再発・難治性の多発性骨髄腫 (MM) に対する化学療法

2020-02-02

多発性骨髄腫 再発難治 HE

 

多発性骨髄腫(MM)は再発するたびに治療抵抗性が増します。以前の治療を生き延びた多発性骨髄腫細胞を中心に増殖しているからです。

維持療法を行っていた場合は、その維持療法を行っていた薬剤に対して「不応」となっています。維持療法を行っていなかった場合は以前の治療薬が再度奏効する可能性がありますが、一般に奏効は以前より低下します。

本項では初回治療としてボルテゾミブレナリドミドを使用している場合の、再発・難治性の多発性骨髄腫の化学療法について解説します。どの薬剤の使用歴があるのか、どの薬剤に不応になっているのかということが大切になってきます。

もし可能であれば治験も考慮してください。治験は一部の施設でしか行っていません。

セカンドオピニオンや転院の希望があれば、可能であれば診断早期もしくは初回再発など早い段階がよいです。

何度も再発してからセカンドオピニオンや転院を行っても選択肢がほとんどない状態となってしまいます。

さまざまな新規治療が毎年のように報告され、それにともない治療成績がどんどん改善しています。

本項の内容で再発・難治性の多発性骨髄腫に対する化学療法についてほとんどを記載しています。

 

再発・難治性の多発性骨髄腫に対する化学療法 ポマリドミド、パノビノスタット

ボルテゾミブレナリドミドに続いて登場した薬剤は、ポマリドミド(商品名:ポマリスト)です。

ポマリドミドはレナリドミドと同じ系統である「免疫調節薬 IMiDs」に含まれます。

この免疫調節薬は多発性骨髄腫だけでなく、骨髄異形成症候群や悪性リンパ腫にも有効であることがわかっていますが、どのような作用機序で効いているのかあまりよくわかっていません。セレブロンや血管新生などに影響するともいわれますが、機序の一つでありそれだけで奏効しているとも言えません。

 

ポマリドミドの有効性について、再発・難治性の多発性骨髄腫を対象とした大規模ランダム化臨床試験の結果が2013年に出版されています(Lancet Oncol. 2013 Oct;14(11):1055-1066)。

臨床試験の参加者の全例でボルテゾミブもレナリドミドも使用していました。90%以上の症例でレナリドミド使用中に再発し、また79%の症例でボルテゾミブ使用中に再発していました。ボルテゾミブとレナリドミドの両方に難治となっているのは約75%の症例となっていました。

Pd(ポマリドミド・デキサメタゾン)療法大量デキサメタゾン療法のいずれかにランダム化して振り分けて比較しました。

結果、全奏効率はPd群で31%, 大量デキサメタゾン群で10%であり、統計学的にも明らかにPd群で良好でした(p<0.0001).

最良部分奏効に到達したのはPd群で6%、大量デキサメタゾン群で1%未満でした。

無増悪生存期間の中央値はPd群で4か月、大量デキサメタゾン群で1.9か月であり、統計学的にも明らかにPd群で良好でした(下図).

多発性骨髄腫 Pd vs HDD PFS

この臨床試験では「クロスオーバー」といって、大量デキサメタゾン群で再発した症例に対してポマリドミドの使用が可能でした。

それでも全生存期間Pd群のほうが統計学的にも明らかに良好でした。生存期間の中央値はPd群で12.7か月、大量デキサメタゾン群で8.1か月でした(下図)。

1多発性骨髄腫 Pd vs HDD OS

Pd療法による奏効や生存の改善は大量デキサメタゾンよりも良好ですが、大きな改善とは言えません。

しかしながら、当時はサリドマイド、ボルテゾミブ、レナリドミド、および抗がん剤であるアルキル化剤などのほかに有効な薬剤はなく、ポマリドミドの登場は意味を持つものとなりました。

 

ポマリドミドは単独で投与するよりもデキサメタゾンと併用したほうが、無増悪生存期間は改善します。

2014年に大規模ランダム化臨床試験の結果がでています(Blood. 2014 Mar 20;123(12):1826-32)。Pd療法ポマリドミド単独でランダム化して比較しました。

無増悪生存期間はPd療法群で4.2か月、ポマリドミド単独群で2.7か月と、統計学的にも明らかにPd群で良好でした。全生存期間には有意な差はみられませんでした(下図 左:無増悪生存 右:全生存)。

