急性骨髄性白血病(AML)の血液検査・骨髄検査

急性骨髄性白血病 骨髄生検 HE x100

 

急性骨髄性白血病(AML)は突然発症し症状も急速に進行します。多くの場合はいきなり「白血病かもしれない」といわれて、不安なまま検査を受け、そして入院となります。

急な展開についていけないと感じることが普通です。

 

本項では急性骨髄性白血病の血液検査骨髄検査について解説します。

血液検査では血球数の異常が多くみられます。白血病細胞が血液中にみられることもしばしばあります。

骨髄検査では骨髄塗抹標本のほかにも、フローサイトメトリや染色体・遺伝子検査、病理標本も行いますが、診断のためだけでなくその後の治療方法や予後にも大きく関与しますので非常に重要な検査となります。

本項でも医学文献を参照にしてこれらの検査結果について解説していきます。

 

急性骨髄性白血病の症状については「急性骨髄性白血病(AML)の症状と発症頻度」をご覧ください。

急性骨髄性白血病の診断基準については「急性骨髄性白血病(AML)の診断 診断基準と鑑別診断」をご覧ください。

 

急性骨髄性白血病の血液検査

倦怠感・易疲労感、発熱などの症状で近医し、採血検査などから急性白血病が疑われると、大きな病院を受診するように言われます(詳細は前項「急性骨髄性白血病(AML)の症状と発症頻度」をご覧ください)。

大きな病院に受診すると、再度採血検査を行います。詳細な項目も含めて検査しますので、かなりの本数の採血になります。

 

急性骨髄性白血病(AML)での血液検査では、白血病細胞も含めた総白血球数はおよそ15000~20000/μLが中央値になります。総白血球数の正常範囲はおよそ4000~8000/μL です。

ただし10万μLを超える場合や、4000μLを下回る場合もしばしばあります(Blood. 2002 Dec 15;100(13):4325-36)。

白血病細胞が末梢血中に確認できることもしばしばあります(N Engl J Med. 2008 May 1;358(18):1909-18)。

急性骨髄性白血病 AML inv16 芽球

 

血液検査で貧血であることも多いです。貧血かどうかは血液中のヘモグロビン値をみて判断します。

急性骨髄性白血病では診断時のヘモグロビン値は中央値で9g/dLです。

正常値は男性で13, 女性で12以上がおおよそ基準です(施設により異なります)。

血小板も正常範囲未満に低下していることが多いです。急性骨髄性白血病では診断時の血小板数は中央値で約60000/μLです。

血小板数の正常値はおよそ15万~45万/μLです(施設により異なります)。

場合によっては赤血球輸血血小板輸血が必要なくらいまで低下していることがあります。

 

そのほか血液検査では様々な異常がみられます。中でも乳酸脱水素酵素(LDH)尿酸値も上昇していることがありますが、これらは高いと予後に悪影響を及ぼす可能性が指摘されています (Br J Haematol. 1996 Mar;92(3):627-31, Anticancer Res. 2013 Sep;33(9):3947-51).

ほとんどの施設でこれらは診断時に値を確認しています。

血液検査では他に、電解質異常、腎機能障害、肝機能障害、感染症、血液型、血液凝固異常などの検査も行われます。

 

この時点で急性白血病が強く疑われる時は、そのまま入院することをすすめられます。そのまま入院して下さい。帰らないほうがよいです。

発熱している場合は直ちに抗生剤点滴を開始します。輸血が必要な場合もあります。無理に帰ると生命に影響する場合があります。

 

急性骨髄性白血病の骨髄検査 骨髄塗抹標本

診断確定や白血病細胞の性質の確認のために骨髄検査も行います。

 

