免疫性血小板減少症(ITP)症例の手術について 術前に血小板数を増加させるには

2020-10-01

免疫性血小板減少症 エルトロンボパグ vs 大量免疫グロブリン 大手術 周術期血小板数

 

免疫性血小板減少症(ITP)は治療後も比較的低めで血小板数が推移することがあります。

血小板数が20000~30000/μL以上を安定して維持できてる場合は無治療で経過観察できますが、何らかの理由で手術を行うときは出血リスクを下げるために術前に血小板数を増加させてから手術を行います。

慣習的には大量免疫グロブリンの点滴投与を行っていました。トロンボポエチン受容体作動薬であるエルトロンボパグ(商品名:レボレード)も大量免疫グロブリンと同等の効果があります。

 

本項では免疫性血小板減少症症例の待機的手術に備えた術前に血小板数を増加させる医療について解説します。

緊急手術のときはどちらも投与している余裕はなく、血小板輸血を行うことになります。

 

免疫性血小板減少症(ITP)症例の術前血小板増加 大量免疫グロブリンとエルトロンボパグ

免疫性血小板減少症(ITP)では、治療終了後も血小板数が30000/μL以上あれば無治療で経過観察が可能になりますが、手術を行う場合は出血リスクを考慮し一時的に血小板数を上昇させます。

 

慣習的には手術前に大量免疫グロブリンの点滴投与を行い、血小板数を上昇させてから手術を行っていました。ランダム化臨床試験に基づいて使用しているわけではありませんでした。

近年はトロンボポエチン受容体作動薬の登場により、一時的な血小板数の上昇をこれらの薬剤で行うことが検討されました。

 

2020年にカナダで行われたランダム化臨床試験の結果が出版されました(Lancet Haematol. 2020 Sep;7(9):e640-e648)。

この臨床試験では、手術予定の血小板数が低い免疫性血小板減少症の症例を対象に、大量免疫グロブリン点滴投与もしくはエルトロンボパグ内服にランダム化して結果を比較しました。

治療目標は手術時点で十分な血小板数になっていることでした。エルトロンボパグが大量免疫グロブリンと同等である(非劣性である)ことを証明する臨床試験でした。

結果、目標血小板数に到達した割合はエルトロンボパグ群で79%, 大量免疫グロブリン群で61%であり、エルトロンボパグ群のほうが高い結果でした。非劣性が示されました(p=0.005, for non-inferiority).

エルトロンボパグは奏効が確認できるまで時間がかかるため、手術3週間前から内服し、手術1週間後に終了していました。

大量免疫グロブリンは手術7日前の投与です(1~2回)。

手術3週間前から手術4週間後までの血小板数の推移は以下のようになりました。下図は大手術のときの血小板数の推移です(Lancet Haematol. 2020 Sep;7(9):e640-e648)。

免疫性血小板減少症 エルトロンボパグ vs 大量免疫グロブリン 大手術 周術期血小板数

両群とも手術時には血小板数が上昇しています。手術1~2週間後の血小板数がピークとなり徐々にその後低下していきます。

 

下図は小手術のときの血小板数の推移ですが、同様の経過となります。

免疫性血小板減少症 エルトロンボパグ vs 大量免疫グロブリン 小手術 周術期血小板数

大量免疫グロブリンもエルトロンボパグもどちらも有効であると言えます。

重症な有害事象はどちらも数例でしたが、エルトロンボパグでは肺血栓塞栓症が1例確認されました。

 

このランダム化臨床試験は、周術期の血小板数増加の初のランダム化試験です。

待機的な手術の場合は、エルトロンボパグでも大量免疫グロブリンでもよいと考えられます。有害事象の発生もどちらが多いというわけでもありません。

 

なお、緊急手術のときはエルトロンボパグでも大量免疫グロブリンも投与している余裕はなく、血小板輸血を行うことになります。

 

参考文献

Donald M Arnold, Nancy M Heddle, Richard J Cook, et al.
Perioperative oral eltrombopag versus intravenous immunoglobulin in patients with immune thrombocytopenia: a non-inferiority, multicentre, randomised trial
Lancet Haematol. 2020 Sep;7(9):e640-e648.

 

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