濾胞性リンパ腫(FL) ステージ分類と予後指標

2019-09-29

Follicular lymphoma, bone marrow aspiration, HE 100

 

濾胞性リンパ腫(FL)の診断が確定したら、同時に全身の状態を確認します。

どのくらい濾胞性リンパ腫は全身に広がっているのか(ステージ)、心臓や腎臓などの臓器の機能評価などを確認します。これらは濾胞性リンパ腫の予後に影響してきます。

また濾胞性リンパ腫は治療を行うまでに時間の余裕がありますので、いくつか治療前に考えるべきことがあります。

本項では、濾胞性リンパ腫のステージ、予後に影響する因子、および治療前に行うことについて解説します。

診断されたら次に何を行うのか、どんな病気なのかということがわかれば急な診断でも少しは余裕ができるでしょう。

本項では、国内外のガイドラインでも採用されている、ステージの国際基準、予後因子の国際研究にもふれながら解説します。

 

濾胞性リンパ腫のステージ分類 Lugano分類

濾胞性リンパ腫(FL)の診断となったら、ステージを確認することが重要です。とくにCTなどの時点でステージが1や2かもしれない場合はステージ確認が特に重要です。

これから行う検査でステージが3や4である可能性があり、治療法が変わるかもしれないためです。

 

まずは骨髄検査です。骨髄検査は、骨盤の骨の中に針を刺して、液体(骨髄液)を吸引する骨髄穿刺吸引、骨の中の組織を針で削りとる骨髄生検からなります。

局所麻酔をしていても骨髄液を吸引するときは結構な痛みを伴います。

骨髄検査ではうつ伏せになって、背骨よりやや外側の骨盤の骨(腸骨)に針を刺します。

濾胞性リンパ腫のステージのためには、骨髄穿刺吸引だけでは不十分で、骨髄生検が必須です。

検査そのものは10~15分くらいかかります。終了後は仰向けになってしばらく安静にします。

骨髄検査についての詳細は、「骨髄検査(骨髄穿刺吸引・骨髄生検)の手技の実際 痛みや安全性は?」をご覧ください。

 

骨髄検査では骨髄(骨の中)に濾胞性リンパ腫細胞が入っているかどうかを確認します。

骨髄に濾胞性リンパ腫細胞が検出された時点で濾胞性リンパ腫は全身に広がっていると判断します。

 

濾胞性リンパ腫が骨髄の中に入っている場合は、骨の傍(傍骨梁)で増えていることが多いです (下図)。

Follicular lymphoma, bone marrow biopsy, HE 100

 

骨髄中の濾胞性リンパ腫細胞は一見わかりにくい場合があるので、診断時と同様に免疫染色、染色体・遺伝子検査、フローサイトメトリのいずれも提出し結果を確認します。診断時のおよそ半数の症例で骨髄中に検出されます(下図 BCL2異常発現).

Follicular lymphoma, bone marrow, BCL2 100

 

過去の臨床試験の事後解析では、ステージ2以上の症例の約70%で骨髄の中に浸潤していることが確認されました。骨髄浸潤の有無の判断は比較的容易で、病理医の間でも90%以上の一致率となります(Br J Haematol. 2004 Aug;126(3):364-71.)。

 

ステージ決定のための検査として、可能であればPET-CT検査も行います。

ステージが1や2かもしれないときのPET-CTは特に重要です。通常のCT検査では見つけられないリンパ腫病変でもPET-CTであれば見つけることができます。

ステージの国際基準でもPET-CTを推奨しています。

 

Recommendations for initial evaluation, staging, and response assessment of Hodgkin and non-Hodgkin lymphoma

検査が終わったら次はステージを確定させます。

2020年12月時点でステージの国際基準はLugano分類を用います(J Clin Oncol. 2014 Sep 20;32(27):3059-68)。

昔はAnn Arbor分類というものを使っていましたが、2014年にLugano分類に改訂されました。Lugano分類のほうが予後予測に適しています。Ann Arbor分類はもはや使うことはありません。

 

