びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の予後 CD5、腫瘍量など

2019-10-20

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の予後に影響を与える因子の研究は次々と結果が報告されています。本項では比較的新しい予後因子の研究の結果について解説します。

日本ではCD5の発現と予後についての報告が多いです。

CD30はブレンツキシマブ ベドチン(商品名:アドセトリス)による治療の対象となる可能性があり研究が進んでいます。

診断時のPET-CTで活動性の腫瘍量が多いと予後に悪影響を与える可能性が指摘されています。

本項ではこれらがどのくらい予後に影響しているかについて医学文献を参照に解説していきます。

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の予後指標については「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の予後、予後指標」をご覧ください。

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の予後 CD5陽性症例

CD5はTリンパ球に発現している蛋白ですが、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫で異常発現するタイプがあります。

免疫染色をもちいてCD5陽性細胞を確認することができます。CD5陽性だと予後が悪い可能性が指摘されています。日本からの報告が多いです。

 

比較的症例数が多い後ろ向き研究の結果が2010年に出版されています(Ann Oncol. 2010 Oct;21(10):2069-74).

この研究ではCD5陽性の基準は腫瘍細胞の30%以上陽性であることで、そのような症例は16.8%でした。

CD5陽性の症例はCD5陰性の症例と比べて、統計学的にも明らかに予後不良でした(下図)。

CD5 びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 全生存率

アメリカでの後ろ向き研究でも同様の結果が報告されています(Oncotarget. 2015 Mar 20;6(8):5615-33)。CD5陽性症例は5.6%でした。

CD5陽性の症例はCD5陰性の症例と比べて、統計学的にも明らかに予後不良でした。

 

前向きの臨床試験に参加した症例でもCD5について検証されています(J Hematol Oncol. 2015 Jun 14;8:70)。

この試験ではCD5の基準は20%でしたが、陽性症例はたった3%でした。

数は少ないのですが、予後はCD5陽性のほうが悪いことが指摘されました。

 

CD5陽性の症例は、中枢神経系に浸潤しやすいことが指摘されており、それが予後に影響していると考えられています(Ann Oncol. 2011 Jul;22(7):1601-1607)。

しかしながら、CD5陽性となる症例は少ないことと、免疫染色による解釈であることを考慮する必要があります。まだ予後との関連については確定的なことは言えないでしょう。

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の予後 CD30、FOXP1

CD30ホジキンリンパ腫などで陽性になる細胞表面蛋白です。CD30は細胞増殖を抑制する作用があるとされています。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫でも一部にCD30が陽性になる症例がみられます。そのような症例の予後はCD30陰性の症例よりもよいかもしれないことが指摘されています。

 

2013年に後ろ向き研究の結果が出版されました(Blood. 2013 Apr 4;121(14):2715-24)。

CD30陽性の基準は20%とされました。陽性症例は14%でした。

CD30陽性となる症例はCD30陰性の症例よりも統計学的にも明らかに予後良好でした(下図).

CD30 びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 全生存率

しかしその後の2014年に報告された後ろ向き研究では、CD30は予後にあまり関係ありませんでした(下図 Br J Haematol. 2014 Dec;167(5):608-17)。

CD30 びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 全生存率2 BCCA

CD30陽性は免疫染色で解釈します。免疫染色による判定は血液専門病理医でも±10%程度の違いはしばしばみられます。

CD30陽性症例は比較的予後は良いかもしれませんが、まだ確定的なことは言えません。

 

 

FOXP1蛋白の発現はリンパ腫の発生に関与している可能性が指摘されています(Leukemia. 2014 Feb;28(2):362-72)。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫でもFOXP1がしばしば発現します。FOXP1の発現は予後にも影響すると考えられています。

2014年に出版された後ろ向き研究ではR-CHOPで治療したびまん性大細胞型B細胞リンパ腫症例でFOXP1発現と予後について検討されました(Leukemia. 2014 Feb;28(2):362-72)。

この研究ではFOXP1が70%以上発現していれば陽性とされました(下図 左 陰性, 右 陽性)。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 FOXP1 陰性と陽性

FOXP1が陰性の場合、予後は比較的良好でした(下図).

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 FOXP1 70%, 全生存率

前向きの臨床試験でもFOXP1と予後について解析されています(J Hematol Oncol. 2015 Jun 14;8:70)。

このときはFOXP1が50%以上発現していれば陽性とされました

FOXP1が陰性だと全生存率は高いまま維持できていました。陽性症例のほうが生存率は下がりました(下図, p=0.00018)。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 SAKK FOXP1 50%, 全生存率

FOXP1蛋白の発現免疫染色で解釈します。基準も定まっているわけではありません。しかしながら、明らかなFOXP1陰性症例は比較的予後良好と言えるでしょう

 

CD30やFOXP1の免疫染色はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫症例に対して行われることはまだあまりありません。今後研究が進むにつれて行われることが増えてくるでしょう。

 

PET-CTでのびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の腫瘍量と予後

治療開始前のPET-CT検査活動性の腫瘍量が多いと生存率が低下する可能性が指摘されています。

大規模臨床試験の際に治療開始前にPET-CTで腫瘍量を測定し、予後との関連を調べた研究があり、2020年に結果が出版されました(Blood. 2020 Apr 16;135(16):1396-1405).

