びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)再発に対する自家造血幹細胞移植

リンパ腫 自家移植 前処置別全生存率

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)再発し化学療法を行い部分奏効以上に達成し造血幹細胞を採取したら、いよいよ自家造血幹細胞移植です。

自家造血幹細胞移植の治療効果は主に「移植前処置」と呼ばれる大量化学療法によって得られます。移植そのものは血球数を回復させるために使用しており抗腫瘍効果はほとんどありません。

本項では、再発したびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対する自家造血幹細胞移植の時に用いる大量化学療法(前処置)は何がよいかについて解説しています。

世界ではBEAMという前処置が主流ですが、日本ではBにあたるカルムスチンという薬剤の静脈注射用製剤が承認されていないため、BEAMは使用困難です。

BEAMにかわる移植前処置についても記載しています。本項でも医学文献を参照しつつ解説していきます。

 

再発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対する自家移植の前処置BEAMの有効性

自家造血幹細胞移植大量化学療法と併用して行います。

大量化学療法は一度投与すると、正常な血球がずっと回復してこないくらいの量を用います。通常の化学療法では行うことができないくらいの投与量です。

自家造血幹細胞移植そのものは血球を回復させるために用います。

したがって自家造血幹細胞移植の治療効果は移植そのものではなく大量化学療法によってもたらされます。

この大量化学療法を「移植前処置(いしょくぜんしょち)」と呼びます。

自家造血幹細胞移植を行う前にこの「移植前処置」を1週間くらいかけて行います。

 

1995年のランダム化臨床試験(PARMA試験)では、DHAP療法を継続するよりも自家造血幹細胞移植のほうが、奏効率・生存率が改善することが明らかになりました(N Engl J Med. 1995 Dec 7;333(23):1540-5).

この臨床試験で用いられた移植前処置は、BEACとよばれる抗がん剤の組み合わせです。

BEACはカルムスチン、エトポシド、シタラビン、シクロホスファミドによる大量抗がん剤化学療法です。5日間の投与になります。

カルムスチンは海外での商品名がBCNUBiCNUなどとして流通しています。DNAやRNAに架橋を形成するアルキル化剤の一種です。

エトポシドはトポイソメラーゼ阻害薬です。トポイソメラーゼIIを阻害し、結果としてDNA鎖を切断させるとされています。

シタラビンはAra-Cやシトシンアラビノシドとも呼ばれます。細胞内でアラシチジン三リン酸(Ara-CTP)になりDNAに取り込まれ、DNA合成を阻害します。

シクロホスファミドもアルキル化剤の一種です。DNAに架橋を形成しDNA合成を阻害します。

 

PARMA試験ではBEACを移植前処置とした自家造血幹細胞移植のほうがDHAP療法を継続するよりも有効であったことになります。

しかしながら、BEACは現在ではほとんど使用されることはありません

 

悪性リンパ腫の場合、世界でよく行われる自家移植の前処置は「BEAM」というもので、カルムスチン、エトポシド、シタラビン、メルファランの4剤を使用します。

メルファランもアルキル化剤の一種です。

BEAMとBEACがランダム化臨床試験で比較されたわけではありません。

 

その他CBV、BuCy、Cy/TBIなどいくつかの自家移植の前処置がありますが、これらの前処置を比較した大規模ランダム化臨床試験もありません。

 

2015年にこれらの前処置を比較した大規模後ろ向き研究の結果が報告されました(Biol Blood Marrow Transplant. 2015 Jun;21(6):1046-1053)。国際データベースを用いた研究でした。

BEAMCBVBuCyTBIを比較しました。

前処置による生存率を比較した結果、3年全生存率BEAMが最も良好でした(下図 DLBCL)。

リンパ腫 自家移植 前処置別全生存率

 

そもそも後ろ向き研究の結果なのではっきりとしたことが言えるわけではありませんが、悪性リンパ腫に対する自家造血幹細胞移植の前処置としてBEAMが世界では最も広く使用され続けています

