濾胞性リンパ腫(FL)の化学療法 実際の投与と治療効果判定

2019-10-06

濾胞性リンパ腫 HE 40 Grade 1

 

治療が必要になった濾胞性リンパ腫には抗腫瘍薬投与(化学療法)を行います。

本項では濾胞性リンパ腫(グレード1~3A)に対する化学療法の実際の投与とその注意点について解説します。グレード3Bの場合は「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫」の項をご確認ください。

濾胞性リンパ腫の化学療法は比較的副作用は少ないですが、それでも重症感染症などを起こす場合があるため、できるだけ副作用を起こさないようにする医療も必要になります。

濾胞性リンパ腫でどのような初回治療がよいのかについては「濾胞性リンパ腫 (FL)の初回治療 限局期もしくは無症候性の場合」および「濾胞性リンパ腫 (FL) 進行期症候性の場合の初回治療」をご参照ください。

濾胞性リンパ腫の初回化学療法により約9割の症例で部分奏効に到達します。濾胞性リンパ腫の初回化学療法の治療目標は部分奏効以上の効果を得ることです

本項では部分奏効と判定するための国際基準と必要な検査についても解説します。

極力有害事象が発生しないように治療をすすめていきましょう。

 

濾胞性リンパ腫の化学療法 BR療法(リツキシマブ+ベンダムスチン)

濾胞性リンパ腫(FL)に対する化学療法にBR療法というものがあります。BR療法はリツキシマブ(商品名:リツキサン)ベンダムスチン(商品名:トレアキシン)の2剤を用いる化学療法です。

リツキシマブとベンダムスチンは点滴投与です。ベンダムスチンは比較的短時間で投与できます。

BR療法は1サイクルの最初の2日間の点滴投与を行い26日間休薬します。1サイクルは28日間です(下図)。

BR療法 スケジュール

これを6サイクル繰り返します。全部終了するのに6か月かかります。

腎機能や肝機能が大きく低下している場合はBR療法を行わないほうがいいでしょう。

 

初回(1サイクル目)のBR療法は入院での投与を推奨します。

初回のリツキシマブの投与の際に、体が反応して突然震え始めたり、高熱が出たりすることがあります(輸注反応)。多くは初回のみです。

 

また初回(1サイクル目)のBR療法では全身の濾胞性リンパ腫細胞が大きく減少します。「腫瘍崩壊症候群」と言い、化学療法で壊れた濾胞性リンパ腫細胞の細胞内物質が全身に広がります。

濾胞性リンパ腫の初回治療での腫瘍崩壊症候群のリスクは「低リスク」となります(下図 Br J Haematol. 2010 May;149(4):578-86)。

腫瘍崩壊症候群 推奨

「低リスク」の場合、通常は大量の輸液(1日約4~5リットル: 3 L/m2)を数日間行い、腫瘍崩壊で増えた物質を尿から排泄します。最初の数日間は夜間も含めて頻回にトイレに行くことになります。

もし触れやすいところにリンパ腫病変があれば、数日のうちに縮小していくのがわかるかもしれません。

 

腫瘍崩壊で尿酸も増えて腎臓や尿路に障害を起こすことがあり、尿酸を下げる薬も使用することがありますが、アロプリノールはベンダムスチンの皮膚障害を引き起こしやすくするため、注意が必要です。

「低リスク」の場合、通常はアロプリノールなどは必要ありません。もともと腎機能障害などがある場合に検討します。

 

ベンダムスチンは抗がん剤ですが吐き気や嘔吐は軽度です。吐き気止めの予防投与により、ほとんど問題にならないくらいになります。しかし食欲は数日間低下するでしょう。

白血球の中の好中球が1000/μL未満まで低下することが約3割でみられます。好中球が低下すると感染症にかなりかかりやすくなります。また血小板が50000/μL未満まで低下することが約5%でみられます。これらの血球低下のピークは通常投与14~21日目です。

好中球が低下するときは白血球を上昇させる皮下注射を投与します。感染症を防ぐためには好中球が低下する前に投与することが重要です。

白血球を上昇させる注射を使用する場合はペグフィルグラスチム(商品名:ジーラスタ)を推奨します。1回の投与で数週間効果が持続するため、連日注射する必要がなくなります。

次回サイクル開始日の好中球と血小板が著しく低いときは、回復するまで化学療法を延期します。

感染症を予防するための内服薬を使用することがあります。ベンダムスチン投与の時にスルファメトキサゾール・トリメトプリム(商品名:バクタ)の予防内服が推奨されていますが、ベンダムスチンの皮膚障害を高い確率で引き起こすため注意が必要です。

重症感染症はまれですが最も生命に関わる副作用です。発熱したら直ちに受診して感染症の治療を開始してください

BR療法は約15%くらいで皮膚発赤を起こす治療です。皮膚発赤を起こしやすい薬剤との併用は皮膚発赤の確率をさらに上昇させるため、そのような薬剤との併用は極力避けましょう。

 

