再発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL) R-ICE療法の実際の投与と注意点

R-ICE療法 スケジュール

再発したびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の症例で、自家造血幹細胞移植が可能と考えられる場合は、移植に向けた化学療法を行います。

この化学療法にもいくつか種類があります。その中でもR-GDP療法がよいと考えられますが、それができない場合などにR-ICE療法が用いられます。

本項では、R-ICE療法の実際の投与スケジュールや注意点について解説します。

再発したびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対して、移植までにどのような化学療法を行うとよいかについては「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL) 再発後の化学療法は何がよいか?」をご覧ください。

 

R-ICE療法はR-DHAP療法と比較した大規模ランダム化臨床試験があります。CORAL試験と呼ばれています。

投与スケジュールや有害事象などはCORAL試験に基づいて記載しています。

比較的特徴的な有害事象(出血性膀胱炎脳症)についても記載しています。

 

再発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対するR-ICE療法のスケジュール

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の再発後の化学療法としてR-ICE療法というものがあります(J Clin Oncol. 2010 Sep 20;28(27):4184-90)。

移植を前提とした再発後の化学療法はR-GDP療法が登場してから、R-ICE療法が行われることは減ってきました。

何らかの理由でR-GDP療法ができない症例に対して主にR-ICE療法は使用されます。

 

R-ICE療法はリツキシマブイホスファミドカルボプラチンエトポシドからなる抗がん剤化学療法です。以下のようにスケジュールで行います(下図)。

R-ICE療法 スケジュール

リツキシマブはCD20に対する抗体薬です。CD20が陽性であれば再発後でもリツキシマブを併用します。各サイクルの初日に投与します。

イホスファミド24時間持続投与です。R-ICE療法のイホスファミドは大量とされる投与量になります。

出血性膀胱炎をおこしやすくなるためメスナという薬剤が副作用軽減のためにイホスファミドに併用となります。イホスファミドもメスナも化学療法の二日目に投与します。

カルボプラチンも二日目の投与です。カルボプラチンの投与量は腎機能によってかわります。投与時間は30分程度です。

エトポシドは初日から三日目まで毎日投与します。投与時間は1時間程度です。

 

R-ICE療法は21日サイクルで行います。

24時間持続投与の点滴がありますので、通常は入院で行います。

R-ICE療法は2~3サイクル行い治療効果判定し、部分奏効(PMR)以上を達成したら自家造血幹細胞採取にすすみます。

 

腎機能が低いとカルボプラチンだけでなく、エトポシドも減量する場合があります。

腎機能が著しく低い場合は、イホスファミドやエトポシドを減量します。

肝機能が低下している場合は、イホスファミドを大きく減量します。

 

R-ICE療法は2日目の薬剤が特に吐き気が強くおこります。副腎皮質ステロイドパロノセトロン(商品名:アロキシ)を投与します。

アプレピタント(商品名:イメンド)の併用は多くの症例で行いません。イホスファミドと相性が悪いためです。

 

R-ICE療法の点滴だけでも多くの水分が投与されますが、イホスファミドが膀胱に障害を与える可能性があるため、多くの水分でイホスファミドの代謝物があまり膀胱に蓄積しないようにします。

イホスファミド投与期中は少なくとも1日2Lの水分の投与が行われます。それでも出血性膀胱炎が発生することがありますので注意が必要です。

 

再発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対するR-ICE療法 特に注意すべき有害事象

R-ICE療法の初回は「輸注反応」「腫瘍崩壊症候群」が発生する可能性があります。

R-ICE療法で使用するリツキシマブは、前回の投与から長時間経過していると、再開した時に再び「輸注反応」をおこすことがあります。

リツキシマブを開始したら、発熱や悪寒などに注意が必要です。

頻度は低いですがエトポシドでも輸注反応がみられることがあります。ほとんどの場合、軽度です。

 

 

再発時の腫瘍量が多いとR-ICE療法の開始によって「腫瘍崩壊症候群」が発生する可能性があるため、予防を行います。

R-ICE療法の点滴だけでも水分が多く入りますが、腫瘍崩壊症候群予防としては不足していますので追加で点滴投与が必要になります。

大量輸液により十分に予防することが腫瘍崩壊症候群を起こさないためには最も重要です。

そのほか尿酸を低下させる薬剤も使用することがあります。

 

 

R-ICE療法は発熱性好中球減少症15%以上にみられます。白血球の中の好中球が減少しますので、臨床試験ではG-CSF製剤を予防的に投与していました。

発熱性好中球減少症の発生率を低下させるためにG-CSF製剤を好中球数が低下する前に投与します。

通常のG-CSF製剤の場合は連日の投与になりますので、持続的に効果のある製剤であるペグフィルグラスチム(商品名:ジーラスタ)の使用がよいでしょう。

ペグフィルグラスチムは各サイクルに1回の皮下注射になります。

 

