びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 (DLBCL) 診断と治療の概要

2019-10-30

Diffuse large B-cell lymphoma, biopsy, HE 200

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 (びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫, Diffuse large B-cell lymphoma, DLBCL)は、白血球の中のリンパ球が腫瘍化した疾患です。悪性リンパ腫のひとつで、悪性リンパ腫の中では最も多いものです。

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫はリンパ球のうちB細胞というものが腫瘍化したものです。正常なB細胞は抗体を出す、抗原を認識して提示するなどの作用があります。

腫瘍化するときに、大型化・急速な増殖といった性質を獲得し腫瘤を形成します。全身のリンパ節だけでなくどこにでも腫瘤を形成する可能性があります

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫は治療の進歩により、完全奏効に到達する割合がかなり高くなりました。再発率も低下し、生涯において再発することなく天寿を全うする症例も増えてきています。

ただしその一方で、難治症例も少なくなってはいますが依然として存在します。さらなる完治率の上昇を目指して、新規の治療法の研究も年々進んでいます。

 

CAR-T細胞療法の臨床応用はそのうちの一つです。

2017年にアメリカでCAR-T療法がびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対して承認されました。日本ではCAR-T療法は2019年に承認されました。

CAR-T療法はさらに進化をつづけており、新しいCAR-T療法の臨床試験が世界中で行われています。CAR-T療法をサポートする医療も同時に研究がすすんでいます。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫は、悪性腫瘍の治療の最先端にある状況です。

 

当サイトでは、国内・国外の文献やガイドラインを参照しつつ解説しています。個人で可能な範囲となりますが、できるかぎり新しい情報を更新していきます。

本項ではびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の診断と治療についての全体の概要を説明しています。詳細な内容については、各リンク先のページをご確認ください。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 発症から診断まで

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫は発症したときに体内のどこかに「腫瘤」ができています。

首などに「しこり」を自覚したり、あるいは発熱発汗などがあるかもしれません。

臓器に腫瘤ができた場合は機能が低下します。採血でそのような異常を指摘されるかもしれません。

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の診断には腫瘤の「生検」が必要です。

早めに診断し、早めに治療を行います。治療を遅らせないように、診断が濃厚な時点で確定診断を待っている間に治療前検査も行っていきます。

生検した腫瘤は、病理検査・フローサイトメトリ検査・各種遺伝子検査などに提出します。提出項目や結果の解釈は血液内科の専門医が行ったほうが良いでしょう。

確定診断はWHO分類に基づいておこないます。

 

非ホジキンリンパ腫 頻度
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL) 症状と発症頻度

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Diffuse large B-cell lymphoma, HE 200
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の診断 病理所見 鑑別診断

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通常のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と異なり、特徴的なびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の亜型(サブタイプ)がいくつか存在します。

中には治療方法が異なるものもあります。診断時点で区別しておくことが重要です。

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫 病理 鑑別
原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫 症状と検査から診断まで

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びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 ステージと予後

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の診断が濃厚になった時点、あるいは診断が確定した時点で、全身の臓器状態の評価と病変の広がりの指標であるステージ分類のための検査も行います。

「ステージ」は1から4段階まであります。ステージ1や2を「限局期」、ステージ3や4を「進行期」と呼びます。PET-CT検査はステージを確定させるために重要な検査です。可能であれば治療開始前にPET-CTを行うことを推奨します。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫のステージ確定は各種検査を行った後にLugano分類を用いて行います。Ann Arbor分類はもう使用しません。

びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫 骨髄浸潤 HE CD20 100
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫のステージ PET-CTとLugano分類

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びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の予後指標として「国際予後指標 (IPI)」「年齢調整国際予後指標(Age-adjusted IPI)」が昔から広く使われています。

近年、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対する「NCCN-IPI」が提唱されました。IPI、改訂IPI、NCCN-IPIのどれがよいかはいまだはっきりしていません。

 

中枢神経系への再発は通常の再発よりも明らかに予後が悪くなりますので、中枢神経系に発症する前に予防投薬することが重要です。

「CNS-IPI」のリスク因子のうち4つ以上あてはまる症例では、中枢神経系浸潤を起こす可能性が高いため、中枢神経系浸潤予防の投薬を行うことを推奨します。

 

遺伝子発現検査による分類で「胚中心B細胞型」「活性B細胞型」よりも予後が良好とされ、免疫染色を用いて「胚中心B細胞型(GCB)」か「非胚中心B細胞型(non-GCB)」か区別するHansアルゴリズムが遺伝子発現検査の代用として広く用いられるようになりました。

その後の研究で必ずしも「胚中心B細胞型(GCB)」と「非胚中心B細胞型(non-GCB)」で生存率に有意な差がみられないことがわかりました。細胞起源に基づいて予後を分けることに意味があるとは必ずしも言えません。

 

BCL2BCL6MYCが予後に関与している可能性が研究されてきました。

MYCとBCL2の両方を発現しているびまん性大細胞型B細胞リンパ腫は予後が悪い可能性があります。MYCとBCL2の両方とも転座がみられるびまん性大細胞型B細胞リンパ腫は「Double hit」と呼ばれ全生存率が特に低い可能性が指摘されています。

 

CD5, CD30, FOXP1や治療開始前のPET-CT検査で活動性の腫瘍量が多いほうが予後が悪い可能性が指摘されています。

 

