びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL) 再発・難治性症例の新薬の臨床試験結果

2020-10-02

再発・難治性 びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 ポラツズマブ+BR vs BR 無増悪生存率

 

再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を対象とした治療は毎年のように新しい臨床試験の結果がでています。

その中には有効なものもいくつか含まれます。新薬で特に期待できるものにポラツズマブ ベドチンタファシタマブがあります。

本項では、再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の新規治療の臨床試験結果について出版された文献を参照にして解説していきます。

 

再発・難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対するレナリドミド、イノツズマブ オゾガマイシン

再発・難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を対象とした新薬のランダム化臨床試験は毎年のように結果が次々と報告されています。

 

2017年にレナリドミドの有効性についてのランダム化臨床試験の結果が出版されました(Clin Cancer Res. 2017 Aug 1;23(15):4127-4137).

レナリドミドは主に多発性骨髄腫に使用される薬剤ですが、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫にも効果が期待できるとしてランダム化臨床試験が行われました。

この臨床試験ではレナリドミド単独投与を、ゲムシタビン、リツキシマブ、エトポシド、オキサリプラチンのいずれか単剤とランダム化して比較しました。

全奏効率はレナリドミド群で27.5%、単剤化学療法群で11.8%でした。レナリドミド群のほうが良い傾向にありましたが、統計学的な有意差はありませんでした(p=0.079)。

無増悪生存期間の中央値は、レナリドミド群で13.6週間、単剤化学療法群で7.9週間でした。無増悪生存期間はレナリドミド群のほうが単剤化学療法群よりも有意に良好でした(下図 HR 0.64, 95%CI 0.41-0.99, p=0.041)。

再発・難治性 びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 レナリドミド vs 単剤化学療法 無増悪生存率

全生存期間の中央値は、レナリドミド群で31週間、単剤化学療法群で24.6週間でした。統計学的に有意な差はありませんでした(下図, HR 0.91, 95%CI 0.59-1.41, p=0.673)。

再発・難治性 びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 レナリドミド vs 単剤化学療法 全生存率

この臨床試験の主要評価項目は全奏効率でした。

レナリドミドの奏効率があまり高くないことと、単剤化学療法と比べても有意な差がみられなかったことから、レナリドミドが単剤化学療法よりも有効とは言えませんでした。

対象群の治療である単剤化学療法はほとんど奏効しないことが容易に予想されますが、それにさえも差がみられなかったことになります。

全生存率の改善もみられていません。

再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対するレナリドミドは有効とは必ずしも言えません。

 

 

イノツズマブ オゾガマイシンB細胞性の急性リンパ芽球性白血病で使用されるCD22に対する抗体薬に細胞毒性物質を組み合わせた薬剤です。

同じB細胞性腫瘍であるびまん性大細胞型B細胞リンパ腫への使用が検討され、大規模ランダム化臨床試験が行われました(Br J Haematol. 2018 Aug;182(4):583-586).

再発・難治性のアグレッシブなB細胞リンパ腫を対象とし、リツキシマブ+イノツズマブ オゾガマイシンを、化学療法(リツキシマブ+ベンダムスチンもしくはリツキシマブ+ゲムシタビン)と比較しました。

この臨床試験では91%の症例がびまん性大細胞型B細胞リンパ腫でした。

結果、全奏効率はイノツズマブ群で41%, 化学療法群で44%とほとんど変わりありませんでした。

無増悪生存期間の中央値はイノツズマブ群で3.7か月, 化学療法群で3.5か月とあまり変わりませんでした(HR 0.9, 95%CI 0.7-1.2, p=0.27)

全生存期間の中央値は両群とも9.5か月でした(HR 1.1, 95%CI 0.8-1.4, p=0.708).

化学療法とくらべてイノツズマブ オゾガマイシンが有効なところはありません。

再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対してイノツズマブ オゾガマイシンは有効とは言えません。

 

再発・難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の新薬 ポラツズマブ ベドチン, タファシタマブ, セリネクソール

ポラツズマブ ベドチン(商品名:ポライビー)CD79bに対する抗体薬に微小管阻害薬を組み合わせた薬剤です。

CD79 bはB細胞に発現している蛋白です。ポラツズマブ ベドチンはCD79bと結合して細胞内に取り込まれます。細胞内で微小管阻害薬であるMMAEが分離され細胞内の微小管ネットワークを破壊します。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫でも95%以上の症例でCD79bが発現しており、効果が期待されていました。

 

2020年に結果が出版された大規模ランダム化臨床試験では、再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫で自家移植後再発や自家移植適応外の症例を対象にポラツズマブ ベドチン+ベンダムスチン+リツキシマブもしくはベンダムスチン+リツキシマブにランダム化し比較しました(J Clin Oncol. 2020 Jan 10;38(2):155-165.)。

結果、完全奏効率はポラツズマブ ベドチンありで40%, なしで17.5%と、明らかな差がみられました(p=0.026).

