骨髄性白血病と診断します。

上記の定義を満たさないリンパ系蛋白の発現が陽性となることはときどきあります(CD4, CD7など)。しかしながら、それだけではリンパ系統の定義を満たさずリンパ系統とすることはできません

 

急性骨髄性白血病の診断基準 2016年改訂WHO分類 例外について

急性骨髄性白血病の診断にはいくつかの例外があります。

 

以下の染色体異常・遺伝子異常が検出された場合は、芽球が20%未満であったとしても急性骨髄性白血病と診断します。

● t(8;21), RUNX1-RUNX1T1
● inv(16)もしくはt(16;16), CBFB-MYH11

 

以下の染色体異常・遺伝子異常が検出された場合は、芽球が20%未満であったとしても、急性前骨髄球性白血病(APL)と診断します。

● t(15;17), PML-RARA

急性前骨髄球性白血病(APL)は急性骨髄性白血病の一種ですが、通常の急性骨髄性白血病とは治療方法や予後が全く異なります。

急性前骨髄球性白血病(APL)についての詳細は「急性前骨髄球性白血病 (APL) 診断と治療の概要」をご覧下さい。

 

まれですが、血液中や骨髄中の芽球が20%未満でも、体のどこかに腫瘤ができていてそれを採取(生検)したら、急性骨髄性白血病細胞の腫瘤(骨髄肉腫)だと判明するときがあります。

● 骨髄肉腫がある

このような場合は芽球の割合にかかわらず急性骨髄性白血病と診断します。

 

赤白血病(せきはっけつびょう)という概念があります。赤血球系統の幼弱な細胞が多い白血病をさす概念です。

2016年改訂WHO分類では血液中や骨髄中の芽球が20%未満でも、以下のすべてを満たす場合は急性骨髄性白血病と診断します。

● 血液中や骨髄中の核のある細胞のうち赤血球系統の幼弱な細胞が80%を超える
● 血液中や骨髄中の核のある細胞のうち前赤芽球が30%以上である
● 以前に化学療法や放射線治療をうけたことがない
● t(8;21), inv(16), t(16;16) , t(15;17)のいずれも検出されない

このような症例は急性骨髄性白血病の中でも「急性赤白血病」と呼びます(下図)。

WHO 2016 急性赤白血病

急性赤白血病の定義はまだ安定しておらず、前回の2008年改訂WHO分類のときと変わっています(Blood. 2009 Jul 30;114(5):937-51)。

 

 

2021年2月時点では急性骨髄性白血病の診断基準は2016年改訂WHO分類が国際標準となっています。

2017年に出版されたの国際的な推奨(ELNによる推奨)の時点で2016年改訂WHO分類を採用しています(Blood. 2017 Jan 26;129(4):424-447).

 

2017年には改訂WHO分類に基づいた血液疾患の書籍が出版されています。

「WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues」です。

この書籍は急性骨髄性白血病に限らず血液疾患の診断の基本となる書籍です。血液内科や病理部門には必須とされています。

血液疾患にかかわることがある医療者でなければ持っている必要は全くありません。

以下はAmazonアソシエイトのリンクです。

WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues

 

2021年2月時点でのアメリカのNCCNガイドライン(NCCN Guidelines)でも、日本血液学会の2018年造血器腫瘍診療ガイドラインでも、急性骨髄性白血病の診断基準は2016年改訂WHO分類を用いることを推奨しています

昔は「FAB分類」というもので診断を行っていましたが、FAB分類はWHO分類に継承されています。現在はFAB分類で診断を行うことはもはや推奨されません。

 

急性骨髄性白血病の鑑別診断

急性骨髄性白血病の診断は比較的容易ですが、それでも他の近い疾患の可能性について検討する必要があります。

他の疾患の可能性を検討していくことを「鑑別診断」といいます。

鑑別診断は診断をより正確にするために必要なプロセスです。

 

骨髄異形成症候群(MDS)

骨髄異形成症候群は造血幹細胞に近い細胞が腫瘍化した疾患ですが、急性骨髄性白血病とは異なり芽球の増加は初期にはみられません。

骨髄異形成症候群は血液中の血液細胞の減少と骨髄中の細胞の形態異常(異形成)を特徴とする疾患です。

診断時の骨髄異形成症候群と急性骨髄性白血病とでは以下の点で異なります。

● 骨髄異形成症候群では血液中および骨髄中の芽球は20%未満である
● 骨髄異形成症候群ではt(8;21), t(15;17), inv(16), t(16;16), t(15;17)は検出しない
● 骨髄異形成症候群では骨髄肉腫は存在しない

 

急性リンパ芽球性白血病(ALL)

