急性リンパ芽球性白血病に対するGRAALL-2005療法の実際と注意点(後半)

2020-06-10

GRAALL-2005R Consolidation Block 1

 

本項では急性リンパ芽球性白血病(ALL)の治療であるGRAALL-2005/Rの初回地固め療法の投与の実際とその注意点について解説しています。後半です。

GRAALL-2005/Rの治療の前半については「急性リンパ芽球性白血病に対するGRAALL-2005療法の実際と注意点(前半)」をご覧ください。

 

GRAALL-2005/Rは長く複雑な治療です。同種造血幹細胞移植を予定している場合は、地固め療法の途中で同種移植へ移ります。

同種移植を行わない場合は、地固め療法・強化療法を終えたら、2年間の維持療法を行います。

以下スケジュールと注意点について詳しく記載していきます。

 

GRAALL-2005/Rの初回地固め療法

GRAALL-2005/Rの「地固め療法」は1回が3つのパートに分かれます。それぞれブロック1, ブロック2, ブロック3となり、合わせて42日間のサイクルです。

ブロック1は以下のようなスケジュールとなります(下図).

GRAALL-2005R Consolidation Block 1

シタラビンは1回が2 g/m²と大量です。1日2回で、2日間(計4回)の投与となります。

デキサメタゾンは副腎皮質ステロイドの一種です1日2回、2日間(計4回)の内服です。

L-アスパラギナーゼが3日目に投与されます。

リツキシマブを併用している場合は、初日に投与します。

中枢神経系浸潤がない症例では予防の髄腔内投与はありません。

中枢神経系浸潤があった症例では、8日目に髄腔内投与があります。

 

腎機能が低下しているときはシタラビンの投与量を減量します。腎機能低下が著しいとシタラビンは使用できません。

大量シタラビンにより、結膜炎を起こすことがありますので、シタラビン投与開始から終了後数日間は点眼を継続します。点眼液を十分に使用し洗い流していくようにします。

大量シタラビンはそれだけでよく発熱や皮疹を生じやすいのですが、デキサメタゾンと併用しているため軽度の場合が多いです。

 

胃炎予防のためにプロトンポンプ阻害薬、悪心・嘔吐予防の制吐剤、感染症予防内服は、寛解導入療法の時と同様です。

アスパラギナーゼが1日だけ投与されますので、アレルギー反応、膵炎、血栓症などには引き続き注意が必要です。

 

地固め療法でも血球低下をおこします。ブロック1では9日目から13日目までG-CSF製剤(GRAALL-2005/Rではレノグラスチム 263 μg)を投与します。14日目は投与しません。日本では商品名はノイトロジンで250μgです。

「発熱性好中球減少症」への注意は引き続き必要です。好中球が低下してからの発熱は、直ちに点滴の抗生剤投与の適応となります。発熱したらすぐに伝えてください。

 

このまま15日目からブロック2へすすみます(下図)

GRAALL-2005R Consolidation Block 2

ビンクリスチンは15日目に投与します。

メソトレキセートも15日目に投与します。3 g/m²と大量です。

L-アスパラギナーゼは16日目に投与します。

メルカプトプリン(商品名:ロイケリン)は15日目から7日間内服します。寝る前などの空腹時内服です。乳製品と一緒に内服してはいけません。

リツキシマブの投与はありません。

中枢神経系浸潤がない症例では予防の髄腔内投与はありません。

中枢神経系浸潤があった症例では、20日目と24日目に髄腔内投与があります。

 

腎機能や肝機能が低下しているときはメソトレキセートの投与量を減量します。肝機能低下が著しいとメソトレキセートは使用できません。

フェブキソスタット(商品名:フェブリク)をもし何らかの理由で内服している場合は、中止です。ロイケリンとの相性がとても悪いためです。

 

ロイコボリンは活性型葉酸で、メソトレキセートによる葉酸代謝拮抗をなくしてしまいます。

地固め療法の大量メソトレキセート投与のときは、メソトレキセート投与終了の12時間後ごろに十分な量のロイコボリンを血中に投与を開始します。しばらく1日4回投与します。

ロイコボリンは中枢神経系に移行しにくいため、一度高濃度で中枢神経系などに入ったメソトレキセートの効果は減弱させず、それ以外の体内に残ったメソトレキセートの効果をなくします。