多発性骨髄腫 Pd vs P alone, PFS, OS

奏効率や有害事象も有意な差はみられませんでした。

ポマリドミドの単独投与はPd療法と比べて、無増悪生存期間が低下するだけと考えられます。デキサメタゾンも併用することを推奨します。

 

パノビノスタット(商品名:ファリーダック)という薬剤がその後に登場しました。ファリーダックはボルテゾミブと併用して使用します。

2014年にファリーダックの有効性についての大規模ランダム化臨床試験の結果が出版されました(Lancet Oncol. 2014 Oct;15(11):1195-206)。BD(ボルテゾミブ・デキサメタゾン)療法に加えて、偽薬もしくはパノビノスタットを投与しています。この臨床試験では、ボルテゾミブに不応となった症例は含まれていません。レナリドミド使用したことがあるのは約20%でした。

結果、全奏効率は偽薬群で54.6%, パノビノスタット群で60.7%でした。統計学的な差はありませんでした(p=0.09)。

しかし完全奏効率は偽薬群で15.7%、パノビノスタット群で27.6%と、統計学的にも明らかにパノビノスタット群のほうが良好でした(p=0.00006)。

無増悪生存期間の中央値は、偽薬群で8.08か月、パノビノスタット群で11.99か月と、統計学的にも明らかにパノビノスタット群のほうが良好でした(下図)。

多発性骨髄腫 FVD vs VD, PFS

その後、最終報告が2016年に出版されました(Lancet Haematol. 2016 Nov;3(11):e506-e515)。全生存の最終解析です。

全生存期間の中央値は、偽薬群で35.8か月、パノビノスタット群で40.3か月でした。統計学的な差はなく、パノビノスタットを追加することの全生存期間の改善は明らかではありませんでした(下図).

多発性骨髄腫 FVD vs VD, OS

パノビノスタットの追加により重症な有害事象が増加します。自覚症状として明らかに増加するのは、下痢倦怠感です。重症な下痢や倦怠感がパノビノスタット群の約25%にもみられます。

長期的な生存に明らかな差がみられないのであれば、たとえ無増悪生存期間の改善があっても、毒性の強い治療を行うことは推奨しません。

 

再発・難治性の多発性骨髄腫に対する化学療法 カルフィルゾミブ、イキサゾミブ

カルフィルゾミブ(商品名:カイプロリス)という薬剤がその後登場します。

カルフィルゾミブはボルテゾミブと同じ系統である「プロテアソーム阻害薬」に含まれます。

プロテアソーム阻害薬は細胞内の「ごみ箱」に相当するプロテアソームの働きを阻害します。プロテアソームは細胞内で様々な蛋白を分解しています。カルフィルゾミブはボルテゾミブよりも強くプロテアソームを阻害するとされます。

 

カルフィルゾミブの有効性について、2016年に再発・難治性の多発性骨髄腫を対象とした大規模ランダム化臨床試験の結果が出版されました(N Engl J Med. 2015 Jan 8;372(2):142-52)。

この臨床試験では、Rd(レナリドミド・デキサメタゾン)療法のみ、もしくはカルフィルゾミブ・Rd療法でランダム化して比較しました。ボルテゾミブの使用歴がある症例は65.8%でした。レナリドミドの使用歴がある症例は19.8%でしたが、レナリドミドに不応となっている症例は含まれませんでした。

結果、全奏効率はRd群で66.7%, カルフィルゾミブ群では87.1%と明らかな差がみられました(p<0.001)。完全奏効率もRd群で9.3%, カルフィルゾミブ群で31.8%と、カルフィルゾミブ群で明らかに良好でした(p<0.001)。

無増悪生存期間の中央値は、Rd群で16.6か月、カルフィルゾミブ群で26.1か月と、統計学的にも明らかにカルフィルゾミブ群のほうが良好でした(下図  J Clin Oncol. 2018 Mar 10;36(8):728-734)

多発性骨髄腫 Pd vs KRd, PFS

全生存期間の最終解析も2018年に報告されています(J Clin Oncol. 2018 Mar 10;36(8):728-734)。

全生存期間の中央値は、Rd群で40.4か月、カルフィルゾミブ群で48.3か月と、統計学的にも明らかにカルフィルゾミブ群のほうが良好でした(下図).

