びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の診断 病理所見 鑑別診断

2019-10-15

Diffuse large B-cell lymphoma, HE 200

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)は比較的進行の早い悪性リンパ腫です。発症したら早めに診断し適切な治療を行うことが重要です。

本項ではびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の病理診断について解説します。生検した組織の病理画像を用いた解説と、最新の診断基準である2016年改訂WHO分類についての解説を行っています。類似疾患との区別(鑑別診断)についても解説します。

専門的な内容が多く含まれますが、悪性リンパ腫の中ではびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の診断は難しくはありません。診断までの流れがご理解いただければ十分です。

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 病理所見 フローサイトメトリ

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の診断のためには、「しこり」を切除し調べることが必要です。この診断のために腫瘤の一部を採取することを「生検」と言います。

CT検査の結果で悪性リンパ腫の可能性があれば、生検を行う時点で血液内科が関与し、生検した腫瘤の一部を遺伝子検査フローサイトメトリといった専門検査に提出することを推奨します。

これらの検査は原則として取れたてでなければ実施できませんし、血液内科でなければ提出する項目の選択とその結果の解釈が困難です。

生検したしこりは、ホルマリンに固定した後に薄く切ってスライドガラスに固定します。それを顕微鏡で拡大して確認します。顕微鏡でどのようにみえるのかを確認し診断することを「病理診断」と言います。

 

顕微鏡でみると通常あるべき正常組織がびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の細胞にびっしりと入れ替わっている状態になっています。

それらの細胞は「大型」(細胞核が通常のリンパ球の2倍以上)です。あたり一面にびっしりと広がっているため「びまん性」のという病名です(下図)。

びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫 腫瘤生検 HE 200 拡大

 

さらに拡大すると下の写真のようになります。別のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の病理スライドです。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 NOS HE x400

細胞核が通常のリンパ球の2倍以上となる大型の細胞が大部分を占めています。

 

免疫染色といって細胞に存在する蛋白を認識して色を付けることができる方法があります。

正常なB細胞やB細胞由来の腫瘍細胞はCD20という細胞表面の蛋白が存在します。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫はB細胞由来なのでCD20に対して免疫染色を行うと陽性になります。

びまん性に腫瘍が存在するので、あたり一面陽性(細胞表面が茶色に染まる)です(下図)。

びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫 腫瘍生検 CD20 200 拡大

CD20陽性となる大型の細胞がびまん性に存在していることが、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の病理スライドの所見です。この所見でびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の可能性が高いと病理診断されます。

 

CD20のかわりにCD79aを用いることもあります。どちらもB細胞に陽性の蛋白です。

CD20もしくはCD79aはほぼすべてのびまん性大細胞型B細胞リンパ腫で診断時には陽性です(Blood. 2003 Jan 1;101(1):78-84)。

免疫染色も含めた病理診断により、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫は血液専門の病理診断医の診断一致率は87%と濾胞性リンパ腫に次ぐ高さです(下図 Blood. 1997 Jun 1;89(11):3909-18)。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 診断一致率

高めとはいえ13%は一致してませんので、別のリンパ腫の可能性についても検討することが必要です。

 

 

「フローサイトメトリ」の結果は病理スライドが出来上がるより先にわかります。

フローサイトメトリというのは、細胞の表面や内部にある蛋白の発現率を見ることができる検査です。細胞の大きさもある程度わかります。

結果が返ってくるまでにかかる時間は、通常採取後数日以内です。

下図はリンパ節生検検体の病理写真(上)とフローサイトメトリ結果(下)です(Cytometry B Clin Cytom. 2019 Jan;96(1):20-29)

B細胞リンパ腫 フローサイトメトリ

異常リンパ球と正常リンパ球では、細胞に発現する蛋白の強さが異なります。

上図では正常リンパ球の集団が緑、異常リンパ球の集団が赤で反映されています。ほとんど異常細胞であることがわかります。

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫のフローサイトメトリ結果では、「大型」「B細胞」「多数」確認できます。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫ではCD20がフローサイトメトリでも強く発現します。

腫瘍性のB細胞は正常のB細胞と異なり、κ(カッパ)もしくはλ(ラムダ)に発現がかたよります。

κλというのは、抗体の一部を形成する「軽鎖」という蛋白です。正常B細胞の集団はκとλは同じくらいであまり大きく偏ることはありません。

腫瘍性B細胞の集団はκもしくはλに大きくかたよることが多いです。腫瘍の由来細胞がκ型かλ型かによって異なります。

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫であれば、生検のフローサイトメトリ結果で大型の異常B細胞が多数みられますので、この時点で診断はかなり濃厚になります。

確定診断はフローサイトメトリだけでなく、病理や遺伝子検査も含めて行います。

病理診断結果がでるまでの間(およそ1~2週間以内)に、全身の臓器機能評価や病変の広がりを見るための検査も行うことになります。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫が疑われる場合は生検を早めに行いましょう。診断が確定しないことには治療を始めることができません。

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 診断の基準 WHO分類 遺伝子検査

上記の病理診断やフローサイトメトリなどの結果を踏まえてびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と診断されていくのですが、診断の基準は2016年改訂WHO分類に基づいて行います(Blood. 2016 May 19;127(20):2375-90.)。

The 2016 revision of the World Health Organization classification of lymphoid neoplasms.

