初発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 新規治療の臨床試験結果

2019-10-22

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 リンパ節 HE x400

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の治療は次々と進んでいます。初回治療についても同様です。

本項ではびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の初回治療の新規治療の臨床試験について記載していますが、本項に記載している大規模ランダム化臨床試験は全てR-CHOP療法を超える有効性をしめすことができませんでした。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対する最も有効な初回治療については「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の治療 限局期の場合」「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の治療 進行期の場合」をご覧ください。

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の強力化学療法による新規治療の成績

R-Hyper-CVAD療法急性リンパ芽球性白血病(急性リンパ性白血病)に用いる強力化学療法です。

R-Hyper-CVADの奇数サイクルはR-CHOPと似た薬剤を使用しますが投与量が多く、その分毒性も強くなります。

R-Hyper-CVADの偶数サイクルでは大量メソトレキセート・大量シタラビンによる治療を行います。

 

MDアンダーソンがんセンターで、60歳以下のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫症例に対してR-CHOP療法もしくはR-Hyper-CVAD療法にランダム化した臨床試験が行われ2013年にその結果が出版されました(Br J Haematol. 2013 Dec;163(5):611-20)。

ただしこの試験は早期中止となっています。

 

完全奏効率はR-Hyper-CVAD療法では82%, R-CHOP療法では60%でした。R-CHOP療法の完全奏効率が低いですが、有意な差ではありませんでした(p=0.13)。

R-Hyper-CVAD療法による血球減少はR-CHOP療法よりも著しいです。

重症な感染症(発熱性好中球減少症)がR-Hyper-CVAD療法では49%に、R-CHOP療法では20%にみられました。

R-Hyper-CVAD療法では46歳以上の12%が治療毒性により命を落としました。

少数で早期中止となっていますが、解析可能症例の3年無増悪生存率はR-Hyper-CVAD療法で75.7%, R-CHOP療法で77.8%であり、有意な差はありませんでした(p=0.5317).

3年全生存率はR-Hyper-CVAD療法で80.7%, R-CHOP療法で70.0%であり、有意な差はありませんでした(下図 左 無増悪生存、右 全生存).

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 R-Hyper-CVAD vs R-CHOP, PFS, OS

R-Hyper-CVAD療法はR-CHOP療法と比べて生存率を改善させるとは言えませんが、有害事象は明らかに増加します。

R-Hyper-CVAD療法による治療はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対しては推奨されません

 

 

DA-EPOCH-R療法という抗がん剤の96時間持続投与を必要とする強力化学療法があります。

使用する薬剤はR-CHOP療法にエトポシドが追加になったものですが、投与量が異なります。

血球減少の具合に応じて耐えられる限り多い量にサイクルごとに増量していきます。DAというのはDose-adjustedの略です。

DA-EPOCH-R療法ではR-CHOP療法よりも抗がん剤の投与量は通常多くなります。

 

2019年にDA-EPOCH-R療法とR-CHOP療法を比較した大規模ランダム化臨床試験(CALGB 50303試験)の結果が報告されました(J Clin Oncol. 2019 Jul 20;37(21):1790-1799.)。

結果、完全奏効率はR-CHOP療法で88%、DA-EPOCH-R療法で82%でした。

5年時点での無増悪生存率はR-CHOP療法で66%、DA-EPOCH-R療法で68%であり、有意な差はありませんでした(下図 p=0.65).

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 DA-EPOCH-R vs R-CHOP, PFS

5年時点での全生存率はR-CHOP療法で78.5%、DA-EPOCH-R療法で77.5%であり、有意な差はありませんでした(下図 p=0.64).

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 DA-EPOCH-R vs R-CHOP, OS

重症な有害事象はR-CHOP療法で78.2%、DA-EPOCH-R療法で98.3%であり、統計学的にも明らかにDA-EPOCH-R療法のほうが重症な有害事象の発生率が高い結果でした(p<0.001).