多発性骨髄腫 Pd vs KRd, OS

カルフィルゾミブの追加により増加する自覚的な重症な有害事象は、重症な心不全です。あきらかな血圧の上昇も見られます。

カルフィルゾミブは奏効率、無増悪生存期間、全生存期間のいずれも改善させます。心機能や心不全症状・血圧を慎重に確認しながら使用してください。

 

同時期である2016年に、BD療法KD(カルフィルゾミブ・デキサメタゾン)療法を比較する大規模ランダム化臨床試験の結果が出版されました(Lancet Oncol. 2016 Jan;17(1):27-38)。ボルテゾミブの使用歴がある症例は54%、レナリドミドの使用歴がある症例は38%でした。

結果、最良部分奏効達成率はBD療法で29%、KD療法で54%と、明らかにKD療法群のほうが良好でした(p<0.0001)。

完全奏効率はBD療法で6%, KD療法で13%と、明らかにKD療法群のほうが良好でした(p=0.0010)。

無増悪生存期間の中央値は、BD療法群で9.4か月, KD療法群で18.7か月と、明らかにKD療法群のほうが良好でした(下図)。

多発性骨髄腫 BD vs KD, PFS

約3年の追跡結果も報告されています(Lancet Oncol. 2017 Oct;18(10):1327-1337)。

全生存期間の中央値は、BD療法群で40.0か月, KD療法群で47.6か月と、明らかにKD療法群のほうが良好でした(下図)。

多発性骨髄腫 BD vs KD, OS

カルフィルゾミブではボルテゾミブのような末梢神経障害はかなり少なくなります。KD療法でも心不全はBD療法より増加します。

再発・難治性の多発性骨髄腫に対してカルフィルゾミブはボルテゾミブよりも有効ですが、初発の多発性骨髄腫に対しては、カルフィルゾミブはボルテゾミブよりも良いとは言えませんでした。

ボルテゾミブの使用歴がある再発症例に対してはボルテゾミブよりもカルフィルゾミブを使用することを推奨します。

レナリドミドに不応となっている場合はKRd(カルフィルゾミブ・レナリドミド・デキサメタゾン)療法よりもKD療法のほうが良いでしょう。

 

さらに2018年にはKD療法の投与量の比較に関する、大規模ランダム化臨床試験の結果が出版されました(Lancet Oncol. 2018 Jul;19(7):953-964)。

ほぼ全例でボルテゾミブ使用歴があり、約40%でボルテゾミブに不応でした。80%以上の症例でレナリドミド使用歴があり、そのほとんどはレナリドミドに不応でした。

従来の週2回のKD療法と、週1回の高用量KD療法の比較です。

結果、全奏効率は週2回群で40.8%, 週1回群で62.9%と、明らかに週1回高用量群のほうが良好でした(p<0.0001)。最良部分奏効達成率は週2回群で13%, 週1回群で34%でした。完全奏効率は週2回群で2%, 週1回群で7%でした。

無増悪生存期間の中央値は、週2回群で7.6か月, 週1回群で11.2か月と、明らかに週1回高用量群のほうが良好でした(下図)。

多発性骨髄腫 週2KD vs 週1KD, PFS

全生存期間は現時点でどちらが良いかはっきりしていません。

重症な有害事象の発生率は、心不全も含めて明らかな差はみられませんでした。

KD療法を行う場合は、高用量週1回の投与のほうが週2回投与よりも良いと考えられます。

 

「プロテアソーム阻害薬」の新規薬剤としてイキサゾミブ(商品名:ニンラーロ)がその後登場しました。内服薬であることが特徴です。

イキサゾミブの有効性について、2016年に大規模ランダム化臨床試験の結果が出版されています(N Engl J Med. 2016 Apr 28;374(17):1621-34).

偽薬+Rd療法IRd(イキサゾミブ・Rd)療法を比較しました。

ボルテゾミブ使用歴があるのは69%, レナリドミド使用歴があるのは12%で、いずれかに不応となっている症例は臨床試験には含まれませんでした。

結果、全奏効率はRd群で72%, IRd群で78%と、IRd群のほうが明らかに高い奏効率でした(p=0.04)。

最良部分奏効達成率も、Rd群で39%, IRd群で48%とIRd群のほうが明らかに高い奏効率でした(p=0.01)。

無増悪生存期間の中央値は、Rd群で14.7か月、IRd群で20.6か月と、統計学的にも明らかにIRd療法群のほうが良好でした(下図).

