濾胞性リンパ腫 (FL) 症状から受診、診断まで

2019-09-24

濾胞性リンパ腫 HE x40

 

リンパ腫は免疫を担当する細胞であるリンパ球が腫瘍化し、異常増殖する疾患です。

濾胞性リンパ腫(Follicular lymphoma, FL)は悪性リンパ腫の一種で、Bリンパ球(B細胞)という細胞が腫瘍化しておこります。濾胞性リンパ腫はリンパ腫の中ではゆっくり進行する疾患です。自覚症状は乏しく、偶然発見されることもあります。

本項では濾胞性リンパ腫の症状、そして受診から診断まで記載します。

痛みのないのリンパ節腫脹が自覚症状としては多く、その時点で濾胞性リンパ腫が原因の一つにあがります。

どのようにして濾胞性リンパ腫の確定診断に至るのか本項では解説します。

診断の国際基準である改訂WHO分類についても解説します。

濾胞性リンパ腫の症状と病院の受診

濾胞性リンパ腫の自覚症状として最も多いのは、首、脇、脚の付け根の「しこり」でしょう。

痛くもありません。硬いゴムのようなしこりです。

時間の経過とともに大きくなったり小さくなったりします。勝手に消えるときもあります。

濾胞性リンパ腫により発熱することはあまり多くありません。20%くらいとされています(Blood. 2004 Sep 1;104(5):1258-65.).

自覚症状が全くなく、健康診断などでたまたましこりが体内のどこかに発見されることもあります。

濾胞性リンパ腫はリンパ節にできることが多いですが、全身どこにでもできます (下図 Blood. 2004 Sep 1;104(5):1258-65.)。

リンパ節 領域

 

「しこり」は必ずしもすべてが濾胞性リンパ腫とは限りません。感染症だったり、別の腫瘍性疾患だったりと原因は様々です。

「しこり」のため病院を受診すると、その経過や状態から、しばらく経過をみていくか、もしくは「生検」といって「しこり」を切除して検査に提出するか検討します。

CT検査で全身の「しこり」を確認することになるでしょう。採血検査はほぼ100%行います。

受診の時点で専門の「血液内科」で対応できる病院がよいでしょう。リンパ腫の可能性が高い場合、生検した「しこり」を特殊な検査に同時に提出しなければならないためです。

 

濾胞性リンパ腫 リンパ節生検と診断 改訂WHO分類

CT検査の結果も確認してリンパ腫などの可能性が高い場合には、診断のためにしこりを切除します。「生検」といいます。

ある程度の大きさ(12 cm以上)のある「しこり」が診断しやすいです。

また首、脇、脚の付け根など、表面から触れやすい場所にある「しこり」のほうが、手術の時に簡単に取ることができます。

濾胞性リンパ腫の診断には生検が必須です。

 

生検した「しこり」は病理検査(ホルマリンに浸して、その後包埋・薄切し、染色して顕微鏡でみる検査)のほかに、フローサイトメトリ(細胞の表面や内部の蛋白の発現をみる検査)、染色体・遺伝子検査などにも提出します。

フローサイトメトリや遺伝子検査などは「血液内科」での提出と結果の解釈が必要になります

通常は生検と同時に提出しなければいけません。

 

ほとんどの症例で、生検から12週間以内に診断が確定します

濾胞性リンパ腫は病理検査での診断が容易で、あまり迷う場合はありません。フローサイトメトリと染色体・遺伝子検査の結果も合わせると、診断はほぼ100%で確定します (Blood. 1997 Jun 1;89(11):3909-18)

 

病理検査の顕微鏡写真(下図)では、通常あり得ないくらい多数の「濾胞」がみられ、その一つ一つは通常のリンパ節にみられる濾胞とは少し違っておかしな形をしています。

濾胞性リンパ腫 HE x40 2

この「おかしな濾胞」を形成する細胞が、濾胞性リンパ腫細胞です。

 

