びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL) 再発後の化学療法は何がよいか?

再発アグレッシブリンパ腫 DHAP vs GDP, age 60, OS

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)再発したら、適応症例では自家造血幹細胞移植に向けて化学療法を行います。

本項では移植までの化学療法はどのような治療がよいか解説します。

当サイトではR-GDP療法を推奨します。奏効はR-DHAP療法と同等で、有害事象の発生率が明らかに少なくなるためです。そのほかにもR-ICE療法などもランダム化臨床試験が行われています。

以下、ガイドラインや医学文献を参照にしつつ解説していきます。

 

再発後の自家造血幹細胞移植の有効性については「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL) 再発時の検査と治療方針 自家移植の有効性」をご覧ください。

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫再発後化学療法 DHAPとICE

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対する再発後の化学療法について、いくつかのランダム化臨床試験が行われました。

以前は自家造血幹細胞移植に向けてDHAP療法という化学療法を行っていました。

DHAP療法というのはデキサメタゾン、大量シタラビン、シスプラチンによる治療です。「ダープ」療法と呼びます。

デキサメタゾンは副腎皮質ステロイドになります。CHOP療法のプレドニゾンと同じ種類の薬剤です。

シタラビンはDNAを構成するピリミジンの類似物質です。DNAに取り込まれ、DNA合成を阻害します。DNAに取り込まれる量が多ければ多いほどDNA阻害効果は強いです。

シスプラチンはDNAに架橋を形成しDNA合成を阻害します。白金製剤の一つです。

 

再発後の化学療法では通常アントラサイクリン系薬剤を使用しません。すでにR-CHOP療法などでアントラサイクリン系薬剤を使用しているため、追加で使用すると心毒性を起こす可能性が高くなるからです。

 

2010年に再発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対する自家造血幹細胞移植までの化学療法についての大規模ランダム化臨床試験の結果が出版されました(J Clin Oncol. 2010 Sep 20;28(27):4184-90).

この臨床試験(CORAL試験)ではR-DHAP療法R-ICE療法にランダム化して比較しました。どちらも自家移植を前提とした化学療法です。

Rはリツキシマブです。ICE療法はイホスファミド・カルボプラチン・エトポシドの3剤からなる化学療法です。「アイス」療法と呼びます

イホスファミドはアルキル化剤の一種です。DNAに架橋を形成しDNA合成を阻害します。

カルボプラチンは白金製剤の一種です。DNAに架橋構造を形成します。

エトポシドはトポイソメラーゼ阻害薬です。トポイソメラーゼ IIを阻害してDNA修復を防ぎます。DNA鎖を切断しているとされます。

化学療法2サイクル終了時点での全奏効率は、R-DHAP群で62.8%, R-ICE群で63.5%とあまり変わりはありませんでした。

化学療法2サイクル終了時点での完全奏効率(CR, CRu)は、R-DHAP群で40%, R-ICE群で36%とあまり変わりませんでした。

実際に自家造血幹細胞移植を行ったのはR-DHAP群で55%, R-ICE群で51%でした。

3年時点での無増悪生存率は、R-DHAP群で42%, R-ICE群で31%でした。有意な差はありません(下図、p=0.4416).

再発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 R-DHAP vs R-ICE, PFS

3年全生存率は、R-DHAP群で51%, R-ICE群で47%でした。有意な差はありません(下図、p=0.4899).

再発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 R-DHAP vs R-ICE, OS

臨床試験の結果は奏効率も無増悪生存率も全生存率もどちらがよいとは言えない結果となりました。

しかしながら、重症な有害事象は明らかにR-ICE療法のほうがR-DHAP療法よりも少ない結果でした。

この結果からは効果が同等かどうか不明でしたが、毒性が少ないということからR-ICE療法のほうがR-DHAP療法よりも選択されるようになりました。

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫再発後化学療法 DHAPとGDP

2014年に新たな大規模ランダム化臨床試験の結果が報告されました(J Clin Oncol. 2014 Nov 1;32(31):3490-6)。

この臨床試験(LY.12)では、アグレッシブリンパ腫(約90%はB細胞性)に対して、(R-)DHAP療法(R-)GDP療法を比較し、「非劣性」であることを証明する試験でした。

GDP療法は、ゲムシタビン・デキサメタゾン・シスプラチンの3剤からなる化学療法です。「ジーディーピー」療法と呼びます。

ゲムシタビンはピリミジン代謝拮抗薬です。ゲムシタビンが細胞に取り込まれたあとの代謝物がDNAに取り込まれたり酵素(ribonucleotide reductase)を阻害したりすることで、DNAの合成を阻害します。

デキサメタゾンシスプラチンはDHAPと同様ですが、シスプラチンの投与量はGDP療法のほうが少ないです。

結果、全奏効率はDHAP群で44.0%, GDP群で45.2%であり、効果は「同等」でした(p = 0.005 for non-inferiority, margin 10%).

