急性前骨髄球性白血病 (APL)の症状・診断 発症から診断まで

2019-09-07

急性前骨髄球性白血病 APL May-Giemsa 1000倍

 

急性前骨髄球性白血病(APL)は白血病の疑いがあるとされた場合に考えられる疾患のひとつです。

白血病が疑われたら直ちに血液専門の対応ができる病院で診断のための検査を行うことになります。

急性前骨髄球性白血病は急性白血病の一種で、いきなり発症し数週間のうちに急速に進行する倦怠感や出血などの症状を伴います。白血病のなかでは発症時の症状が比較的激しいです。

 

どのような時に急性前骨髄球性白血病が疑われ、どのような検査で診断するのかについて解説します。受診から診断までの数日の間に具体的に何をするのかについても解説します。

発症から診断までの流れがわかれば、突然の受診、検査、そして入院と急展開ですすむ状況にも、ある程度心の準備をもって対応することができるでしょう。

診断は国際基準である2016年WHO分類を用います。このWHO分類についても解説します。

急性前骨髄球性白血病の発症から受診まで

急性前骨髄球性白血病(APL)は病気が発生してからおよそ数週間で急速に症状が進行するため急性という名前がつきます。

疲れやすい・だるいといった症状がではじめ、そうこうしているうちに階段を上ることにも苦労するくらいまで疲れやすくなります。

ちょっとしたことで出血しやすくなります。感染症に非常にかかりやすくなりよく発熱します。

急性前骨髄球性白血病は白血病の中でも特に出血しやすく、脳出血や肺出血など重篤な出血を起こす前に診断・治療を行う必要があります

 

1993年に報告された急性前骨髄球性白血病の症例を対象とした前向きの臨床試験では、治療開始前に発熱していた症例は約40%でした。出血症状があった症例は約75%にもなりました。脳などの中枢神経に出血していた症例は2%でした(Blood. 1993;82(11):3241)。

この臨床試験では約10%の症例で早期の致命的な合併症がありました。その中では中枢神経出血肺出血が多くみられました。

 

致命的な出血が初期にみられることは1990年の大規模後ろ向き研究でも指摘されていました(Blood. 1990 Jun 1;75(11):2112-7)。

この後ろ向き研究では約10%の症例で早期の致命的な出血が中枢神経などでみられました。

 

急性前骨髄球性白血病のこれらの症状は、血液を造っている場所である骨の中(骨髄)で白血病細胞が急速に増殖し、正常な血液を造る場所がなくなることが一因となります。

赤血球が少なくなれば疲れやすくなり、血小板が少なくなれば出血しやすくなり、白血球が少なくなれば感染しやすくなります。他の急性白血病とここまでは同様です。

急性前骨髄球性白血病は白血病細胞そのものが全身の血液を固まりにくくする性質があり、その分他の急性白血病よりも出血が激しく起こります

 

通常は近所の病院を受診しますが、通常の風邪などとは症状も異なり重症感もあるため、採血などの検査を行うことになります。

その結果、白血病の疑いがあると説明され、直ちに血液内科がある病院に受診するように指示されます。

この時、医師が紹介状を作成してくれるので、それを持参して直ちに病院を受診しましょう。この際は可能であれば血液内科が有名な病院を受診することをすすめます。

 

急性前骨髄球性白血病の受診、検査、そして入院

受診するともっと多くの項目を確認するために再び血液検査を行います

ほとんどの場合で赤血球や血小板がかなり低い値になります。血液中に白血病細胞がみられることも多いです。

 

診断を確定させるために、骨髄検査という骨に針を刺す検査が行われます。

骨髄検査ではうつ伏せになって、背骨よりやや外側の骨盤の骨に針を刺して、血液を造っている場所(骨髄)から液体(骨髄液)を吸引したり、骨髄の一部を採取したりします。

骨髄液を採取する検査を骨髄穿刺吸引、骨髄の一部を採取する検査を骨髄生検といいます。

通常はおよそ10~20分で終了します。液体を吸引するときが痛いです。

骨髄検査についての詳細は、「骨髄検査(骨髄穿刺吸引・骨髄生検)の手技の実際 痛みや安全性は?」をご覧ください。

 

骨髄検査の項目はいくつかあり全部の結果がわかるには少なくとも数日はかかりますが、検査後数時間で分かる結果として、採取した液体(骨髄液)の塗抹標本というものがあります。

液体をスライドに塗抹して簡単な染色をして、顕微鏡でみるだけの簡単なものです。

 

急性前骨髄球性白血病の場合、この塗抹標本で白血病細胞が多数みられ、その形態が「前骨髄球」という白血球の初期段階の細胞に似ています。

そのため急性前骨髄球性白血病という名前がついています。

以下のような細胞です。このページのトップの写真も急性前骨髄球性白血病の写真です。

急性前骨髄球性白血病

細胞が比較的大きく、顆粒がたくさんあることが特徴です。また棒状の結晶(アウエル小体)とその束を含む細胞(ファゴット細胞)がみられます。

 