さらにこの「おかしな濾胞」を特殊な染色(免疫染色)で染めると、BCL2という正常の濾胞にあり得ないものが染まることがよくあります。

フローサイトメトリの検査では小型のリンパ球が多く、異常な発現パターンを呈するBリンパ球の集団が確認できます。やはり多くはBCL2が異常発現します(下図)

Follicular lymphoma, BCL2 40

 

遺伝子検査では通常の細胞にはあり得ない異常がみられ、最も多いのはBCL2遺伝子の異常です。

染色体転座t(14;18)(q32;q21)というものです。この染色体転座は通常のリンパ球が「濾胞性リンパ腫」へ腫瘍化するときに獲得することが多く、濾胞性リンパ腫の85%くらいで見られます。正常な細胞ではこのような異常はありません。

ただし染色体転座t(14;18)(q32;q21)があっても濾胞性リンパ腫とは限らず、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫といった他の悪性リンパ腫でも見られます (J Clin Oncol. 1988 May;6(5):919-25)。

 

以上のように、病理検査・フローサイトメトリ・染色体/遺伝子検査を合わせて、濾胞性リンパ腫の診断をしていきます。

診断の国際基準は、2016年発表された改訂WHO分類です。

The 2016 revision of the World Health Organization classification of lymphoid neoplasms.

 

リンパ腫の診断のためのWHO分類は新しい医学的発見も組み込み、何度も改訂されています。2020年12月時点で最新のものは2016年のWHO分類です。

書籍化もしており2017年に「WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues」というタイトルで発売されています。

現在のリンパ腫の診断は必ず改訂WHO分類に基づいて行われます(Blood. 2016 May 19;127(20):2375-90.)

 

濾胞性リンパ腫の確定診断とグレード分類

濾胞性リンパ腫の診断を確定するときに、念を入れて行うことがあります。他の疾患の可能性の排除です。

 

感染症などに反応してリンパ節が大きくなっている場合は、「正常な濾胞」が増えています。

病理検査での見た目は濾胞性リンパ腫と似ていますが、反応性のリンパ節腫脹の場合はおかしな濾胞はありませんし、免疫染色でもBCL2の異常染色はありません。BCL2染色は必ず確認します。

 

マントル細胞リンパ腫という、濾胞性リンパ腫と似た種類の悪性リンパ腫がありますが、病理検査の見た目は全く違います。それに加えてCyclin D1という異常蛋白の発現の有無を必ず確認します。マントル細胞リンパ腫の場合はCyclin D1がほぼ全例で異常発現していますが、濾胞性リンパ腫では陰性です(下図 濾胞性リンパ腫 Cyclin D1陰性)

Follicular lymphoma Cyclin D1 40

 

辺縁帯リンパ腫という、似た種類の悪性リンパ腫がありますが、これも病理検査の見た目は全く違います。濾胞性リンパ腫と異なりBCL2は陰性です。またCD10という濾胞性リンパ腫の60%くらいにみられる表面マーカーがありますが、辺縁帯リンパ腫ではほぼ全例で陰性です。CD10も必ず確認します(下図  濾胞性リンパ腫 CD10弱陽性)。

Follicular lymphoma, CD10 40

 

濾胞性リンパ腫の診断は難しくないのですが、他の悪性リンパ腫は確定診断が難しい場合がよくあります。リンパ腫の診断はきちんと見ないと間違ってしまう可能性があります。

リンパ腫の種類によって治療法が異なります。リンパ腫の診断については、血液内科医もリンパ腫病理医も詳しい人ほど慎重に診断していきます。

 

診断が確定したところで、さらに詳細に確認しなければならないことがあります。

濾胞性リンパ腫ではグレードといって、大型化した濾胞性リンパ腫細胞(Centroblast)の割合を確認します。大型細胞が多いほど細胞分裂が多いとされます。グレード3段階あります。

下の写真は大型細胞が少なく、グレード1に相当します。

Follicular lymphoma Grade 1

 

高拡大1視野あたりの大型細胞の数で確認していくのですが、場所によって違いが大きく、診断する血液病理医の一致率は60%くらいで、あまり高くありません(Blood. 1997 Jun 1;89(11):3909-18.)