治療前の骨髄検査の結果は今後の治療計画に非常に重要なものになります。

診断確定だけであれば容易に可能ですが、フローサイトメトリ、染色体・遺伝子検査など多くの項目を検査し、その結果により治療方針を決定する必要があります。

骨髄検査も可能であれば受診後早いうちに行います。検査そのものは10分から15分くらいで終了しますが、その後の安静時間が最も長いです。

骨髄検査では、骨の中(骨髄)へ針を刺して、骨髄液を吸引する検査(骨髄穿刺吸引)と骨髄針で骨髄そのものを採取する検査(骨髄生検)を行います。複数回の針を刺すことになります。

骨髄検査の実施についての詳細は、「骨髄検査(骨髄穿刺吸引・骨髄生検)の手技の実際 痛みや安全性は?」をご覧ください。

 

 

骨髄検査の項目のうち骨髄塗抹標本の結果が早ければ検査当日にわかり、急性骨髄性白血病の診断が確定あるいは強く疑われます。

骨髄塗抹標本というのは、骨髄穿刺吸引で採取した骨髄液をスライドガラスに広げ、簡単な染色をした標本です。顕微鏡下で各細胞の形態を見ます。

骨髄塗抹標本では白血病細胞が多数確認されます。大型の細胞で、細胞核も大きく、核小体が明瞭な細胞です(下図)。Auer小体というものがみられるときもあります。

急性骨髄性白血病 骨髄塗抹標本 Giemsa 91

 

白血病細胞はBlast (芽球)もしくはUnclassifiable (分類不能)とされます。

おなじ白血病細胞であっても各細胞によっての大きさや形態もばらつきが多くみられます

骨髄塗抹標本では細胞核のある細胞を500個数えて、それぞれ何%あるか確認します。急性骨髄性白血病の場合は500個のうち20%以上の白血病細胞が原則として確認されます。

さらにこれらの芽球(白血病細胞)がミエロペルオキシダーゼ染色という染色で陽性であれば、急性骨髄性白血病細胞と考えられます(下図)。

急性骨髄性白血病 骨髄 ミエロペルオキシダーゼ染色 91

青く染まっているのがミエロペルオキシダーゼ陽性細胞です。染まり方も細胞によって異なります。

 

急性骨髄性白血病ではエステラーゼ染色というものもよく行います。単球様の急性骨髄性白血病でよく染まります(下図 茶色)。

急性骨髄性白血病 骨髄 エステラーゼ染色 2

 

典型的な急性骨髄性白血病であれば骨髄中の白血病細胞の割合は50%をこえることが多いです(N Engl J Med. 2008 May 1;358(18):1909-18)。

 

急性骨髄性白血病の骨髄検査 フローサイトメトリ, 染色体・遺伝子検査,病理標本

上記の骨髄液の塗抹標本の結果は早ければ検査当日にわかります。

まれにこの時点でも急性骨髄性白血病とはわかりにくい場合もありますが、フローサイトメトリという検査の結果によりほぼ全例で診断可能です。

フローサイトメトリ検査とは、細胞の大きさ内部の複雑さ細胞表面や細胞質に存在する蛋白の発現を測定することができる検査です。

フローサイトメーターという機械に細胞を通して検査します。核のある細胞を数万個~数百万個解析します。

 

急性骨髄性白血病細胞はCD13, CD33, CD34, CD117, HLA-DRといった細胞表面の蛋白が多くの場合陽性になります(Arch Pathol Lab Med. 2003 Jan;127(1):42-8)。

これらは骨髄系マーカーともよばれます。これらが陽性だからといって急性骨髄性白血病とすることはできません。

フローサイトメトリで細胞質のミエロペルオキシダーゼの確認もできます。ミエロペルオキシダーゼの確認は必須です。

骨髄塗抹標本で陰性であってもフローサイトメトリで陽性となることがあります。

逆にフローサイトメトリで陰性であっても骨髄塗抹標本で陽性であることもあります。

急性骨髄性白血病では20%くらいでCD19やCD2、CD4, CD7などのリンパ球で見られる蛋白も異常発現します。

フローサイトメトリの結果は数日のうちに判明します。

 