多発性骨髄腫 Rd vs IRd, PFS

全生存期間については現時点でどちらが良いかはっきりしていません。

自覚症状のある重症な有害事象として多くなるのは、下痢、悪心、発疹です。

 

IRd療法はプロテアソーム阻害薬もしくはレナリドミドに不応となっている症例には推奨しません。

ボルテゾミブに不応になっている症例に対するイキサゾミブの効果は全く不明です。またレナリドミド不応になっている症例にレナリドミドを用いることは、奏効がみられないだけでなく、有害事象が増加することになります。

 

再発・難治性の多発性骨髄腫に対する化学療法 エロツズマブ、ダラツムマブ、イサツキシマブ

多発性骨髄腫に対して、抗SLAMF7抗体であるエロツズマブ(商品名:エムプリシティ)という薬剤がその後に登場しました。SLAMF7は多発性骨髄腫細胞に発現している蛋白です。エロツズマブはSLAMF7に結合して効果を発揮します。

エロツズマブはプロテアソーム阻害薬や免疫調節薬と異なり、単独での投与による奏効は乏しいです。他の薬剤との組み合わせで効果が出ます。

 

エロツズマブの有効性について、2015年に大規模ランダム化臨床試験の結果が出版されています(N Engl J Med. 2015 Aug 13;373(7):621-31)。

Rd療法ERd(エロツズマブ・Rd)療法を比較しました。ボルテゾミブ使用歴は70%, レナリドミド使用歴は6%でした。レナリドミド不応例は含まれていません。

結果、全奏効率はRd療法で66%, ERd療法で79%とERd療法のほうが高い奏効でした(p<0.001)。最良部分奏効達成率はRd療法で28%, ERd療法で33%でした。

無増悪生存期間の中央値は、Rd療法群で14.9か月、ERd療法群で19.4か月と、統計学的にも明らかにERd療法群のほうが良好でした(下図).

多発性骨髄腫 ERd vs Rd, PFS

4年の追跡結果が報告されています(Cancer. 2018 Oct 15;124(20):4032-4043).

全生存期間の中央値は、Rd療法群で39.6か月、ERd療法群で43.7か月と、ERd療法群のほうが良好でした(下図).

多発性骨髄腫 ERd vs Rd, OS

2020年には5年の最終生存結果報告が出版されました(Blood Cancer J. 2020 Sep 4;10(9):91).

全生存期間の中央値は、Rd療法群で39.6か月、ERd療法群で48.3か月であり、統計学的にも明らかにERd療法群のほうが良好でした(HR 0.82, 95%CI 0.676-0.995, p=0.0408).

多発性骨髄腫 ELOQUENT-2 ERd vs Rd, 最終全生存率

ERd療法はRd療法よりも奏効率、無増悪生存率、全生存率のいずれも明らかに改善させます。

 

さらにエロツズマブはプロテアソーム阻害薬とレナリドミドに不応になった症例に対する治療でも有効です。

2018年にPd療法EPd療法を比較した大規模ランダム化臨床試験の結果が出版されました(N Engl J Med. 2018 Nov 8;379(19):1811-1822)。ほぼ全例でボルテゾミブもレナリドミドも使用歴があり、しかも約70%はどちらに対しても不応となってしまった症例でした。

結果、全奏効率はPd群で26%, EPd群で53%、最良部分奏効達成率はPd群で9%, EPd群で20%と、EPd群のほうが高い奏効率でした。

無増悪生存期間の中央値は、Pd群で4.7か月、EPd群で10.3か月と、統計学的にも明らかにEPd群のほうが良好でした(下図).

