急性リンパ芽球性白血病(ALL)に対するR-Hyper-CVAD療法の実際と注意点

2020-06-06

ALLのHyper-CVAD奇数サイクル 1

 

急性リンパ芽球性白血病(ALL)リンパ芽球性リンパ腫(LBL)でよく用いる治療方法のひとつにHyper-CVAD療法があります。リツキシマブを併用する場合はR-Hyper-CVAD療法となります。

主にフィラデルフィア染色体異常が陰性の若年ではない症例に用います。

非常に有効な治療方法ですが強力抗がん剤化学療法ですので有害事象が多く発生します。

 

急性リンパ芽球性白血病に対してどのような初回化学療法がよいのかについては「フィラデルフィア染色体陰性の急性リンパ芽球性白血病の初回化学療法」および、「フィラデルフィア染色体陽性の急性リンパ芽球性白血病の初回化学療法」をご覧ください。

本項では実際に急性リンパ芽球性白血病やリンパ芽球性リンパ腫に対して(R-)Hyper-CVAD療法を行うときのスケジュールや注意点について解説します。

Hyper-CVAD療法は急性リンパ芽球性白血病の治療の中では比較的シンプルですが、それでも長くて複雑です。しばしば途中で様々な有害事象が発生します。

Hyper-CVAD療法は世界中で広く行われている治療方法です。アメリカのMDアンダーソンがんセンターからの報告が多いです。実際に行われているHyper-CVAD療法を、すでに出版されているいろいろな文献を参照にしつつ解説していきます。

 

急性リンパ芽球性白血病のHyper-CVAD療法の開始前に行うこと

急性リンパ芽球性白血病・リンパ芽球性リンパ腫の治療を開始する前に診断が濃厚な時点で治療前検査などを行います。

多剤化学療法を行う場合はアントラサイクリン系薬剤が含まれます。アントラサイクリン系薬剤は心臓に毒性があるため、使用前に心機能を心臓超音波検査で確認します。

心不全が重度だとアントラサイクリン系薬剤を使用することはできません。

 

また急性リンパ芽球性白血病の治療中にはリツキシマブを使用してもしなくても、B型肝炎ウイルスが再活性化することがあります。

再活性化するのは以前にB型肝炎にかかったことがある人だけですが、B型肝炎は感染しても無症状のことがしばしばあり、自分では感染していたことに気が付かないことがあります。

採血検査でB型肝炎の感染状態を確認することができます。

急性リンパ芽球性白血病の場合は、鑑別診断の時点でHIVやHTLV-1などのウイルスの感染状態も確認します。

 

急性リンパ芽球性白血病の治療では副腎皮質ステロイドを高用量で使用します。

長期の治療になるため骨粗鬆症をおこしてしまうことがあります。治療開始前に骨密度を確認します。

この時点で骨密度が低い場合は全身状態が落ち着いたところで骨粗鬆症の薬剤を使用することがあります。

 

急性リンパ芽球性白血病細胞・リンパ芽球性リンパ腫は生殖可能な年齢でも発生します。強力抗がん剤化学療法や同種造血幹細胞移植を行うと妊孕性が失われる可能性が高いです。

男性も不妊症になり得ます。男性の場合は精子凍結保存を行う時間的余裕がありますので、生殖可能年齢であれば精子凍結保存をすすめます。

女性の場合は選択肢としては、適切なパートナーがいる場合には受精卵凍結保存、パートナーがいなければ研究段階ですが卵子凍結保存、卵巣凍結保存などがあります。しかしながら、治療開始までの時間を考慮すると、これらを行う余裕がないことが多いです。

 

セカンドオピニオンを治療開始前に希望する場合もこのタイミングになります。あまり日数に余裕はないかもしれませんので、希望される場合は早めにお伝えください。

急性リンパ芽球性白血病に対して、どの施設がどのような治療を行っているかという情報は乏しく、公開されていたとしても古い情報のままで実際に行っている治療とは異なるということもよくあります。

実際にセカンドオピニオンで受診するまではその施設の治療についてはわからないでしょう。

 

実際に治療を開始するにあたって、フィラデルフィア染色体t(9;22)異常が陰性で、特定の染色体転座が見つからない症例では、この時点で測定可能残存病変(微小残存病変 MRD)の測定のための準備が必要です。