リンパ腫病変がリンパ節1か所だけならステージ1、リンパ節ではないところに1か所であればステージ1Eです。

リンパ腫病変がリンパ節2か所以上で、横隔膜を境に体の上もしくは下のどちらかのみに病変がある場合はステージ2

ステージ2でリンパ節とつながってリンパ節ではないところに浸潤しているときはステージ2Eです。

ステージ2で、病変が6~10cmを超えるサイズの場合は「巨大病変」といい、ステージ2 bulkyとなります。巨大病変の定義は一定していませんが、濾胞性リンパ腫の場合は6cm以上といわれています。

横隔膜を境にリンパ腫病変がリンパ節に上半分にも下半分や脾臓にあればステージ3です。

骨髄などのリンパ組織でないところに病変が、リンパ節とつながっていない状態で存在すればステージ4です(下図 J Clin Oncol. 2014 Sep 20;32(27):3059-68)。

2014年Lugano分類 リンパ腫

 

濾胞性リンパ腫では半分以上の症例でステージは3か4です(J Clin Oncol. 2009 Mar 10;27(8):1202-8)。

 

濾胞性リンパ腫の予後予測指標 FLIPI

濾胞性リンパ腫のステージは予後に影響しますが、そもそもリンパ性疾患なので全身に広がっている場合がよくあります。そしてステージは予後因子のひとつにすぎません。

ステージと同じくらい重要な予後因子が他にいくつかあります。

 

よく使用される予後予測は「濾胞性リンパ腫国際予後指標 FLIPI」です。

FLIPIは1985年から1992年に診断された濾胞性リンパ腫症例を世界中の参加施設から集め、約4000症例を後ろ向きに解析し予後予測因子を抽出しました。その結果が2004年に出版されています(Blood. 2004 Sep 1;104(5):1258-65)。

その結果、年齢が60歳を超えるステージが3か4血液中のヘモグロビンが12 g/dL未満, 血中のLDHが正常上限を超える腫大しているリンパ節が5つ以上、の5つの因子が予後に影響していることがわかりました。

この5つの因子にあてはまる数が多いほど全生存率が下がっていきます(下図)。

濾胞性リンパ腫国際予後指標 FLIPI 全生存率

 

後ろ向き研究は一般にバイアスが大きく入るため信頼性は高くありません。前向きに検証したほうが医学的により信頼性が高くなります。

アメリカで前向きに2000人以上の濾胞性リンパ腫症例でFLIPIが検証され、その結果が2013年に出版されました。やはり5つの因子にあてはまる数が多いほど全生存率が下がりました。治療法が進歩したため生存率そのものは大幅に改善されています(下図 Ann Oncol. 2013 Feb;24(2):441-8.).

濾胞性リンパ腫国際予後指標 FLIPI 前向き 全生存率

予後因子は大まかな予測には使えますが、治療法は年々改善するため現在の治療での生存率の予測には全く使えません

FLIPIは濾胞性リンパ腫の手強さの参考に使う程度です。

 

似たような予後予測にFLIPI-2, PRIMA-IPIなどがあります(J Clin Oncol. 2009 Sep 20;27(27):4555-62, Blood. 2018 Jul 5;132(1):49-58)。

解析症例数がFLIPIと比較し少数なため、FLIPIほどには使用されません。そもそもFLIPIでも参考程度の使用なのでFLIPI-2, PRIMA-IPIも参考程度です。

 

濾胞性リンパ腫は一般に治癒しない疾患と考えられていますが、リツキシマブの登場により治癒の可能性が見えてきています。

2019年に長期追跡の結果が出た臨床試験の報告では、完全奏効に到達した症例の一部は10年以上もずっと完全奏効を維持しているため、治癒する可能性が指摘されています。

このような症例はステージ3や4の症例で約37%と推定されています(Blood. 2008 Apr 15;111(8):4004-13)。

 

濾胞性リンパ腫 治療開始までにおこなうこと

濾胞性リンパ腫のステージ、予後予測と同時に全身の臓器状態の評価を行います。

特に心臓の機能は心臓超音波検査で確認します。心機能が低下していると治療法の選択肢が減るためです。

濾胞性リンパ腫は必ずしも全例で直ちに治療を開始するわけではありません。無症状の場合は治療なしで経過を見るだけで何年も変化がほとんどない場合も少なくありません。

したがって上記のステージ、予後予測、心機能がわかったところで、「治療開始を数日以内に行わなければならない」とった状況はまれです。

 

