びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL) 初発難治性の治療戦略と予後

2020-09-24

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 病理 HE

初回治療で完全奏効(CMR)に到達しなかったびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)「初発難治性」びまん性大細胞型B細胞リンパ腫といいます。

一般に「初発難治性」の症例は、「再発」びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の症例よりも予後は悪いとされます。

治療方法や予後は「初発難治性」であっても部分奏効(PMR)を達成するか達成しないかによりさらに変わります。

「初発難治性」びまん性大細胞型B細胞リンパ腫は早期の適切な対応が必要になります。治療方針の見通し判断と決定が遅れると予後は悪くなります。

本項では「初発難治性」びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療戦略と予後について解説します。本項でも国内・国外の臨床研究・ガイドラインを参照にしながら解説します。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 初発難治性で部分奏効(PMR)の場合の治療戦略

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対して初回治療でR-CHOP療法などを行い、約90%の症例は完全奏効(CMR)に到達します

残り10%の症例は「初発難治性」とされ、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の中でも予後が悪いと言えます。

ただし「初発難治性」であっても初回治療の奏効によりその後の予後に違いがみられます。

 

初回治療終了後、6~8週間後PET-CT検査で治療効果を判定します。放射線照射を行った場合は照射終了から8~12週間後にPET-CT検査を行います。

PET-CTで完全奏効に到達していない場合であったとしても、上記より早い時期(治療終了後4週間後など)にPET-CTを行ってしまっているのであれば判定には注意が必要です。早すぎるPET-CTは偽陽性(病変がないのに集積してしまうこと)があり得ます。

完全奏効(CMR)の基準については「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の初回治療の効果判定」をご覧ください。

 

適切な時期のPET-CTで部分奏効(PMR)であったらどうすればよいのでしょうか?

部分奏効の基準は以下になります(J Clin Oncol. 2014 Sep 20;32(27):3059-68)。

  • 腫瘤が残存しDeauville点数は4か5であるが、治療開始前よりも集積が減弱している
  • 集積の悪化や新規病変の出現がない

もし集積の減弱が認められない、集積の悪化している病変がある、新規病変が出現している、といった場合は、部分奏効(PMR)に到達できていません。

 

適切な時期の判定で部分奏効(PMR)であったとしても、偽陽性はあり得ます。

集積部の生検を行うことを推奨します。顕微鏡下で見て病変が確認できないことがあり得ます。

このときの病理診断は難しいため血液専門の病理医による判定を推奨します。診断時の病理組織と比較することが重要です。

正常なリンパ節構造というよりも、線維化や炎症による細胞が集まるため、一見すると異常リンパ節に見えます。活性化したリンパ球も集まり、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫細胞が集簇しているように見えることもあります。

生検の時には診断時と同様にフローサイトメトリや遺伝子検査も行ったほうがよいです。

 

もしここで本当に残存病変があると確認できた場合は、部分奏効(PMR)となり治療が必要になります。

残存病変がなければ偽陽性です。完全奏効(CMR)と同様の判断になり、無治療で経過観察になります。

方針が全く異なりますので残存病変の有無の判断はかなり重要です。

本当に残存病変があったときは、「初発難治性」ですが、「化学療法抵抗性」とはまだ言えません

再発時と同様に、R-GDP療法(もしくはR-ICE療法)を行い奏効があれば自家造血幹細胞移植を行います。

治療の詳細は「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL) 再発時の検査と治療方針 自家移植の有効性」「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL) 再発後の化学療法は何がよいか?」をご覧ください。

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 奏効がない初発難治性の治療戦略

治療効果判定のPET-CT検査で、「腫瘤が残存し治療開始前と集積がほとんどかわらない」ときは「奏効なし(NMR)」と判定されます。

治療効果判定のPET-CT検査で、「腫瘤が残存し治療開始前と集積が悪化している」あるいは「新規の集積箇所が出現している」ときは「増悪(PMD)」と判定されます。

治療効果判定のPET-CT検査まで待てずに病変が増大する場合も、「増悪」の判定になります。

 