今後、測定可能残存病変の有無により治療方針が変わる可能性があるためです。

腫瘍細胞を含む検体(血液または骨髄液)を採取し、腫瘍細胞の遺伝子再構成配列を特定し今後PCRで測定できるようにしておきます。

 

Hyper-CVAD療法(+リツキシマブ)を行うとき、少なくとも初回は中心静脈カテーテルを挿入することがほとんどです。中心静脈カテーテルは2~3本の点滴を同時に投与可能です。

抗がん剤だけでなく、大量輸液・輸血・抗生剤など最初の治療では多くの静脈路を必要とします。

全身状態が安定すれば中心静脈カテーテルは必要ありません。長期間の留置は感染症のリスクになりますので早めに抜去します。

 

Hyper-CVAD療法1サイクル目(寛解導入療法)

(R-)Hyper-CVAD療法の1サイクル目は以下のようなスケジュールになります(J Clin Oncol. 2010 Aug 20;28(24):3880-9)。

ALLのHyper-CVAD奇数サイクル 1

1サイクルは21日間です。

Hyper-CVAD療法は抗がん剤の頭文字から名前がついています。「ハイパーシーヴァッド」とよみます。

Hyper-CはHyperfractionated Cyclophosphamideの略です。シクロホスファミド(Cyclophosphamide)は1日に2回、およそ12時間おきに投与します。

ビンクリスチン(Vincristine)は初日と11日目に投与します。

ドキソルビシン(Doxorubicin)は4日目に投与します。

デキサメタゾン(Dexamethasone)は1~4日目と11~14日目に内服します。

リツキシマブ(Rituximab)はCD20陽性であることが急性リンパ芽球性白血病細胞の20%以上に確認された場合に追加します。初日と11日目に投与します。

この組み合わせで(R-)Hyper-CVADとなります。

実際にはこれに加えて、2日目にメソトレキセートを、7日目ごろにシタラビン髄腔内に投与します。

急性リンパ芽球性白血病は中枢神経系に浸潤しやすいことがわかっていますので、Hyper-CVAD療法では中枢神経系に対する投薬が組み込まれています。

 

治療薬は上記ですが、さらに有害事象を軽減させるための「支持療法」が加わります。

メスナ(商品名:ウロミテキサン)はシクロホスファミドの膀胱障害が起こらないようにします。シクロホスファミドは出血性膀胱炎などを起こす可能性がありますのでメスナは必須です。

 

加えて制吐剤を予防投薬します。シクロホスファミドやドキソルビシンは悪心・嘔吐を起こしやすいため、パロノセトロン(商品名:アロキシ)などの予防用の制吐剤を使用します。

 

抗がん剤化学療法と副腎皮質ステロイドのため胃炎を起こしやすくなります。予防のためにプロトンポンプ阻害薬をあらかじめ併用することが多いです。

 

Hyper-CVAD療法は強力な抗がん剤化学療法ですので、もともと正常な血球が少ない状態で開始しますが、わずかな正常血球はさらに減少します。

G-CSF製剤と言って、正常な白血球を上昇させる薬剤がありますが、このG-CSF製剤をドキソルビシンが終了して24時間以上経過したころに皮下注射を開始します。

G-CSF製剤は複数ありますが、MDアンダーソンがんセンターでは2007年から持続効果のあるペグフィルグラチスム(商品名:ジーラスタ)を用いています。

ジーラスタは1サイクルにつき1回投与するだけでよいです。

持続型でないG-CSF製剤(フィルグラスチムなど)を用いると好中球数が上昇するまで連日の皮下注射を行うことになります。

 

重篤な心不全があるとドキソルビシンは使用できません。

肝機能が低下しているとドキソルビシンとビンクリスチンの投与量の減量が必要です。

 

1サイクル目の投与では、Hyper-CVAD療法の開始に伴って体内の急性リンパ芽球性白血病細胞が数日のうちに激減します。あまりにも急激に壊れていくため悪性細胞内の物質が血中に大量に放出されます。この現象を「腫瘍崩壊症候群」といいます。

