初発のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対して自家造血幹細胞移植は必要か?

2020-08-27

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 高リスク DLCL04 自家造血幹細胞移植 vs 化学療法

昔は高リスクのびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対して、初回化学療法後に自家造血幹細胞移植を行われることがありました。

自家造血幹細胞移植は大量化学療法を併用しますので、有害事象は一般的に自家造血幹細胞移植を行ったほうが増えます。

本項では初発のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対する自家造血幹細胞移植について解説します。

現在はたとえ高リスク(国際予後指標で点数が高い)症例であっても初発から自家造血幹細胞移植を行うことは推奨されません

医学文献を参照に過去の自家造血幹細胞移植の治療成績も含めて解説していきます。

 

進行の早い(アグレッシブ)悪性リンパ腫に対する自家造血幹細胞移植は有効か?

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対して抗がん剤投与だけでなく、大量化学療法を併用した自家造血幹細胞移植が昔から研究されてきました。

自家造血幹細胞移植は大量の抗がん剤投与を可能にする治療方法です。

自分の造血幹細胞を移植すること自体に抗腫瘍効果はほとんどなく、血球細胞を回復させることが主な目的です。

自家造血幹細胞移植の抗腫瘍効果は大量化学療法によって得られます

通常の化学療法よりもはるかに強い抗がん剤を投与することが自家造血幹細胞移植により可能になります。

 

1994年にアグレッシブリンパ腫で抗がん剤化学療法により完全奏効に到達した症例を対象に自家造血幹細胞移植追加化学療法を比較した大規模ランダム化臨床試験の結果が出版されました(J Clin Oncol. 1994 Dec;12(12):2543-51, J Clin Oncol. 1997 Mar;15(3):1131-7)。

結果は、無再発生存率も全生存率も両群間であまりかわりませんでした

5年無再発生存率は自家造血幹細胞移植群で62%、化学療法群で54%でした(下図 p=0.20)。

アグレッシブリンパ腫 LNH87-2 自家造血幹細胞移植 vs 化学療法 DFS

5年全生存率は自家造血幹細胞移植群で69%、化学療法群で67%でした(p=0.80)。

アグレッシブリンパ腫 LNH87-2 自家造血幹細胞移植 vs 化学療法 OS

 

高リスク症例に限定したサブ解析では無再発生存率、全生存率ともに自家造血幹細胞移植群のほうが化学療法群よりも良好でした(J Clin Oncol. 2000 Aug;18(16):3025-30)。

高リスク症例の8年無再発生存率は自家造血幹細胞移植群で55%、化学療法群で39%であり、自家造血幹細胞移植群のほうが化学療法群よりも統計学的にも明らかに良好でした(下図, p=0.02).

アグレッシブリンパ腫 高リスク LNH87-2 自家造血幹細胞移植 vs 化学療法 DFS

高リスク症例の8年全生存率は自家造血幹細胞移植群で64%、化学療法群で49%であり、自家造血幹細胞移植群のほうが化学療法群よりも統計学的にも明らかに良好でした(下図, p=0.04).

アグレッシブリンパ腫 高リスク LNH87-2 自家造血幹細胞移植 vs 化学療法 OS

ただし全体の生存解析に有意な差がない場合に、サブ解析を行った群で有意差が生じたとしても信頼性は乏しいです。

はじめから高リスク症例に限定して臨床試験を行うことが望ましいです。

上記の臨床試験からは、アグレッシブリンパ腫に対して自家造血幹細胞移植を行っても化学療法のみで治療するよりも有効とは言えません

 

そのほか比較的規模の大きなランダム化臨床試験として、アグレッシブリンパ腫に対してCHVmP/BV療法という第2世代化学療法で部分奏効以上の効果が得られた症例に、CHVmP/BV療法を追加するかもしくは自家造血幹細胞移植で比較した試験の結果が2001年に出版されました(下図, J Natl Cancer Inst 2001; 93: 22–30)。

アグレッシブリンパ腫 EORTC CHVmP BV vs BEAC 自家造血幹細胞移植

5年無増悪生存率は、CHVmP/BV療法群で56%, 自家造血幹細胞移植群で61%でした。

5年全生存率は、CHVmP/BV療法群で77%, 自家造血幹細胞移植群で68%でした(下図)。

アグレッシブリンパ腫 EORTC CHVmP BV vs BEAC 自家造血幹細胞移植, OS

無増悪生存率・全生存率ともに有意な差はありませんでした

アグレッシブリンパ腫に対して自家造血幹細胞移植を行っても化学療法のみで治療するよりも有効とは言えません。

 

通常量抗がん剤化学療法のみで治療する場合と比べて、大量化学療法・自家造血幹細胞移植は一般に有害事象が多く発生します

全生存率が変わらないのであれば、有害事象が多い治療は避けたほうが良いです。

 

その後、CHOP療法やACVBP療法と自家造血幹細胞移植の比較試験も結果が出ています。

 

初発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対する自家移植 CHOPやACVBPとの比較

2002年にアグレッシブリンパ腫に対して、ACVBP療法CEOP療法後に大量化学療法併用自家造血幹細胞移植を比較した大規模ランダム化臨床試験の結果が出版されました(J Clin Oncol. 2002 May 15;20(10):2472-9).