 

急性骨髄性白血病が疑われる時は、染色体・遺伝子検査が必須です。

これらの結果は診断にはそれほど寄与しませんが、治療方法と予後に大きく関与します

染色体検査というのは、分裂している細胞の染色体を確認する検査です。G分染法とも呼ばれます。

染色体というのは遺伝情報を持った構造体です。遺伝子はこの中に含まれています。

染色体は細胞分裂するときに顕微鏡で観察しやすいため、比較的分裂の早い急性骨髄性白血病細胞では異常を検出しやすくなります。

正常な染色体は、女性の場合46, XX、男性の場合46, XYです。

急性骨髄性白血病細胞などの腫瘍細胞では、染色体構造に異常があることがよくあります。

20個以上の分裂期の細胞を確認します。正常な細胞も分裂しますので、20個の中には正常細胞の染色体と腫瘍細胞の染色体の両方が確認され得ます。

急性骨髄性白血病では染色体の転座や欠失などの異常が約60%にみられます(Blood. 2010 Jul 22;116(3):354-65).

 

遺伝子検査は染色体の中の遺伝子の異常の有無を確認する検査です。この検査は分裂期の細胞でなくてもできます。

急性骨髄性白血病などでよくみられる遺伝子異常の有無を検査します。

急性骨髄性白血病の遺伝子検査も治療方法と予後に大きく関与するため非常に重要です。

この分野は急性骨髄性白血病の研究のなかでも発展が非常に早く、次から次へと重要な遺伝子が特定されています(下図, Blood. 2017 Jan 26;129(4):424-447)。

2017 ELN 急性骨髄性白血病 染色体異常 遺伝子異常

この発展と同時に検査推奨となる遺伝子の総数も年々増えています。

 

日本ではアメリカなどの他の先進国と比べて、あまり多くの遺伝子検査ができない状況です。

しかしながら、重要な検査ですので可能な限り推奨される遺伝子検査を行うことを推奨します

2021年2月時点でのアメリカのNCCNガイドライン(NCCN Guidelines)では、以下の遺伝子検査が推奨されています。

PML-RARA, CBFB-MYH11, RUNX1-RUNX1T1, BCR-ABL1、NPM1, CEBPA, RUNX1, FLT3, TP53, IDH1/IDH2, ASXL1, KIT.

 

日本血液学会の2018年造血器腫瘍診療ガイドラインでは、「染色体核型検査は病型分類,予後予測,治療法選択において必須である。FLT3,NPM1,CEBPA,RUNX1,ASXL1,TP53遺伝子などの変異解析によってさらなる予後層別化が可能とされている」としています。

 

染色体検査と遺伝子検査の結果はおおよそ同じくらいのタイミングでわかります。施設によっては染色体検査結果がわかるまで時間がかかるかもしれません。

きちんと検査ができている場合、急性骨髄性白血病症例で染色体検査と遺伝子検査の両方とも異常がないことはかなりまれです(Blood. 2017 Jan 26;129(4):424-447)。

 

 

骨髄検査では病理標本の作製も行います。

病理標本とは、採取した骨髄液や骨髄組織をホルマリン固定し、パラフィン包埋したのちに薄く切って各種染色しスライドガラスにくっつけた標本です。

この病理標本を顕微鏡でみて診断することを「病理診断」といいます。

ほかの腫瘍疾患ではこの「病理診断」が最終診断になることがありますが、血液疾患では病理診断をもって最終診断とするのは推奨されません。

フローサイトメトリ検査、染色体検査、遺伝子検査などの結果も確認し、診断基準に照らし合わせて最終診断を行います。

急性骨髄性白血病でも同様です。

 

骨髄の病理標本でも腫瘍細胞の割合などがわかりますが、骨髄塗抹標本と異なり細胞の形態はあまりわかりません(下図).