ロイコボリン投与がなければメソトレキセートの副作用が強くなります。

大量メソトレキセートは中枢神経系などへの効果を目標に行います。それ以外の部位への効果は多少ありますが目標ではありません。

大量メソトレキセートの際には「大量輸液」を行います。目的は不要なメソトレキセートの排泄にあります。

輸液の種類はアルカリ性の輸液になります。アルカリ性の輸液によりメソトレキセートの排泄を促進させます。

「大量輸液」は1日約4.5L (3/m2)くらいになります。メソトレキセートを開始する前からはじめておきます。

メソトレキセートは採血で血中濃度を測定することができます。血中濃度が0.1μmol/L未満になるまで、大量輸液とロイコボリン投与は続きます。3~4日間くらい続きます。

この間は連日の採血になります。メソトレキセートの投与時間に合わせての採血です。

 

抗がん剤化学療法と副腎皮質ステロイドのため胃炎を起こしやすくなりますが、予防のためにプロトンポンプ阻害薬の使用はBlock 2では推奨しません。

プロトンポンプ阻害薬はメソトレキセートの排泄を明らかに遅らせることがわかっています(Br J Clin Pharmacol. 2009 Jan;67(1):44-9, Anticancer Res. 2010 Sep;30(9):3807-10)。

メソトレキセートの排泄の遅れは不要な大量輸液・ロイコボリン投与だけでなく、不要な副作用を発生させる可能性があります。

もし胃薬を使用する場合はH2阻害薬(ファモチジンなど)を用います。プロトンポンプ阻害薬の使用は推奨しません。

またNSAIDsと呼ばれる種類の鎮痛薬(ロキソプロフェンなど)やST合剤の使用も推奨しません。メソトレキセートとの相性が悪く不要な副作用を起こす可能性があります。

 

ブロック2では23日目から27日目までG-CSF製剤を投与します。28日目は投与しません。

そしてそのまま29日目からブロック3へすすみます(下図)。

GRAALL-2005R Consolidation Block 3

メソトレキセートは 25mg/m²と少量です。29日目に投与します。

シクロホスファミドは29日目と30日目に投与します。

エトポシドも29日目と30日目に投与します。

リツキシマブを併用している場合は、29日目に投与します。

中枢神経系浸潤がない症例では予防の髄腔内投与を29日目に行います。

中枢神経系浸潤があった症例では、29日目と35日目に髄腔内投与があります。

 

ブロック3では31日目から好中球が十分に上昇するまでG-CSF製剤を投与します。

腎機能が低下しているときはエトポシドとメソトレキセートの投与量を減量します。

胃炎予防のためにプロトンポンプ阻害薬、悪心・嘔吐予防の制吐剤、感染症予防内服は、寛解導入療法の時と同様です。

少量のメソトレキセートの場合は、プロトンポンプ阻害薬を併用してもよいです。

 

血球が十分に回復したら、再び骨髄検査です。完全寛解の確認もありますが、測定可能残存病変(Measurable residual disease, MRD)の測定が主な目的です。

この時点で約90%の症例でMRDは陰性化(10-4)します

 

同種造血幹細胞移植の準備がすすんでいれば、このまま同種造血幹細胞移植です。

同種造血幹細胞移植を予定しない場合は、以下の化学療法にすすんでいきます。

 

GRAALL-2005/Rの2回目の地固め療法~3回目の地固め療法

2回目の地固め療法は1回目の地固め療法と同じですが、リツキシマブの投与はなくなります。再び3ブロック行います。このときはブロック4, ブロック5, ブロック6と呼びます。

再び42日間のサイクルです。

 

同種移植の準備に時間がかかっていた場合などではここで同種移植にすすみます。

同種移植を予定していない症例では、このまま「強化療法」がおこなわれます。

1回の寛解導入療法で完全寛解に到達した症例では、以下のようなスケジュールです(下図)。

GRAALL-2005R 急性リンパ芽球性白血病 寛解導入療法1

初回の寛解導入療法とほとんど同じです。投与量が少し異なります。

注意点は初回寛解導入療法と同様です。ただし腫瘍崩壊症候群予防は不要です。

 

2回目の寛解導入療法で完全寛解に到達した症例では、以下のようなスケジュールです(下図)。

Late intensification 2

2回目の寛解導入療法とほとんど同じです。投与量が少し異なります。注意点は再寛解導入療法と同様です。髄腔内予防投与が異なります。

 

