びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の治療中間PET検査(interim PET)

PETAL, R-CHOP vs Burkitt protocol, OS

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の初回治療の途中でPET検査を行い、その結果でその後の生存率がどうなるのか、あるいは陽性だったときに治療を強化すると予後は改善するのか、ということが臨床試験で調査されたことがあります。

治療途中のPET検査のことを「interim PET」と呼びます。現在はinterim PETを行うことは推奨されてはいません。

本項では、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の初回治療のinterim PETの研究結果と推奨について解説します。

本項でも、ガイドラインや前向き研究の文献を中心に解説していきます。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の初回治療終了後の効果判定については「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の初回治療の効果判定」をご覧下さい。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫のinterim PETの結果とその後の生存率

治療中間PET検査(interim PET)の結果で、その後の予後に違いはあるのでしょうか?

 

2002年にアグレッシブリンパ腫に対する治療中間のPET検査(interim PET)の前向き試験の結果が出版されています(Ann Oncol. 2002 Sep;13(9):1356-63)。

治療中間PET(interim PET)で陽性だった症例は、陰性だった症例と比べて、無増悪生存率に明らかに大きな差が確認されました(下図)。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 interim PET, 陰性 vs 陽性, PFS

同様に全生存率にも明らかに大きな差が確認されました(下図)。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 interim PET, 陰性 vs 陽性, OS

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対してその後の臨床試験でもinterim PETの結果で予後が明らかに変わることが2005年に報告されました(Blood. 2005 Aug 15;106(4):1376-81)。

この臨床試験では初回化学療法2サイクル後に中間評価のPET検査を行いました。

この時点でPETが陰性であれば、治療終了後完全奏効達成率は83%でした。中間PETが陽性であれば、治療終了後完全奏効達成率は58%と低くなりました。

無増悪生存期間にも有意な差がみられました。2年無増悪生存率はinterim PET陰性症例で82%, 陽性症例で43%と、統計学的にもあきらかにinterim PET陰性症例のほうが良好でした(下図, p<0.001)。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 GELA interim PET, 陰性 vs 陽性, PFS

同様に全生存率も明らかに異なりました。2年全生存率はinterim PET陰性症例で90%, 陽性症例で61%と、統計学的にもあきらかにinterim PET陰性症例のほうが良好でした(下図, p=0.006)。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 GELA interim PET, 陰性 vs 陽性, OS

 

中間PET (interim PET)の結果により、その後の奏効率、無増悪生存率、全生存率は異なると言えます。

 

治療終了後PETと比較するとどうでしょうか?

2011年に中間PET-CT (interim PET-CT)を行った臨床試験の結果が出ています(J Nucl Med. 2011 Mar;52(3):386-92)。初回化学療法2~3サイクル後にinterim PET-CTを行いました。

無増悪生存率は中間PET-CTが陰性であるほうが陽性よりも有意に良好でした(下図, p=0.04).

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 interim PET-CT, 陰性 vs 陽性, PFS

全生存率については中間PET-CTが陰性であるほうが陽性よりも良好でしたが統計学的に有意ではありませんでした(下図, p=0.08).

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 interim PET-CT, 陰性 vs 陽性, OS

この臨床試験では、治療終了後のPET-CTの結果も確認しています。中間PET-CTで陽性であったとしても、治療後PET-CTでは陰性になっている症例が約2/3にみられました。

無増悪生存率は治療終了後PET-CTが陰性であるほうが陽性よりも有意に良好でした(下図, p<0.00001).

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 治療終了後PET-CT, 陰性 vs 陽性, PFS

全生存率も治療終了後PET-CTが陰性であるほうが陽性よりも有意に良好でした(下図, p<0.00001).

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 治療終了後PET-CT, 陰性 vs 陽性, OS

中間PET-CTよりも治療後PET-CTのほうが統計学的にも差が明らかで、その後の予後の差を明確にしています

中間評価よりも治療後評価のほうが重要と言えます。

 

ではinterim PETの結果で治療の強化を行うとどうなるでしょう?

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫のinterim PET結果で治療を変えると予後は改善するか?

2018年にアグレッシブリンパ腫に対するランダム化臨床試験の結果が出版されています(J Clin Oncol. 2018 Jul 10;36(20):2024-2034)。

この臨床試験(PETAL試験)では、R-CHOP2サイクル後interim PETを行い陽性であった症例を対象に、R-CHOP療法継続もしくは強力化学療法に変更でランダム化しました。

強力化学療法は”バーキットプロトコル”と名付けられたかなり強力な化学療法です。毒性から途中で治療を継続できなくなる可能性があります。

治療の中断や変更を行わずに増悪なく生存できている割合は、2年の時点でR-CHOP群は42%, 強力化学療法群は31.6%でした。強力化学療法のほうが低い結果でしたが、有意な差はありませんでした(下図, HR 1.501, 95%IC 0.896-2.514, p=0.1229)。

