びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL) 再発後化学療法の効果判定と幹細胞採取

2020-09-09

非ホジキンリンパ腫 幹細胞動員 偽薬 vs プレリキサホル, ≥2x10(6)

再発が確定したびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対して、自家造血幹細胞移植に向けて化学療法を行ったら、2~3サイクル終了時点で治療効果判定を行います。

PET-CTによる効果判定を推奨します。目標は部分奏効(PMR)以上です。

部分奏効以上を達成したら、幹細胞採取を行います。幹細胞採取は末梢血からの幹細胞採取を推奨します。

悪性リンパ腫症例は幹細胞採取量が少ないことが多いですが、幹細胞採取の前日にプレリキサホルを使用すると高い確率で幹細胞を十分量採取できると考えられます。

本項では、再発後化学療法の治療効果判定とその後の幹細胞採取について、医学的根拠を確認しながら解説していきます。

 

再発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 移植前化学療法後の効果判定 部分奏効以上が目標

再発したびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対して、自家造血幹細胞移植を前提に化学療法を開始し、2~3サイクル終了した時点でPET-CT検査による効果判定を行います。

ここで部分奏効(PMR)以上の奏効を達成していたら、自家造血幹細胞移植へとすすみます。

 

2014年以降、治療効果判定には国際基準である「Lugano基準」を用います(J Clin Oncol. 2014 Sep 20;32(27):3059-68)。

PET-CT検査で全身に病変が検出されなければ完全奏効(CMR)です。

たとえCTで残存の腫瘤があったとしても、その部分にPETで集積がなければ完全奏効(CMR)となります。

集積の判定は「Deauville点数」を用います。「集積がない」とは、Deauville点数が3点以下(集積が肝臓以下)です。

 

部分奏効(PMR)の基準は以下の2つをともに満たすことです

● 腫瘤が残存しDeauville点数は4か5であるが、治療開始前よりも集積が減弱している

● 集積の悪化や新規病変の出現がない

もし集積の減弱が認められない、集積の悪化している病変がある、新規病変が出現している、といった場合は、部分奏効(PMR)に到達できていません。

「化学療法抵抗性」の判断となり、自家造血幹細胞移植の適応となりません。化学療法や自家造血幹細胞移植ではない治療を検討することになります。「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL) 化学療法抵抗性症例の予後と治療」をご覧ください。

部分奏効(PMR)や完全奏効(CMR)を達成した場合は、そのまま幹細胞採取へ進んでいきます。

 

再発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対する末梢血幹細胞採取と骨髄幹細胞採取

幹細胞採取がすぐに可能であれば、そのまま幹細胞採取にすすみます。

少し間があいてしまう場合は3サイクル目の化学療法を行い、最終投与日から約3週間後以降に幹細胞採取を行います。

 

幹細胞採取は末梢血から行う方法と骨髄から行う方法がありますが、自家造血幹細胞移植の場合は、通常末梢血から幹細胞採取を行います(末梢血幹細胞採取)。

末梢血から採取した幹細胞で移植したほうが、骨髄から採取した幹細胞で移植するよりも、血球の上昇がはやいです。

2001年に末梢血骨髄による幹細胞移植でのランダム化臨床試験の結果が出版されました(Br J Haematol. 2001 Aug;114(2):319-26).

悪性リンパ腫に対してBEAMという移植前処置を行い、自家造血幹細胞移植をおこなった臨床試験です(Hovon 22試験)。

好中球が500/μLを超えた日数(中央値)は、末梢血で移植後13日、骨髄で移植後26日であり、末梢血のほうが有意に早く好中球が上昇しました(p<0.01)。

血小板が20000/μLを超えた日数(中央値)は、末梢血で移植後13日、骨髄で移植後18日であり、末梢血のほうが有意に早く血小板が上昇しました(p<0.01)。

抗生剤投与日数や入院期間も末梢血のほうが有意に短期間でした。

全生存率は末梢血からでも骨髄からでも有意な差はありませんでした(下図).

悪性リンパ腫 自家末梢血移植 vs 自家骨髄移植, OS

 

2002年にも同様のランダム化試験の結果が出版されています(J Clin Oncol. 2002 May 1;20(9):2344-52).