3回目の地固め療法は1回目の地固め療法と同じですが、リツキシマブの投与はなくなります。髄腔内への予防投与もなくなります。

再び42日間のサイクルです。ブロック7, ブロック8, ブロック9となります。

ここまでで地固め療法は終了になります。しかし治療はまだつづきます。

 

GRAALL-2005/Rの維持療法

ブロック9まで終了したら維持療法です。1サイクルは1か月です。月に1回の通院が必要になります。

GRAALL-2005/Rの維持療法は2年間です。24サイクル行います。POMP療法とも呼ばれます。薬剤の頭文字をとっています。

 

プレドニゾンは最初の1週間内服します。日本ではプレドニゾロンで代用します。

ビンクリスチンは初日のみ点滴投与です。ビンクリスチンはオンコビンとも言います。POMPのOはオンコビンの頭文字です。

メルカプトプリンは毎日内服します。PurixanやPurinetholの商品名で海外では使用されています。その頭文字でPです。寝る前などの空腹時内服です。乳製品と一緒に内服してはいけません。

メソトレキセートは毎週1回内服します。

リツキシマブは維持療法では2か月おきに計6回投与します。

 

維持療法の有効性についてはGRAALL-2005/Rでもあまりはっきりしていません。

1980年代の維持療法を行わない前向き臨床試験で再発までの期間が今までよりも早くなってしまったため、維持療法を成人の急性リンパ芽球性白血病では行っています(Leukemia. 1991 May;5(5):425-31)。

あまり医学的な根拠はありません。投与薬剤や投与量についても不明なところが多いです。

維持療法の期間を3年に延長しても予後はあまり変わりありません(Lancet. 1996 Jun 29;347(9018):1783-8)。

再発する場合はたとえ維持療法を行っていても維持療法中の再発がほとんどです。

 

POMP維持療法中も感染症を起こしやすいです。

メソトレキセートの量は少量であるため、POMP療法ではST合剤を用いてニューモシスチス肺炎を予防します。プロトンポンプ阻害薬の使用も可能です。

 

2年間の維持療法が終了したら、GRAALL-2005/Rの治療は完遂です。

このまま定期的に外来通院し経過観察となります。

 

急性リンパ芽球性白血病(ALL)の治療効果判定や測定可能残存病変(MRD)については以下の項をご覧ください。

 

まとめ 急性リンパ芽球性白血病に対するGRAALL-2005療法の実際と注意点(後半) 

● GRAALL-2005/Rの「地固め療法」は1回が3つのパートに分かれます。それぞれブロック1, ブロック2, ブロック3となり、合わせて42日間のサイクルです。その後血球が十分に回復したら、再び骨髄検査で測定可能残存病変を測定します。この時点で約90%の症例でMRDは陰性化(10-4)します。

同種造血幹細胞移植を予定しない場合は、2回目の地固め療法です。1回目の地固め療法と同じですが、リツキシマブの投与はなくなります。再び3ブロック行います。同種移植を予定していない症例では、このまま「強化療法」を行い、3回目の地固め療法です。

● ブロック9まで終了したら、維持療法です。GRAALL-2005/Rの維持療法は2年間です。その後は定期的に外来通院し、経過観察となります。

参考文献

Maury S, Chevret S, Thomas X, et al.
Rituximab in B-Lineage Adult Acute Lymphoblastic Leukemia.
N Engl J Med. 2016 Sep 15;375(11):1044-53.

Huguet F, Chevret S, Leguay T, et al.
Intensified Therapy of Acute Lymphoblastic Leukemia in Adults: Report of the Randomized GRAALL-2005 Clinical Trial.
J Clin Oncol. 2018 Aug 20;36(24):2514-2523.

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Clin Lymphoma Myeloma Leuk. 2012 Oct;12(5):355-62.

Kunihiro Suzuki, Kosuke Doki, Masato Homma, et al.
Co-administration of Proton Pump Inhibitors Delays Elimination of Plasma Methotrexate in High-Dose Methotrexate Therapy
Br J Clin Pharmacol. 2009 Jan;67(1):44-9.

Cuttner J, Mick R, Budman DR, et al.
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Leukemia. 1991 May;5(5):425-31.

Childhood ALL Collaborative Group
Duration and intensity of maintenance chemotherapy in acute lymphoblastic leukaemia: overview of 42 trials involving 12 000 randomised children.
Lancet. 1996 Jun 29;347(9018):1783-8.

 

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