2サイクル目からは外来投与です。2サイクル目からは大量輸液は不要です。

ベンダムスチンは点滴の刺入部で血管外に漏れると皮下組織に障害をきたします。極力良い血管に末梢静脈カテーテルを留置します。

BR療法により治療目標である部分奏効に約90~95%で到達します(Blood. 2014 May 8;123(19):2944-52.)。

 

リツキシマブは皮下注射が登場していますが、日本では2020年12月時点でまだ使用することができません。

リツキシマブの皮下注射製剤を濾胞性リンパ腫に使用しても血中濃度や奏効率はあまり変わらないことが大規模ランダム化臨床試験で分かっています(SABRINA試験 Lancet Haematol. 2017 Jun;4(6):e272-e282)。

皮下注射製剤のほうが利便性は高いので、いずれは皮下注射製剤に変わっていくものと予想されます。

 

リツキシマブはバイオシミラーという後発品が複数登場しています。

後発品については費用が低下するという利点がありますが、効果が同等であることをきちんと確認する必要があります。

2020年12月時点でアメリカで承認されれいるリツキシマブのバイオシミラーはpvvrabbsの二種類です(BioDrugs. 2019 Dec 9. doi: 10.1007/s40259-019-00398-7., Lancet Haematol. 2018 Nov;5(11):e543-e553)。

2020年12月時点で日本ではSandoz社ファイザー社(pvvr)の製剤がありますが、Sandoz社のバイオシミラーはアメリカでは承認されませんでした

理由は明らかにはされませんでしたが生存率に悪影響がありえるものと推定されます。pvvrは日本でも使用可能です。

 

日本では特別な問題がなければ先発品であるリツキサンを使用したほうがよいと考えられます。何らかの事情によりバイオシミラーを用いる場合はファイザー社のpvvrにしておいたほうが良いと考えられます。

 

濾胞性リンパ腫の化学療法 R-CVP療法

濾胞性リンパ腫の化学療法としてはBR療法を推奨しますが、何らかの理由でBR療法ができない場合はR-CVP療法をすすめます。

R-CVP療法はBR療法よりも奏効率・無増悪生存率は低下しますが、重症な副作用の発生率は同程度です。最も重要な全生存率も有意な差がみられるわけではありません。

 

R-CVP療法はリツキシマブシクロホスファミドビンクリスチンプレドニゾンの4剤の組み合わせです。

日本ではプレドニゾンが使用できないため、プレドニゾンの肝臓での代謝産物であるプレドニゾで代用します。どちらでもほとんど変わりはありません。

リツキシマブは皮下注射が使用可能になるまでは、BR療法と同様に点滴投与になります。シクロホスファミド・ビンクリスチンも点滴投与です。プレドニゾロンは5日間の内服になります(下図)。

R-CVP療法 スケジュール

1サイクルは21日です。6~8サイクル繰り返します。全部終了するのに4~6か月かかります。

肝機能が大きく低下している場合はビンクリスチンの投与量の調整が必要です。

 

初回(1サイクル目)のR-CVP療法も入院での投与を推奨します。初回のリツキシマブの輸注反応初回R-CVP療法の「腫瘍崩壊症候群」のためです。大量の輸液(1日約4~5リットル)も行います。

BR療法と同様に吐き気や嘔吐は軽度です。吐き気止めの予防投与でほとんど問題はなくなります。食欲は数日間低下するかもしれません。

白血球の中の好中球が1000/μL未満まで低下することがBR療法と同様に約3割でみられますが、血小板が50000/μL未満まで低下することはほとんどありません。血球低下のピークは通常投与10~14日目です。

好中球が低下するときは白血球を上昇させる皮下注射を投与します。その場合はペグフィルグラスチム(商品名:ジーラスタ)を推奨します。1回の投与で数週間効果が持続するため、連日注射の必要がなくなるためです。

重症感染症はまれですが最も生命に関わる副作用です。発熱したら直ちに受診して感染症の治療を開始してください

BR療法と同様に次回サイクル開始日の好中球と血小板が著しく低いときは、回復するまで化学療法を延期しますが、BR療法ほど多くはありません。

 

R-CVP療法を続けていると約20~30%でしびれなどの末梢神経障害が起こります。多くは軽度ですが、日常生活に支障が生じるようになってきたら、ビンクリスチンの投与継続は推奨しません。

ビンクリスチンの投与により便秘にもなりやすくなりますが、治療継続に支障がでることはまれです。

便秘症に関しては最新の研究もしくは最新のガイドライン(日本では「慢性便秘症診療ガイドライン」)に従って行ってください。ただし最初の選択としてのマグネシウム製剤・センノシドの使用は推奨しません。

 

プレドニゾロンの投与により血糖が大きく上昇することがあります。糖尿病がある場合は特に血糖値に注意してください。

プレドニゾロンにより骨粗鬆症が進行する可能性があります。骨密度の低下に注意が必要です。

 

2サイクル目からは外来投与で、大量輸液は不要です。ビンクリスチンも血管外に漏れると、皮下組織に障害をきたします。極力良い血管に末梢静脈カテーテルを留置してもらいましょう。