WHO分類はこれまでたびたび改訂しています。2020年時点で最新のものは2016年WHO分類です。

悪性リンパ腫の診断についても新しい発見が毎年のようにありますので、診断基準も改訂のたびに精度が上がっていきます。

2017年に2016年改訂WHO分類に基づいた書籍「WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues, 4th Edition」も出版されています。

 

びまん性大型の細胞が存在しておりそれらがCD20陽性であれば、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の診断になります。

正確にはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫にもサブタイプが存在するため、通常のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫には病名にNOS (not otherwise specified)がつくようになっています。

ただしサブタイプや類縁疾患の名称や診断基準はWHO分類の改訂のたびに変更されており、暫定的なものが多く含まれているといえます。

 

 

腫瘍細胞の遺伝子検査・染色体検査も生検のときに行います。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫では正常細胞にみられない遺伝子異常を獲得していることがしばしばあります。

その中でもよくみられて重要なものに、染色体転座t(14;18)があります。

染色体転座t(14;18)は濾胞性リンパ腫で高頻度にみられますが、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫でも30%くらいの症例にみられます。診断という意味ではあまり役には立ちませんが、予後や治療方法が変わる可能性があるため必ず調べます。

他にも3番染色体(3q27, BCL6領域)の転座8番染色体(8q24, MYC領域)の転座がそれぞれ20~40%, 5~15%でみられます(Blood. 1998 Nov 1;92(9):3152-62.)。

8q24染色体転座はバーキットリンパ腫などで高頻度にみられますが、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫でもみられます。診断という意味ではあまり役には立ちませんが、予後や治療方法が変わる可能性があるため必ず調べます。

染色体転座t(14;18), 8q24転座があったからといって、濾胞性リンパ腫もしくはバーキットリンパ腫と診断してはいけません。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の診断が確定できるような染色体転座もありません。

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の鑑別診断とサブタイプ(亜型)

免疫染色も含めた病理診断によりびまん性大細胞型B細胞リンパ腫は血液専門の病理診断医の診断一致率は87%と高めとはいえ、13%は一致してませんので別のリンパ腫の可能性についても検討することが必要です。

この似た疾患の可能性を検討していくことを「鑑別診断」と言います。

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の鑑別診断として、検討が必要な疾患の一つは「バーキットリンパ腫」という悪性リンパ腫です。

バーキットリンパ腫はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫よりももっと急激に増大するB細胞リンパ腫です。頻度は極めて低く年間発症率はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の30分の1くらいです。アフリカなどで多く発症します。

バーキットリンパ腫では染色体8q24転座がみられますが、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫でもみられます。

染色体8q24転座を伴うびまん性大細胞型B細胞リンパ腫では、必ずバーキットリンパ腫の可能性を検討します。顕微鏡でみると似たように見えて区別が難しいときがありますが、

バーキットリンパ腫とびまん性大細胞型B細胞リンパ腫では予後も治療方法も異なるので、これらの区別は重要です。

MIB-1という分裂細胞の指標となる蛋白を免疫染色することで区別します。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の場合、MIB-1陽性細胞は40%~95%ですが、バーキットリンパ腫の場合は95%以上(ほぼ100%)です(J Hematop. 2009 Dec 22;2(4):211-36)。

下図は典型的なびまん性大細胞型B細胞リンパ腫でMIB-1陽性は約70%です。見る場所によって陽性率が変わります。

びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫 腫瘍生検 MIB-1

 

下図は8q24転座を伴うびまん性大細胞型B細胞リンパ腫のMIB-1染色です。MIB-1陽性は約90%です。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 t(8;14), MIB-1 x400

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の鑑別診断として検討が必要な疾患に「マントル細胞リンパ腫」という悪性リンパ腫があります。

マントル細胞リンパ腫もB細胞由来の悪性リンパ腫です。似たような疾患ですがびまん性大細胞型B細胞リンパ腫とは予後や治療方法が異なるので、鑑別診断を行うことが重要です。

