濾胞性リンパ腫(FL) 診断と治療の概要

2019-10-13

Follicular lymphoma, BCL2 40

 

濾胞性リンパ腫 (Follicular lymphoma, FL) は白血球の中のリンパ球が腫瘍化した疾患である、悪性リンパ腫の一種です。正確にはBリンパ球が腫瘍化し増殖していきます。

濾胞性リンパ腫は悪性リンパ腫の中では2番目に多く、悪性リンパ腫全体の約10~20%になります。ゆっくり進行するタイプの悪性リンパ腫では最も多いです。

腫瘍により大きくなったリンパ節を顕微鏡で見ると、多数の濾胞がみられることからこの病名となっています。

 

濾胞性リンパ腫は血液内科では高頻度に接する疾患です。その頻度の多さから世界中で臨床研究がすすんでおり数年前の治療と現在の治療が全く異なるほどです。

書籍による情報は、執筆・出版などの間にも古くなり、発売後数年もすると最先端の診療とはすでに程遠いものとなってしまいます。

Webでは最新の文献が出てから、「遅れ」が少なく広まります。できるだけ新しい情報を更新しながら解説していきます。

 

本項では濾胞性リンパ腫の診断と治療についての全体の概要を説明しています。詳細な内容については本項にある各リンク先のページをご確認ください。

当サイトの解説は、国内・国外問わず、最新の臨床研究、ガイドラインを紹介しつつ解説しています。

 

濾胞性リンパ腫 発症時の症状、受診、診断について

濾胞性リンパ腫の症状は初期はかなり乏しく、全く自覚症状がないことも多々あります。

自覚症状がでたときに最も多いのは、首や脇、脚の付け根などの「しこり」です。数週間の経過で大きくなったり小さくなったりをゆっくり繰り返しつつ、徐々に大きくなることが多いです。ゆっくりなので、すぐに病院を受診することは少ないかもしれません。

濾胞性リンパ腫により発熱することはあまり多くありません。20%くらいとされています.

もし発熱や体重減少を伴うようになってきたらかなり進行しているといえます。

健康診断を行ったときに異常が見つかったり、あるいは受診をすすめられたりすることもあるでしょう。濾胞性リンパ腫はリンパ節にできることが多いですが、全身どこにでもできます

濾胞性リンパ腫の診断には生検が必須です。この時点で血液内科が対応できることが望ましいです。生検時の情報が今後の治療を決定することもあり、生検時に血液内科が対応できないというのは推奨しません。

「しこり」は必ずしもすべてが濾胞性リンパ腫とは限りません。感染症だったり、別の腫瘍性疾患だったりと原因は様々です。

診断はWHO分類にもとづいて行います。

濾胞性リンパ腫 HE x40 2
濾胞性リンパ腫 (FL) 症状から受診、診断まで

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濾胞性リンパ腫のステージ分類と予後指標について

濾胞性リンパ腫の診断後は病変の広がりの指標である「ステージ」を決定します。

ステージにより治療方法も変わってきますので、正確にステージを決める必要があります。骨髄検査PET-CT検査もおこないます。

ステージ決定の基準はLugano分類です。Ann Arbor分類はもう使いません。

濾胞性リンパ腫では半分以上の症例でステージは3か4です。

ステージが決定したら、一応予後予測指標も確認はしますが、年々改善する治療により、生存の予後予測としてはほとんど役に立たない状態です。濾胞性リンパ腫の手強さの参考に使う程度です。

