濾胞性リンパ腫(FL) 初回治療後の維持療法と通院経過観察

2019-10-09

濾胞性リンパ腫 HE 100 BCL2 100

 

濾胞性リンパ腫(FL)に対する初回化学療法により部分奏効以上の達成を確認したら、それからは抗腫瘍薬投与の継続(維持療法)を行うか、あるいは維持療法なしで様子を見る(経過観察のみ)か、方針を決定していきます。

濾胞性リンパ腫はゆっくり進行するとはいえ、完治する確率が高いわけではありません。繰り返し治療が必要になることがよくあります。

したがって, どこかでまた濾胞性リンパ腫病変がでてくる可能性を前提に治療の計画を決めていきます。

本項では濾胞性リンパ腫の維持療法の有効性、通院での経過観察の時の注意点、再発が疑われた場合はどうするのか、について国外・国内の文献・ガイドラインを参照しつつ解説していきます。

 

濾胞性リンパ腫の初回化学療法後の維持療法

濾胞性リンパ腫(FL)初回化学療法(BR, R-CVP, R-CHOPなど)が必要であった症例に対する維持療法の有効性を研究した大規模ランダム化臨床試験の結果が2011年に出版されました(Lancet. 2011 Jan 1;377(9759):42-51.)。

この臨床試験(PRIMA試験)では、初回化学療法(75%の症例でR-CHOP療法)の後に追加治療なしで経過観察する群8週間に1回リツキシマブを投与し2年間継続する群にランダム割り付けし比較しました。初回化学療法で部分奏効以上に到達した症例のみで行っています。

3年時点での再発なく生存している確率(無増悪生存率)は経過観察群で57.6%、リツキシマブ維持療法群で74.9%であり、統計学的にも明らかにリツキシマブ維持療法群で良好でした(下図)。

PRIMA 濾胞性リンパ腫 リツキシマブ維持療法 PFS

しかしながら、3年時点での全生存率については、有意な差はありませんでした(下図)。

PRIMA 濾胞性リンパ腫 リツキシマブ維持療法 OS

重症感染症などの重症な有害事象はリツキシマブ維持療法群で24.4%、経過観察群で16.9%と統計学的にも明らかにリツキシマブ維持療法で多くみられました(p=0.0026)。

 

このPRIMA試験の9年という長期間の結果が2019年に報告されました(J Clin Oncol. 2019 Nov 1;37(31):2815-2824)。

無増悪生存期間の中央値は経過観察群で4.1年、リツキシマブ維持療法群で10.5年であり、統計学的にも明らかにリツキシマブ維持療法群で良好でした (下図、p<0.001)

PRIMA 9年 濾胞性リンパ腫 リツキシマブ維持療法 PFS

 

しかしながら、9年時点でも全生存率についてはどちらも約80%で有意な差はありませんでした(下図)。

PRIMA 9年 濾胞性リンパ腫 リツキシマブ維持療法 OS


濾胞性リンパ腫の増悪により命を落とした人数も両群で同じくらいでした。

長期的な生存率に有意な差がないのであれば、再発率が多少高くても不要な有害事象は避けたほうがよいと考えられます。

 

60歳以上限定で行われた濾胞性リンパ腫の維持療法の有効性を研究した大規模ランダム化臨床試験の結果が2013年に出版されました(J Clin Oncol. 2013 Sep 20;31(27):3351-9.)。

この臨床試験でも初回化学療法の後に追加治療なしで経過観察する群リツキシマブ維持療法群(2か月に1回投与、計4回)にランダム割り付けし比較しました。

リツキシマブ維持療法により無増悪生存率は上昇している傾向はありますが有意な差はありませんでした(下図).

Fondazione Italiana Linfomi 濾胞性リンパ腫 リツキシマブ維持療法 PFS

全生存率はかわりなく、また重症好中球減少がリツキシマブ維持療法群で多くみられました。

 

年齢に関係なくリツキシマブ維持療法で全生存率が改善するとは必ずしも言えません

有害事象は明らかにリツキシマブ維持療法で増加します。現時点ではリツキシマブ維持療法は積極的には推奨しません

 

2020年12月時点のアメリカのNCCNガイドライン(NCCN Guidelines)では、初回化学療法後の維持療法を行うかどうかについては、「任意」としていますが、維持療法を行う場合の選択はリツキシマブ強く(カテゴリー1)推奨されています。

ただし日本血液学会の2018年の造血器腫瘍診療ガイドラインでは、無増悪生存期間の延長を期待できる治療としてリツキシマブ維持療法が強く(カテゴリー1)推奨されています。

 