腫瘍崩壊症候群を起こすと腎不全、けいれん、不整脈などの重篤な有害事象が発生します。

腫瘍崩壊症候群は「大量輸液」「尿酸を低下させる薬剤」を用いて予防します。適切に予防することで腫瘍崩壊症候群による重篤な症状が発生する可能性はほぼゼロになります。

「大量輸液」は1日におよそ4.5Lです(3 L/m²)。大量輸液は腫瘍崩壊症候群の予防に最も有効な手段です。

投与量が少ないと腫瘍崩壊症候群を起こしてしまいますので、適切な量を投与する必要があります。Hyper-CVAD療法開始数時間前から開始しておきます。

大量輸液により腫瘍崩壊で生じた物質を希釈・排泄させます。

腫瘍崩壊により「尿酸」が上昇します。尿酸が急激に増えると臓器障害を起こしますので、尿酸に対する薬剤を使用します。

アロプリノールの内服で尿酸が増えないようにしますが、急性リンパ芽球性白血病の場合は、ラスブリカーゼ(商品名:ラスリテック)を点滴投与して尿酸を低下させることが多いです。アロプリノールとの併用です。

アロプリノールのかわりにフェブキソスタット(商品名:フェブリク)を内服することもあります。

腫瘍崩壊症候群の可能性があるうちは連日の採血が必要です。腫瘍細胞が十分に減少するまでは「大量輸液」と毎日の採血は続きます。

 

Hyper-CVAD療法開始前から正常な血球が少ないため輸血は必須です。

正常な白血球もさらに少なくなりますので感染症も非常に起こしやすくなります。

一般細菌による感染だけでなく真菌(カビ)ヘルペスウイルスによる感染症も起こります。これらの感染症は生命に関わる可能性もあるため予防内服をおこないます。

予防抗菌薬としてはシプロフロキサシンもしくはレボフロキサシンを用います。

予防抗真菌薬はフルコナゾールなどを用います。

予防抗ウイルス薬はアシクロビルもしくはバラシクロビルを用います。

 

初回のリツキシマブの投与はよく「輸注反応」を起こします。悪寒や発熱などが半数くらいにみられますが、重症な輸注反応はまれでほとんどは一時的な中断の後に問題なく再開できます。

2回目の投与からは輸注反応はあまり起こりません。

 

Hyper-CVAD療法中にしばしば問題になるのは血糖値の上昇です。

空腹時血糖値が200を超えることも約40%でみられます。このような症例は感染症を2倍くらいおこしやすくなり生命に影響することがわかっています(Cancer. 2004 Mar 15;100(6):1179-85)。

MDアンダーソンがんセンターではこのような症例に対して、インスリン強化療法で血糖値を厳密にコントロールするランダム化比較試験を行いました(Clin Lymphoma Myeloma Leuk. 2012 Oct;12(5):355-62)。

対象群は内服薬(メトホルミンやグリメピリドなど)で治療を開始する群です。

しかしこのランダム化比較試験は早期中止となりました。

インスリン強化療法は1日4回インスリンを皮下注射します。グラルギン(商品名:ランタス)という持効型インスリンとアスパルト(商品名:ノボラピッド)という超速効型インスリンを用いました。

インスリン投与群では統計学的にも明らかに血糖値のコントロールが良好でした(下図, p=0.019)。

Intensive insulin vs Conventional, Glucose

ところがそれにもかかわらず、生存率はインスリン強化療法群のほうが低い傾向にあることがわかり、このまま臨床試験を続けてもインスリン強化療法のほうが良くなる可能性はかなり低い状況となったため、早期中断となりました(下図)。

Intensive insulin vs Conventional, OS

その後の解析で、体内でつくるインスリン量よりも投与するインスリン量が多いほど短期的な生命予後が悪い可能性が指摘されています。

Hyper-CVAD療法中の血糖コントロールは、通常の2型糖尿病と同じように、可能であれば内服薬から行います。それでもコントロール不良であればインスリンを検討します。

通常の2型糖尿病と異なり副腎皮質ステロイドの影響による高血糖なので、副腎皮質ステロイド投薬の時期に血糖値が高くなり、終了してしばらくすると血糖値は徐々に戻ります。

 

これは血液疾患全般にも言えることですが、血液疾患の化学療法では副腎皮質ステロイドをよく用います。その際にうかつにインスリンを投与して厳密な血糖コントロールを行っても予後は改善しないどころか逆に悪化する可能性があります。

