免疫性血小板減少症(ITP) 再発・難治性の治療選択と治療の注意点

2020-03-10

リツキシマブ weekly スケジュール

 

前項「免疫性血小板減少症(ITP) 再発・難治性の症例に対する治療」では、再発・難治性の一次性免疫性血小板減少症(ITP)の治療について解説していますが、本項ではその治療をどのようにして選択するのがよいのかについて解説します。

2019年のガイドラインなどを参照にしつつ、最新の推奨を以下に記載してきます。治療選択の優先順位はこの数年で大きく変化してきています。今後も変化は続いていくでしょう。治療選択についてご理解いただき参考にしてください。

 

再発・難治性の一次性免疫性血小板減少症の治療選択

再発・難治性一次性免疫性血小板減少症(ITP)に対する治療は、トロンボポエチン受容体作動薬リツキシマブ脾臓摘出術など複数あります。

これらを比較したランダム化臨床試験はありませんので、どの順に選択するべきかについては確たる医学的根拠は乏しいと言えます。

しかしながら、新しい臨床研究の結果がつぎつぎと判明してきており、それに伴い治療選択についても変化がみられてきています。

 

たとえば、2019年の前のアメリカ血液学会のガイドラインは2011年に出版されています(Blood. 2011 Apr 21;117(16):4190-207)。

その時は、再発・難治性の一次性免疫性血小板減少症に対する第一選択は「脾臓摘出術」が強く(グレード1B)すすめられていました

トロンボポエチン受容体作動薬は脾臓摘出後も血小板数が低い場合もしくは脾臓摘出が不可能な症例のみに推奨となっていました(グレード1B)。

 

一次性免疫性血小板減少症でも新しい医学的発見は次々と続いてます。臨床試験の結果も明らかになってきています。

再発・難治性の一次性免疫性血小板減少症に対する治療選択は何が推奨されるのでしょうか? 2019年のガイドラインを参照しながら解説していきます。

 

2019年のアメリカ血液学会のガイドラインでは、脾臓摘出術は少なくとも診断から1年以上経過した症例でのみ行うことを推奨しています(Blood Adv. 2019 Dec 10;3(23):3829-3866)。脾臓摘出術の他では、効果の高さからトロンボポエチン受容体作動薬をリツキシマブよりも推奨しています

さらに1年以上経過した症例でもリツキシマブ投与を脾臓摘出よりも優先するとしています。トロンボポエチン受容体作動薬はリツキシマブよりも優先としています。脾臓摘出術の優先度は以前よりも下がってしまいました。

トロンボポエチン受容体作動薬は長期間の内服です。費用も高いです。それらを避ける場合はリツキシマブや脾臓摘出術が選択肢であるとしています。

 

では、2019年の国際コンセンサスによる提言ではどうでしょう(Blood Adv. 2019 Nov 26;3(22):3780-3817).

国際提言では、再発・難治性の一次性免疫性血小板減少症に対しては、トロンボポエチン受容体作動薬を強く推奨しています。リツキシマブは弱い推奨です。

脾臓摘出術をもし行うのであれば、診断から1~2年待ってから行うことを推奨しています。

 

2019年の日本の参照ガイドでもトロンボポエチン受容体作動薬を強く推奨しています。リツキシマブは弱い推奨です(Int J Hematol. 2020 Mar;111(3):329-351)。脾臓摘出術を行う場合は、診断から半年~1年待ってから行うことを推奨しています。

 

このような変化の背景には、トロンボポエチン受容体作動薬の長期的な安全性と、まれにトロンボポエチン受容体作動薬を中止できる場合があることがわかってきているためです。

 

エルトロンボパグを何年も継続した前向きの臨床試験があります(Blood. 2013 Jan 17;121(3):537-45).

EXTEND試験と名付けられたこの臨床試験では、長期間にわたり大きな副作用なくエルトロンボパグの効果を持続可能であることがわかりました(下図 血小板数 Blood. 2017 Dec 7;130(23):2527-2536).

EXTEND試験 血小板数

骨髄に線維化が1.7%の症例に起こりますが、臨床的意義ははっきりしていません(Am J Hematol. 2015 Jul;90(7):598-601)。

 

2015年にエルトロンボパグ使用者の大規模な後ろ向き研究の結果が出版されました(Am J Hematol. 2015 Mar;90(3):E40-3)。

一次性免疫性血小板減少症に対してエルトロンボパグを使用した症例を対象としました。

約80%で完全奏効を達成していますが、そのうちの約40%でエルトロンボパグ投与を終了していました。

終了した症例の約半数は再発してしまいましたが、残りの半数は9か月くらいたっても終了したまま血小板数を維持していました

この臨床試験に参加した症例の75%は参加時点で診断から1年以上経過していました。

診断から1年以上経過しても、およそ10%の症例でエルトロンボパグを終了できる可能性が指摘されました。ただし後ろ向き研究ですのでバイアスが大きいです。前向きに検証する必要がありました。

 

2016年には前向きの臨床試験の結果が出版されました(Br J Haematol. 2016 Jan;172(2):262-73)。

この臨床試験では、診断から6か月以内の再発・難治性の一次性免疫性血小板減少症で血小板数30000/μL以下の症例に対して、2番目の治療としてロミプロスチムを1年間投与しました。完全奏効は79%にみられました。

1年投与が終了し、その時点で血小板数が50000/μL以上あれば、ロミプロスチムの投与量を徐々に減量する臨床試験でしたが、32%の症例で減量だけでなく終了しても血小板数50000/μL以上を6か月以上も維持することができました

ロミプロスチムの減量開始時点で少なくとも診断から1年以上経過しています。

 