 

再発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対するBEAMよりもより前処置を目指して

BEAMを前処置とした自家移植の成績を向上させるためにいくつかのランダム化臨床試験が行われました。

 

BEAMに加えて、リツキシマブもしくはヨウ素131標識トシツモマブのいずれかにランダム化して追加した大規模ランダム化臨床試験の結果が2013年に出版されました(J Clin Oncol. 2013 May 1;31(13):1662-8)。

ヨウ素131標識トシツモマブというのは抗体薬に放射性同位元素を結合させた薬剤です。放射免疫療法(RIT)と呼ばれる治療です。

放射免疫療法は抗体薬単独に比べて有害事象として血球数減少を起こしやすいです。

そこで自家移植の前処置として使用すれば、移植により血球数が回復するため、血球減少の問題を乗り越えられると考えられました。

この臨床試験(BMT CTN 0401試験)では再発したびまん性大細胞型B細胞リンパ腫症例を対象に行われました。

2年無増悪生存率は、ヨウ素131標識トシツモマブ群で47.9%, リツキシマブ群で48.6%とあまり変わりありませんでした(下図, p=0.94)。

再発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 R-BEAM vs B-BEAM, PFS

2年全生存率はヨウ素131標識トシツモマブ群で61.0%, リツキシマブ群で65.6%とあまり変わりありませんでした(下図, p=0.38)。

再発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 R-BEAM vs B-BEAM, OS

重症な有害事象はヨウ素131標識トシツモマブ群のほうが多くみられました。特に消化管の粘膜障害が多い結果でした。

BEAMにヨウ素131標識トシツモマブなどの放射免疫療法を追加することは生存率の改善が明らかでないことと重症な有害事象が増加することから推奨されません。

 

 

2017年にはBEAMに加えて、通常量のリツキシマブもしくは高用量のリツキシマブのいずれかにランダム化して追加したランダム化臨床試験の結果が出版されました(Br J Haematol. 2017 Aug;178(4):561-570).

5年無増悪生存率は通常量群で43%, 高用量群で36%でした。有意な差はありませんでした(下図, p=0.205)。

再発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 R-BEAM vs high R-BEAM, DFS

5年全生存率は通常量群で52%, 高用量群で43%でした。有意な差はありませんでした(下図, p=0.392)。

再発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 R-BEAM vs high R-BEAM, OS

 

重症な有害事象の発生率もあまり変わりありませんでした。

BEAMに高用量リツキシマブを追加しても生存率は改善しません。

 

 

そもそもBEMAにリツキシマブを加えても生存率の改善がないことが指摘されています。

2020年に報告された国際データベースを用いた大規模な後ろ向き研究があります(Cancer. 2020 May 15;126(10):2279-2287)。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫症例に対して、移植前処置にBEAMを用いた症例とリツキシマブとBEAMを用いた症例を後ろ向きに比較しました。

4年無増悪生存率はBEAM群で47%, リツキシマブ+BEAM群で48%であり、有意な差はありませんでした(下図, p=0.77).

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 ASCT R-BEAM vs BEAM, PFS

4年全生存率はBEAM群で61%, リツキシマブ+BEAM群で58%であり、有意な差はありませんでした(下図, p=0.54).

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 ASCT R-BEAM vs BEAM, OS

BEAMにリツキシマブを追加しても生存率が改善するとは言えません。

通常化学療法でリツキシマブを使用していれば、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対する自家造血幹細胞移植の前処置はBEAM単独でよいと考えられます。

 

ただし日本特有の問題として、BEAMに用いる薬剤であるカルムスチンが日本では静脈注射用製剤が未承認であることがあります。BEACもBEAMも保険制度上使用できません。

 

日本ではカルムスチンが未承認 BEAMに変わる自家移植の前処置は何がよいか?

