濾胞性リンパ腫 (FL)の初回治療 限局期もしくは無症候性の場合

2019-10-05

濾胞性リンパ腫 HE 40 Grade 1

濾胞性リンパ腫(FL)の診断が確定して治療前検査もすべて終了したら、次は治療が必要かどうか決定します。

全例で治療が必要になるわけでなく、症状がない場合は治療なしでしばらく様子をみることもよくあります

本項ではどのような場合に治療が必要かについてステージ別に解説します。病変が限局している場合はどのような治療を行うのかについても解説しています。

治療のメインは抗がん剤治療化学療法)と放射線治療です。

最初の治療については、いつ行うのかだけでなく、何を行うのかということも極めて重要です。初回の治療はその後のすべての治療計画に影響します。

国内と国外のガイドライン・論文を参照しつつ解説していきます。

 

濾胞性リンパ腫の治療 ステージ1~2の場合 放射線治療または経過観察

骨髄検査やPET-CTも行ってステージ1が確定した場合は、リンパ節生検も行っていることもあり、目に見える病変はすでに存在しないこともあるでしょう。

ステージ1~2の症例に対して1960年ごろから放射線治療が行われていました。第二次世界大戦後で科学的方法による研究が乏しく主に慣習に基づいた治療が多い時期です。

以降も後ろ向き研究はいくつかありましたが前向きランダム化比較の臨床試験で放射線治療が濾胞性リンパ腫に対して医学的にどのくらい有効か確かめる必要がありました。

 

2011年に大規模ランダム化臨床試験の結果が出版されました (Radiother Oncol. 2011 Jul;100(1):86-92.)。

この臨床試験では照射する放射線の量を, 24グレイもしくは40-45グレイとしランダム化し比較しました。

24グレイだとほとんど副作用は起こりませんが、40グレイくらいになると副作用が起こりやすくなります。

結果、照射した部位の局所再発率に有意な差はありませんでした

濾胞性リンパ腫の悪化なく生存する期間(無増悪生存期間)も全生存期間有意な差はありませんでした

40グレイも放射線を照射しても24グレイよりも有効とは言えないとなります。

 

続いて2014年に別の大規模ランダム化臨床試験の結果が出版されました(Lancet Oncol. 2014 Apr;15(4):457-63.).

この臨床試験(FoRT試験)では照射する放射線の量を, 4グレイもしくは24グレイとしランダム化し比較しました。濾胞性リンパ腫の症例は86%でした。ステージ1の症例は40%くらいでした。両者が同等かどうかを確認するための臨床試験でした。

結果、奏効率は4グレイで81%でしたが24グレイで91%、完全奏効率は4グレイで49%でしたが24グレイで68%と、統計学的にも明らかに24グレイのほうが高くなりました(p=0.0095).

濾胞性リンパ腫の悪化なく生存する期間(無増悪生存期間)は4グレイよりも24グレイのほうが良好でした(下図)。

濾胞性リンパ腫 放射線治療 4Gy vs 24Gy, PFS

しかしながら、全生存期間については有意な差はみられませんでした(下図)。

濾胞性リンパ腫 放射線治療 4Gy vs 24Gy, OS

ステージ1の症例に限定しても同様の結果でした。

有害事象は4グレイだとさらに軽くなりました。

24グレイの放射線を照射は4グレイよりも奏効と無増悪生存期間は良好ですが、全生存は良好とは言えません。

 

2021年に6年以上(中央値)追跡した結果が出版されました(Lancet Oncol. 2021 Mar;22(3):332-340).

局所のリンパ腫病変に対しては4グレイよりも24グレイのほうが統計学的にも明らかに良好であることに変わりはありませんでした(下図).

FORT, FL 4 Gy vs 24 Gy, Local PFS

しかしながら、長期追跡の結果でも全生存期間についは4グレイと24グレイではほとんど変わりはありませんでした。

長期的な生存に有意な差がないのであれば、一般に体への負担が少ない治療のほうが選択されます。たとえ再発率が多少高くてもです。

 

2018年にさらに別の大規模ランダム化臨床試験の結果が出版されました。抗がん剤治療の追加です (J Clin Oncol. 2018 Oct 10;36(29):2918-2925.).