DA-EPOCH-R療法ではビンクリスチンの投与量もR-CHOP療法よりも多いためか、重症な末梢神経障害の発生率はR-CHOP療法で3.3%、DA-EPOCH-R療法で18.6%と、統計学的にも明らかにDA-EPOCH-R療法のほうが多い結果でした(p<0.001)。

ビンクリスチンによる末梢神経障害はなかなか改善しないため発生すると生活の質が低下します。

発熱性好中球減少症はR-CHOP療法で17.7%、DA-EPOCH-R療法で35.0%にみられました(p<0.001)。

 

DA-EPOCH-R療法はR-CHOP療法と比べて完全奏効率、無増悪生存率、全生存率のいずれも改善させるわけではありませんが、重症感染症などの重症な有害事象の発生率は明らかに多いです。

DA-EPOCH-R療法による治療はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対しては推奨されません

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対するボルテゾミブの臨床試験結果

ボルテゾミブ(商品名:ベルケイド)多発性骨髄腫に対して主に使用される薬剤ですが、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の非胚中心B細胞型(non-GCB)に奏効することが期待されました。

ボルテゾミブは末梢神経障害を起こすことがあり、ビンクリスチンと副作用が重なります。

R-CHOP療法のビンクリスチンをボルテゾミブに置き換えた「VR-CAP療法」がマントル細胞リンパ腫に対して使用されることがあります。

 

2015年に非胚中心B細胞型(non-GCB)のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対してR-CHOP療法VR-CAP療法を比較したランダム化臨床試験の結果が出版されています(Blood. 2015 Oct 15;126(16):1893-901)。

結果、完全奏効率はR-CHOP療法で66.2%とVR-CAP療法で64.5%とあまり変わりませんでした。Non-GCBタイプなので完全奏効率は両群とも低めです。

無増悪生存率、全生存率、重症な有害事象の発生率もほとんど変わりありませんでした(下図 上 無増悪生存、下 全生存)。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 non-GCB VR-CAP vs R-CHOP, PFS

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 non-GCB VR-CAP vs R-CHOP, OS

 

さらに2017年には非胚中心B細胞型(non-GCB)のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対してR-CHOP療法ボルテゾミブ+R-CHOP療法を比較したランダム化臨床試験の結果が出版されています(J Clin Oncol. 2017 Nov 1;35(31):3538-3546)。

結果、完全奏効率はR-CHOP療法で49%, ボルテゾミブ+R-CHOP療法で56%でした。やはりNon-GCBタイプなので完全奏効率は両群とも低めです。

2年無増悪生存率はR-CHOP療法で77.6%, ボルテゾミブ+R-CHOP療法で82.0%であり、あまり変わりませんでした(下図).

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 non-GCB VR-CHOP vs R-CHOP, PFS

2年全生存率もR-CHOP療法で88.4%, ボルテゾミブ+R-CHOP療法で93.0%であり、あまり変わりませんでした(下図).

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 non-GCB VR-CHOP vs R-CHOP, OS

重症な末梢神経障害の発生率はR-CHOP療法で1%, ボルテゾミブ+R-CHOP療法で5%でした。

重症な血小板減少・貧血の発生もボルテゾミブ+R-CHOP療法でR-CHOP療法の2倍くらいになります。

 

ボルテゾミブを含む化学療法はR-CHOP療法と比べて無増悪生存率、全生存率のいずれも改善させるわけではありません

末梢神経障害や血球減少が強くなる可能性があります。比較的新しい薬剤なので金額が高くなります。

ボルテゾミブを含む化学療法はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対しては推奨されません

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対するオビヌツズマブやイブルチニブなど

オビヌツズマブ(商品名:ガザイバ)という新規のCD20に対する抗体薬があります。

オビヌツズマブはリツキシマブと比べて直接作用も間接作用も強く、抗腫瘍効果もより高いと考えられました。

 

オビヌツズマブがリツキシマブにかわる治療になり得るかどうか大規模ランダム化臨床試験が行われ2017年に結果が出版されました(J Clin Oncol. 2017 Nov 1;35(31):3529-3537)。

GOYA試験と名付けられたこの臨床試験では、R-CHOP療法G-CHOP療法を比較しました。Gはガザイバの頭文字です。

2020年には長期報告が出ています(J Hematol Oncol. 2020 Jun 6;13(1):71)。

結果、5年無増悪生存率はR-CHOP療法では62.6%, G-CHOP療法では63.8%と両群ともあまり変わりありませんでした(下図)。

GOYA DLBCL R-CHOP vs G-CHOP, PFS

5年全生存率はR-CHOP療法では77.7%, G-CHOP療法では77.0%と両群ともあまり変わりありませんでした(下図)。

GOYA DLBCL R-CHOP vs G-CHOP, OS1

しかしながら、重症な有害事象はオビヌツズマブ群のほうが多く発生しました。リツキシマブ群では65.8%に重症な有害事象が発生したのに対して、オビヌツズマブ群では75.1%に発生しました。

リツキシマブをオビヌツズマブに変えても生存率が改善するとは言えませんが、有害事象は多くなります

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対してオビヌツズマブはリツキシマブよりも良い治療とは言えず、推奨されません

 

そもそもびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対してCD20に対する抗体薬を強くする意味がないと考えられます。

2020年にリツキシマブを増量したRR-CHOP療法(リツキシマブを1日目と8日目に投与)を標準的なR-CHOP療法と比較したランダム化臨床試験(HOVON-84)の結果が出版されました(J Clin Oncol. 2020 Jul 30;JCO1903418)。

完全奏効率はR-CHOP療法で89%, RR-CHOP療法で86%とほとんど変わりませんでした(p=0.44)。

3年無増悪生存率はR-CHOP療法で74%, RR-CHOP療法で71%とほとんど変わりませんでした(下図 p=0.44)。

HOVON-84 R-CHOP vs RR-CHOP, PFS

3年生存率はR-CHOP療法で81%, RR-CHOP療法で75%と有意な差はありませんでしたがRR-CHOP療法のほうが低い傾向にありました(下図 p=0.09)。

HOVON-84 R-CHOP vs RR-CHOP, OS

リツキシマブを増やすと有害事象は少し増えます。

通常のR-CHOP療法よりもCD20抗体薬を強化しても効果がないだけでなくかえって毒性が強くなる可能性があります。

 

 

イブルチニブ(商品名:イムブルビカ)はブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤というタイプの薬剤です。

B細胞の細胞シグナル伝達にブルトン型チロシンキナーゼが関与していることから、イブルチニブがびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に有効であると推測されました。

第1/2相試験でも有効性が期待されていました。

 

2019年に非胚中心B細胞型(non-GCB)のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対して、R-CHOP療法に加えてイブルチニブもしくは偽薬を追加投与する大規模ランダム化臨床試験(PHOENIX試験)の結果が出版されています(J Clin Oncol. 2019 May 20;37(15):1285-1295)。

結果、完全奏効率はイブルチニブ+R-CHOP療法で67.3%, 偽薬+R-CHOP療法で68.0%とあまり変わりませんでした(p=0.8229).

増悪や再発や残存病変に対する追加治療がなく生存している割合は両群間であまりかわりませんでした(下図).

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 non-GCB R-CHOP + Iburutinib vs Placebo, EFS

全生存率についても両群間であまりかわりなく、3年生存率は両群とも約80%でした(下図)。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 non-GCB R-CHOP + Iburutinib vs Placebo, OS

有害事象はイブルチニブ+R-CHOP療法に多くみられました。

発熱性好中球減少症はイブルチニブ+R-CHOP療法では18.8%でしたが、偽薬+R-CHOP療法では10.5%でした。

 

イブルチニブをR-CHOP療法に追加しても生存率の改善はみられませんが、有害事象は増えます

イブルチニブを含む化学療法はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対しては推奨されません

 

まとめ 初発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 新規治療の臨床試験結果

● R-Hyper-CVAD療法DA-EPOCH-R療法はR-CHOP療法と比べて生存率を改善させるとは言えませんが、有害事象は明らかに増加します。R-Hyper-CVAD療法やDA-EPOCH-R療法はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対しては推奨されません。

● ボルテゾミブを含む化学療法はR-CHOP療法と比べて無増悪生存率、全生存率のいずれも改善させるわけではありません。末梢神経障害や血球減少が強くなる可能性があります。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対しては推奨されません。

● リツキシマブをオビヌツズマブに変えても生存率が改善するとは言えませんが有害事象は多くなります。イブルチニブをR-CHOP療法に追加しても生存率の改善はみられませんが有害事象は増えます。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対しては推奨されません。

参考文献

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Blood. 2015 Oct 15;126(16):1893-901.

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Obinutuzumab or Rituximab Plus Cyclophosphamide, Doxorubicin, Vincristine, and Prednisone in Previously Untreated Diffuse Large B-Cell Lymphoma
J Clin Oncol. 2017 Nov 1;35(31):3529-3537.

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A Randomized, Open-Label, Phase III Study of Obinutuzumab or Rituximab Plus CHOP in Patients With Previously Untreated Diffuse Large B-Cell Lymphoma: Final Analysis of GOYA
J Hematol Oncol. 2020 Jun 6;13(1):71.

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J Clin Oncol. 2020 Jul 30;JCO1903418. doi: 10.1200/JCO.19.03418.

Anas Younes, Laurie H Sehn, Peter Johnson, et al.
Randomized Phase III Trial of Ibrutinib and Rituximab Plus Cyclophosphamide, Doxorubicin, Vincristine, and Prednisone in Non-Germinal Center B-Cell Diffuse Large B-Cell Lymphoma
J Clin Oncol. 2019 May 20;37(15):1285-1295.


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