PETAL, R-CHOP vs Burkitt protocol, EFS

全生存率もR-CHOP療法継続よりも強力化学療法のほうが低い結果でしたが、有意な差はありませんでした(下図, HR 1.349, 95%IC 0.756-2.406, p=0.3085)。

PETAL, R-CHOP vs Burkitt protocol, OS

当然ですが、強力化学療法のほうがR-CHOP療法よりも毒性は強いです。

 

たとえinterim PETが陽性であったとしても、治療を強化することによる生存率の上昇はみられません。それだけでなく有害事象が増える結果となってしまいます。

したがってinterim PETの結果で治療方法を変更することは推奨されません

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫のinterim PETの問題点 一致率、偽陽性

上記の結果からは中間PET (interim PET)は行う必要がないと考えられますが、interim PETにはいくつかの問題が指摘されています。

 

2010年に臨床試験(E3404試験)でのR-CHOP療法3サイクル後のinterim PETの解釈について事後解析結果が報告されました(Blood. 2010 Jan 28;115(4):775-7)。

この試験でのinterim PETの陽性率は16~24%で、3人の核医学専門医による判定でした。

結果、一致率は約70%でした。判定する医師によって陽性率が異なりました。

専門医の一致率が70%というのは、高い一致率とは言えません

中間PET (interim PET)は判定者によって結果(陽性か陰性)が異なる可能性が高くはありませんがあると言えます。

 

2010年にinterim PETの正確さに関する前向き研究の結果が報告されています(J Clin Oncol. 2010 Apr 10;28(11):1896-903)。

この臨床試験では、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫にR-CHOP療法を2~4サイクル行った後にinterim PETを行い、陽性だった症例に対して集積部の生検を行いました。

陽性の根拠となった集積部の生検の結果、86.8%はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫細胞が認められませんでした偽陽性であったということになります。

この偽陽性であった症例の無増悪生存率は、interim PET陰性症例とあまりかわりませんでした。

中間PET (interim PET)は偽陽性率が高いと言えます。間違った判断や不必要な生検につながる危険性があります。

 

中間PET (interim PET)は行う必要がないだけでなく、解釈の一致率の問題や偽陽性の問題、そして被ばくと費用のことも考慮すると、行わないほうがよいと考えられます。

 

アメリカのNCCNガイドライン(NCCN Guidelines)では、interim PETは推奨されていません

日本血液学会の2018年造血器腫瘍診療ガイドラインでは、interim PETは「一般診療として推奨できるだけのエビデンスは不十分であり,臨床試験での実施が推奨される」としています。

 

まとめ びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療中間PET検査(interim PET)

● びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の初回治療の中間PET (interim PET)の結果により、その後の奏効率、無増悪生存率、全生存率は異なりますが、中間PET-CTよりも治療後PET-CTのほうがその後の予後の差をより明確にします。

● 中間PET (interim PET)で陽性であったとしても、治療を強化することによる生存率の上昇はみられませんが、有害事象は増えます中間PET (interim PET)の結果で治療方法を変更することは推奨されません

● 中間PET (interim PET)は判定者によって結果が異なる可能性や偽陽性率が高いこと、被ばくと費用のことも考慮すると、中間PET (interim PET)は行わないほうがよいと考えられます。

参考文献

K Spaepen, S Stroobants, P Dupont, et al.
Early restaging positron emission tomography with ( 18)F-fluorodeoxyglucose predicts outcome in patients with aggressive non-Hodgkin's lymphoma
Ann Oncol. 2002 Sep;13(9):1356-63.

Corinne Haioun, Emmanuel Itti, Alain Rahmouni, et al.
[18F]fluoro-2-deoxy-D-glucose positron emission tomography (FDG-PET) in aggressive lymphoma: an early prognostic tool for predicting patient outcome
Blood. 2005 Aug 15;106(4):1376-81.

Amanda F Cashen, Farrokh Dehdashti, Jingqin Luo, et al.
18F-FDG PET/CT for early response assessment in diffuse large B-cell lymphoma: poor predictive value of international harmonization project interpretation
J Nucl Med. 2011 Mar;52(3):386-92.

Ulrich Dührsen, Stefan Müller, Bernd Hertenstein, et al.
Positron Emission Tomography-Guided Therapy of Aggressive Non-Hodgkin Lymphomas (PETAL): A Multicenter, Randomized Phase III Trial
J Clin Oncol. 2018 Jul 10;36(20):2024-2034.

Sandra J Horning, Malik E Juweid, Heiko Schöder, et al.
Interim positron emission tomography scans in diffuse large B-cell lymphoma: an independent expert nuclear medicine evaluation of the Eastern Cooperative Oncology Group E3404 study
Blood. 2010 Jan 28;115(4):775-7.

Craig H Moskowitz, Heiko Schöder, Julie Teruya-Feldstein, et al.
Risk-adapted dose-dense immunochemotherapy determined by interim FDG-PET in Advanced-stage diffuse large B-Cell lymphoma
J Clin Oncol. 2010 Apr 10;28(11):1896-903.

造血器腫瘍診療ガイドライン

NCCN Guidelines


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