CEOP療法というのはCHOP療法のドキソルビシンをエピルビシンに変えた治療方法です。

完全奏効率はACVBP療法群で64%, 自家造血幹細胞移植群で63%でした。

5年無増悪生存率はACVBP療法群で52%, 自家造血幹細胞移植群で39%であり、ACVBP療法のほうが統計学的にも明らかに良好でした(下図, p=0.008).

アグレッシブリンパ腫 LNH93-3 自家造血幹細胞移植 vs ACVBP, EFS

5年全生存率はACVBP療法群で60%, 自家造血幹細胞移植群で46%であり、ACVBP療法のほうが統計学的にも明らかに良好でした(下図, p=0.01).

アグレッシブリンパ腫 LNH93-3 自家造血幹細胞移植 vs ACVBP, OS

ACVBP療法を用いる場合は、自家造血幹細胞移植を行ったほうが生存率は低下します

 

CHOP療法の場合はどうでしょうか?

2004年にCHOP療法CEEP療法後に大量化学療法併用自家造血幹細胞移植を比較したランダム化臨床試験の結果が出版されています(下図 N Engl J Med. 2004 Mar 25;350(13):1287-95)。

アグレッシブリンパ腫 GOELAMS 072 自家造血幹細胞移植 vs 化学療法

CEEP療法はシクロホスファミド、エピルビシン、ビンデシン、プレドニゾンによる治療です。

結果、完全奏効率はCHOP療法群で57%, 自家造血幹細胞移植群で75%でした。有意な差はありません(p=0.37)。

5年の時点で部分奏効未満や増悪がなく生存している割合は、CHOP療法群で37%, 自家造血幹細胞移植群で55%であり、自家造血幹細胞移植群のほうが良好でした(下図, p=0.037).

アグレッシブリンパ腫 GOELAMS 072 自家造血幹細胞移植 vs 化学療法, EFS

5年全生存率はCHOP療法群で56%, 自家造血幹細胞移植群で71%であり、自家造血幹細胞移植群のほうが良い傾向にありましたが有意な差はありませんでした(p=0.076).

高リスクに限定してサブ解析を行うと、生存率は自家造血幹細胞移植群のほうが良好でした。

ただし全体で生存解析に有意な差がない場合に、サブ解析を行った群で有意差が生じたとしても信頼性は乏しいです。

 

以上から第一世代~第三世代の通常の化学療法による治療の場合は、その後に自家造血幹細胞移植を行っても無増悪生存率は上昇するかもしれませんが全生存率は有意には変わりません

ACVBP療法の場合は、自家造血幹細胞移植を行ったほうが生存率は下がります

 

そのほかいくつかの大規模ランダム化臨床試験がありますが、やはり自家造血幹細胞移植を行っても生存率の改善はありませんでした(J Clin Oncol. 2002 Nov 15;20(22):4413-9, Ann Oncol. 2005 Dec;16(12):1941-8, Cochrane Database Syst Rev. 2008 Jan 23;(1):CD004024).

 

そしてリツキシマブを用いた初回化学療法の時代となってからの臨床試験の結果が出てきます。

 

現代治療で初発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の高リスク症例に自家造血幹細胞移植を行うべきか? 

2017年に高リスク(年齢調整IPI 2~3)のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対して、R-CHOP療法もしくはR-MegaCHOP療法を行い、4サイクル後に部分奏効以上を達成した場合に自家造血幹細胞移植を行うか化学療法を継続するかでランダム化した臨床試験があります。

R-CHOPかR-MegaCHOPか、自家移植か化学療法継続かについては、最初に割り振られました(下図)。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 高リスク DLCL04 自家造血幹細胞移植 vs 化学療法

結果、2年の時点で増悪なく生存している割合は、化学療法のみで治療した群は62%, 自家造血幹細胞移植群は71%であり、統計学的にも明らかに自家造血幹細胞移植群のほうが良好でした(下図, HR 0.65, 95%CI 0.47-0.91, p=0.012)。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 高リスク DLCL04 自家造血幹細胞移植 vs 化学療法, FFS