完全奏効率(CR, CRu)はDHAP群で14.3%, GDP群で13.5%でした。

自家造血幹細胞移植を行った症例はDHAP群で49.3%, GDP群で52.1%でした。有意な差はありません(p=0.44).

無増悪生存率は両群ともほとんど変わりありません(下図).

再発アグレッシブリンパ腫 DHAP vs GDP, PFS

全生存率も両群ともあまり変わりありませんでした(下図)。

再発アグレッシブリンパ腫 DHAP vs GDP, OS

重症な有害事象は明らかにGDP療法のほうがDHAP療法よりも少ない結果でした (p <0.001)。

発熱性好中球減少症はDHAP群で23%, GDP群で9%と明らかにGDP療法のほうが少ない結果でした (p <0.001)。

 

この臨床試験は75歳まで参加可能でしたが、年齢による生存率の明らかな差はみられませんでした(Ann Oncol. 2017 Mar 1;28(3):622-627)。

60歳以下と60歳以上で比較すると、自家造血幹細胞移植を行った割合は60歳以下で49.8%, 60歳以上で50.3%とあまり変わりありません。

4年全生存率は60歳以下で40%, 60歳以上で36%と、有意な差はありませんでした(下図, p=0.42)。

再発アグレッシブリンパ腫 DHAP vs GDP, age 60, OS

 

再発したびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対する自家造血幹細胞移植に向けての化学療法はR-GDP療法を推奨します。R-DHAP療法と同等の奏効率で少ない有害事象です。

 

R-GDP療法とR-ICE療法を比較した大規模ランダム化臨床試験はありません。副作用はおそらくR-GDP療法のほうが軽いと考えられますが明らかではありません。

R-GDP療法は外来でも可能なので、R-GDP療法のほうが選択しやすいと考えられます。

ただしいずれの治療でも完全奏効率はあまり高くないので自家造血幹細胞移植も行うことが重要です。

 

自家造血幹細胞移植は75歳までは可能でしょう。再発時の年齢だけを理由に自家造血幹細胞移植の適応外と判断することは推奨しません

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫再発後化学療法 その他の化学療法

オファツムマブ(商品名:アーゼラ)というCD20に対する抗体薬があります。

リツキシマブよりも強く作用する可能性がある新薬ですが、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に使用してもあまり意味はありません。たとえリツキシマブを含む治療後に再発したとしてもです。

 

2017年に再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を対象に自家移植前にR-DHAPオファツムマブ-DHAPを比較したランダム化臨床試験の結果が出版されました(下図, J Clin Oncol. 2017 Feb 10;35(5):544-551).

再発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 R-DHAP vs O-DHAP

この臨床試験(ORCHARRD試験)の結果、全奏効率はリツキシマブ群で42%, オファツムマブ群で38%でした。

完全奏効率はリツキシマブ群で22%, オファツムマブ群で15%でした。有意な差はありませんでした。

自家造血幹細胞移植を行った症例は、リツキシマブ群で37%, オファツムマブ群で33%でした。

2年無増悪生存率はリツキシマブ群で26%, オファツムマブ群で24%とあまり変わりませんでした(下図).

再発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 R-DHAP vs O-DHAP, PFS

2年全生存率はリツキシマブ群で38%, オファツムマブ群で41%とあまり変わりませんでした(下図).