急性骨髄性白血病 骨髄生検 HE x100

 

病理標本でも「免疫組織化学染色」により、発現している蛋白を確認することができます。ミエロペルオキシダーゼ染色も可能です(下図).

急性骨髄性白血病 骨髄穿刺 MPO x200

ミエロペルオキシダーゼ染色については病理標本でも確認することを推奨します。

骨髄塗抹標本、フローサイトメトリ、病理標本のいずれかで腫瘍細胞にミエロペルオキシダーゼが陽性となれば、急性骨髄性白血病の可能性が濃厚になります(Blood. 2016 May 19;127(20):2391-405)。

 

これらの結果を総合的に確認し、診断基準に照らし合わせて最終診断を行います。

次項では急性骨髄性白血病の診断(診断基準、鑑別診断)について解説します。

急性骨髄性白血病 骨髄塗抹標本 Giemsa 91
急性骨髄性白血病(AML)の診断 診断基準と鑑別診断

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まとめ 急性骨髄性白血病の血液検査・骨髄検査

急性骨髄性白血病では血液検査で白血病細胞も含めた総白血球数の中央値はおよそ15000~20000/μLです。10万μLを超える場合や、4000μLを下回る場合もあります。ヘモグロビン値や血小板数の低下や白血病細胞が確認できることもよくあります。

● 診断確定や白血病細胞の性質の確認のために骨髄検査も行います。骨髄塗抹標本の結果が最もはやくわかります。急性骨髄性白血病の場合は核のある細胞を500個のうち20%以上の白血病細胞が原則として確認されます。

● その他骨髄検査では、フローサイトメトリ検査、染色体・遺伝子検査、病理標本の作製も行います。染色体・遺伝子検査の結果は治療方法と予後に大きく関与します。可能な限り推奨される遺伝子検査を行うことを推奨します。

参考文献

John C Byrd, Krzysztof Mrózek, Richard K Dodge, et al.
Pretreatment cytogenetic abnormalities are predictive of induction success, cumulative incidence of relapse, and overall survival in adult patients with de novo acute myeloid leukemia: results from Cancer and Leukemia Group B (CALGB 8461).
Blood. 2002 Dec 15;100(13):4325-36.

Richard F Schlenk, Konstanze Döhner, Jürgen Krauter, et al.
Mutations and treatment outcome in cytogenetically normal acute myeloid leukemia.
N Engl J Med. 2008 May 1;358(18):1909-18.

F Ferrara, S Mirto
Serum LDH value as a predictor of clinical outcome in acute myelogenous leukaemia of the elderly
Br J Haematol. 1996 Mar;92(3):627-31.

Takahiro Yamauchi, Eiju Negoro, Shin Lee, et al.
A high serum uric acid level is associated with poor prognosis in patients with acute myeloid leukemia
Anticancer Res. 2013 Sep;33(9):3947-51.

Zahid Kaleem, Eric Crawford, M Hanif Pathan, et al.
Flow cytometric analysis of acute leukemias. Diagnostic utility and critical analysis of data.
Arch Pathol Lab Med. 2003 Jan;127(1):42-8.

David Grimwade, Robert K Hills, Anthony V Moorman, et al.
Refinement of cytogenetic classification in acute myeloid leukemia: determination of prognostic significance of rare recurring chromosomal abnormalities among 5876 younger adult patients treated in the United Kingdom Medical Research Council trials
Blood. 2010 Jul 22;116(3):354-65.

Hartmut Döhner, Elihu Estey, David Grimwade, et al.
Diagnosis and management of AML in adults: 2017 ELN recommendations from an international expert panel
Blood. 2017 Jan 26;129(4):424-447.

Daniel A Arber, Attilio Orazi, Robert Hasserjian, et al.
The 2016 revision to the World Health Organization classification of myeloid neoplasms and acute leukemia.
Blood. 2016 May 19;127(20):2391-405.

NCCNガイドライン(NCCN Guidelines)

2018年造血器腫瘍診療ガイドライン

 

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