この臨床試験では30-36グレイの放射線照射の後に追加治療なしもしくは抗がん剤化学療法を6サイクルを追加のいずれかにランダム化し比較しました。ステージ1の症例は75%くらいでした。

10年と長期にわたる観察を続けましたが、その結果は10年の濾胞性リンパ腫の悪化なく生存している割合(無増悪生存率)は放射線のみで41%, 放射線+化学療法で59%であり、統計学的にも明らかに放射線+化学療法のほうが良好でした(下図)。

濾胞性リンパ腫 限局期 IFRT vs IFRT + chemotherapy, PFS

 

10年全生存率放射線のみで87%, 放射線+化学療法で95%でしたが、統計学的には差はつかず全生存率についてはどちらが良いとも言えない結果となりました(下図)。

濾胞性リンパ腫 限局期 IFRT vs IFRT + chemotherapy, OS

有害事象については、化学療法を行った症例の半分くらいで重症の感染症・下痢・しびれなどがみられました。

長期的な全生存率に有意な差がみられないのであれば、たとえ再発率が多少高くても化学療法の副作用は避けたほうがよいと考えられます。

 

2012年にステージ1の濾胞性リンパ腫に対する大規模な前向き観察研究の結果が報告されました(J Clin Oncol. 2012 Sep 20;30(27):3368-75)。

様々な治療が行われていますが、無増悪生存期間は「放射線+化学療法」もしくは「リツキシマブ+化学療法」が他の治療よりも良好な結果となりました(下図).

ステージ1濾胞性リンパ腫 前向き観察 PFS

しかしながら、いずれの治療も全生存期間については有意な差はみられませんでした

 

放射線治療、化学療法、リツキシマブ、経過観察の単独もしくは組み合わせの治療はいずれも全生存については有意な差はみられません。

最も有害事象が多いのは放射線+化学療法です。最も有害事象が少ないのは経過観察です。

以下でも解説しますが、無症状の場合は無治療のまましばらくは経過観察してもかまいません。

 

濾胞性リンパ腫ステージ1もしくは一部のステージ2の症例では、4(~24)グレイ放射線照射もしくは有害事象が問題になりそうな場合は無理に照射せず症状がでるまで様子を見る(経過観察)のいずれかが良いと考えます。

ステージ2でも病変範囲が狭く照射可能な範囲であれば放射線治療または経過観察がいいでしょう。照射可能な範囲でない場合は、以下のステージ2~4の場合の治療を確認してください。

 

2020年12月時点でのアメリカのNCCNガイドライン(NCCN Guidelines)では、7㎝を超える巨大病変でなければ、濾胞性リンパ腫ステージ1もしくは照射可能なステージ2の症例では、24~30グレイの放射線照射を弱く推奨(カテゴリー2A)しています。有害事象が予想される場合は無治療経過観察でもよいとしています。

日本血液学会の2018年造血器腫瘍診療ガイドラインでも同様に、巨大病変がない濾胞性リンパ腫ステージ1もしくは照射可能なステージ2の症例では、24~30グレイの放射線照射を推奨しています(カテゴリー2A)。

 

濾胞性リンパ腫の治療 ステージ2~4 無症候性の場合

濾胞性リンパ腫の病変が広範囲に存在する場合は放射線治療はできません。局所だけ病勢を抑えても照射範囲外の病変が存在するため放射線治療の意味はあまりありません。

ステージ2~4の濾胞性リンパ腫に対しては症状が乏しい場合は、すぐに治療を開始しても、症状が出てくるまで待っても生存率は変わりません

 

1997年に出版された大規模ランダム化臨床試験では、症状のない症例を含む「低腫瘍量」の濾胞性リンパ腫に対して、治療なしで経過観察抗がん剤治療インターフェロン治療の3つで比較しました(J Clin Oncol. 1997 Mar;15(3):1110-7.)。

5年生存率はそれぞれ78%, 70%, 84%であり、統計学的に明らかな違いはありませんでした。

 

2003年に別の大規模ランダム化臨床試験の16年という長期観察の結果が出版されました。

この臨床試験では「症状のない」の濾胞性リンパ腫に対して、抗がん剤治療もしくは治療なしで経過観察を行いました(Lancet. 2003 Aug 16;362(9383):516-22.)。

16年(中央値)観察しても、やはり生存率はほとんどかわりがありませんでした(下図)。

無症候性濾胞性リンパ腫 経過観察 vs 抗がん剤治療 OS

またこの臨床試験では経過観察して10年経過した時点でも約20%の症例で抗がん剤治療の必要がないままであるとされました。

 

以上から、症状を伴わないステージ2~4の濾胞性リンパ腫に対しては、早期に抗がん剤治療を行うことは経過観察するよりもよいとは言えません

病勢が進行し「治療適応」になってから抗がん剤治療を開始したほうが、不必要な抗がん剤を避けることができます。

 

では「治療適応」とは具体的にはどのような状態でしょうか?