この研究では腫瘍量が多い群少ない群で比較しました。腫瘍量が多い群は少ない群とくらべて、無増悪生存期間・全生存期間ともに統計学的にも明らかに低下していました(下図 左:無増悪生存 右:全生存).

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 PET-CT TMTV PFS OS

PET-CT検査での腫瘍量による全生存率の違いは国際予後指標IPIを構成する因子を考慮しても統計学的にあきらかでした(下図 TMTV:腫瘍量).

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 腫瘍量とOS 多変量解析

 

さらに別の前向きの臨床試験でもPET-CTでの腫瘍量と予後について研究されています。2020年に結果が出版されました(Blood Adv. 2020 Mar 24;4(6):1082-1092)。」

やはり腫瘍量が多い群は少ない群とくらべて、無増悪生存期間・全生存期間ともに統計学的にも明らかに低下していました(下図 左:全生存 右:無増悪生存)。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 PET-CT腫瘍量 OS, PFS

PET-CTによる腫瘍量が予後に影響しているといえるでしょう。今後は活動性腫瘍量の測定方法の模索が課題になります。機械や施設による違いが少なく、簡単に測定できる方法が研究されていくでしょう。

 

まとめ びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 ステージと予後

CD5陽性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫は予後が悪い可能性がありますが、CD5陽性となる症例は少ないことと、免疫染色による解釈であることから、まだ予後との関連については確定的なことは言えないでしょう。

CD30陽性症例は比較的予後は良いかもしれませんがまだ確定的なことは言えません。FOXP1蛋白の発現免疫染色で解釈しますが、明らかなFOXP1陰性症例は比較的予後良好と言えるでしょう。

● 治療開始前のPET-CT検査で活動性の腫瘍量が多いほうが予後が悪い可能性が指摘されています。活動性腫瘍量の測定方法の模索が課題です。

参考文献

N Niitsu, M Okamoto, J-i Tamaru, et al.
Clinicopathologic Characteristics and Treatment Outcome of the Addition of Rituximab to Chemotherapy for CD5-positive in Comparison With CD5-negative Diffuse Large B-cell Lymphoma
Ann Oncol. 2010 Oct;21(10):2069-74.

Zijun Y Xu-Monette, Meifeng Tu, Kausar J Jabbar, et al.
Clinical and Biological Significance of De Novo CD5+ Diffuse Large B-cell Lymphoma in Western Countries
Oncotarget. 2015 Mar 20;6(8):5615-33.

Alexandar Tzankov, Nora Leu, Simone Muenst, et al.
Multiparameter Analysis of Homogeneously R-CHOP-treated Diffuse Large B Cell Lymphomas Identifies CD5 and FOXP1 as Relevant Prognostic Biomarkers: Report of the Prospective SAKK 38/07 Study
J Hematol Oncol. 2015 Jun 14;8:70.

K Miyazaki, M Yamaguchi, R Suzuki, et al.
CD5-positive diffuse large B-cell lymphoma: a retrospective study in 337 patients treated by chemotherapy with or without rituximab
Ann Oncol. 2011 Jul;22(7):1601-1607.

Shimin Hu, Zijun Y Xu-Monette, Aarthi Balasubramanyam, et al.
CD30 Expression Defines a Novel Subgroup of Diffuse Large B-cell Lymphoma With Favorable Prognosis and Distinct Gene Expression Signature: A Report From the International DLBCL Rituximab-CHOP Consortium Program Study
Blood. 2013 Apr 4;121(14):2715-24.

Graham W Slack, Christian Steidl, Laurie H Sehn, et al.
CD30 Expression in De Novo Diffuse Large B-cell Lymphoma: A Population-Based Study From British Columbia
Br J Haematol. 2014 Dec;167(5):608-17.

K K Wong, D M Gascoyne, P J Brown, et al.
Reciprocal expression of the endocytic protein HIP1R and its repressor FOXP1 predicts outcome in R-CHOP-treated diffuse large B-cell lymphoma patients
Leukemia. 2014 Feb;28(2):362-72.

Vercellino L, Cottereau AS, Casasnovas O, et al.
High total metabolic tumor volume at baseline allows discrimination of survival even in patients aged 60 to 80 years responding to R-CHOP.
Blood. 2020 Apr 16;135(16):1396-1405.

Luca Ceriani, Giuseppe Gritti, Luciano Cascione, et al.
SAKK38/07 study: integration of baseline metabolic heterogeneity and metabolic tumor volume in DLBCL prognostic model
Blood Adv. 2020 Mar 24;4(6):1082-1092.


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