再発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 R-DHAP vs O-DHAP, OS

リツキシマブをオファツムマブに変更しても奏効率、生存率ともに改善するとは言えません

 

他にもいろいろな自家移植までの化学療法が検討されてきました。前向きで行われており比較的規模の大きなものを挙げていきます。

すべて単群の試験であり、比較試験ではありません。いずれも現在はほとんど使用されません。

 

MINE療法はメスナ・イホスファミド・ミトキサントロン・エトポシドによる治療です。全奏効率は48%でした(Ann Oncol. 1995 Jul;6(6):609-11)。

 

R-DexaBEAM療法はリツキシマブ、カルムスチン、エトポシド、シタラビン、メルファランによる治療です。2サイクル行った後に自家移植へすすむ臨床試験がありました(Br J Haematol. 2015 Mar;168(6):824-34)。

R-DexaBEAMを2サイクル終えた時点での全奏効率は62%でした。

 

ほかにもMINT, R-ESHAP, BR, CHASER, R-EPOCH, R-GDC, R-GemOx, R-DHAX, TTRとたくさんありますが、前向き研究があったとしても小規模で、比較試験ではありません。自家造血幹細胞移植前に使用されることもあまりありません。

大規模ランダム化臨床試験で有効性と有害事象の点から検証されている自家造血幹細胞移植前の化学療法の中で推奨されるものはR-GDP療法です。R-GDP療法を推奨します

R-GDPが何らかの理由で使用できない場合は、R-ICE療法がよいでしょう。

 

2020年8月時点でのアメリカのNCCNガイドライン(NCCN Guidelines)では、自家造血幹細胞移植が可能な再発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫症例に対する化学療法は、リツキシマブに加えてDHAP, DHAX, GDP, ICEのいずれかを用いることが望ましいとしています。MINE, ESHAP, GemOxも記載はされています。

 

日本血液学会の2018年造血器腫瘍診療ガイドラインでは、リツキシマブに加えてDHAP, ESHAP, ICE, CHASE, MINE, GDP, DA-EPOCHのいずれかが選択される、としています。

 

まとめ びまん性大細胞型B細胞リンパ腫再発後の化学療法は何がよいか?

● びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対する再発後の化学療法はR-ICE療法R-DHAP療法ではどちらが良いかははっきりしていませんが、重症な有害事象はR-ICE療法のほうがR-DHAP療法よりも少ないです。

R-GDP療法の奏効はR-DHAPと「同等」と言えます。重症な有害事象はGDP療法のほうがDHAP療法よりも少ないです。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対する再発後の化学療法はR-GDP療法を推奨します

● 他にもいろいろな自家移植までの化学療法が検討されてきましたが、ランダム化臨床試験により上記の治療よりもよいとされているものはまだありません。

参考文献

Christian Gisselbrecht, Bertram Glass, Nicolas Mounier, et al.
Salvage regimens with autologous transplantation for relapsed large B-cell lymphoma in the rituximab era.
J Clin Oncol. 2010 Sep 20;28(27):4184-90.

Michael Crump, John Kuruvilla, Stephen Couban, et al.
Randomized comparison of gemcitabine, dexamethasone, and cisplatin versus dexamethasone, cytarabine, and cisplatin chemotherapy before autologous stem-cell transplantation for relapsed and refractory aggressive lymphomas: NCIC-CTG LY.12.
J Clin Oncol. 2014 Nov 1;32(31):3490-6.

K Davison, B E Chen, V Kukreti, et al.
Treatment outcomes for older patients with relapsed/refractory aggressive lymphoma receiving salvage chemotherapy and autologous stem cell transplantation are similar to younger patients: a subgroup analysis from the phase III CCTG LY.12 trial
Ann Oncol. 2017 Mar 1;28(3):622-627.

Gustaaf W van Imhoff, Andrew McMillan, Matthew J Matasar, et al.
Ofatumumab Versus Rituximab Salvage Chemoimmunotherapy in Relapsed or Refractory Diffuse Large B-Cell Lymphoma: The ORCHARRD Study.
J Clin Oncol. 2017 Feb 10;35(5):544-551.

M A Rodriguez, F C Cabanillas, F B Hagemeister, et al.
A phase II trial of mesna/ifosfamide, mitoxantrone and etoposide for refractory lymphomas
Ann Oncol. 1995 Jul;6(6):609-11.

Sebastian Kirschey, Thomas Flohr, Hans H Wolf, et al.
Rituximab combined with DexaBEAM followed by high dose therapy as salvage therapy in patients with relapsed or refractory B-cell lymphoma: mature results of a phase II multicentre study
Br J Haematol. 2015 Mar;168(6):824-34.

造血器腫瘍診療ガイドライン

NCCN Guidelines


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