上記の臨床試験を総合すると「治療適応」のおおよその基準は、以下のいずれかに該当する場合とされます (Blood. 2007 Jun 1;109(11):4617-26)。

● 濾胞性リンパ腫病変が径7cm以上である

● 径3cm以上の濾胞性リンパ腫病変が3つ以上存在する

● 高熱、体重減少、強い掻痒感、夜間の大量発汗のいずれかがある

● 脾臓が16㎝以上に腫大している

● 異常な体液貯留(胸水、腹水)がある

● 白血球1500/μL未満、ヘモグロビン 10 g/dL未満、もしくは血小板100000/μL未満

● 濾胞性リンパ腫の細胞が採血検査で5,000/μL以上存在する

● 濾胞性リンパ腫が臓器に浸潤し生命を脅かす状態である

● 急速に病勢が悪化してきている

これらの基準は臨床試験を行った組織名をとって、GELF基準あるいはBNLI基準とも言われます(下図)。

濾胞性リンパ腫 GELF BNLI 治療no

 

濾胞性リンパ腫の治療 ステージ2~4 無症候性に対するリツキシマブ

リツキシマブ(商品名:リツキサン)が登場して、濾胞性リンパ腫でも使用されるようになりました。リツキシマブはB細胞に対する抗体で、濾胞性リンパ腫などのB細胞の腫瘍には効果が期待できます。副作用も少ないです。

2014年に「症状のない」の濾胞性リンパ腫に対する、リツキシマブの大規模ランダム化臨床試験の結果が出版されました(Lancet Oncol. 2014 Apr;15(4):424-35.)。

この臨床試験では「症状のない」の濾胞性リンパ腫に対して、経過観察リツキシマブ週1回で4回投与リツキシマブ週1回で4回投与し維持療法として2か月に1回で12回投与、の3群で比較しました。

その結果、無増悪生存期間はリツキシマブを長期に使用した症例が統計学的にも明らかに最も良好で、またリツキシマブの短期使用は経過観察よりも統計学的にも明らかに良好でした(下図)。

無症候性濾胞性リンパ腫 経過観察 vs R vs R-R, PFS

 

しかしながら、生存率はほとんどかわりがありませんでした(下図)。

無症候性濾胞性リンパ腫 経過観察 vs R vs R-R, OS

 

リツキシマブの投与でも重症感染症などの有害事象が少数ですが確認されました。

長期的な全生存率が同等であれば、たとえ再発率が多少高くても不要な有害事象は避けたほうがよいと考えられます。

 

症状を伴わないステージ2~4の濾胞性リンパ腫に対しては、たとえリツキシマブが副作用が少ないとはいえ、病勢が進行し「治療適応」になってから治療を開始するほうがよいと考えられます。

「経過観察」する場合は数か月に1回の通院を行い、症状がないことを医師と確認することが必要です。

 

2020年12月時点でのアメリカのNCCNガイドライン(NCCN Guidelines)でも、日本血液学会の2018年造血器腫瘍診療ガイドラインでも、治療適応でないステージ2~4の濾胞性リンパ腫に対しては「経過観察」を強く推奨しています(カテゴリー1)。

 

次項では濾胞性リンパ腫の進行期で治療適応となる場合の治療について解説します。

濾胞性リンパ腫 R2 vs R+chemothearpy, RELEVANCE
濾胞性リンパ腫 (FL) 進行期症候性の場合の初回治療

続きを見る

 

まとめ 濾胞性リンパ腫の初回治療 限局期もしくは無症候性の場合

● 濾胞性リンパ腫ステージ1の症例では、放射線照射もしくは経過観察のいずれかがよいと考えられます

● 症状を伴わないステージ2~4の濾胞性リンパ腫に対しては、経過観察を行い、病勢が進行しあきらかな「治療適応」になってから治療を開始するほうがよいと考えられます。

● 症状を伴わないステージ2~4の濾胞性リンパ腫に対して、リツキシマブ単剤を投与するよりも経過観察のほうがよいと考えられます。

参考文献

Lowry L, Smith P, Qian W, et al.
Reduced dose radiotherapy for local control in non-Hodgkin lymphoma: a randomised phase III trial.
Radiother Oncol. 2011 Jul;100(1):86-92.