よく使用される予後予測は「濾胞性リンパ腫国際予後指標 FLIPI」です。

濾胞性リンパ腫は、必ずしも全例で直ちに治療を開始するわけではありません。無症状の場合は治療なしで経過を見るだけで、何年も変化があまりない場合も少なくありません。

濾胞性リンパ腫のステージ、予後予測と同時に全身の臓器状態の評価も行います。

Follicular lymphoma, bone marrow aspiration, HE 100
濾胞性リンパ腫(FL) ステージ分類と予後指標

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濾胞性リンパ腫の初回治療

濾胞性リンパ腫の診断が確定して、治療前検査もすべて終了したら、次は治療が必要かどうか決定します。

全例で治療が必要になるわけでなく、症状がない場合は治療なしでしばらく様子をみることもよくあります

濾胞性リンパ腫の初回治療は、「治療適応」の有無と「ステージ」によって、全く異なります。

 

濾胞性リンパ腫ステージ1もしくは一部のステージ2の症例では、放射線照射もしくは様子を見る(経過観察)のいずれかが良いと考えます。

ステージ2でも病変範囲が狭く、照射可能な範囲であれば放射線治療または経過観察がいいでしょう。

 

濾胞性リンパ腫の病変が広範囲に存在する場合は放射線治療はできません。局所だけ病勢を抑えても、照射範囲外で増悪するため、放射線治療の意味はあまりありません。

ステージ2~4の濾胞性リンパ腫に対しては症状が乏しい場合は、すぐに治療を開始しても、症状が出てくるまで待っても生存率は変わりません

治療適応の目安となる基準があり、その基準を満たしてから初めて治療を検討します。満たしたからと言って直ちに治療を開始しなければならないというわけでは必ずしもありません。

GELF基準あるいはBNLI基準というものを参考に治療開始時期を決めていきます。

「経過観察」する場合は、数か月に1回の通院を行い、症状がないことを医師と確認することが必要です。

 

濾胞性リンパ腫の進行期で治療があきらかに必要となった場合は、本格的な化学療法を行うことになります。

その場合の治療は抗がん剤治療(化学療法)です。

あきらかな「治療適応」となったステージ2~4の濾胞性リンパ腫に対しては、BR療法を推奨します。BR療法が何らかの理由でできない場合はR-CVP療法を推奨します。

無増悪生存率を改善する治療は他にもいろいろありますが、全生存率の改善がみられていないことと有害事象が増えることから積極推奨はしません。

濾胞性リンパ腫の初回治療として自家造血幹細胞移植を追加することは推奨しません。

 

濾胞性リンパ腫の初回化学療法により約9割の症例で部分奏効に到達します。

濾胞性リンパ腫の初回化学療法の治療目標は部分奏効以上の効果を得ることです

すべての治療サイクルを終えたら、治療効果判定です。治療目標は部分奏効ですが、完全奏効に到達することもあります。

濾胞性リンパ腫の化学療法後効果判定の国際基準は「2014年Lugano基準」です。

PET-CT検査を用いた効果判定のほうがCTだけで判定するより正確です

濾胞性リンパ腫 HE 40 Grade 1
濾胞性リンパ腫 (FL)の初回治療 限局期もしくは無症候性の場合

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濾胞性リンパ腫 R2 vs R+chemothearpy, RELEVANCE
濾胞性リンパ腫 (FL) 進行期症候性の場合の初回治療

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濾胞性リンパ腫 HE 40 Grade 1
濾胞性リンパ腫(FL)の化学療法 実際の投与と治療効果判定

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濾胞性リンパ腫の初回治療後 維持療法と通院経過観察について

濾胞性リンパ腫に対する初回化学療法により部分奏効以上の達成を確認したら、それからは抗腫瘍薬投与の継続(維持療法)を行うか、あるいは維持療法なしで様子を見る(経過観察のみ)か、方針を決定していきます。

当サイトではリツキシマブなどによる維持療法については積極的には推奨しません。無増悪生存期間は改善しますが、全生存期間の改善は明らかでなく、有害事象の発生は明らかに増加するからです。

 