日本ではカルムスチンを同系統の薬剤であるラニムスチン(MCNU)で代用した「MEAM」が行われる場合があります。

ラニムスチンはアメリカでは承認されていません。

前処置「MEAM」はBEAMと同等かどうかはほとんど研究されていません

小規模な後ろ向き研究が日本から報告されているのみです(Clin Lymphoma Myeloma Leuk. 2013 Aug;13(4):404-9)。

この後ろ向き研究は初発のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の報告でした。BEAMと比較はされていません。

MCVACなどのラニムスチンを用いた他の前処置も同様に、小規模な研究が日本から報告されているのみです。

 

BEAMの他に、ある程度の規模の前向き臨床試験が行われた前処置がいくつかあります。いずれもランダム化臨床試験ではありません。

2011年に「BeEAM」と呼ばれる前処置の単群前向き臨床試験の結果が報告されました(Blood. 2011 Sep 22;118(12):3419-25)。

BeEAMは、ベンダムスチン(商品名:トレアキシン)、エトポシド、シタラビン、メルファランの4剤からなる前処置です。

ベンダムスチンはアルキル化剤の一種ですが、benzimidazole ringというプリンアナログ構造も持ちます。DNAに架橋形成することが主な薬効ですが、他のアルキル化剤との交差耐性が少ないとされています。

BeEAMは毒性が低く、移植後100日以内の早期死亡率は0%でした。2年生存率も90%以上でした。

BeEAMも前処置として使用可能と考えられますが、他の前処置よりも良いかどうかはまだわかりません。

 

2016年に「BuCyE」と呼ばれる前処置の単群前向き臨床試験の結果が報告されました(Biol Blood Marrow Transplant. 2016 Jul;22(7):1197-1205)。

BuCyEはブスルファン、シクロホスファミド、エトポシドからなります。

移植後100日以内の早期死亡率は4.5%でした。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫症例の2年生存率は65%でした。

後ろ向きにBEAMと比較し、非ホジキンリンパ腫の全生存率はBEAMとあまり変わりありませんでした(下図)。

リンパ腫 自家移植 BEAM vs BuCyE, 全生存率

BuCyEも前処置として使用可能と考えられますが、他の前処置よりも良いかどうかはまだわかりません。毒性はやや強いようです。

 

臨床試験や後ろ向き研究の結果などをふまえると、前処置は可能であればBEAMがよいでしょう。

日本などで保険制度上使用が困難な場合は、BuCy, BuCyE, BeEAM, MEAMなどが選択肢にあがりますが、前向き試験の結果を考慮するとBeEAMがおそらくよいでしょう。

MEAMの医学的根拠はかなり限定的です。医学的にはあまり推奨はされません。しかしながら、効果はおそらくBEAMとあまり変わりはないでしょう。

 

なお、自家造血幹細胞移植の時点で、採取幹細胞に微小な残存病変が混入していたとしても、再発率が上昇するとは言えません(Br J Haematol. 2004 Jun;125(5):605-12)。

残存があるかもしれないという理由で同種造血幹細胞移植に変更する医学的根拠はありません。

 

まとめ びまん性大細胞型B細胞リンパ腫再発に対する自家造血幹細胞移植

● 自家造血幹細胞移植前の大量化学療法である移植前処置については、大規模後ろ向き研究からBEAMが良好でした。後ろ向き研究の結果なのではっきりとしたことが言えるわけではありませんが、悪性リンパ腫の前処置としてBEAMが世界で最も広く使用されています

● BEAMにヨウ素131標識トシツモマブなどの放射免疫療法やリツキシマブを追加しても生存率が改善するとは言えません。前処置はBEAM単独でよいと考えられます。

● BEAMに用いる薬剤であるカルムスチンは日本では未承認です。ラニムスチン(MCNU)で代用した「MEAM」が行われる場合がありますが、前向き研究は限られています。「BeEAM」と「BuCyE」の前向き研究の結果がありますが比較試験ではありません。BeEAMは毒性が低いです。

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