血液疾患の化学療法中の高血糖には安易にインスリンを使用しないことを推奨します。

 

Hyper-CVAD療法を開始して17日目ごろから血球は回復してきます。

このころから脱毛もします。ばっさり抜けますので心の準備をしておいてください。

20日目ごろには好中球数は十分に上昇します。

好中球が1000, 血小板数が50000に到達できれば、22日目からHyper-CVAD療法の2サイクル目に移ります。

完全寛解に到達していそうであれば、2サイクル目開始前に骨髄検査などで完全寛解を確認します。

約半数の症例はこの時点で完全寛解に到達します。そうでなくてもほとんどの症例で急性リンパ芽球性白血病細胞の著しい減少が確認できます。

 

Hyper-CVAD療法2サイクル目

(R-)Hyper-CVAD療法の2サイクル目は以下のようなスケジュールになります(J Clin Oncol. 2010 Aug 20;28(24):3880-9)。

ALLのHyper-CVAD偶数サイクル

1サイクルは同様に21日間です。

大量メソトレキセートは初日に24時間かけて投与します。

大量シタラビンは2日目と3日目に1日2回、およそ12時間おきに投与します。計4回の投与になります。

メチルプレドニゾロンは1~3日目に1日2回、およそ12時間おきに投与します。

リツキシマブを投与している場合は初日と8日目に投与します。

2日目にメソトレキセートを、7日目ごろにシタラビン髄腔内に投与します。

 

大量メソトレキセートと大量シタラビンによる治療は、中枢神経系など通常量の抗がん剤では効果が乏しい部位に移行しやすく有効です。それに加えて中枢神経系に対しては抗がん剤髄腔内投与も併用します。

Hyper-CVAD療法の2サイクル目は、様々な部位に潜んだ急性リンパ芽球性白血病細胞を減少させる重要な治療です。

 

治療薬自体に加えて、2サイクル目でも有害事象を軽減させるための「支持療法」が加わります。

ロイコボリンは活性型葉酸で、メソトレキセートによる葉酸代謝拮抗をなくしてしまいます。

Hyper-CVAD療法の大量メソトレキセート投与のときは、メソトレキセート投与終了12時間後に十分な量のロイコボリンを血中に投与を開始します。しばらく1日4回投与します。

ロイコボリンは中枢神経系に移行しにくいため、一度高濃度で中枢神経系などに入ったメソトレキセートの効果は減弱させず、それ以外の体内に残ったメソトレキセートの効果をなくします。

ロイコボリン投与がなければメソトレキセートの副作用が強くなります。

大量メソトレキセートは中枢神経系などへの効果を目標に行います。それ以外の部位への効果は多少ありますが目標ではありません。

 

それにくわえて、2サイクル目も「大量輸液」を行います。

今回の「大量輸液」は腫瘍崩壊症候群に対してではなく、メソトレキセートの排泄にあります。

輸液の種類も1サイクル目とは異なりアルカリ性の輸液になります。アルカリ性の輸液によりメソトレキセートの排泄を促進させます。

1サイクル目と同じくらいの量の「大量輸液」がしばらく続きます。

メソトレキセートは採血で血中濃度を測定することができます。血中濃度が0.1μmol/L未満になるまで、大量輸液とロイコボリン投与は続きます。3~4日間くらい続きます。

この間は連日の採血になります。メソトレキセートの投与時間に合わせての採血です。

 

抗がん剤化学療法と副腎皮質ステロイドのため胃炎を起こしやすくなりますが、予防のためにプロトンポンプ阻害薬の使用はHyper-CVAD療法2サイクル目には推奨しません。

プロトンポンプ阻害薬はメソトレキセートの排泄を明らかに遅らせることがわかっています(Br J Clin Pharmacol. 2009 Jan;67(1):44-9, Anticancer Res. 2010 Sep;30(9):3807-10)。

メソトレキセートの排泄の遅れは不要な大量輸液・ロイコボリン投与だけでなく、不要な副作用を発生させる可能性があります。

もし胃薬を使用する場合はH2阻害薬(ファモチジンなど)を用います。プロトンポンプ阻害薬の使用は推奨しません。

またNSAIDsと呼ばれる種類の鎮痛薬(ロキソプロフェンなど)やST合剤の使用も推奨しません。メソトレキセートとの相性が悪く不要な副作用を起こす可能性があります。

