急性前骨髄球性白血病 (APL) 再発・難治性の治療

2019-09-21

t-APL

 

急性前骨髄球性白血病(APL)の治療は年々よくなってきています。再発率もそれに伴い下がってきています。

現時点で再発する症例は三酸化二ヒ素を初回の寛解導入療法や寛解後療法で使用していない場合が多いと思われます。

本項では再発および難治性の急性骨髄性白血病の治療について記載します。

再発・難治性の場合は治療法が初発時と異なります。

どんな治療を行い、どのくらい効果があるのか、治療の注意点、について国内外の臨床研究やガイドラインに基づいて解説します。

 

再発・難治性の急性前骨髄球性白血病と再寛解導入療法

APL relapse MPO stain, BMB 400

 

一度PML-RARAという遺伝子異常が消失した完全寛解の状態から、再度PML-RARAが検出されるようになった時点で「再発」です。

この時点で自覚症状はないと思いますが、しばらくすると本格的に再発します。

急性前骨髄球性白血病は本格的に再発すると、初回診断時と同様に、重篤な出血など生命にかかわる状態になってしまいます。

したがってPML-RARAが検出されるようになった時点で再発として治療を開始することをすすめます。

また、まれに初回治療からずっとPML-RARAが検出されつづけ、寛解後療法を終えてもPML-RARAが検出できてしまう場合がありますが、そのような症例は「難治性」とされ、再発と同様の治療を行います。

 

再発・難治性の多くは、寛解導入療法や寛解後療法で三酸化二ヒ素(商品名:トリセノックス)を使用していないか、もしくは高リスク(診断時白血球数10000/μL以上)の急性前骨髄球性白血病と思われます。

三酸化二ヒ素を使用していない場合は、再発・難治性の治療(再寛解導入療法)を三酸化二ヒ素で行います。

小規模の比較なしの臨床試験がいくつかありますが、三酸化二ヒ素により約85%で完全寛解に、約60%でPML-RARAが検出されなくなりました (J Clin Oncol. 2001 Sep 15;19(18):3852-60).

ほかの薬剤との比較はありません。初回治療での有効性なども考慮して、三酸化二ヒ素の奏功はある程度期待できます。

 

ほかの薬剤としてゲムツズマブ オゾガマイシン(商品名:マイロターグ)があります。

小規模の比較なしの臨床試験では、2サイクルの投与で約55%でPML-RARAの消失を確認できました。3サイクルの投与では約80%の症例でPML-RARAの消失を確認できました(Blood. 2004 Oct 1;104(7):1995-9).

 

小規模の比較なしの臨床試験の場合は、比較試験ではないので全身状態のよい症例が多いと治療成績も上昇するなど、対象症例の状態により治療成績は変動します。

したがって小規模の比較なしの臨床試験の完全寛解率を単純に比較しても、どちらがよいかどうかは全くあてになりません。

ゲムツズマブ オゾガマイシンが三酸化二ヒ素よりも有効かどうかは全くわからないということになります。

ある程度の効果はありそうなので、三酸化二ヒ素が効かない場合に使用することになります。

 

最初の治療でアントラサイクリン系薬剤を使用していない場合は、アントラサイクリン+シタラビンも初回治療での有効性なども考慮すると、奏効が期待できます。

 

上記に加えて、再発急性前骨髄球性白血病は脳などの中枢神経にも白血病細胞が入っていく場合が約10%あります。

腰椎穿刺といって、背骨(腰椎)の間に針を刺して、そこから抗がん剤を投与し、中枢神経での白血病細胞の増加を防ぎます(抗がん剤の髄腔内投与

 

療効果判定とその後の療法 自家および同種造血幹細胞移植

再発した急性前骨髄球性白血病は、診断時の急性前骨髄球性白血病よりも強くなっています。

最初の治療を生き残った白血病細胞が増殖し、またその増殖の過程でさらに進化するためです。薬剤による再寛解導入療法・再寛解後療法のみでは、数年で無再発生存率は約50%まで落ちてしまいます。

生存率を改善させるために、自家造血幹細胞移植という方法があります。

自家造血幹細胞移植というのは、自分の造血幹細胞を採取・凍結保存し、大量の抗がん剤で白血病細胞を自分の造血幹細胞とともに激減させ、その後に凍結していた自分の造血幹細胞を戻して、正常な血球を回復させる治療法です。

治療の主体は大量の抗がん剤です。自分の造血幹細胞は血球回復のためのものです。

 

2016年に国際研究の結果が出版されました。参加した各施設の過去の診療データから、再発急性前骨髄球性白血病に対して寛解導入療法で完全寛解に到達した症例のみを解析しました(後ろ向き研究)。

三酸化二ヒ素のみで寛解後も治療をし続けた症例では、2年無再発生存率は約50%でした。

この研究では寛解後に自家造血幹細胞移植を行った症例も解析しており、2年無再発生存率はおよそ75%でした(下図 Bone Marrow Transplant. 2016 Sep;51(9):1180-3). 

