びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の予後、予後指標

2020-08-11

IPI R-IPI NCCN-IPI 生存率 比較

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の予後はステージだけでは決まりません。様々な要素の影響を受けます。それらの要素を組み合わせた「予後指標」が提唱されています。

その中でも国際予後指標(IPI)が広く用いられています。近年はNCCN-IPIという指標も用いられます。

すでにこれら研究の時点で半数以上の症例で長期生存が確認されています。現在の治療ではさらに予後はよくなっています。

治療は年々進歩しているためこれらの予後指標は生存率予測にはあまり役に立つわけではありません。予後指標を構成する因子が少ないほうが多いよりも予後が良いということは言えます。

本項ではびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の予後指標について解説しています。どのような症例は予後が比較的良いのか、予後因子には何があるのか、予後指標とは何かについて、医学文献を参照しつつ解説しています。

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の予後 国際予後指標 (IPI)

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の予後はステージだけでは決まりません。それ以外の要素の影響も強く受けます。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の予後指標として広く使用されているものに「国際予後指標 (IPI)」というものがあります。

 

「国際予後指標 (IPI)」は1993年に提唱された予後指標です。

世界中の進行の早い悪性リンパ腫で、アントラサイクリン系薬剤による治療を受けた症例2000例以上を対象に、長期生存に影響する因子を調査しました(N Engl J Med. 1993 Sep 30;329(14):987-94)。

多くの項目が要素として見つかりましたが、多変量解析も行い最終的に5つの因子が生存率に影響していることがわかりました。

最も生存率に関与していた因子は年齢(61歳以上)でした。診断時に高齢のほうが若年者よりも生存期間は短いのは当然です。

次に予後に影響していたのは順番に、診断時の血液中の乳酸脱水素酵素(LDH)が正常上限よりも高い、診断時点で全身状態が悪く軽い作業も困難である、リンパ組織以外の病変が2か所以上である、ステージが3か4である、でした(下図 N Engl J Med. 1993 Sep 30;329(14):987-94)。

アグレッシブリンパ腫 国際予後指標

以下の5つの因子にいくつ当てはまるかによって、全生存率が異なってきます。

国際予後指標 (IPI)の因子

 ● 年齢(61歳以上)

 ● 乳酸脱水素酵素(LDH)が正常上限よりも高い

 ● 全身状態が悪く軽い作業も困難である

 ● リンパ組織以外の病変が2か所以上である

 ● ステージが3か4である

この時の研究では、あてはまる数が1つまでであれば5年生存率は73%でした。2つだと51%, 3つだと43%, 4つ以上で26%でした(下図)。それぞれの症例の割合は35%, 27%, 22%, 16%でした。

アグレッシブリンパ腫 国際予後指標 全生存率

この研究では、60歳以下の症例を限定にした予後因子の多変量解析も行いました。

その結果、60歳以下の症例では、生存率に最も関与していた因子はステージが3か4であることでした。

次に診断時の血液中の乳酸脱水素酵素(LDH)が正常上限よりも高い、診断時点で全身状態が悪く軽い作業も困難である、ことが続きました。

リンパ組織以外の病変が2か所以上であることは、60歳以下では有意に生存率を低下させるわけではありませんでした。

年齢の要素を除いて解析した結果である、以下の3つ因子を用いた予後指標「年齢調整国際予後指標(Age-adjusted IPI)」も提唱されました。

年齢調整国際予後指標(Age-adjusted IPI)の因子

 ● 乳酸脱水素酵素(LDH)が正常上限よりも高い

 ● 全身状態が悪く軽い作業も困難である

 ● ステージが3か4である

この研究では60歳以下では、あてはまる数が0だと5年生存率は83%でした。1つだと69%, 2つだと46%, 3つだと32%でした(下図)。それぞれの症例の割合は22%, 32%, 32%, 14%でした。

アグレッシブリンパ腫 年齢調整国際予後指標 全生存率 60歳以下

以降、国際予後指標(IPI)、年齢調整国際予後指標(Age-adjusted IPI)が広く用いられるようになりました。

 

しかしながら、治療は年々進歩しており国際予後指標は生存率予測にはもはや適していません。現在は上記研究の生存率よりもはるかに高い生存率になっているからです。

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の予後 リツキシマブ登場後のIPI

リツキシマブ(商品名:リツキサン)の登場により、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の長期生存率はすべてのステージで大きく上昇しました。

リツキシマブ登場後の治療により国際予後指標(IPI)にはどのような変化がみられたのでしょうか?