 

制吐剤の予防投薬も行います。大量シタラビンは悪心・嘔吐を起こしやすいため、パロノセトロン(商品名:アロキシ)などの予防用の制吐剤を使用します。

 

Hyper-CVAD療法2サイクル目も強力な抗がん剤化学療法ですので、7日後くらいから血球が低下します。

2サイクル目もG-CSF製剤を使用します。シタラビンが終了して24時間後以降に投与を開始します。ペグフィルグラチスムであれば1回投与ですみます。

 

腎機能が低下している場合は、メソトレキセートとシタラビンの投与量の減量が必要です。重篤な腎機能障害ではシタラビンは使用できません。

大量シタラビンは高齢者には中枢神経系に障害を起こすことがありますので、60歳以上ではシタラビンの投与量は1/3に減量します。

肝機能が低下している場合はメソトレキセートの減量が必要です。重篤な肝障害ではメソトレキセートは使用できません。

 

Hyper-CVAD療法2サイクル目も予防内服を行います。1サイクル目と同様です。

大量シタラビンにより結膜炎を起こすことがありますので、シタラビン投与開始から終了後数日間は点眼を継続します。点眼液を十分に使用し洗い流していくようにします。

大量シタラビンはそれだけでよく発熱皮疹を生じやすいのですが、メチルプレドニゾロンが同時投与となっているため、通常は生じても軽度です。

 

Hyper-CVAD療法2サイクル目も引き続き血糖値を確認します。最初の3日間のメチルプレドニゾロンが血糖値を上昇させます。

 

Hyper-CVAD療法2サイクル目は16日目ごろから血球は回復してきます。脱毛もします。好中球が1000, 血小板数が50000に到達できれば、22日目からHyper-CVAD療法の3サイクル目が可能です。

1サイクル目にすでに完全寛解に到達している場合は2サイクル目には適応症例で同種造血幹細胞移植の準備を進めていきます。早ければ2サイクル目終了時点で同種移植に移行します。

まだ完全寛解に到達していない症例で、この時点で完全寛解に到達していそうであれば、3サイクル目開始前に骨髄検査などで完全寛解を確認します。

3サイクル終了時点まで完全寛解に到達していないこともときどきありますが、この時点ではほとんどの症例で急性リンパ芽球性白血病細胞はかなり少ないです。

 

Hyper-CVAD療法3サイクル以降 同種移植 維持療法

Mod Hyper-CVAD for ALL regimen

Hyper-CVAD療法の3サイクル目は1サイクル目と同じ治療です。

5サイクル目と7サイクル目は1サイクル目と同じですがリツキシマブがなくなります(上図 J Clin Oncol. 2010 Aug 20;28(24):3880-9)。

注意点は1サイクル目のときとほぼ同じですが、腫瘍崩壊症候群はありませんので大量輸液などは不要です。開始前の血球数も十分であることから、感染リスクは大きく減少しています。

心毒性の蓄積に注意して、定期的に心臓超音波検査などを行っていきます。

 

Hyper-CVAD療法の4サイクル目は2サイクル目と同じ治療です。注意点も同じです。6サイクル目と8サイクル目はリツキシマブがなくなります。

Hyper-CVAD療法で行っている抗がん剤髄腔内投与少なくとも4回は行ってください。リスクに応じて最大16回まで行います。

 

移植を予定している場合は、完全寛解に到達するころから移植の準備を進めていきます。

兄弟姉妹からの移植では時間はあまりかかりませんが、骨髄バンクなどの非血縁ドナーから移植する場合は数か月かかります。

 

3サイクル目終了時点で完全寛解に到達しない場合は治療抵抗性の可能性があります。

4サイクル目終了時点で完全寛解に到達していても、測定可能残存病変(MRD)が陽性の場合は高リスクとして同種造血幹細胞移植への移行も検討します。

これらは強力抗がん剤化学療法だけではすぐに再発する可能性が高いです。

 

低リスクで測定可能残存病変(MRD)も陰性化している症例で同種移植を予定していない場合は、このまま8サイクルまで継続します。8サイクル終了後は2年間の維持療法に移行します。

 

Hyper-CVAD療法は歴史が長く途中で数回の改訂がされていますが、改訂で追加されたアントラサイクリン強化療法は予後を改善させるわけではありません(J Clin Oncol. 2010 Aug 20;28(24):3880-9)。

またリポソーム化シタラビンの髄腔内投与は重症な神経毒性が約8倍多くなります(Haematologica. 2015 Jun;100(6):786-93)。通常のシタラビンを用いることを推奨します。

リツキシマブを用いない場合のHyper-CVAD療法を改訂前後で比較しても、オリジナルのHyper-CVAD療法より全生存率が良いわけではありませんでした(下図, J Clin Oncol. 2010 Aug 20;28(24):3880-9).