多発性骨髄腫 EPd vs Pd, PFS

全生存期間についてはまだ明らかな差はついていません(下図)。

多発性骨髄腫 EPd vs Pd, OS

エロツズマブによる重症な有害事象の増加は明らかなものはありません。むしろエロツズマブを加えることにより有害事象が減少します

プロテアソーム阻害薬とレナリドミドに不応になった症例にはPd療法よりもEPd療法のほうが有効と言えます。

 

続いて新しい抗体薬としてダラツムマブ(商品名:ダラザレックス)が登場しました。

抗CD38抗体であるダラツムマブは多発性骨髄腫に発現しているCD38という蛋白に結合して効果を発揮します。エロツズマブと同様にダラツムマブは単独での投与による奏効は乏しいです。他の薬剤との組み合わせで効果が出ます。

再発・難治性の多発性骨髄腫に対するダラツムマブの有効性について、2016年に大規模ランダム化臨床試験(CASTOR試験)の結果が出版されました(N Engl J Med. 2016 Aug 25;375(8):754-66)。

この臨床試験では、BD療法DBD(ダラツムマブ・BD)療法を比較しました。プロテアソーム阻害薬とレナリドミド使用歴がある症例は約半数でした。ボルテゾミブに不応となった症例は含まれていません。

結果、全奏効率はBD群で63.2%, DBD群で83.9%、最良部分奏効達成率はBD群で29.1%, DBD群で59.2%、完全奏効率はBD群で9%, DBD群で19.2%でした。奏効は明らかにDBD群のほうが良好でした。

無増悪生存期間の中央値は、BD群で7.1か月、DBD群で16.7か月と、統計学的にも明らかにDBD群のほうが良好でした(下図)。2回目の報告も出ています(下図, Haematologica. 2018 Dec;103(12):2079-2087)

多発性骨髄腫 DBD vs BD, PFS

多発性骨髄腫 DBD vs BD, upPFS

全生存期間についてはまだはっきりしていません。

ダラツムマブの投与により重症な輸注反応が約9%にみられました。そのほかの重症な有害事象は下痢や血球減少でした。

 

 

また2016年にはRd療法DRd療法を比較した大規模ランダム化臨床試験の結果が出版されました(N Engl J Med. 2016 Oct 6;375(14):1319-1331)

ボルテゾミブとレナリドミド使用歴がある症例は約15%でした。レナリドミドに不応となった症例は含まれていません。

結果、全奏効率はRd群で76.4%, DRd群で92.9%、最良部分奏効達成率はRd群で44.2%, DRd群で75.8%, 完全奏効率はRd群で19.2%, DRd群で43.1%でした。DRd群のほうが高い奏効率でした(p<0.001)。

無増悪生存率DRd群のほうが統計学的にも明らかに良好でした(下図 Haematologica. 2018 Dec;103(12):2088-2096).

多発性骨髄腫 DRd vs Rd, PFS

 

44か月追跡した結果も報告されています(Leukemia. 2020 Jan 30. doi: 10.1038/s41375-020-0711-6.)。

完全奏効率ははRd群で23.2%、DRd群で56.6%とDRd群のほうが高い奏効率でした(p<0.001)。

無増悪生存率の中央値はRd群で17.5か月、DRd群で44.5か月と、DRd群のほうが統計学的にも明らかに良好でした(下図).

多発性骨髄腫 Rd vs DRd, PFS 44m

全生存期間についてはまだはっきりしていません。

 

この上記2つのダラツムマブの臨床試験では、高齢でも若年者と同じくらいの有効性が示されています(Haematologica. 2020 Jan 31;105(2):468-477)。

DBD療法とBD療法を比較した臨床試験では75歳以上でも, 若年者と同様の無増悪生存期間となっています(下図).

多発性骨髄腫 BD vs DBD, PFS 75yo

DRd療法とRd療法を比較した臨床試験でも同様に、75歳以上でも若年者と同様の無増悪生存期間となっています(下図).

多発性骨髄腫 Rd vs DRd, PFS 75yo

これは多発性骨髄腫に限らないことですが、年齢よりも治療の選択のほうが生存には重要であると言えます。

 

ボルテゾミブに不応になっている症例に対するDBD療法や、レナリドミド不応になっている症例にDRd療法を行った場合の効果は全く不明です。

ダラツムマブやエロツズマブは単独での効果が乏しいことから、ある程度の奏効はみられても臨床試験と同等の奏効が得られる可能性は低いと考えられます。

 

イサツキシマブ(商品名:サークリサ)というダラツムマブと同系統の抗CD38抗体薬があります。2020年6月末に日本で承認となりました。

2019年にPd療法イサツキシマブ+Pd療法を比較した、大規模ランダム化臨床試験の結果が出版されました(Lancet. 2019 Dec 7;394(10214):2096-2107)。