これらのことから、血小板数50000/μLでも積極的に減量すれば約30%でトロンボポエチン受容体作動薬を終了でき、またそうでなくても約10%で終了できる可能性があります。

このことが脾臓摘出術を延期する根拠とみなされています。

おそらく今後のガイドラインでは、脾臓摘出術までの期間のさらなる延長と、トロンボポエチン受容体作動薬減量の積極化が予想されます。

ただしどのような治療選択が本当に良いのかについては比較試験が乏しく、未だはっきりしているというわけではありません

大規模ランダム化臨床試験ではトロンボポエチン受容体作動薬の中断により血小板数は偽薬群と同等になっています。通常の投与方法であればトロンボポエチン受容体作動薬が終了できる症例は10%くらいでしょう。

 

再発・難治性の一次性免疫性血小板減少症に対しては、まれですが終了できる可能性を考慮してトロンボポエチン受容体作動薬から開始することを、根拠は乏しいため弱く推奨します

長期内服を避ける場合は脾臓摘出術やリツキシマブが選択肢です。奏効は脾臓摘出術のほうが高いでしょう。リツキシマブは短期的な効果は期待できます。

 

再発・難治性の一次性免疫性血小板減少症 トロンボポエチン受容体作動薬投与の注意点

2020年12月時点ではトロンボポエチン受容体作動薬の積極的減量(血小板数50000/μL以上での減量)が推奨されているわけではまだありません。しかしながら、安定して50000以上を保っている場合は減量を検討してもよいでしょう。

 

エルトロンボパグ(商品名:レボレード)は内服のトロンボポエチン受容体作動薬です(Lancet. 2011 Jan 29;377(9763):393-402)。

1日1回空腹時に内服します。通常投与量は50mgですが、日本人などのアジア人種は25mgの投与となります。

日本国内で使用する場合は、どの人種でも12.5mgから開始です

 

最大量に到達し4週間経過しても血小板数に改善がみられなければ中止です。

投与量の変更は2週間以上経過してからです。血小板数が50000/μL未満であれば増量します。血小板数が200000/μLを超えたら減量します。血小板数が400000/μLを超えたら休薬です。

使用中に重度の肝障害が発生したら休薬です。

 

内服の際の注意点としては、空腹時に内服することです。また胃酸を抑える薬剤カルシウムを多く含む食品(乳製品など)は服用の前4時間及び後2時間には避けてください。

鉄、カルシウム、アルミニウム、マグネシウム、セレン、亜鉛を含むサプリメントも服用の前4時間及び後2時間には避けてください。

 

毎回の採血では、肝障害や血球の項目を確認します。投与量の調整のために必要です。

長期的に白内障が起こる可能性があります。

 

 

ロミプロスチム(商品名:ロミプレート)皮下注射で使用するトロンボポエチン受容体作動薬です。投与は毎週です(Lancet. 2008 Feb 2;371(9610):395-403)。

初回は1μg/kgから開始します。最大投与量は10μg/kgですが、ここまで必要になることは通常はありません。最大量に到達し4週間経過しても血小板数に改善がみられなければ中止です。

 

血小板数が50000/μL未満であれば1μg/kg増量します。血小板数が200000/μLを超えたら1μg/kg減量します。血小板数が400000/μLを超えたら休薬です。

 

毎回の採血では、血球の項目を確認します。投与量の調整のために必要です。

ロミプロスチムはエルトロンボパグのように肝障害をおこすとは言えません。

通院が頻回になってしまうことが欠点となります。

 

再発・難治性の一次性免疫性血小板減少症 リツキシマブの投与と注意点

リツキシマブ(商品名:リツキサン)CD20というBリンパ球の表面抗原に対する抗体薬です。リツキシマブの投与によりBリンパ球は減少します。

Bリンパ球が自己免疫性の血小板減少に関与していると考えられています。Bリンパ球の減少により血小板減少を抑えるとされています。

 

リツキシマブは週1回の投与を4回行います(下図)。

リツキシマブ weekly スケジュール

 

輸注反応といって、投与中や投与後に発熱、発赤、呼吸困難感、発疹などが生じることがあります。初回投与時が最も多く、約半数に起こります。

輸注反応に備えて、抗ヒスタミン薬とアセトアミノフェンの内服を行います。副腎皮質ステロイドも投与することがありますが、必須ではありません。

重篤な輸注反応がおこることはまれです。

 

リツキシマブを使用する場合は、かならずB型肝炎の感染状態を確認します。過去にB型肝炎にかかってても、症状が乏しく気づいていない場合があります。

過去のB型肝炎の既往があれば、リツキシマブの使用によりB型肝炎が再活性化する可能性があります。

B型肝炎の再活性化は生命に関わることがありますので、定期的に再活性化していないかどうか確認していきます。再活性化が確認できれば症状が出る前にB型肝炎の治療薬を開始する必要があります。

 

まとめ 再発・難治性の免疫性血小板減少症 治療選択と治療の注意点

● 以前は第一選択として脾臓摘出術がすすめられていましたが、2019年のガイドラインでは脾臓摘出術は診断から1年以上経過した症例でのみ行うことを推奨しています。脾臓摘出術の他では、効果の高さからトロンボポエチン受容体作動薬をリツキシマブよりも推奨しています。ただしどのような治療選択が本当に良いのかについては比較試験が乏しくはっきりしているというわけではありません。

● トロンボポエチン受容体作動薬はエルトロンボパグもしくはロミプロスチムを使用します。それぞれに利点と欠点があります。

● リツキシマブを用いる場合は週1回の投与を4回行います。輸注反応やB型肝炎の再活性化に注意が必要です。

参考文献

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