びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の初回治療の効果判定

2020-09-03

5-PS scores

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の初回化学療法を完遂したら、効果判定を行い完全奏効に到達していることを確認する必要があります。

完全奏効に到達することがびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療目標になります。

治療効果判定は、PET-CT検査を用いて行うことを推奨します。現在の治療効果判定の国際基準は、2014年に提唱されたLugano基準に基づきます。

Lugano基準による完全奏効(CMR)が過去のいかなる基準と比べて最も正確です。

本項では、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療効果判定とLugano基準について解説します。

過去の効果判定基準の変遷やPET-CTの有用性についても、医学文献を参照しつつ解説しています。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の初回治療の効果判定 完全奏効とLugano基準

Lugano 2014 criteria

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対してR-CHOP療法などの治療を完遂したら、治療の効果判定を行います。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の初回化学療法の治療目標は「完全奏効」に到達することです。

2014年以降、治療効果判定には国際基準である「Lugano基準」を用います(J Clin Oncol. 2014 Sep 20;32(27):3059-68)。

治療効果判定は主にPET-CT検査で行います。PET-CTは通常のCT検査よりも正確に残存病変の評価ができます。

 

PET検査では18F-FDGという糖とよく似た放射性物質を使用します。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫は糖を強く取り込みますので、18F-FDGがびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の病変部位に集積します。

PET-CTはPETとCTの結果を融合させたもので、通常のCT単独あるいはPET単独よりも病変の部位が正確にわかります(Clin Nucl Med. 2017 Aug;42(8):595-602)。

 

PET-CT検査を行うタイミングは最終化学療法から6~8週間後です。

それよりも早く行うと、炎症などによりPETで集積がみられることがあり、偽陽性(本当は病変がないにもかかわらず陽性と判断されてしまうこと)の可能性が高くなります。

完全奏効が目標なので偽陽性は避けたほうがよいです。

放射線治療を行った場合は偽陽性になりやすいため、照射終了から8~12週間後以降にPET-CT検査を行ってください。

Lugano revised response criteria 2014

PET-CT検査で全身に病変が検出されなければ「完全奏効」です(上図)。

たとえCTで残存の腫瘤があったとしても、その部分にPETで集積がなければ完全奏効となります。ただのCT検査ではこれは判断できません。

集積の判定は「Deauville点数」を用います。日本ではよくSUVというものが使用されますが、Lugano基準ではSUVの使用は推奨されません。

「集積がない」とは、Deauville点数が3点以下(集積が肝臓以下)です(下図 J Clin Oncol. 2014 Sep 20;32(27):3048-58)。

5-PS scores

PET-CT検査で完全奏効を確認した場合は、Complete metabolic response (CMR)と言います。初発のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療後は、約90%の症例で「CMR」に到達します

 

肝臓の生理的な集積よりも強い集積が病変部位に確認された場合は、残存病変を疑います。Lugano基準では完全奏効(CMR)にはなりません。偽陽性の可能性がないかどうか確認が必要です。

残存病変が確認された場合は、難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と定義されます。追加の治療が必要です。

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の効果判定基準 以前の基準との違い

PETを使う前の時代には悪性リンパ腫の治療効果判定はCTで主に行っていました(J Clin Oncol. 1999 Apr;17(4):1244)。

しかしCTで腫瘤が残存していても、そこには悪性細胞がいない可能性がすでに当時から指摘されていました。

当時の治療効果判定基準であるIWG基準では、腫瘤が75%以上縮小していればCRuと判定し、完全奏効(CR)に準じて経過観察としていました。

 

PET検査が登場し研究が進むにつれ、CT単独よりも有用であることがはっきりします。

2007年に治療効果判定基準はさらに改訂されました。IHP基準といいました(J Clin Oncol. 2007 Feb 10;25(5):579-86)。

CRuという基準はPETを用いれば必要ありません。活動性の悪性腫瘍があればPETで確認できるからです。偽陽性のおそれから6~8週間経過してからPET検査を行うことが推奨されました。CRuは撤廃されました

 

PETではSUVが用いられることがありますが、施設間で統一が困難であることから集積の基準であるDeauville基準が、2009年に提唱されます(Leuk Lymphoma. 2009 Aug;50(8):1257-60)。

縦隔と肝臓の集積を基準に判定するため、全世界でできる簡単な統一基準です。

このDeauville基準がLugano基準でも採用されました。IHP基準ではPET結果の解釈が一致しないことがありましたが、Deauville基準を用いることで判定者や施設による違いが減少します。

Deauville点数は「5点スケール」と呼ばれることもあります(J Clin Oncol. 2014 Sep 20;32(27):3048-58)。

Lugano基準に移行してからは、IWG基準やIHP基準はもはや使用されることはまずありません。

 

アメリカのNCCNガイドライン(NCCN Guidelines)でも、治療効果判定には2014年提唱のLugano基準を用いることとしています。

日本血液学会の2018年造血器腫瘍診療ガイドラインでは、2007年提唱のIHP基準とDeauville基準が記載されています。事実上Lugano基準と同様の判定を推奨していると考えられますが、効果判定の項にLugano基準の文献は使用されていません。

 

以下では、PET-CTがCTよりもどのくらい役に立つのかを見ていきます。

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療後効果判定PET-CTはCTだけよりも有用

PETCTを比較した前向き試験の結果が1999年に出版されています(Blood. 1999 Jul 15;94(2):429-33).