好中球が500/μLを超えた日数(中央値)は、末梢血で移植後10日、骨髄で移植後13日でした。

血小板が20000/μLを超えた日数(中央値)は、末梢血で移植後11日、骨髄で移植後15日でした。

好中球も血小板も有意に末梢血のほうがはやく上昇していると言えます。

 

なお移植の時は、好中球500/μL以上に回復することを「好中球生着」、血小板が20000/μL以上に回復することを「血小板生着」といいます。

どちらも臨床試験や実際の臨床現場でよく使用される指標です。

 

幹細胞採取は骨髄から行うよりも末梢血から行うことを推奨します

採取そのものの負担が少ない(全身麻酔が不要である)だけでなく、移植時の血球の回復がはやいことが末梢血幹細胞採取の利点です。

 

末梢血から幹細胞採取を行う場合は、幹細胞採取の前にG-CSF製剤という白血球を上昇させる皮下注射を4日間投与し、5日目に幹細胞採取を行います(下図)。

造血幹細胞採取スケジュール プレリキサホル先制使用

採取時には通常は両腕の静脈に針を刺して、血液を幹細胞採取用の機械に3時間くらい循環させます。

動画のほうがわかりやすいと思います。下の動画をご参照ください(シンガポールの施設です)。

一度、両腕にカテーテルを挿入してしまえば、あとは約3時間ずっと横になっているだけです。

 

幹細胞採取は脚の付け根(鼠径部)や首から中心静脈カテーテルを挿入して行われることがありますが、極力推奨しません。両腕から採取を行うことを強く推奨します。

実際に中心静脈カテーテルを挿入して採取することによる死亡事故が国内だけでも複数発生しています。

自己末梢血造血幹細胞採取時における死亡事例 https://www.jmdp.or.jp/medical/notice_w/post_263.html

自己末梢血造血幹細胞移植採取時における死亡事例に関する学会の見解 https://www.jshct.com/uploads/files/news/20180702.pdf

 

過去の化学療法により針をさせる血管が全くないなど、どうしても両腕から行うことが不可能な場合のみ、鼠径部に中心静脈カテーテルを挿入して行うことがありますが最終手段です。

首や胸から中心静脈カテーテルを挿入することは推奨しません。

 

1回の幹細胞採取で十分に自家移植できるくらいの量の幹細胞が採取出来れば、1日で幹細胞採取は終了します。

そうでない場合は十分な量が採取できるまで、連日で数日間の採取が必要になります。

 

一般に自家移植が良く行われる他の疾患(多発性骨髄腫など)と比べて、リンパ腫では1日当たりで採取できる幹細胞の量が少ないです。

2020年に報告された前向き試験では、多発性骨髄腫と非ホジキンリンパ腫で採取できる幹細胞の量を比較しました(Transfusion. 2020 Jul;60(7):1519-1528)。

この臨床試験(GOA試験)は前向きの観察研究でした。

観察の結果、採取された幹細胞(CD34陽性細胞)は中央値で、多発性骨髄腫で6300000個/kgであったのに対して、非ホジキンリンパ腫では3900000個/kgであり、非ホジキンリンパ腫のほうが有意に少ない結果でした(p=0.001).

幹細胞はCD34陽性細胞数で数えますが、移植を行うには体重当たり3000000個あればよいとされます。少なくとも2000000個/kgは必要とされます。

非ホジキンリンパ腫では数日間の採取が必要になったり、それでも幹細胞が十分量採取できなかったりする可能性がありますので、十分な量の幹細胞を採取するために下記のような「幹細胞動員」方法を用います。

 

再発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 抗がん剤もしくはプレリキサホルによる幹細胞動員

幹細胞採取前の4日間のG-CSF製剤だけでなく、採取の約2週間前にシクロホスファミドを大量に投与すると、採取できる幹細胞が増えることがわかっています。

 

2001年にG-CSF単独シクロホスファミド後にG-CSFで比較したランダム化臨床試験の結果が出版されました(Blood. 2001 Oct 1;98(7):2059-64)。

対象はリンパ腫の症例です。

結果、CD34陽性細胞の採取量はシクロホスファミドを用いたほうが約3倍多くなりました(p=0.004).

 

シクロホスファミドなどの抗がん剤を投与し、その後白血球が回復する時期に幹細胞が末梢血に増えることがわかっています。

幹細胞動員に用いる抗がん剤としてシクロホスファミドではない抗がん剤だともっと多くとれる可能性がありますが、もし抗がん剤を使用するのであればシクロホスファミドのほうがよさそうです。

2000年に報告された後ろ向き研究の結果です(Blood. 2000 Mar 1;95(5):1588-93). 対象はリンパ腫の症例でした。

自家移植後に骨髄異形成症候群急性骨髄性白血病を発症したのは6年間で8.6%でしたが、エトポシドを含む抗がん剤で幹細胞を動員すると、移植後の骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病の発生率が約8倍とあきらかに上昇しました(p=0.002)。

 

シクロホスファミドは造血幹細胞内で代謝されるため造血幹細胞への障害が少ないと考えられます。他の抗がん剤で動員すると障害の発生した幹細胞が動員されている可能性が上昇すると考えられます。

特にエトポシドを含む抗がん剤は注意が必要でしょう。

化学療法の3サイクル目の血球回復期に幹細胞採取を行うのも注意が必要であると言えます。

その後に障害を受けた幹細胞が原因で骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病の発症率が上昇する可能性があります。