R-CVP療法では部分奏効に約85%で到達します(J Clin Oncol. 2013 Apr 20;31(12):1506-13)。

 

濾胞性リンパ腫 化学療法後の治療効果判定 Lugano基準

Lugano 2014 criteria

すべての治療サイクルを終えたら治療効果判定が必要です。治療目標は部分奏効ですが、完全奏効に到達することもあります。

2020年12月時点で、濾胞性リンパ腫の化学療法後効果判定の国際基準は「2014年Lugano基準」です(J Clin Oncol. 2014 Sep 20;32(27):3059-68)。

 

PET-CT検査を用いた効果判定のほうがCTだけで判定するより正確です

Lugano基準ではPET-CTの効果判定の基準が追加されています。PET-CTを用いた判定と従来の判定の両方を確認することがよいと考えます。

PET-CTではブドウ糖代謝をCTとあわせて確認します。腫瘍細胞はブドウ糖の取り込みが多いことを利用して、「FDG」という「標識を付けたブドウ糖の類似物質」を投与し、その集積の度合いを確認します。

Lugano基準では「Deauville点数」という5段階の点数を用いて、FDGの集積を評価します(J Clin Oncol. 2014 Sep 20;32(27):3048-58)。

Deauville点数は5段階評価です。以下のようになります。

● 集積箇所がなければ1点

● 集積はあるが縦隔以下であれば2点

● 集積があり、縦隔よりも強いが肝臓以下であれば3点

● 集積があり肝臓よりもやや強ければ4点

● 集積があり、肝臓よりも集積が著しく強い、もしくは新規集積病変が発生している場合は5点

Deauville score

1~3点の場合は「病変なし」の判断になります。

4点と5点の場合は「病変あり」と判断します。つまり肝臓よりも集積が強ければ残存病変ありとなります。

なお、日本でよく使われるSUVの使用については推奨されません

 

PET-CT検査を行うタイミングは化学療法終了から6~8週間後です。それよりも早いPET-CT検査は偽陽性の可能性があり推奨しません。放射線治療を行った場合は終了から10週間後くらいに行います。

治療開始時点で骨髄中にも濾胞性リンパ腫細胞が確認された場合は、再度骨髄検査を行います

 

全身から病変が消失しリンパ節がすべて1.5cm未満になって、骨髄中からも濾胞性リンパ腫細胞が免疫染色でも見られなければ完全奏効(CR)です。

PET-CTを用いる場合はDeauville点数が低ければ完全奏効(CMR)となります。PET-CTを用いた場合は「M」がつきます(下図 J Clin Oncol. 2014 Sep 20;32(27):3048-58)。

Lugano classification 効果判定

部分奏効については、リンパ腫病変の径が半分以下に縮小していれば部分奏効(PR)です。

PET-CTを用いる場合は、「病変のDeauville点数が高いが治療前より集積が減っている状態」であれば部分奏効(PMR)です。

PMRはPRより緩い基準です。PRを達成することを目標にしたほうが良いでしょう。

 

PRもしくはPMR以上の奏効に約90%の症例で到達します

到達した場合は維持療法もしくは追加治療なしで経過観察となります。

到達しなかった場合は難治性の濾胞性リンパ腫と定義され追加の治療が必要です。通常の濾胞性リンパ腫ではないようです。

 

Lugano基準には含まれていませんが、CMR達成の時点で最初に検出されたt(14;18)などの腫瘍の染色体異常が、骨髄と血液からPCRでも検出されなくなったら予後はさらに良好になります

リツキシマブが登場する前の時点での大規模臨床試験で、PCRでも検出されない症例はそうでない症例よりも倍以上の無増悪生存期間となりました(下図, p<0.001).

濾胞性リンパ腫 molecular CR PFS

PCRでも検出されないようになった症例はそうでない症例よりも、全生存期間も統計学的にも明らかに良好でした(下図, p<0.01).

濾胞性リンパ腫 molecular CR OS

ただし初回治療の時点では必ずしもCMRやPCR陰性化まで到達しなくてもよいです。追加治療を行っても生存率が改善するとは言えませんが治療毒性は増加します。

 

次項では、維持療法、治療後経過観察、再発が疑われた時の検査などについて解説します。

濾胞性リンパ腫 HE 100 BCL2 100
濾胞性リンパ腫(FL) 初回治療後の維持療法と通院経過観察

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まとめ 濾胞性リンパ腫の化学療法 実際の投与と治療効果判定

BR療法はリツキシマブとベンダムスチンの2剤を用いる化学療法です。28日サイクルで6サイクル行います。皮膚発赤が比較的多いです。血球減少があるため感染症に注意が必要です。

R-CVP療法はリツキシマブと他3剤の抗がん剤の組み合わせです。21日サイクルで6~8サイクル行います。しびれなどが比較的多いですが、BR療法同様に血球減少があるため感染症に注意が必要です。

● 化学療法の治療効果判定はLugano基準にもとづいて行います。PET-CTを用いたほうが正確です。部分奏効の達成が目標ですが、完全奏効やPCR陰性化まで到達することもあります。

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