無増悪生存期間も中央値では、ポラツズマブ ベドチンありで9.5か月、なしで3.7か月と統計学的にも明らかにポラツズマブ ベドチンありのほうが良好でした(下図, HR 0.36, 95%CI 0.21-0.63, p<0.001)。

再発・難治性 びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 ポラツズマブ+BR vs BR 無増悪生存率

 

最も重要な全生存期間も中央値で、ポラツズマブ ベドチンありで12.4か月、なしで4.7か月統計学的にも明らかにポラツズマブ ベドチンありのほうが良好でした(下図、HR 0.42 95%CI 0.24-0.75, p=0.002).

再発・難治性 びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 ポラツズマブ+BR vs BR 全生存率

 

血球減少はポラツズマブ群のほうが多く発生しました。重症感染症の発生率はあまり変わりませんでした。

再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対してポラツズマブ ベドチン +BR療法はBR療法単独よりも明らかに有効です。

ポラツズマブ ベドチンは2021年3月時点でアメリカにつづき日本でも承認されています。

 

タファシタマブCD19に対する抗体薬です。CD19はB細胞に発現しています。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫などのB細胞由来の腫瘍にも発現します。

CD19に対する抗体薬は過去に開発が試みられましたが、いずれも効果がほとんどありませんでした。タファシタマブはFc領域を改変することで、抗体薬としての効果を高めました。

 

2020年にタファシタマブとレナリドミドを再発・難治性の自家移植適応外のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫症例に対して投与する前向き試験の結果が出版されました(Lancet Oncol. 2020 Jul;21(7):978-988).

レナリドミドは抗体薬の効果を強化するとされているため、タファシタマブと併用する投与方法となりました。

この臨床試験(L-MIND試験)は比較試験ではありません。

結果、完全奏効率43%でした。全奏効率60%でした。

無増悪生存期間の中央値は1年でした(下図)。

再発・難治性 びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 タファシタマブ + レナリドミド 無増悪生存率

 

1年全生存率は74%でした(下図).

再発・難治性 びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 タファシタマブ + レナリドミド 全生存率

有害事象もあまり多くありませんでした。

比較試験ではありませんので、他の治療よりも良いかどうかはわかりませんが、完全奏効率や無増悪生存率は自家移植適応外の症例としては期待ができるとされました。

タファシタマブはアメリカでは承認されています。レナリドミドが効果を上乗せしているかどうかははっきりしているわけではありませんが、最初の約1年間はレナリドミドと併用で承認されています。

2021年3月時点でまだ日本では承認されていません。

 

 

セリネクソールはたんぱく質の細胞核外輸送を阻害する内服薬です。核外輸送に重要な蛋白であるexportin 1を阻害します。重要な蛋白の核外への輸送が阻害され、腫瘍細胞が生存できなくなるとされています。

2020年にセリネクソールを再発・難治性の自家移植適応外のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫症例に対して投与する前向き試験の結果が出版されました(Lancet Haematol. 2020 Jul;7(7):e511-e522)。

この臨床試験(SADAL試験)は比較試験ではありません。セリネクソールは週に2回の内服です。

全奏効率28%完全奏効率12%でした(下図)。

再発・難治性 びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 Selinexor 奏効率

あまり高い奏効率とは言えません。

無増悪生存期間の中央値は2.6か月、全生存期間の中央値は9.1か月でした。

比較試験ではありませんので、他の治療よりも良いかどうかもわかりません。

 

しかしながら、この臨床試験の結果でセリネクソールは再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対してアメリカで承認されました。

2021年3月時点でまだ日本では承認されていません。

 

再発・難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の臨床試験 ブレンツキシマブ ベドチン、ブリナツモマブ

前向きの臨床試験を行っていたとしても、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対してアメリカでも承認されていない薬剤は多数あります。

その中でも奏効率が約40%にみられたものが複数あります。

 

ブレンツキシマブ ベドチンはCD30に対する抗体薬と微小管阻害薬(MMAE)を組み合わせた薬剤です。ホジキンリンパ腫や末梢性T細胞リンパ腫に承認されています。

2015年に再発・難治性のCD30陽性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対するブレンツキシマブ ベドチンの前向き試験の結果が出版されました(Blood. 2015 Feb 26;125(9):1394-402).