約70%の症例でプロテアソーム阻害薬とレナリドミドの両方に不応となっていました。ダラツムマブ使用歴のある症例はほぼゼロでした。

全奏効率はPd群で35%、イサツキシマブ群で60%、最良部分奏効達成率はPd群で9%, イサツキシマブ群で32%と明らかにイサツキシマブ群のほうが高い奏効率でした(p<0.0001)。

無増悪生存期間の中央値は、Pd群で6.5か月、イサツキシマブ群で11.5か月と、統計学的にも明らかにイサツキシマブ群のほうが良好でした(下図)。

多発性骨髄腫 Isa-Pd vs Pd, PFS

全生存期間については現時点でははっきりしていません(下図)。

多発性骨髄腫 Isa-Pd vs Pd, OS

プロテアソーム阻害薬とレナリドミドに不応になった症例にはPd療法よりもイサツキシマブ+Pd療法のほうが有効と言えます。

ダラツムマブの使用歴がないプロテアソーム阻害薬とレナリドミドに不応になった症例に対しては、直接比較試験があるわけではありませんが、奏効はおそらくイサツキシマブ+Pd療法のほうがEPd療法よりも有効と予想されます。

 

2020年にKd療法DKd療法を比較した大規模ランダム化臨床試験(CANDOR試験)の結果が出版されました(Lancet. 2020 Jul 18;396(10245):186-197)。

この試験でのカルフィルゾミブの投与は56 mg/m2で週2回です。ダラツムマブを追加するかしないかでランダム化し結果を比較しました。

部分奏効達成率はKd群で75%でしたが、DKd群では84%と、統計学的にもあきらかにDKd群のほうが良好でした(p=0.0080).

最良部分奏効達成率はKd群で49%, DKd群で59%でした。

完全奏効率はKd群で10%、DKd群で29%でした。

次世代シーケンシングによる測定可能残存病変陰性率はKd群で3%, DKd群で14%でした。

追跡期間17か月の時点で、無増悪生存期間の中央値はKd群で15.8か月であったのに対して、DKd群は未到達で、統計学的にも明らかにDKd群のほうが良好でした(下図, HR 0.63, 95%CI 0.46-0.85, p=0.0027)。

CANDOR, Kd vs DKd, PFS

以上の結果から、Kd療法よりもDKd療法のほうが有効であると言えます。ダラツムマブもカルフィルゾミブも使用していない症例では、DKd療法が良い選択肢になります。

 

 

以上から、2021年3月時点で、レナリドミド不応となっている症例ではKd療法、DKd療法、DBD療法、EPd療法、イサツキシマブ+Pd療法などを化学療法として推奨します。

ボルテゾミブにもレナリドミドにも不応となっていたら、KD療法、DKd療法、EPd療法、イサツキシマブ+Pd療法などが選択肢です。

ダラツムマブの使用歴がある症例に対するイサツキシマブの有効性は臨床試験と比べると低くなるでしょう。

 

再発後の自家移植の後に維持療法を行うのであれば、Pd療法よりもEPd療法もしくはイサツキシマブ+Pd療法を行ったほうがよいでしょう。

 

レナリドミドに不応となっていなければレナリドミドを含む治療でもよいです。

一般的に同じ治療薬を再開しても初回より効果は低下することが多いです。

ボルテゾミブの使用歴があれば、ボルテゾミブで再治療するよりカルフィルゾミブのほうが奏効は高いです。

 

次項では、実際の化学療法の投与について解説します。

EPd療法 スケジュール
再発・難治性の多発性骨髄腫(MM) 化学療法の副作用と注意点

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まとめ 再発・難治性の多発性骨髄腫に対する化学療法

● ボルテゾミブにもレナリドミドにも不応となっていても、ポマリドミドカルフィルゾミブは有効と言えます。Pd療法よりもEPd療法イサツキシマブ+Pd療法のほうが奏効や無増悪生存期間が良好です。

● レナリドミド不応となっている症例ではKD療法DKd療法、DBD療法EPd療法、イサツキシマブ+Pd療法などを化学療法として推奨します。

● ボルテゾミブにもレナリドミドにも不応となっていたら、KD療法、DKd療法、EPd療法、イサツキシマブ+Pd療法などが選択肢です。

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