濾胞性リンパ腫は治療前も治療後もふくめて長期の通院となります。そう簡単には再発しませんが、低頻度で早期再発するような濾胞性リンパ腫もあります。

再発が疑われた場合は、必ず再生検してください。濾胞性リンパ腫の再発とは限らないからです。

特に大きな異常がなければ、定期通院のみで何年も経過します。何もなければ日常生活に制限はありません。健常な人と同じ生活をおくってもらいます。

また、濾胞性リンパ腫の再発が確定したとしても、直ちに治療を開始するとは限りません。症状を伴わない再発の場合は、しばらく無治療で経過観察します。

濾胞性リンパ腫 HE 100 BCL2 100
濾胞性リンパ腫(FL) 初回治療後の維持療法と通院経過観察

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濾胞性リンパ腫 再発、難治性、および形質転換の治療

残念ながら濾胞性リンパ腫はよく再発します。かといって初回治療を強くすれば強くするほど、全生存率は改善しないまま、有害事象だけが強くなっていきます。

適度な強さの初回治療を行いますが、何年もしてから再発するタイプの濾胞性リンパ腫もあれば、数年もしないうちに再発するタイプもあります。濾胞性リンパ腫からびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫のような急速に増殖するタイプに「形質転換」することもあります。

 

濾胞性リンパ腫の治療は長期的な視野をもって治療していく疾患です。

2015年ごろから数年以内の再発(早期再発)は、生命に関わる濾胞性リンパ腫であることがわかってきています。

濾胞性リンパ腫の抗腫瘍薬治療(化学療法)開始から、2年以内のリンパ腫病変の増悪は、2年以降に増悪する症例と比較して、全生存率が大きく下がります

この2年以内の早期再発は治療適応の濾胞性リンパ腫の初回治療のおよそ20%にみられます。

BR療法の2年以内再発はかなり深刻な濾胞性リンパ腫と認識してください。

2年以内の早期再発症例の約75%形質転換が確認されています。

BR療法やR-CHOP療法で早期再発してしまう症例に、通常の化学療法では歯が立ちません。自家造血幹細胞移植という「大量化学療法」による治療が基本となります。

 

初回治療がBR療法でなければ、2年以降に再発した治療適応の濾胞性リンパ腫に対しては、初回化学療法の時の高い有効性と少ない副作用から、BR療法(リツキシマブ・ベンダムスチン)を推奨します。初回治療でBR療法を行った場合も、再度BR療法は可能です。

リツキシマブのかわりに、オビヌツズマブを使用することも可能です。

初回治療でR-CHOP療法を行った場合に、再度R-CHOP療法を行うことは、心毒性のリスクのため推奨しません。CHOP療法で使用するドキソルビシンは心毒性があり、CHOP療法を再度行うと、心臓への障害の発生率が大きく上昇します。

再発後の化学療法でも、2年以内に再発するようになったら、自家造血幹細胞移植を推奨します。

レナリドミド(商品名:レブラミド)も再発した濾胞性リンパ腫にある程度の奏効が期待できます。

 

濾胞性リンパ腫は安定している状態でも年間およそ数%の割合で、形質転換を起こすことがわかっています。

また濾胞性リンパ腫治療後の早期増悪の時は、形質転換している場合が多くみられます。治療後の早期形質転換はかなり生存に影響します。

濾胞性リンパ腫に対して初回化学療法を行っていなければ、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫と同様の治療法(R-CHOP療法)により、初発びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫と同等の良好な奏効が得られます。

初回化学療法後に形質転換した濾胞性リンパ腫には、通常の化学療法はあまり奏効しません。自家造血幹細胞移植を前提とした治療を行うほうがいいでしょう。

自家移植後の再発もしくは自家移植ができない場合は、CAR-T細胞療法であるチサゲンレクルユーセル(商品名:キムリア)同種移植が治療選択肢にあがります。CAR-T細胞療法のほうが同種移植よりも有害事象は少ないです。

濾胞性リンパ腫 骨髄浸潤 HE
濾胞性リンパ腫(FL) 再発、難治性、および形質転換の治療

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