確率は大きく下がりますが、それでも好中球数が低下し発熱性好中球減少症を起こすことがあります。R-ICE療法を開始して10日~14日が最も好中球数が低下します。

この時期に発熱した場合は、すぐに知らせてください

発熱性好中球減少症は好中球数が少ない状態での感染症となるため、そのままにしておくと急激に悪化することがあり命にかかわります。

すぐに抗生剤を開始すればまず問題なく改善します。

 

R-ICE療法で比較的特徴的な有害事象に出血性膀胱炎があります。イホスファミドによる副作用です。イホスファミドの代謝物の一つであるアクロレインが原因とされています。

メスナはアクロレインと反応し出血性膀胱炎のリスクを低下させます。

メスナと水分で予防すると発生率は下がりますが、それでも起こることがあります。

肉眼的に赤くなくても、尿検査を行い顕微鏡下で確認します。高倍率の1視野で10個以上の赤血球が確認されたら、改善するまでR-ICE療法は延期です。十分に予防しておくことが重要です。

 

かなりまれですがR-ICE療法に比較的特有で重症な有害事象として、脳症という中枢神経系障害が発生することがあります。イホスファミドによる副作用の一つです。

アプレピタント(商品名:イメンド)の併用がリスクになる可能性があるため、制吐剤としてアプレピタントを用いることはR-ICE療法ではあまりありません(J Oncol Pharm Pract. 2008 Sep;14(3):157-62)。

R-ICE療法に用いるイホスファミドは大量とされる投与量になります。イホスファミドの代謝物が中枢神経系にも作用し、ぼーっとするようになったり、ふらつきやすくなったりします。ひどいときはけいれんや昏睡もあります。

投与後数日後までがおこりやすく、多くはそのまま徐々に改善します。

脳症が発生したら、R-ICE療法は直ちに中止します。R-ICE療法の再投与はありません。

 

再発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対するR-ICE療法 その他の注意点

R-ICE療法でも赤血球や血小板が低下し、輸血が必要になることがあります。

R-DHAP療法などと比べて頻度は低くなりますが、臨床試験では3サイクルの間に約35%の症例で少なくとも1回の血小板輸血が必要でした。

 

R-ICE療法開始から2週間くらいで脱毛が始まります。ばっさりと抜けますので覚悟していてください。

 

生ものの摂取は必ずしも禁止というわけではありません。生もの禁止にして感染率が低下するなどの医学的な根拠はありません。各施設や担当医の判断にしたがってください。

 

R-ICE療法の2サイクル目までに血球数が回復しない場合は、R-ICE療法は延期します。

好中球数1000/μL以上かつ血小板数50000/μL以上であれば、サイクル開始可能です。ただし開始時点で血球数が低いほど、有害事象が増えますので注意が必要です。

 

R-ICE療法中に肝機能障害腎機能障害がおこることがあります。著しい場合は改善するまでR-ICE療法は延期となりますが、かなりまれです。

 

R-ICE療法は自家造血幹細胞移植を前提とした治療とされます。2サイクルあるいは3サイクル終了した時点(サイクルのおよそ21日目ごろ)でPET-CT検査を行い効果判定となります。

首や腋など診察で触れることができる病変があれば、R-ICE療法の各サイクルで大きさを確認します。R-ICE療法中に病変が悪化することもあり得ますので、効果を確認しながら継続していきます。

 

自家造血幹細胞採取・自家造血幹細胞移植が後に続きます。移植に向けて体力が低下しないようにしましょう。

できる限り各サイクルで早期に退院して外来通院も行うようにしておいたほうがよいでしょう。

 

まとめ 再発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 R-ICE療法の実際の投与と注意点

● びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の再発後のR-ICE療法は21日サイクルで2~3サイクル行います。初回は「輸注反応」「腫瘍崩壊症候群」に注意が必要です。

発熱性好中球減少症出血性膀胱炎脳症を起こす可能性があります。発熱性好中球減少症の頻度を減らすためにG-CSF製剤の投与をあらかじめ行います。

● その他、輸血が必要になる可能性があります。脱毛などもおこります。治療の効果判定はPET-CT検査で行います。

参考文献

Christian Gisselbrecht, Bertram Glass, Nicolas Mounier, et al.
Salvage regimens with autologous transplantation for relapsed large B-cell lymphoma in the rituximab era.
J Clin Oncol. 2010 Sep 20;28(27):4184-90.

Joshua E Howell, Audrea H Szabatura, Amy Hatfield Seung, et al.
Characterization of the occurrence of ifosfamide-induced neurotoxicity with concomitant aprepitant
J Oncol Pharm Pract. 2008 Sep;14(3):157-62.


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