自家造血幹細胞移植後に再発したびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の予後と治療

2020-10-01

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 自家造血幹細胞移植後再発 再発時期別 全生存率

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)自家造血幹細胞移植後に再発した症例には、CAR-T細胞療法を推奨します。

自家移植後再発症例の予後はCAR-T細胞療法登場前は同種造血幹細胞移植あるいはその他の化学療法でもあまり良いとは言えませんでした。

CAR-T細胞療法も比較試験があるわけではないので良いとは確定していませんが、前向き試験での有効性の高さから、予後の改善が期待されます。

本項では、自家移植後に再発したびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の予後と治療、同種移植について、文献やガイドラインを参照に解説します。

 

自家移植後に再発したびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の予後と治療戦略

自家造血幹細胞移植を行っても再発してしまったびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対しては、CAR-T細胞療法を推奨します。CAR-T細胞療法登場前の治療では予後は良いとは言えません。

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の再発症例を対象とした移植までの化学療法のランダム化臨床試験(CORAL試験)では、自家造血幹細胞移植まで行いその後再発してしまった症例の解析も行いました(Bone Marrow Transplant. 2017 Feb;52(2):216-221)。

自家造血幹細胞移植後に再発した症例の予後は悪く、1年生存率は39.1%でした。

移植後6か月以内の再発は特に予後が悪い結果でした(下図, p=0.0221)。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 自家造血幹細胞移植後再発 全生存率

自家造血幹細胞移植後に化学療法同種移植自家再移植などの治療が行われましたが、どの治療の予後がよいのははっきりしませんでした。

たとえ移植を行っても予後が良くなるとは言えませんでした(下図, p=0.1106).

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 自家造血幹細胞移植後再発 治療別全生存率

一般に移植ができた症例は全身状態が良好なので生存率が高いとよそうされますが、この時の解析では予後の改善は認められませんでした。

自家造血幹細胞移植後に再発したびまん性大細胞型B細胞リンパ腫は、同種移植でも化学療法でも予後はそれほど改善するわけではないと言えます。

 

これらの予後を「CAR-T細胞療法」が改善する可能性が十分にあります。

「CAR-T細胞療法」は2017年以降に登場した新しい治療方法です。

化学療法抵抗性もしくは自家造血幹細胞移植後再発の症例を対象に臨床試験を行い高い奏効が確認されています。ただし比較試験ではありません。他の治療よりも本当によいかどうかははっきりしていません。

自家造血幹細胞移植後再発の症例を対象とした前向き試験は少ないこと、同種造血幹細胞移植や自家造血幹細胞の再移植といった移植の前向き試験も乏しいことを考慮すると、自家造血幹細胞後再発に対しては「CAR-T細胞療法」を推奨します。

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫におけるCAR-T細胞療法は、CD19という主にB細胞に発現している蛋白を標的とします。

あらかじめ血液からT細胞を採取し、そのT細胞を製薬会社の施設で遺伝子改変させ、CD19を標的として攻撃できるようにします。遺伝子改変させたT細胞を「CAR-T細胞」と呼びます。

出来上がったCAR-T細胞は体内に戻されCD19を発現している細胞を攻撃しながら増殖していきます。

 

2021年2月時点でアメリカでは「アキシカブタジン シロルーセル」「チサゲンレクルユーセル」が承認され、続いてLisocabtagene maraleucelも承認されました。

2021年2月時点で、日本で承認されているのはチサゲンレクルユーセル(商品名:キムリア)だけです。

自家造血幹細胞移植後再発症例にもCAR-T細胞療法は有効です。詳細は「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL) 化学療法抵抗性症例の予後と治療」をご覧ください。

 

自家移植後再発DLBCLに対する同種移植 大規模後ろ向き研究の結果

では、自家造血幹細胞移植後再発に対する同種造血幹細胞移植の治療成績はどのようなものでしょうか?

前向き試験は乏しく、後ろ向き研究の結果が中心となります。

 

2016年にびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の自家移植後再発症例に対する同種造血幹細胞移植についての大規模な後ろ向き研究の結果が報告されました(Br J Haematol. 2016 Jul;174(2):235-48)。

国際データベースを用いた解析です。

非再発死亡率がやはり高く、3年時点で約30%にもなります(下図)。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 自家造血幹細胞移植後 同種造血幹細胞移植 非再発死亡率

3年時点での無増悪生存率は31%, 全生存率は37%でした。あまり高いとは言えません(下図 左:無増悪生存率 右:全生存率)。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 自家造血幹細胞移植後 同種造血幹細胞移植 PFS OS

なお、好中球生着(好中球数500/μL以上)は28日時点で94%, 100日時点で95%。血小板生着(血小板数 20000/μL以上)は28日時点で83%、100日時点で89%でした。

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の同種造血幹細胞移植では、骨髄破壊的前処置よりも強度減弱前処置もしくは非骨髄破壊的前処置のほうが、有害事象が少なく非再発死亡率も低いことが指摘されています(Blood. 2012 Nov 15;120(20):4256-62)。

上記の大規模後ろ向き研究でも、骨髄破壊的前処置よりも強度減弱前処置もしくは非骨髄破壊的前処置のほうが短期的な生存率は良好でした。

無増悪生存率は5年時点ではどちらもあまり変わりません(p=0.47)が、1年時点では前処置が弱いほうが良好な結果でした(p=0.03)。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 自家造血幹細胞移植後同種造血幹細胞移植 前処置別無増悪生存率