CTだけで治療後効果判定を行った場合、1年無増悪生存率は残存腫瘤ありで62%、残存腫瘤なしで88%と有意に異なりました(p=0.045)。

1年全生存率は残存ありで77%、残存なしで95%と有意に異なりました(p=0.0038)。

一方PETで治療後効果判定を行った場合、1年無増悪生存率はPET陽性で0%、PET陰性で86%と大きく異なりました(p<0.0001)。

PETとCTで無増悪生存率をみると下図のようになります(左 PET, 右 CT)。

悪性リンパ腫治療効果判定 PET vs CT, PFS

あきらかにPETのほうがCTよりも予後の違いを明確にしています。

1年全生存率はPET陽性で50%、PET陰性で92%でした(p<0.0001)。

 

2009年にIWG基準PET+CTを比較した結果が報告されています(Ann Oncol. 2009 Mar;20(3):503-7)。

治療後効果判定でIWG基準を用いてCRもしくはCRuとされた症例は77%、残存ありとされた症例は23%でしたが、それをPETも組み合わせて判定すると、効果判定の一致率は77%に低下しました(下図)。

悪性リンパ腫治療効果判定 PET CT vs IWG

そして無増悪生存率はIWG基準よりもPETを用いたほうが差が明確になりました(下図)。

悪性リンパ腫治療効果判定 PET CT vs IWG, EFS

PET陰性であれば、IWGでCRだろうとCRではなかろうと、無増悪生存率は変わりません。

逆にIWGでCRの症例でも、PETで陽性であれば陰性の症例よりも無増悪生存率は下がりました。

CTだけで判定するよりも、PETとCTで判定するほうが正確に予後を予測できます。

 

2016年にはIHP基準PET-CTを比較した結果が報告されています(Nucl Med Mol Imaging. 2016 Mar;50(1):46-53)。

IHP基準ではPET陽性の判定にあいまいなところがありました。それに対してSUVDeauville基準を用いた判定ではあいまいさは少なくなります。

Gallamini基準というSUVが3.5を超えると陽性という基準があります。

これらをもちいて、その後のフォローアップを行ったところ、最も正確に病変を判定していたのはDeauville基準でした(下図).

悪性リンパ腫治療効果判定 PET CT vs IHP

感度も特異度もDeauville基準がSUVを用いた基準よりも良い結果でした

IHP基準は感度が高いのですが、偽陽性判定が多いためか特異度がDeauville基準よりも低い結果でした。SUVを用いたGallamini基準は偽陰性がDeauville基準より多いです。

 

2021年には大規模ランダム化試験の際の治療効果判定と予後の関係について研究結果が出版されています(Blood Adv. 2021 Mar 9;5(5):1283-1290)。
GOYA試験というランダム化試験でしたが、PET-CTでLugano基準でCMRを達成した症例はそうでない症例とくらべて、無増悪生存率・全生存率とも明らかに良好でした(下図 上 無増悪生存, 下 全生存).

PET-CT, CT PFS OS GOYA


CTだけで効果判定を行った結果は、PET-CTで行った結果と70%くらいしか一致しませんでした(下図).

PET-CT, CT 一致率 GOYA

この臨床試験でもCTだけで判定するよりもPET-CTで判定したほうが予後の差がはっきりしていました。

 

2021年2月時点では、Lugano基準にもとづいてPET-CTでDeauville基準を用いて判定することがもっとも正確と考えられます。CTだけ、あるいはPET-CTでもSUVによる判定は推奨しません。

 

まとめ びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の初回治療の効果判定

● びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療の目標は「完全奏効(CMR)」に到達することです。治療効果判定にはPET-CT検査を行い国際基準である「Lugano基準」を用いて判定を行います。PET-CT検査を行うタイミングは最終化学療法から6~8週間後です。

PET-CTDeauville基準などの登場により、国際基準はIWG基準、IHP基準を経て、現在のLugano基準に移行しています。

● 治療効果はCTだけで判定するよりも、PETとCTで判定するほうが正確に予後を予測できます。PET-CTでDeauville基準を用いて判定することがもっとも正確とされています。

参考文献

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J Clin Oncol. 2014 Sep 20;32(27):3059-68.

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Multicenter Comparison of Contrast-Enhanced FDG PET/CT and 64-Slice Multi-Detector-Row CT for Initial Staging and Response Evaluation at the End of Treatment in Patients With Lymphoma
Clin Nucl Med. 2017 Aug;42(8):595-602.

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Role of imaging in the staging and response assessment of lymphoma: consensus of the International Conference on Malignant Lymphomas Imaging Working Group
J Clin Oncol. 2014 Sep 20;32(27):3048-58.

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Revised response criteria for malignant lymphoma
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Whole-body positron emission tomography using 18F-fluorodeoxyglucose for posttreatment evaluation in Hodgkin's disease and non-Hodgkin's lymphoma has higher diagnostic and prognostic value than classical computed tomography scan imaging
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J Dupuis, E Itti, A Rahmouni, et al.
Response assessment after an inductive CHOP or CHOP-like regimen with or without rituximab in 103 patients with diffuse large B-cell lymphoma: integrating 18fluorodeoxyglucose positron emission tomography to the International Workshop Criteria
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FDG PET/CT Response Assessment Criteria for Patients with Hodgkin's and Non-Hodgkin's Lymphoma at End of Therapy: A Multiparametric Approach
Nucl Med Mol Imaging. 2016 Mar;50(1):46-53.

Lale Kostakoglu, Maurizio Martelli, Laurie H Sehn, et al.
End-of-treatment PET/CT predicts PFS and OS in DLBCL after first-line treatment: results from GOYA
Blood Adv. 2021 Mar 9;5(5):1283-1290.

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