したがってグレードは参考程度のものですが、WHO分類でもグレードについて記載されており、グレード表記は必須です。

高拡大1視野あたりの大型細胞が0~5個であればグレード1です。およそ25~30%の症例がグレード1に相当します。

高拡大1視野あたりの大型細胞が6~15個グレード2です。およそ20~35%です。

高拡大1視野あたりの大型細胞が15個をこえるグレード3です。約15~20%です。

ただしこの15個をこえる大型細胞が隙間なくくっついておりシート状になっている場合グレード3Bとなり、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫として治療します。それ以外はグレード3Aとして区別します(下図 Br J Haematol. 2012 Jan;156(2):225-33)

濾胞性リンパ腫 グレード

 

濾胞性リンパ腫のグレードは3Bを除いて予後にはあまり影響しません

2012年にグレードについての後ろ向き研究の結果が報告されています(Br J Haematol. 2012 Jan;156(2):225-33). 

1994年から2004年に濾胞性リンパ腫と診断された症例を対象とした北欧の研究です。

生存期間の中央値はグレード1~2と3Aでは12年以上でしたが、グレード3Bでは4.4年でした。グレード1~2と3Aでは有意な差はありませんでした。同じような治療内容で、経過も似たようなものとなりました(下図)。

濾胞性リンパ腫 グレード別全生存

この研究では、高拡大1視野あたりの大型細胞の数と生存期間についても解析していますが、グレード1~3Aの症例では大型細胞が多くても生存期間に有意な差はありませんでした(p=0.85)。

 

グレードが3Aだからといって1や2よりも予後が悪いわけでも治療が効かないわけでもありません。治療方法を変える根拠にもなりません。グレードは参考程度のものです。

ただしグレード3Bの場合は、濾胞性リンパ腫の治療よりもびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療を行ったほうがよいです。

 

次項では、ステージ分類、予後指標、治療開始までに行うべきことについて記載します。

Follicular lymphoma, bone marrow aspiration, HE 100
濾胞性リンパ腫(FL) ステージ分類と予後指標

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まとめ 濾胞性リンパ腫の症状と受診から診断まで

● 濾胞性リンパ腫の自覚症状として最も多いのは、首、脇、脚の付け根の「しこり」です。症状がないこともよくあります。「しこり」の精査をする場合は血液内科が対応できる病院がよいでしょう。

● 濾胞性リンパ腫の診断には生検が必須です。病理検査・フローサイトメトリ・染色体検査・遺伝子検査をおこない、2016年改訂WHO分類に基づいて診断します。

● 他の疾患の可能性を排除して確定診断を行います。その後グレードも確認します。

参考文献

Solal-Céligny P, Roy P, Colombat P, et al.
Follicular lymphoma international prognostic index.
Blood. 2004 Sep 1;104(5):1258-65.

A clinical evaluation of the International Lymphoma Study Group classification of non-Hodgkin's lymphoma. The Non-Hodgkin's Lymphoma Classification Project.
Blood. 1997 Jun 1;89(11):3909-18.

Rowley JD
Chromosome studies in the non-Hodgkin's lymphomas: the role of the 14;18 translocation.
J Clin Oncol. 1988 May;6(5):919-25.

Swerdlow SH, Campo E, Pileri SA, et al.
The 2016 revision of the World Health Organization classification of lymphoid neoplasms.
Blood. 2016 May 19;127(20):2375-90.

Wahlin BE, Yri OE, Kimby E, et al.
Clinical significance of the WHO grades of follicular lymphoma in a population-based cohort of 505 patients with long follow-up times.
Br J Haematol. 2012 Jan;156(2):225-33.

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