この時点で急性前骨髄球性白血病の診断はかなり濃厚になります(まだ診断確定ではありません)。

まず間違いなくそのまま入院することになります。無理に帰らないほうがいいです。生命に関わります。

 

急性前骨髄球性白血病の診断 入院から確定診断まで WHO分類

入院後は診断までの間に全身状態を確認するためCT心臓超音波検査などの各種検査が行われます。

抗生剤輸血も必要になる場合が多いです。

 

この間の最も重要なことは、急性前骨髄球性白血病の治療薬であるトレチノイン内服を早めに開始することです。

トレチノイン(商品名 ベサノイド)はビタミンAの誘導体で、急性前骨髄球性白血病の特効薬のひとつです。

ATRAとも呼ばれます。

 

疑いが濃厚であれば診断が確定する前にトレチノインを開始します確定診断を待っている間も重篤な出血などの可能性が十分にありえるためです。

トレチノインを開始しておけば急性前骨髄球性白血病の勢いを抑えることができ、確定診断までの重篤な合併症を減らすことできます。

確定診断が急性前骨髄球性白血病でなければ、トレチノインの服用を中止すればいいだけです。

トレチノインはビタミンAの誘導体であり、数日間の服用で大きな問題が生じることはまずありません。

アメリカのNCCN Guidelinesでは、疑いの時点でトレチノインを開始することを推奨しています。

 

急性前骨髄球性白血病の確定診断は遺伝子検査の結果で決まります。

急性前骨髄球性白血病は病気が発生するときに、PML-RARAという遺伝子異常を獲得します。正常な血液細胞にはこのPML-RARAという異常はありません。白血病細胞となるときに獲得した突然変異です。

この遺伝子異常により急激に急性前骨髄球性白血病細胞は増殖し、白血病化した段階で血液異常や症状が出てくるようになります。

遺伝子変異PML-RARAは各種検査(染色体検査、FISH検査, PCR検査)で検出することが可能です。PML-RARAを検出するまでの数日間が、確定診断までの日数です。

 

WHO分類 2016 急性骨髄性白血病

2016年にWHO改定分類が発表されました(Blood. 2016 May 19;127(20):2391-405)。世界中の病理医、血液内科医などの協力のもと2008年WHO分類を改訂しました。

2016年以降の診断は2016年WHO分類に基づいて行われます。WHO分類の正式名称は「PML-RARAを伴う急性前骨髄球性白血病」です。

アメリカのNCCN Guidelinesでも、日本血液学会の2018年造血器腫瘍診療ガイドラインでも、この2016年改訂WHO分類を使用して診断することとしています。

 

もっと昔はFAB分類というものがあり、塗抹標本の形態で診断を行っていました。しかし遺伝子検査などが進んだ現在はFAB分類を診断に用いることはありません。

FAB分類はWHO分類に組み込まれ新たな診断基準として進化しています。

急性前骨髄球性白血病がM3と呼ばれることがあるのは、FAB分類時代の名残です。

 

もしセカンドオピニオンあるいは転院を治療開始前に行うとすればこのタイミングしかありません。

急性前骨髄球性白血病の寛解導入療法はこの疾患の治癒率に直接影響するため極めて重要な選択です。この疾患の治療全体の中でも最も重要なものです。

 

次項以降では治療について解説していきます。

 

急性前骨髄球性白血病 症状と診断のまとめ

● 急性前骨髄球性白血病の症状は急速に進行する疲れやすさ、出血、発熱などです。重篤な出血を起こす前に診断・治療を行う必要があります

● 血液検査と骨髄検査で診断を行います。急性前骨髄球性白血病の場合その日のうちに診断はかなり濃厚になります

● 診断はWHO分類に基づき、PML-RARAという遺伝子異常で確定します。入院後はトレチノイン内服を早めに開始します

参考文献

Fenaux P, Le Deley MC, Castaigne S, et al.
Effect of all transretinoic acid in newly diagnosed acute promyelocytic leukemia. Results of a multicenter randomized trial. European APL 91 Group.
Blood. 1993 Dec 1;82(11):3241-9.

Rodeghiero F, Avvisati G, Castaman G, et al.
Early deaths and anti-hemorrhagic treatments in acute promyelocytic leukemia. A GIMEMA retrospective study in 268 consecutive patients.
Blood. 1990 Jun 1;75(11):2112-7.

Arber DA, Orazi A, Hasserjian R, et al.
The 2016 revision to the World Health Organization classification of myeloid neoplasms and acute leukemia.
Blood. 2016 May 19;127(20):2391-405.

2018年造血器腫瘍診療ガイドライン

NCCN Guidelines

 

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