この臨床試験でのCD30陽性の基準はたった1%以上でした。病理医の判定と、機械判定で違いがみられました(下図)。

再発・難治性 びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 ブレンツキシマブ CD30陽性率

結果は、全奏効率44%, 完全奏効率17%でした。CD30陽性細胞が少ないにもかかわらず、奏効が確認されています。

無増悪生存期間の中央値は4か月でした。

ただし、ブレンツキシマブ ベドチンはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対してアメリカでも日本でも承認されていません。

 

ブリナツモマブはCD3とCD19に対する二重特異性抗体製剤です。B細胞性の急性リンパ芽球性白血病に使用されます。

CD19はB細胞に発現していますが、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫にも発現しています。CD3はT細胞に発現しており、ブリナツモマブはT細胞と腫瘍性B細胞をつなぐことで抗腫瘍効果をもたらします。

2016年に再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対するブリナツモマブの前向き試験の結果が出版されました(Blood. 2016 Mar 17;127(11):1410-6).

全奏効率は43%, 完全奏効率は19%でした。

無増悪生存期間の中央値は3.7か月、全生存期間の中央値は5.0か月でした。

ブリナツモマブもびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対してアメリカでも日本でも承認されていません。

 

ニボルマブ(商品名:オプジーボ)は免疫チェックポイント阻害薬に分類される薬剤で。多くの腫瘍やホジキンリンパ腫で有効性が確認されています。PD-1に対する抗体薬です。

再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対してニボルマブを投与した臨床試験の結果が2019年に出版されました(J Clin Oncol. 2019 Feb 20;37(6):481-489)。

奏効率は10%以下と乏しい結果でした。無増悪生存期間の中央値は2か月未満でした。

再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対してニボルマブはほとんど奏効しません。

 

 

新薬の中で期待できる化学療法は、ポラツズマブ ベドチン + BR療法タファシタマブ+レナリドミドです。

ただし、タファシタマブはCD19を対象としているため、CD19に対するCAR-T細胞療法後に行っても効果は乏しいでしょう。

タファシタマブをCAR-T細胞療法よりも先に行ったらCAR-T細胞療法の効果が落ちるかどうかはわかっていません。

 

 

まとめ びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 再発・難治性症例の新薬の臨床試験結果

● 再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を対象とした新薬のランダム化臨床試験は毎年のように結果が次々と報告されていますが、有効なものは簡単には見つかりません。再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対するレナリドミドイノツズマブ オゾガマイシンは有効とは必ずしも言えません。

● 再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対してポラツズマブ ベドチン+BR療法はBR療法単独よりも明らかに有効です。タファシタマブ+レナリドミドは比較試験ではありませんが完全奏効率や無増悪生存率は期待ができるとされました。

● 比較試験ではない前向きの臨床試験を行ってある程度の奏効が確認されたとしても、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対して承認される薬剤は少ないです。

参考文献

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A Phase 2/3 Multicenter, Randomized, Open-Label Study to Compare the Efficacy and Safety of Lenalidomide Versus Investigator's Choice in Patients With Relapsed or Refractory Diffuse Large B-Cell Lymphoma
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Polatuzumab Vedotin in Relapsed or Refractory Diffuse Large B-Cell Lymphoma
J Clin Oncol. 2020 Jan 10;38(2):155-165.

Gilles Salles, Johannes Duell, Eva González Barca, et al.
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Nagesh Kalakonda, Marie Maerevoet, Federica Cavallo, et al.
Selinexor in Patients With Relapsed or Refractory Diffuse Large B-cell Lymphoma (SADAL): A Single-Arm, Multinational, Multicentre, Open-Label, Phase 2 Trial
Lancet Haematol. 2020 Jul;7(7):e511-e522.

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Brentuximab vedotin demonstrates objective responses in a phase 2 study of relapsed/refractory DLBCL with variable CD30 expression
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Blood. 2016 Mar 17;127(11):1410-6.

Stephen M Ansell, Monique C Minnema, Peter Johnson, et al.
Nivolumab for Relapsed/Refractory Diffuse Large B-Cell Lymphoma in Patients Ineligible for or Having Failed Autologous Transplantation: A Single-Arm, Phase II Study
J Clin Oncol. 2019 Feb 20;37(6):481-489.

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