Hoskin PJ, Kirkwood AA, Popova B, et al.
4 Gy versus 24 Gy radiotherapy for patients with indolent lymphoma (FORT): a randomised phase 3 non-inferiority trial.
Lancet Oncol. 2014 Apr;15(4):457-63.

MacManus M, Fisher R, Roos D, et al.
Randomized Trial of Systemic Therapy After Involved-Field Radiotherapy in Patients With Early-Stage Follicular Lymphoma: TROG 99.03.
J Clin Oncol. 2018 Oct 10;36(29):2918-2925.

Friedberg JW, Byrtek M, Link BK, et al.
Effectiveness of first-line management strategies for stage I follicular lymphoma: analysis of the National LymphoCare Study.
J Clin Oncol. 2012 Sep 20;30(27):3368-75.

Brice P, Bastion Y, Lepage E, et al.
Comparison in low-tumor-burden follicular lymphomas between an initial no-treatment policy, prednimustine, or interferon alfa: a randomized study from the Groupe d'Etude des Lymphomes Folliculaires. Groupe d'Etude des Lymphomes de l'Adulte.
J Clin Oncol. 1997 Mar;15(3):1110-7.

Ardeshna KM, Smith P, Norton A, et al.
Long-term effect of a watch and wait policy versus immediate systemic treatment for asymptomatic advanced-stage non-Hodgkin lymphoma: a randomised controlled trial.
Lancet. 2003 Aug 16;362(9383):516-22.

Gribben JG.
How I treat indolent lymphoma.
Blood. 2007 Jun 1;109(11):4617-26.

Ardeshna KM, Qian W, Smith P, et al.
Rituximab versus a watch-and-wait approach in patients with advanced-stage, asymptomatic, non-bulky follicular lymphoma: an open-label randomised phase 3 trial.
Lancet Oncol. 2014 Apr;15(4):424-35.

Hiddemann W, Kneba M, Dreyling M, et al.
Frontline therapy with rituximab added to the combination of cyclophosphamide, doxorubicin, vincristine, and prednisone (CHOP) significantly improves the outcome for patients with advanced-stage follicular lymphoma compared with therapy with CHOP alone: results of a prospective randomized study of the German Low-Grade Lymphoma Study Group.
Blood. 2005 Dec 1;106(12):3725-32.

Marcus R, Imrie K, Solal-Celigny P, et al.
Phase III study of R-CVP compared with cyclophosphamide, vincristine, and prednisone alone in patients with previously untreated advanced follicular lymphoma.
J Clin Oncol. 2008 Oct 1;26(28):4579-86.

Federico M, Luminari S, Dondi A, et al.
R-CVP versus R-CHOP versus R-FM for the initial treatment of patients with advanced-stage follicular lymphoma: results of the FOLL05 trial conducted by the Fondazione Italiana Linfomi.
J Clin Oncol. 2013 Apr 20;31(12):1506-13.

Luminari S, Ferrari A, Manni M, et al.
Long-Term Results of the FOLL05 Trial Comparing R-CVP Versus R-CHOP Versus R-FM for the Initial Treatment of Patients With Advanced-Stage Symptomatic Follicular Lymphoma.
J Clin Oncol. 2018 Mar 1;36(7):689-696.

Walewski J, Paszkiewicz-Kozik E, Michalski W, et al.
First-line R-CVP versus R-CHOP induction immunochemotherapy for indolent lymphoma with rituximab maintenance. A multicentre, phase III randomized study by the Polish Lymphoma Research Group PLRG4.
Br J Haematol. 2020 Mar;188(6):898-906.

Rummel MJ, Niederle N, Maschmeyer G, et al.
Bendamustine plus rituximab versus CHOP plus rituximab as first-line treatment for patients with indolent and mantle-cell lymphomas: an open-label, multicentre, randomised, phase 3 non-inferiority trial.
Lancet. 2013 Apr 6;381(9873):1203-10.

2018年造血器腫瘍診療ガイドライン

NCCN Guidelines

濾胞性リンパ腫(FL) 診断と治療の概要に戻る

 

© 2021 Cwiz Hematology