このような症例は「初発難治」であると同時に、「化学療法抵抗性」である可能性が高いです。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の中でも特に予後が悪いと言えます。

R-GDP療法(もしくはR-ICE療法)を行っても奏効する可能性は低いです。

 

2017年に後ろ向き研究の結果が複数出版されています。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対して初回治療に対して、治療終了後6週間後までの間に病変が増悪した症例治療後効果判定で部分奏効もしくは奏効なしであった症例などを後ろ向きに解析した研究があります(REFINE試験 Am J Hematol. 2017 Feb;92(2):161-170)。

その後の化学療法(ICEなど)で部分奏効以上を達成した症例は前者で29.2%, 後者で47.8%でした。

 

また別の後ろ向き研究(SCHOLAR-1研究)では、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の初回治療で「奏効なし」「増悪」の症例を解析しました(Blood. 2017 Oct 19;130(16):1800-1808)。

その後の化学療法(GDP, ICEなど)で部分奏効以上を達成した症例は20%でした。全生存期間の中央値は7.1か月と極めて不良でした。

 

「奏効なし(NMR)」あるいは「増悪(PMD)」の症例は、その後の化学療法で部分奏効以上に到達するのはおよそ20~30%と考えられます。70%以上の症例では部分奏効に到達しません。途中でさらに病勢が進行する可能性も考える必要があります。

 

R-GDP療法などの化学療法を行うとして、低い確率で部分奏効以上に到達すれば自家造血幹細胞移植へ進みますが、高い確率で奏効しないことが予想されますのでそれに備えて別の治療の準備もすすめておくことが考慮されます。

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫では「初発難治性」が確定した時点で早めに「化学療法抵抗性」に備えた治療の検討が必要です。どのような治療を行うかについては「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL) 化学療法抵抗性症例の予後と治療」をご覧ください。

セカンドオピニオンや転院を行う場合は、「初発難治性」が確定した時点で早めに行うことを推奨します。

 

初発難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の予後と治療方針

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の「初発難治性」症例に対しては、その後のR-GDP療法などの化学療法だけでは長期生存の可能性は低いと言えます。

とくに「奏効なし(NMR)」あるいは「増悪(PMD)」の症例では長期生存の可能性は極めて低いです。

大規模ランダム化臨床試験(PARMA試験)では、化学療法が有効な症例であっても自家造血幹細胞移植を行わなければ、5年無再発生存率は12%でした(N Engl J Med. 1995 Dec 7;333(23):1540-5)。「初発難治性」の場合は、たとえリツキシマブ登場しているとはいえ長期無再発生存率は高くはないでしょう。

 

自家造血幹細胞移植を前提とした治療を試みたとして、どのくらい有効なのでしょうか?

2015年に出版された後ろ向き研究の結果があります。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の「初発難治性」の症例を含めた解析です(Ann Hematol. 2015 May;94(5):803-12)。

「初発難治性」で「部分奏効」の症例については、リツキシマブの登場後の自家造血幹細胞移植を前提とした治療により5年全生存率は約38%でした(リツキシマブ登場前は約26%、下図)。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 primary refractory PR OS

これは再発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の症例と比べてやや低めにはなります。後ろ向き研究の結果なので信頼性はあまり高いとは言えませんが、再発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の症例と比べて大きく生存率が低下するというわけではなさそうです。

 

「初発難治性」で部分奏効にも到達しなかった症例については、リツキシマブの登場後の自家造血幹細胞移植を前提とした治療であったとしても、5年全生存率は20%未満でした(下図).