 

その後プレリキサホル(商品名:モゾビル)という抗がん剤ではない造血幹細胞を動員する薬剤が登場しました。皮下注射製剤です。

プレリキサホルは骨髄の間質細胞に発現しているSDF-1αと造血幹細胞に発現しているCXCR4の結合を阻害し、一時的に骨髄中の造血幹細胞を末梢血へ移動させます。G-CSF製剤と併用すると相乗的にその効果が上昇します。

 

2009年に非ホジキンリンパ腫を対象とした大規模ランダム化臨床試験の結果が出版されました(J Clin Oncol. 2009 Oct 1;27(28):4767-73).

この臨床試験ではG-CSFに加えて、採取前日の夜に偽薬もしくはプレリキサホルを投与しました。

その結果、造血幹細胞(CD34陽性細胞)が5000000個/kg以上採取できたのは、偽薬群で19.6%であったのに対して、プレリキサホル群では59.3%と、プレリキサホル群のほうが明らかに高くなりました(下図, p<0.001)。

非ホジキンリンパ腫 幹細胞動員 偽薬 vs プレリキサホル, ≥5x10(6)

造血幹細胞(CD34陽性細胞)が2000000個/kg以上採取できたのは、偽薬群で47.3%であったのに対して、プレリキサホル群では86.7%と、プレリキサホル群のほうが明らかに高くなりました(下図, p<0.001)。

非ホジキンリンパ腫 幹細胞動員 偽薬 vs プレリキサホル, ≥2x10(6)

プレリキサホル群のほうが、下痢や悪心が多くみられました。

採取できた幹細胞で移植しても、両群間で生着までの期間や全生存率に有意な差はありませんでした。

 

造血幹細胞の動員にはG-CSFに加えて、シクロホスファミドもしくはプレリキサホルを使用します。

シクロホスファミドとプレリキサホルの直接比較を行ったランダム化試験はありません。

 

プレリキサホルの前向き臨床試験を行い、過去の抗がん剤で動員した症例と比較した研究の結果が2014年に出版されています(Blood Cancer J. 2014 Oct 31;4(10):e255)。

この臨床試験(PHANTASTIC試験)の対象は多発性骨髄腫もしくはリンパ腫でした。

1日の幹細胞採取で造血幹細胞(CD34陽性細胞)が2000000個/kg以上採取できた症例は、プレリキサホルでは98%にもなりました。過去の抗がん剤で動員した症例では75%でした。直接比較ではありませんが、有意な差がみられました(p=0.001)。

最終的に造血幹細胞(CD34陽性細胞)を2000000個/kg採取できなかった症例は、プレリキサホルでは4%でした。過去の抗がん剤で動員した症例では25%でした。直接比較ではありませんが、有意な差がみられました(p<0.001)。

敗血症や重篤な出血などの重篤な有害事象はプレリキサホル症例では0%でしたが、過去の抗がん剤で動員した症例では10%に出現していました。

 

ランダム化試験ではないのではっきりしたことは言えませんが、プレリキサホルによる採取は抗がん剤で動員するよりも有害事象の発生が少なく、幹細胞採取も多くの症例で十分量可能であるとおそらく考えられます。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫再発後は化学療法を行っていることに加えて、その後自家造血幹細胞移植が控えています。重症な有害事象が発生することは望ましくありません。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫再発後の幹細胞採取は、抗がん剤で動員するよりもプレリキサホルとG-CSF製剤で動員することを推奨します

ただし採取前日の朝の採血で血中の造血幹細胞が十分に上昇していれば、プレリキサホルの投与は必要ありません。そのままG-CSF製剤のみで十分な量の造血幹細胞が採取できます。

採取した幹細胞は凍結保存され、移植の時に解凍して使用されます。

 

まとめ びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 再発後化学療法の効果判定と幹細胞採取

● 再発したびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の自家造血幹細胞移植を前提とした化学療法が2~3サイクル終了した時点でPET-CT検査による効果判定を行います。部分奏効(PMR)完全奏効(CMR)を達成したら幹細胞採取へ進んでいきます。

幹細胞採取は骨髄から行うよりも末梢血から行うことを推奨します。可能であれば両腕の静脈から幹細胞採取を行うことを推奨します。

● びまん性大細胞型B細胞リンパ腫再発後の幹細胞採取は、抗がん剤で動員するよりもプレリキサホルとG-CSF製剤で動員することを推奨します。有害事象が少なくなる可能性と、採取量が多くなる可能性があります。

参考文献

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Plerixafor is superior to conventional chemotherapy for first-line stem cell mobilisation, and is effective even in heavily pretreated patients
Blood Cancer J. 2014 Oct 31;4(10):e255.


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