典型的にはマントル細胞リンパ腫は細胞の大きさは中型です。免疫染色でCyclin D1, SOX11, CD5に陽性となります。

一方でびまん性大細胞型B細胞リンパ腫はCyclin D1やCD5が陽性になるのはまれで、SOX11が陽性になるのは極めてまれです。

 

2012年に報告された研究では、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫Cyclin D1の陽性率は1.0~1.5%SOX11の陽性率は0%でした(Histopathology. 2012 Oct;61(4):685-93)。

一方でマントル細胞リンパ腫ではCyclin D1の陽性率は90%~100%, SOX11の陽性率は約90%で、全例でどちらかが陽性となります(Am J Surg Pathol. 2012 Feb;36(2):214-9)。

下図はマントル細胞リンパ腫のCyclin D1とSOX11染色です。細胞の中の核に陽性となります(Haematologica. 2009 Nov;94(11):1555-62)。

マントル細胞リンパ腫 Cyclin D1, SOX11

下図はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫のCyclin D1染色です。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 Cyclin D1 x200

上記のようにほかのB細胞リンパ腫との鑑別診断を行い、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の診断を確定させます。

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫にはいくつかのサブタイプ(亜型)があります。典型的なびまん性大細胞型B細胞リンパ腫とは異なる見え方をするものもあります。

病理での見え方で区別したり、発生した場所で区別したりとさまざまです。

これらのサブタイプはWHO分類が改訂されるたびに変わっています。頻度も少なく暫定的な分類となっています。

EBウイルスという、よくあるウイルスが関連してびまん性大細胞型B細胞リンパ腫になっているときもあるため、EBウイルスの免疫染色も行います(EBER-ISH).

 

サブタイプにより治療が変わってくることもあります。

原発性中枢神経系びまん性大細胞型B細胞リンパ腫血管内大細胞型B細胞リンパ腫原発性縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫などがその例です。

これらは病理診断というより、発生した部位に基づいた診断になります。

たとえば、原発性中枢神経系びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対しては、中枢神経系に効果的な薬剤を使用します。典型的なびまん性大細胞型B細胞リンパ腫とは治療が全く異なります。

サブタイプの診断基準は病理診断に基づくものと部位に基づくものが混在しています。サブタイプについてはいまだ研究段階のカテゴリーです(Blood. 2016 May 19;127(20):2375-90)。

 

まとめ びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 発症から診断まで

CD20陽性となる大型の細胞がびまん性に存在していることが、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の病理所見です。免疫染色も含めた病理診断により血液専門の病理診断医の診断一致率は87%と濾胞性リンパ腫に次ぐ高さです。

● 診断の基準は2016年改訂WHO分類に基づいて行います。病理所見、フローサイトメトリ、遺伝子検査結果などで診断を進めていきます。

「鑑別診断」としてバーキットリンパ腫、マントル細胞リンパ腫などのB細胞リンパ腫との区別も行い診断を確定させていきます。

参考文献

Lluís Colomo, Armando López-Guillermo, María Perales, et al.
Clinical impact of the differentiation profile assessed by immunophenotyping in patients with diffuse large B-cell lymphoma.
Blood. 2003 Jan 1;101(1):78-84.

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Blood. 1997 Jun 1;89(11):3909-18.

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The current role of clinical flow cytometry in the evaluation of mature B-cell neoplasms
Cytometry B Clin Cytom. 2019 Jan;96(1):20-29.

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Blood. 2016 May 19;127(20):2375-90.

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Shih-Chuan Hsiao, Inmaculada Ribera Cortada, Luis Colomo, et al.
SOX11 Is Useful in Differentiating Cyclin D1-positive Diffuse Large B-cell Lymphoma From Mantle Cell Lymphoma
Histopathology. 2012 Oct;61(4):685-93.

Weifen Zeng, Kai Fu, Leticia Quintanilla-Fend, et al.
Cyclin D1-negative Blastoid Mantle Cell Lymphoma Identified by SOX11 Expression
Am J Surg Pathol. 2012 Feb;36(2):214-9.

Ana Mozos, Cristina Royo, Elena Hartmann, et al.
SOX11 Expression Is Highly Specific for Mantle Cell Lymphoma and Identifies the Cyclin D1-negative Subtype
Haematologica. 2009 Nov;94(11):1555-62.

Leticia Quintanilla-Martinez, Daphne de Jong, Antoine de Mascarel, et al.
Gray Zones Around Diffuse Large B Cell Lymphoma. Conclusions Based on the Workshop of the XIV Meeting of the European Association for Hematopathology and the Society of Hematopathology in Bordeaux, France
J Hematop. 2009 Dec 22;2(4):211-36.

 

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