B型肝炎の既往がないかどうか採血で確認します。B型肝炎は気が付かないうちに感染していることがあります。濾胞性リンパ腫の治療でリツキシマブなどの薬剤を使用しますが、このときB型肝炎の既往があると再活性化することがあります。

B型肝炎が再活性化すると重篤な肝不全をおこすことがあり、場合によって生命に影響します。適切な予防措置をおこなうことで重篤な肝不全を回避することが可能です。

 

治療が必要になりそうな場合は若年者では不妊を防ぐ方法を説明されます。

男性の場合は精子の凍結保存です。女性の場合は適切な相手がいるときは受精卵の凍結保存です。適切な相手がいないときは卵子や卵巣の凍結保存が選択肢としてはあがりますが、技術としては研究段階です。

またセカンドオピニオンや転院を検討している場合もこのタイミングが適切です。濾胞性リンパ腫は長く通院が必要になる疾患です。長期的な治療計画に基づいて診療していくことになります。

途中まで治療を続けてうまくいかなくなってから転院してもできることは限られてきます。そこからの予後の改善は限定的と言わざるを得ません。

 

次項では濾胞性リンパ腫の治療適応と治療法について解説します。

濾胞性リンパ腫 HE 40 Grade 1
濾胞性リンパ腫 (FL)の初回治療 限局期もしくは無症候性の場合

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濾胞性リンパ腫 R2 vs R+chemothearpy, RELEVANCE
濾胞性リンパ腫 (FL) 進行期症候性の場合の初回治療

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まとめ 濾胞性リンパ腫 ステージ分類と予後指標

● 濾胞性リンパ腫のステージは診断までに行った検査に加えて、骨髄検査や可能であればPET-CTを行い、Lugano分類に基づいて決定します。

● 濾胞性リンパ腫の予後予測指標として「濾胞性リンパ腫国際予後指標 FLIPI」などがあります。

● 濾胞性リンパ腫は必ずしも直ちに治療が必要というわけではありません。心臓超音波検査などを行い長期的視野で必要に応じた治療計画を立てていきます。

参考文献

Canioni D, Brice P, Lepage E, et al.
Bone marrow histological patterns can predict survival of patients with grade 1 or 2 follicular lymphoma: a study from the Groupe d'Etude des Lymphomes Folliculaires.
Br J Haematol. 2004 Aug;126(3):364-71.

Cheson BD, Fisher RI, Barrington SF, et al.
Recommendations for initial evaluation, staging, and response assessment of Hodgkin and non-Hodgkin lymphoma: the Lugano classification.
J Clin Oncol. 2014 Sep 20;32(27):3059-68.

Friedberg JW, Taylor MD, Cerhan JR, et al.
Follicular lymphoma in the United States: first report of the national LymphoCare study.
J Clin Oncol. 2009 Mar 10;27(8):1202-8.

Solal-Céligny P, Roy P, Colombat P, et al.
Follicular lymphoma international prognostic index.
Blood. 2004 Sep 1;104(5):1258-65.

Nooka AK, Nabhan C, Zhou X, et al.
Examination of the follicular lymphoma international prognostic index (FLIPI) in the National LymphoCare study (NLCS): a prospective US patient cohort treated predominantly in community practices.
Ann Oncol. 2013 Feb;24(2):441-8.

Federico M, Bellei M, Marcheselli L, et al.
Follicular lymphoma international prognostic index 2: a new prognostic index for follicular lymphoma developed by the international follicular lymphoma prognostic factor project.
J Clin Oncol. 2009 Sep 20;27(27):4555-62.

Bachy E, Maurer MJ, Habermann TM, et al.
A simplified scoring system in de novo follicular lymphoma treated initially with immunochemotherapy.
Blood. 2018 Jul 5;132(1):49-58.

Bruna R, Benedetti F, Boccomini C, et al.
Prolonged survival in the absence of disease-recurrence in advanced-stage follicular lymphoma following chemo-immunotherapy: 13-year update of the prospective, multicenter randomized GITMO-IIL trial.
Haematologica. 2019 Nov;104(11):2241-2248.

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