5年全生存率は化学療法のみで治療した群で77%, 自家造血幹細胞移植群は78%であり、統計学的な差はありませんでした(HR 0.98, 95%CI 0.65-1.48, p=0.91)。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 高リスク DLCL04 自家造血幹細胞移植 vs 化学療法, OS

有害事象は自家造血幹細胞移植群のほうが明らかに多く発生します

たとえ短期的に無増悪生存率が良かったとしても、全生存率が有意に変わらないのであれば、有害事象が多い治療は避けたほうが良いです。

 

現在のリツキシマブを含む化学療法の治療では、高リスクであったとしてもびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の初回治療で自家造血幹細胞移植まで行うことは推奨されません。

R-CHOP療法もしくはR-ACVBP療法のみでよいでしょう。

 

2020年7月時点でのアメリカのNCCNガイドライン(NCCN Guidelines)では、初発のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対する自家造血幹細胞移植を推奨していません。

日本血液学会の2018年造血器腫瘍診療ガイドラインでは、「若年者高リスク群(IPI:High/Intermediate, High)においてもエビデンスは不十分であり,一般診療として行うことは勧められない」としています。

 

まとめ 初発のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(に対して自家造血幹細胞移植は必要か?

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対して大量化学療法を併用した自家造血幹細胞移植が昔から研究されてきました。

● 第一世代~第三世代の通常の化学療法による治療の場合は、その後に自家造血幹細胞移植を行っても無増悪生存率は上昇するかもしれませんが全生存率は有意には変わりません。ACVBP療法の場合は自家造血幹細胞移植を行ったほうが生存率は下がります。

● 現在のリツキシマブを含む化学療法の治療では高リスクであったとしてもびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の初回治療で自家造血幹細胞移植まで行うことは推奨されません

参考文献

C Haioun, E Lepage, C Gisselbrecht, et al.
Comparison of autologous bone marrow transplantation with sequential chemotherapy for intermediate-grade and high-grade non-Hodgkin's lymphoma in first complete remission: a study of 464 patients. Groupe d'Etude des Lymphomes de l'Adulte
J Clin Oncol. 1994 Dec;12(12):2543-51.

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Benefit of autologous bone marrow transplantation over sequential chemotherapy in poor-risk aggressive non-Hodgkin's lymphoma: updated results of the prospective study LNH87-2. Groupe d'Etude des Lymphomes de l'Adulte
J Clin Oncol. 1997 Mar;15(3):1131-7.

C Haioun, E Lepage, C Gisselbrecht, et al.
Survival benefit of high-dose therapy in poor-risk aggressive non-Hodgkin's lymphoma: final analysis of the prospective LNH87-2 protocol--a groupe d'Etude des lymphomes de l'Adulte study
J Clin Oncol. 2000 Aug;18(16):3025-30.

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Standard chemotherapy with or without high-dose chemotherapy for aggressive non-Hodgkin's lymphoma: randomized phase III EORTC study
J Natl Cancer Inst. 2001 Jan 3;93(1):22-30.

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Shortened first-line high-dose chemotherapy for patients with poor-prognosis aggressive lymphoma
J Clin Oncol. 2002 May 15;20(10):2472-9.

Noel Milpied, Eric Deconinck, Fanny Gaillard, et al.
Initial treatment of aggressive lymphoma with high-dose chemotherapy and autologous stem-cell support
N Engl J Med. 2004 Mar 25;350(13):1287-95.

Ulrich Kaiser, Irmgard Uebelacker, Ulrich Abel, et al.
Randomized study to evaluate the use of high-dose therapy as part of primary treatment for "aggressive" lymphoma
J Clin Oncol. 2002 Nov 15;20(22):4413-9.

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Upfront high-dose sequential therapy (HDS) versus VACOP-B with or without HDS in aggressive non-Hodgkin's lymphoma: long-term results by the NHLCSG
Ann Oncol. 2005 Dec;16(12):1941-8.

A Greb, J Bohlius, D Schiefer, et al.
High-dose chemotherapy with autologous stem cell transplantation in the first line treatment of aggressive non-Hodgkin lymphoma (NHL) in adults.
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Annalisa Chiappella, Maurizio Martelli, Emanuele Angelucci, et al.
Rituximab-dose-dense Chemotherapy With or Without High-Dose Chemotherapy Plus Autologous Stem-Cell Transplantation in High-Risk Diffuse Large B-cell Lymphoma (DLCL04): Final Results of a Multicentre, Open-Label, Randomised, Controlled, Phase 3 Study
Lancet Oncol. 2017 Aug;18(8):1076-1088.

造血器腫瘍診療ガイドライン

NCCN Guidelines


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