濾胞性リンパ腫 初回化学療法後の通院 何に注意するべきか

初回化学療法後もしくは維持療法後も通院を継続してください。通院はかなり長期になります。

BR(ベンダムスチン・リツキシマブ)療法後は5年間くらいであれば半分以上の症例で再発しません。その一方で5年以上たってから再発することもありえます。

 

通院は最初は少なくとも数か月に1回は必須です。とくに最初の数年間で再発する場合は、今後の治療も強めに行うことを検討する必要があります。

首、わきの下、脚の付け根のリンパ節は比較的触れやすいため、診察の時に確認していきます。ご自身でも確認できれば行ってください。

触れにくいところにリンパ腫病変が再燃してきている場合もありますが、PET-CT検査や骨髄検査などを定期的に行う必要はありません。体の負担のほうが大きくなる場合が多いからです。

リンパ腫病変の再燃は体のどこにでも起こりえます。おかしな症状が進行する場合や、毎回行う採血検査で異常値が進行する場合は、画像検査などの精査を行うことになります。

 

特に大きな異常がない場合は、定期通院のみで何年も経過します。何もなければ日常生活に制限はありません。健常な人と同じ生活をおくってもらいます。

 

濾胞性リンパ腫の治療後の通院中に再発が疑われた場合

通院中に再発を疑うリンパ節腫大や症状がでてきたときは精査が必要です。

再発の診断確定には病変の組織を切除(生検)し、各種検査に提出する必要があります。たとえリンパ節が腫大しても、生検したら濾胞性リンパ腫ではなかったということも時々あります。

反応性のリンパ節腫大だったり、まったく別の疾患だったり、あるいは濾胞性リンパ腫がびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫のような形態に変化していたり(形質転換)と様々です。

生検を行う前にPET-CT検査を行うことを推奨します。生検する部位を決定する参考になるからです。とくに形質転換を疑う場合は、PET-CTで集積が強いところを生検したほうがより正確な診断を得ることができます。

 

生検の結果が濾胞性リンパ腫であれば再発が確定します。

生検の結果がびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫遺伝子検査の結果が初発時と類似していれば形質転換が確定します。

 

濾胞性リンパ腫の再発については、どのくらい早く再発したかによって今後の治療方法が変わってくる可能性があります。数年以内の再発には強めの治療を検討することになります。

また、濾胞性リンパ腫の再発が確定したとしても直ちに治療を開始するとは限りません。症状を伴わない再発の場合はしばらく無治療で経過観察します。治療開始のおおよその目安がありますが、初回診断のときと同様です。以下のページをご参照ください。

 

再発確定時には必要に応じて骨髄検査も再度行い、再度ステージを確認します。

心臓超音波検査も行いましょう。R-CHOP療法などは心機能が悪いと使用できません。

 

次項では、再発・難治性の濾胞性リンパ腫の治療、形質転換したときの治療について解説します。

濾胞性リンパ腫 骨髄浸潤 HE
濾胞性リンパ腫(FL) 再発、難治性、および形質転換の治療

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まとめ 濾胞性リンパ腫 初回治療後の維持療法と通院経過観察

リツキシマブ維持療法で全生存率が改善するとは必ずしも言えません。有害事象はリツキシマブ維持療法で増加します。現時点ではリツキシマブ維持療法は積極的には推奨しませんが、専門家間でも意見が分かれています。

● 初回化学療法後もしくは維持療法後の通院は長期になります。リンパ腫病変の再燃は体のどこにでも起こりえます。おかしな症状が進行する場合や毎回行う採血検査で異常値が進行する場合は精査を行います。

●再発の診断確定には病変を生検し各種検査に提出する必要があります。濾胞性リンパ腫が確認できれば再発です。形質転換していることもあります。

参考文献

Salles G, Seymour JF, Offner F, et al.
Rituximab maintenance for 2 years in patients with high tumour burden follicular lymphoma responding to rituximab plus chemotherapy (PRIMA): a phase 3, randomised controlled trial.
Lancet. 2011 Jan 1;377(9759):42-51.

Bachy E, Seymour JF, Feugier P, et al.
Sustained Progression-Free Survival Benefit of Rituximab Maintenance in Patients With Follicular Lymphoma: Long-Term Results of the PRIMA Study.
J Clin Oncol. 2019 Nov 1;37(31):2815-2824.

Vitolo U, Ladetto M, Boccomini C, et al.
Rituximab maintenance compared with observation after brief first-line R-FND chemoimmunotherapy with rituximab consolidation in patients age older than 60 years with advanced follicular lymphoma: a phase III randomized study by the Fondazione Italiana Linfomi.
J Clin Oncol. 2013 Sep 20;31(27):3351-9.

2018年造血器腫瘍診療ガイドライン

NCCN Guidelines

 

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