全生存率は1年時点では前処置が弱いほうが良好でした(p=0.01)が、5年生存率も前処置が弱いほうが良好な傾向にありましたが有意ではありませんでした(下図, p=0.055)。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 自家造血幹細胞移植後同種造血幹細胞移植 前処置別全生存率

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の同種造血幹細胞移植の治療成績は、急性白血病などと比べると高い合併症発生率再発率からどうしても悪くなる傾向にあると言えます。

同種造血幹細胞移植の前向き試験もほとんどないことからも、あまり推奨できる治療とは言えません。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対する同種造血幹細胞移植は医学的根拠が乏しいです。

 

自家移植後再発DLBCLの予後の変化 同種移植、レナリドミド、イブルチニブなど

自家移植後再発の場合、同種移植を行っても別の化学療法を行ってもどちらが予後が良いのかはっきりしていません。

 

2019年にアメリカの4施設での後ろ向き研究の結果が報告されています(Blood Adv. 2019 Jun 11;3(11):1661-1669)。

自家移植から再発後に同種移植を行った症例は、他の新規化学療法(レナリドミド、イブルチニブなど)を行った症例と比較しても生存率はあまり変わりませんでした。

自家移植後再発症例の予後は、主に自家移植から再発までの期間が長いほど良いという結果でした(下図)。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 自家造血幹細胞移植後再発 再発時期別 全生存率

2011年以降は同種造血幹細胞移植を行った症例の割合が減って、レナリドミドやイブルチニブの使用が増えていますが、全生存率に大きな変化はありませんでした(下図).

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 自家造血幹細胞移植後再発 年別 全生存率

同種造血幹細胞移植でもレナリドミドやイブルチニブによる新薬での化学療法でも予後の改善はみられていません。合併症は同種造血幹細胞移植のほうが多いです。

 

 

CAR-T細胞療法の登場により、自家造血幹細胞移植後再発症例の予後は改善することが予想されます。

CAR-T細胞療法の他にも、ポラツズマブなどの新薬が登場してきています。

今後、同種造血幹細胞移植を行うことはかなり少なくなっていくでしょう。

自家造血幹細胞移植を行っても再発してしまったびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対しては、CAR-T細胞療法をまず推奨します。

 

2021年1月時点でのアメリカのNCCNガイドライン(NCCN Guidelines)では、自家造血幹細胞移植後再発のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対してはCAR-T細胞療法化学療法緩和医療を推奨しています。同種造血幹細胞移植は推奨されてはいません。

 

日本血液学会の2018年造血器腫瘍診療ガイドラインでは、自家造血幹細胞移植後再発のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対しては同種造血幹細胞移植救援化学療法緩和医療が推奨されていますが、同種移植は臨床試験での実施が望ましいとしています。2020年の補訂版でもCAR-T細胞療法の記載はありません。

 

なお、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対する同種造血幹細胞移植については治験のようにきちんとした前向き試験は現実的にはまずありません。事実上、同種造血幹細胞移植が選択肢に入ることは極めて限定的です。最後の手段としても行うべきかどうかについても不明です。

 

まとめ 自家造血幹細胞移植後に再発したびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の予後と治療

● びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の自家造血幹細胞移植後の再発症例に対する化学療法、同種移植、自家再移植のどの治療がよいのかはっきりしていません。たとえ移植を行っても予後が良くなるとは言えません。自家造血幹細胞後再発に対してはCAR-T細胞療法を推奨します。

● びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の同種造血幹細胞移植の治療成績は、非再発死亡率再発率が高く他の疾患と比べるとあまり良いとは言えません。その中では前処置が弱いほうが良好な結果です。そもそもびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対する同種造血幹細胞移植は前向き試験もほとんどなく医学的根拠が乏しいです。

● 自家移植再発後の同種移植は、他の新規化学療法と比較しても生存率が良いとは言えません。合併症は同種造血幹細胞移植のほうが多いです。自家移植後再発症例の予後は自家移植から再発までの期間が長いほど良いです。

参考文献

E Van Den Neste, N Schmitz, N Mounier, et al.
Outcomes of diffuse large B-cell lymphoma patients relapsing after autologous stem cell transplantation: an analysis of patients included in the CORAL study
Bone Marrow Transplant. 2017 Feb;52(2):216-221.

Ulrike Bacher, Evgeny Klyuchnikov, Jennifer Le-Rademacher, et al.
Conditioning regimens for allotransplants for diffuse large B-cell lymphoma: myeloablative or reduced intensity?
Blood. 2012 Nov 15;120(20):4256-62.

Timothy S Fenske, Kwang W Ahn, Tara M Graff, et al.
Allogeneic transplantation provides durable remission in a subset of DLBCL patients relapsing after autologous transplantation
Br J Haematol. 2016 Jul;174(2):235-48.

Narendranath Epperla, Talha Badar, Aniko Szabo, et al.
Postrelapse survival in diffuse large B-cell lymphoma after therapy failure following autologous transplantation
Blood Adv. 2019 Jun 11;3(11):1661-1669.

造血器腫瘍診療ガイドライン

NCCN Guidelines


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