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 primary refractory PD OS

これは部分奏効の症例と比べてかなり低い生存率となってしまっています。多くの症例が化学療法抵抗性になってしまうため、そのような症例に自家造血幹細胞移植を行っても効果は乏しいことが主な原因と言えるでしょう。

 

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の「初発難治性」であっても「部分奏効」であった症例に対しては、化学療法抵抗性とは言えないので再発した症例と同様に自家造血幹細胞移植を前提とした治療を行うことを推奨します。

自家造血幹細胞移植を前提とした化学療法に抵抗性(部分奏効にも到達しない)になっていたら、再発した症例と同様に自家造血幹細胞移植ではない治療を検討します。治療については「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL) 化学療法抵抗性症例の予後と治療」をご覧ください。

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の「初発難治性」で「奏効なし(NMR)」あるいは「増悪(PMD)」の症例に対しては、化学療法抵抗性の可能性が高く、自家造血幹細胞移植を前提とした治療を行っても、「化学療法抵抗性」のため自家造血幹細胞移植へ進むことができない可能性が高いです。

自家造血幹細胞移植を前提とした治療を行うとして、それと同時に自家造血幹細胞移植ではない治療の検討をはじめることを推奨します。

自家造血幹細胞移植を前提とした治療の詳細は「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL) 再発時の検査と治療方針 自家移植の有効性」「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL) 再発後の化学療法は何がよいか?」をご覧ください。

 

2020年8月時点でのアメリカのNCCNガイドライン(NCCN Guidelines)では、「初発難治性」の症例に対しては、移植可能症例には移植を前提とした化学療法を推奨しています。移植ができない症例に対しては化学療法のみあるいは緩和的な医療としています。限局期の部分奏効の場合は放射線照射も選択肢としています。

 

日本血液学会の2018年造血器腫瘍診療ガイドラインでは、「初発難治性」の症例に対しては、救援化学療法を推奨しています。移植可能症例には自家造血幹細胞移植を前提とします。移植適応でない症例に対しては救援化学療法のみを推奨しています。限局期の部分奏効の場合は放射線照射も選択肢としています。

 

まとめ びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 初発難治性の治療戦略と予後

● びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の初回治療終了後、適切な時期のPET-CTで部分奏効(PMR)であったとしても偽陽性はあり得ます。集積部の生検を行うことを推奨します。残存病変がなければ完全奏効(CMR)と同様の判断になり無治療で経過観察となります。残存病変があったときは再発時と同様に自家造血幹細胞移植を前提とした治療を行います。

● 初回治療効果判定のPET-CT検査で「奏効なし(NMR)」「増悪(PMD)」の場合は、化学療法により部分奏効以上に到達すれば自家造血幹細胞移植へ進みますが、高い確率で奏効しないことが予想されますのでそれに備えて別の治療の準備も考慮します。

● 「初発難治性」で「部分奏効」の症例は、自家造血幹細胞移植を前提とした治療により再発症例よりもやや低めですが長期生存が見込めます。「初発難治性」で部分奏効にも到達しなかった症例は、自家造血幹細胞移植を前提とした治療では多くの症例が化学療法抵抗性となりかなり低い生存率となってしまっています。別の治療も検討が必要です。

参考文献

Bruce D Cheson, Richard I Fisher, Sally F Barrington, et al.
Recommendations for initial evaluation, staging, and response assessment of Hodgkin and non-Hodgkin lymphoma: the Lugano classification.
J Clin Oncol. 2014 Sep 20;32(27):3059-68.

Luciano J Costa, Kami Maddocks, Narendranath Epperla, et al.
Diffuse Large B-cell Lymphoma With Primary Treatment Failure: Ultra-high Risk Features and Benchmarking for Experimental Therapies
Am J Hematol. 2017 Feb;92(2):161-170.

Michael Crump, Sattva S Neelapu, Umar Farooq, et al.
Outcomes in refractory diffuse large B-cell lymphoma: results from the international SCHOLAR-1 study
Blood. 2017 Oct 19;130(16):1800-1808.

T Philip, C Guglielmi, A Hagenbeek, et al.
Autologous bone marrow transplantation as compared with salvage chemotherapy in relapses of chemotherapy-sensitive non-Hodgkin's lymphoma.
N Engl J Med. 1995 Dec 7;333(23):1540-5.

Jordina Rovira, Alexandra Valera, Lluis Colomo, et al.
Prognosis of patients with diffuse large B cell lymphoma not reaching complete response or relapsing after frontline chemotherapy or immunochemotherapy
Ann Hematol. 2015 May;94(5):803-12.

造血器腫瘍診療ガイドライン

NCCN Guidelines


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