IPI R-IPI NCCN-IPI 生存率 比較
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の予後、予後指標

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Hansアルゴリズム GCB non-GCB
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の予後と細胞起源 GCBとABC

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CNS-IPI
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の中枢神経系浸潤リスク評価とCNS-IPI

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びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫 BLC2 MYC染色
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の予後 BCL2とMYC

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原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の場合はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と比べて予後が悪いというわけではありません。

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の初回治療と治療効果判定

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の確定診断、ステージ、治療前検査がすんだら、治療をすみやかに開始します。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療は抗腫瘍薬による化学療法がメインです。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の場合は初回化学療法により約90%の症例で完全奏効を得ることができます。治療の目標は完全奏効に到達することです。

 

ステージ1や2(一部)で放射線照射が可能なびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対しては、R-CHOP療法を4~6サイクル行い追加の放射線照射は行わない、もしくはR-CHOP療法3サイクル+放射線照射が推奨されています。

ステージ2でも巨大病変(7cm以上)がある場合や、ステージ3~4のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対しては、R-CHOP療法6サイクルを推奨します。R-ACVBP療法+地固め療法もびまん性大細胞型B細胞リンパ腫のタイプによっては推奨されます。

 

心不全症例などではR-CHOP療法などができない場合があります。その場合はR-GCVP療法などを検討します。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対して自家造血幹細胞移植を初回治療の一部として行うことは推奨しません

中枢神経再発リスクの高いびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対しては、中枢神経に対する予防的抗腫瘍薬投与として、大量メソトレキセート(3.5 g/m²)点滴投与(およびメソトレキセート髄腔内投与)を推奨します。

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の化学療法中は、化学療法をサポートする医療も行います。副作用に注意しながら治療を完遂しましょう。

 

原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の初回治療も多少の違いがありますが基本的には通常のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と同様です。

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療の目標は「完全奏効(CMR)」に到達することです。治療効果判定にはPET-CT検査を行い国際基準である「Lugano基準」を用いて判定を行います。PET-CT検査を行うタイミングは最終化学療法から6~8週間後です。

初回治療が終了する前にPET検査(interim PET)を行う必要はないでしょう。途中で治療を強化しても生存率が改善するわけではありません。

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対する維持療法は、無増悪生存期間を延長させることはできますが、全生存率を改善させるとは言えません

治療後経過観察中は無症状の状態で定期的にCT検査やPET検査などを行う必要はありません

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療後の再発の多くは治療終了後2年以内が多いです。初回治療終了後2年間再発なく経過すれば一般の生存率にかなり近くなります

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 再発・難治性の治療

残念ながらすべてのびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の症例で初回治療により完治するというわけではありません。再発あるいは難治性の症例もありえるというが現在の医学の状況です。

再発の確定には生検結果の確認が必要です。CTなどで再発が疑われても、必ず生検を行い確認します

再発が確定したら治療開始前の時点でのPET-CT検査を行うことを推奨します。

 

再発したびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対しては、抗がん剤化学療法に奏効する場合、化学療法だけで治療するよりも自家造血幹細胞移植も行ったほうが奏効、生存率ともに良好です。

再発・難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対する治療は、自家造血幹細胞移植を前提とします。

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対する再発後の化学療法はR-GDP療法を推奨します

R-GDP療法の奏効はR-DHAP療法と「同等」と言えます。重症な有害事象はGDP療法のほうがDHAP療法よりも少ないです。

R-ICE療法はR-DHAP療法とどちらが良いかははっきりしていませんが、重症な有害事象はR-DHAP療法よりも少ないです。何らかの理由でR-GDP療法ができない場合はR-ICE療法を推奨します。

 

抗腫瘍薬化学療法行い奏効が確認できれば、幹細胞採取自家造血幹細胞移植へすすんでいきます。

悪性リンパ腫の自家移植の前処置としてはBEAMが世界で最も広く使用されています。しかしながら、BEAMに用いる薬剤であるカルムスチンは日本では未承認です。かわりの前処置を用いることになります。

 

 

初回治療で完全奏効(CMR)に到達しない症例がおよそ10%でみられます。そのような症例でも部分奏効(PMR)に到達している場合と、到達していない場合で治療方針や予後が異なります。

部分奏効(PMR)の場合は、集積部の生検で残存病変が本当にあるかどうか確認することを推奨します。残存が確認できれば、再発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療と同様に、自家造血幹細胞移植を前提とした治療を行います。

「奏効なし(NMR)」「増悪(PMD)」の場合は、化学療法により部分奏効以上に到達すれば自家造血幹細胞移植へ進みますが、高い確率で奏効しないことが予想されますのでそれに備えて別の治療の準備も考慮します。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 病理 HE
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化学療法抵抗性となった症例や自家移植後再発の症例には、CAR-T細胞療法もしくは同種造血幹細胞移植が治療の選択肢となります。新規薬剤の研究も進んでいます。

前向き試験での奏効率と有害事象などを考慮すると、CAR-T細胞療法のほうが同種造血幹細胞移植よりも推奨されます。

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再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を対象とした治療は毎年のように新しい臨床試験の結果がでていますが、その中で特に期待できるものにポラツズマブ ベドチンタファシタマブがあります。

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再発あるいは難治性の原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の治療も基本的には通常のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と同様です。

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