ALL Hyper-CVAD vs mod 1 vs mod 2, OS

 

維持療法はPOMP療法とよばれる治療です。薬剤の頭文字をとっています。1サイクルは1ヶ月です。

プレドニゾンは最初の1週間内服します。日本ではプレドニゾロンで代用します。

ビンクリスチンは初日のみ点滴投与です。ビンクリスチンはオンコビンとも言います。POMPのOはオンコビンの頭文字です。

メルカプトプリン(商品名:ロイケリン)は毎日内服します。PurixanやPurinetholの商品名で海外では使用されています。その頭文字でPです。

メソトレキセートは毎週1回内服します。

維持療法の有効性についてはHyper-CVAD療法でもあまりはっきりしていませんが、維持療法を行わない前向き臨床試験で再発までの期間が早くなってしまったため、維持療法を成人の急性リンパ芽球性白血病では行っています。

維持療法にあまり医学的な根拠はありません。投与薬剤や投与量についても不明なところが多いです。

たとえ維持療法を行っていても再発する場合は維持療法中の再発がほとんどです。

 

POMP維持療法中も感染症を起こしやすいです。

メソトレキセートの量は少量であるため、POMP療法ではST合剤を用いてニューモシスチス肺炎を予防します。プロトンポンプ阻害薬の使用も可能です。

 

維持療法は2年間ですが、POMPを24サイクル行わずに7サイクル目と11サイクル目はアスパラギナーゼ強化療法を行う場合があります。

メソトレキセート毎週点滴投与(4回)

L-アスパラギナーゼをメソトレキセートの翌日に投与(4回)

 

ただしアスパラギナーゼ強化療法の必要性については、Hyper-CVAD療法の場合はあまりはっきりしていません。途中の改訂でアスパラギナーゼ強化療法が入るようになりましたが、比較試験を行ったわけではありません

アスパラギナーゼを用いずに最初のままのHyper-CVAD療法でもよいでしょう(J Clin Oncol. 2000 Feb;18(3):547-61)。

 

急性リンパ芽球性白血病(ALL)の治療効果判定や測定可能残存病変(MRD)については以下の項をご覧ください。

 

まとめ 急性リンパ芽球性白血病に対するR-Hyper-CVAD療法の実際と注意点

Hyper-CVAD療法(+リツキシマブ)を開始する前に様々な準備を行います。

● Hyper-CVAD療法は強力抗がん剤化学療法です。有害事象を軽減させるための「支持療法」を必ず行います。腫瘍崩壊症候群や感染症など様々な有害事象を予防します。

● 移植を予定している場合は途中で同種造血幹細胞移植へ移行します。移植をしない場合は、Hyper-CVAD療法を8サイクルまで行い、その後維持療法を数年間行います。

参考文献

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Chemoimmunotherapy with a modified hyper-CVAD and rituximab regimen improves outcome in de novo Philadelphia chromosome-negative precursor B-lineage acute lymphoblastic leukemia.
J Clin Oncol. 2010 Aug 20;28(24):3880-9.

Weiser MA, Cabanillas ME, Konopleva M, et al.
Relation between the duration of remission and hyperglycemia during induction chemotherapy for acute lymphocytic leukemia with a hyperfractionated cyclophosphamide, vincristine, doxorubicin, and dexamethasone/methotrexate-cytarabine regimen.
Cancer. 2004 Mar 15;100(6):1179-85.

Vu K, Busaidy N, Cabanillas ME, et al.
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Results of treatment with hyper-CVAD, a dose-intensive regimen, in adult acute lymphocytic leukemia.
J Clin Oncol. 2000 Feb;18(3):547-61.

 

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