再発急性前骨髄球性白血病 自家移植 あり vs なし DFS

この研究では、全生存率も自家造血幹細胞移植のほうが、三酸化二ヒ素のみの治療よりも2倍くらい良好でした。5年生存率は自家造血幹細胞移植症例で78%, 三酸化二ヒ素のみで42%でした。統計学的にも明らかな差がついていました (下図 p<0.001).

再発急性前骨髄球性白血病 自家移植 あり vs なし OS

後ろ向き研究なので、確定的なことは言えません。様々なバイアスが入るためです。

 

自家造血幹細胞移植と薬剤のみで治療したランダム化比較試験がまだないため、再発急性前骨髄球性白血病症例で自家造血幹細胞移植を行ったほうがいいかどうかははっきりしていませんが、薬剤のみで治療すると再発率が高いため、現時点では自家造血幹細胞移植をすすめます

ただし自家造血幹細胞移植はPML-RARAが検出されている状態では、ほぼ全例再発してしまうため推奨されません。

再発急性前骨髄球性白血病に対して、自家造血幹細胞移植を行った、小規模臨床試験の結果が1997年に出版されています。

15名の参加者中、PML-RARAが検出されている状態で自家造血幹細胞移植を行った7名は14か月のうちに全例再発してしまいました

PML-RARAが検出されない状態で自家造血幹細胞移植を行った8名は14か月で再発したのは1名のみでした。

 

では他の急性白血病のように同種造血幹細胞移植(兄弟や骨髄バンクなどから採取した造血幹細胞を移植する)はどうでしょうか?

過去の臨床試験を再度後ろ向きに解析した結果が2005年に出版されています (J Clin Oncol. 2005 Jan 1;23(1):120-6).

同種造血幹細胞移植を行った症例では移植そのものの合併症で約40%の方が命を落としています。1年生存率はおよそ60%でした。とはいえ長期的に生存する可能性もあり、5年生存率はおよそ50%でした。

この研究の自家造血幹細胞移植症例の1年生存率は約90%, 5年生存率は約70%でした。

以上から、PML-RARAが検出されている状態では、自家造血幹細胞移植よりも同種造血幹細胞移植のほうがよいでしょう。リスクも高いため同種造血幹細胞移植を行う場合は、覚悟をもって行いましょう。

 

急性前骨髄球性白血病はそもそも再発させないことが大切

再発急性前骨髄球性白血病の治療について、大規模ランダム化臨床試験といった科学的信頼性の高い臨床試験はありません。

言えそうなことは、再発急性前骨髄球性白血病は診断時よりも治療の奏効率が下がる・再発しやすいということです。

2020年12月時点でのアメリカのNCCNガイドラインでも日本血液学会の造血器腫瘍ガイドラインでも治療は上記のような推奨となっていますが、医学的な根拠が乏しいため弱い推奨です。

 

急性前骨髄球性白血病の治療全体で重要なことは極力再発させないようにすることです。

再発するたびに急性前骨髄球性白血病は強くなります。再発後に初発時と同じ治療をやっても奏効は落ちます。再々発するともっと強くなります。

最初の治療がよくなるほど再発率は下がります。最初の治療はその時で最も良いものを行いましょう

再発してしまっても同様です。その時で最も良い治療を行いましょう

 

まとめ 再発・難治性の急性前骨髄球性白血病の治療

● 再発・難治性の急性前骨髄球性白血病はPML-RARAが検出された時点で、再寛解導入療法・再寛解後療法を三酸化二ヒ素などで行います。腰椎穿刺を行い抗がん剤の髄腔内投与も行います。

● それだけでは再発しやすいため、PML-RARAが検出されなければ自家造血幹細胞移植を行います。検出されてしまう場合は同種造血幹細胞移植を行います。同種造血幹細胞移植は治療合併症のリスクも高いです。

● 急性前骨髄球性白血病の治療で重要なことはそもそも極力再発させないようにすることです。

参考文献

Soignet SL, Frankel SR, Douer D, et al.
United States multicenter study of arsenic trioxide in relapsed acute promyelocytic leukemia.
J Clin Oncol. 2001 Sep 15;19(18):3852-60.

Lo-Coco F, Cimino G, Breccia M, et al.
Gemtuzumab ozogamicin (Mylotarg) as a single agent for molecularly relapsed acute promyelocytic leukemia.
Blood. 2004 Oct 1;104(7):1995-9.

Meloni G, Diverio D, Vignetti M, et al.
Autologous bone marrow transplantation for acute promyelocytic leukemia in second remission: prognostic relevance of pretransplant minimal residual disease assessment by reverse-transcription polymerase chain reaction of the PML/RAR alpha fusion gene.
Blood. 1997 Aug 1;90(3):1321-5.

de Botton S, Fawaz A, Chevret S, et al.
Autologous and allogeneic stem-cell transplantation as salvage treatment of acute promyelocytic leukemia initially treated with all-trans-retinoic acid: a retrospective analysis of the European acute promyelocytic leukemia group.
J Clin Oncol. 2005 Jan 1;23(1):120-6.

Ganzel C, Mathews V, Alimoghaddam K, et al.
Autologous transplant remains the preferred therapy for relapsed APL in CR2.
Bone Marrow Transplant. 2016 Sep;51(9):1180-3.

造血器腫瘍診療ガイドライン 2018年版

NCCN Guidelines

 

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