 

2007年にカナダのブリティッシュコロンビア大学より後ろ向き研究の結果が報告されました(Blood. 2007 Mar 1;109(5):1857-61)

R-CHOP療法を用いて治療したびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の症例を対象に、国際予後指標(IPI)を用いて解析したところ全生存率は下図のようになりました。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 R-CHOP 国際予後指標 全生存率

IPI因子数が1つまでであれば4年生存率は82%でした。2つだと81%, 3つだと49%, 4つ以上で59%でした。リツキシマブの登場により全体的に生存率が改善しています

IPI因子数で生存率の逆転も見られました。

そこで「改訂IPI(R-IPI)」が本研究で提唱されました。IPI因子数を0, 1~2, 3~5でグループ化しました。各グループの生存率は下図のようになりました。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 R-IPI 全生存率

因子数0では4年生存率は94%、1~2で79%, 3~5で55%でした。

R-IPIはIPIの研究とくらべると、少数(365例)の後ろ向き研究の結果です。

 

臨床試験に参加した症例に対して国際予後指標の事後解析を行った結果が2010年に出版されました(J Clin Oncol. 2010 May 10;28(14):2373-80)。1000例以上の症例の解析です。

IPIによる全生存率は下図のようになりました。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 リツキシマブ時代 国際予後指標 全生存率

IPI因子数が1つまでであれば3年生存率は91%でした。2つだと81%, 3つだと65%, 4つ以上で59%でした。リツキシマブの登場により全体的に生存率が改善しています。

一部生存が重なるようになっていますが、IPI因子数で生存率は異なります

 

治療は年々進歩しており最初の国際予後指標は生存率予測にはもはや適していない状態であるとはいえ、高齢、全身状態不良、血中LDH、ステージ3~4、リンパ組織以外の病変が2か所以上という国際予後指標を構成する因子は、少ないほうが多いよりも予後が良いということはまだ言えます。

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の予後 NCCN-IPI

リツキシマブを使用するようになって、IPIで高リスク群の生存率が一部重なるようになったことから、最初のIPIよりももっと適した予後指標の研究が行われるようになりました。

アメリカのNational Comprehensive Cancer Network (NCCN)のデータベースを用いて、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫症例1500例以上の予後因子を解析し、IPIのときと同じように多変量解析を用いて、独立した予後因子を調べた結果が2014年に出版されました(Blood. 2014 Feb 6;123(6):837-42)。

最も生存率に関与していた因子はやはり年齢でした。

次に予後に影響していたのは順番に、診断時の血液中の乳酸脱水素酵素(LDH)、診断時点で全身状態が悪く軽い作業も困難である、リンパ組織以外の病変がある、ステージが3か4である、でした(下図)。

NCCN-IPI 多変量解析

生存率への影響度からそれぞれの項目に点数をつけた「NCCN-IPI」が提唱されました。以下のようものです(下図).