急性リンパ芽球性白血病は急性白血病の一種ですが、急性骨髄性白血病とは異なりリンパ芽球というリンパ系統(B細胞もしくはT細胞系統)の幼弱な細胞が腫瘍性に増殖します。

診断時の急性リンパ芽球性白血病と急性骨髄性白血病とでは以下の点で異なります。

● 急性リンパ芽球性白血病ではミエロペルオキシダーゼ染色陰性である
● 急性リンパ芽球性白血病では非特異的エステラーゼ染色、CD11c, CD14, CD64, lysozymeのうち陽性になるのは1つまでである。
● 急性リンパ芽球性白血病ではB細胞系統とT細胞系統の定義のいずれかを満たしている

 

混合表現型急性白血病(MPAL)

混合表現型急性白血病は極めてまれな急性白血病の一種です。急性骨髄性白血病とは異なり骨髄系統とリンパ系統の2つの定義を同時に満たす芽球が20%以上存在する場合をいいます。

骨髄系統の定義とリンパ系統の定義をきちんと満たす急性白血病は極めてまれです。

混合表現型急性白血病とされている場合の多くは定義をきちんと満たしていない可能性があります。

WHO 2016 系統の基準

 

血液疾患の急性骨髄性白血病への形質転換

骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病、骨髄増殖性腫瘍などの血液疾患は長い時間をかけて病気が進行すると急性骨髄性白血病のように、骨髄系統の芽球が20%以上に増殖することがあります。

これを「形質転換」といいます。

通常の急性骨髄性白血病との違いは、もともとの腫瘍性血液疾患があるという点です。

急性骨髄性白血病への形質転換では、治療方法も予後も通常の急性骨髄性白血病とは少し異なります。

通常の急性骨髄性白血病と区別することが重要です。

 

ビタミンB12や葉酸の不足

ビタミンB12や葉酸が極度に不足すると、血液中のヘモグロビン値が低下し「貧血」の状態になります。このとき骨髄では未成熟の赤血球の元の細胞(巨赤芽球)が多数存在します。

この病態は「巨赤芽球性貧血」と言います。

この疾患の骨髄像が赤白血病や骨髄異形成症候群の骨髄像と似ていることがあります。

ただし以下の点で異なります。

● 巨赤芽球性貧血ではビタミンB12もしくは葉酸が大きく低下している

 

他の腫瘍性疾患

骨髄中に芽球と思われる細胞が20%以上あっても、急性白血病ではないことがあります。例えば、

リンパ腫細胞が骨髄に浸潤していてそれが大型の細胞のため芽球に見える、

あるいはその他のがん細胞が悪化して骨髄に浸潤していて元のがん細胞とは全く似ていない状態のため芽球にみえる、

ということがあります。

急性骨髄性白血病とは異なり、これらの他の腫瘍細胞は骨髄系統の定義を満たしません

 

 

急性骨髄性白血病では、これらの疾患をきちんと鑑別することが重要です。

次項では急性骨髄性白血病の診断後の病型分類について解説します。

WHO216 急性骨髄性白血病 病型分類
急性骨髄性白血病(AML)の2016年改訂WHO分類にもとづく病型分類

続きを見る

 

まとめ 急性骨髄性白血病の診断 診断基準と鑑別診断

急性骨髄性白血病の診断は「2016年改訂WHO分類」に基づいて行います。骨髄もしくは末梢血で核のある細胞のうちの20%以上の芽球が骨髄系統であると同時に、リンパ系統(BやT)でないことが確認できれば、急性骨髄性白血病と診断します。

● 急性骨髄性白血病の診断にはいくつかの例外があります。特定の染色体・遺伝子異常や骨髄肉腫の存在、急性赤白血病の場合などがその例外にあたります。

● 急性骨髄性白血病では骨髄異形成症候群などの疾患について「鑑別診断」をする必要があります。

参考文献

Daniel A Arber, Attilio Orazi, Robert Hasserjian, et al.
The 2016 revision to the World Health Organization classification of myeloid neoplasms and acute leukemia.
Blood. 2016 May 19;127(20):2391-405.

James W Vardiman, Jüergen Thiele, Daniel A Arber, et al.
The 2008 revision of the World Health Organization (WHO) classification of myeloid neoplasms and acute leukemia: rationale and important changes
Blood. 2009 Jul 30;114(5):937-51.

Hartmut Döhner, Elihu Estey, David Grimwade, et al.
Diagnosis and management of AML in adults: 2017 ELN recommendations from an international expert panel
Blood. 2017 Jan 26;129(4):424-447.

NCCNガイドライン(NCCN Guidelines)

2018年造血器腫瘍診療ガイドライン

 

「急性骨髄性白血病 (AML) 診断と治療の概要」に戻る

 

© 2021 Cwiz Hematology