NCCN-IPI 点数

NCCN-IPI

 ● 年齢 41歳~60歳 1点

 ● 年齢 61歳~75歳 2点

 ● 年齢 76歳以上 3点

 ● LDHが正常上限~上限の3倍まで 1点

 ● LDHが正常上限の3倍を超える 2点

 ● ステージが3か4である 1点

 ● 骨髄、中枢神経系、肝臓、消化管、肺のいずれかにリンパ腫病変がある 1点

 ● 全身状態が悪く軽い作業も困難である 1点

0~1点であれば低リスク

2~3点であれば低中間リスク

4~5点であれば高中間リスク

6~8点であれば高リスク

全生存率は下図のようになりました。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 NCCN-IPI 全生存率

5年生存率は0~1点で96%, 2~3点で82%、4~5点で64%、6~8点で33%でした。

同じ症例でIPIをもちいた生存率より差が明らかです(下図 IPI)

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 IPI, not NCCN-IPI 全生存率

以降、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対してはNCCN-IPIが用いられるようになってきています。

 

2018年にデンマークとスウェーデンの大規模解析の結果が報告されました(Cancer Med. 2018 Jan;7(1):114-122)。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫症例を対象にIPI改訂IPINCCN-IPIを検証しました。総数は4500症例以上です。

結果、いずれの予後指標も各リスクで生存率は明確に別れました(下図 上 デンマーク、下 スウェーデン)。

IPI R-IPI NCCN-IPI 生存率 比較

IPI、改訂IPI、NCCN-IPIのいずれも別れ方は同様で、どれがよいかははっきりしませんでした

NCCN-IPIは比較的新しい指標ですが、それでも上記研究内の症例と現在の新規発症の症例との予後は異なります。治療方法が発展しているからです。

すでにこの研究の症例の時点で半数以上の症例は6年以上生存しています。現在の治療ではさらに予後はよくなっています。

治療は年々進歩しており予後指標は生存率予測にはあまり役に立つわけではありません。予後指標を構成する因子は、少ないほうが多いよりも予後が良いということは言えます。

 

2020年7月時点でのアメリカのNCCNガイドライン(NCCN Guidelines)でも日本血液学会の2018年造血器腫瘍診療ガイドラインでも、予後指標としてはIPINCCN-IPIのいずれも記載されています。どれかを特に推奨してはいません。

 

まとめ びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の予後、予後指標

● びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の予後指標として「国際予後指標 (IPI)」「年齢調整国際予後指標(Age-adjusted IPI)」が昔から広く使われています。

リツキシマブの登場によりびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の長期生存率が上昇し、IPI別の生存率が重なる場合が指摘されるようになりました。「改訂IPI(R-IPI)」が提唱されました。

● その後, びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対する「NCCN-IPI」が提唱されました。IPI、改訂IPI、NCCN-IPIのどれがよいかはいまだはっきりしていません。

参考文献

International Non-Hodgkin's Lymphoma Prognostic Factors Project
A predictive model for aggressive non-Hodgkin's lymphoma.
N Engl J Med. 1993 Sep 30;329(14):987-94.

Laurie H Sehn, Brian Berry, Mukesh Chhanabhai, et al.
The revised International Prognostic Index (R-IPI) is a better predictor of outcome than the standard IPI for patients with diffuse large B-cell lymphoma treated with R-CHOP
Blood. 2007 Mar 1;109(5):1857-61.

Marita Ziepert, Dirk Hasenclever, Evelyn Kuhnt, et al.
Standard International prognostic index remains a valid predictor of outcome for patients with aggressive CD20+ B-cell lymphoma in the rituximab era.
J Clin Oncol. 2010 May 10;28(14):2373-80.

Zheng Zhou, Laurie H Sehn, Alfred W Rademaker, et al.
An Enhanced International Prognostic Index (NCCN-IPI) for Patients With Diffuse Large B-cell Lymphoma Treated in the Rituximab Era
Blood. 2014 Feb 6;123(6):837-42.

Jorne Biccler, Sandra Eloranta, Peter de Nully Brown, et al.
Simplicity at the Cost of Predictive Accuracy in Diffuse Large B-cell Lymphoma: A Critical Assessment of the R-IPI, IPI, and NCCN-IPI
Cancer Med. 2018 Jan;7(1):114-122.

NCCNガイドライン(NCCN Guidelines)

2018年造血器腫瘍診療ガイドライン


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