多発性骨髄腫(MM) 初回治療でのベルケイドとカイプロリス どちらがよいか?

2020-10-03

 

多発性骨髄腫 ENDURANCE KRd vs VRd, 無増悪生存率

 

多発性骨髄腫(MM)の治療は毎年のように改善しています。次々にランダム化臨床試験の結果がでています。

本項では多発性骨髄腫の初回治療として、ボルテゾミブ(商品名:ベルケイド)カルフィルゾミブ(商品名:カイプロリス)のどちらが良いのか解説します。

結論はボルテゾミブのほうがよいと言えます。どちらでもよいではなくボルテゾミブのほうがよいです。

ボルテゾミブとカルフィルゾミブはどちらも多発性骨髄腫には非常に有効な薬剤です。おなじプロテアソーム阻害薬に分類されますが、使用するのに適切な時期はそれぞれ異なります。

本項では、ランダム化臨床試験の結果を参照にしつつ、ボルテゾミブとカルフィルゾミブのどちらが良いのか解説していきます。

多発性骨髄腫の初回化学療法の選択については「多発性骨髄腫(MM)の初回治療 新規薬剤を用いた化学療法」「多発性骨髄腫(MM)の初回治療としての自家造血幹細胞移植」をご覧ください。

 

多発性骨髄腫に対するプロテアソーム阻害薬 ボルテゾミブとカルフィルゾミブ

再発した多発性骨髄腫(MM)に対する大規模ランダム化臨床試験(ENDEAVOR試験)では、ボルテゾミブ(商品名:ベルケイド)カルフィルゾミブ(商品名:カイプロリス)を直接比較しました。

ボルテゾミブは多発性骨髄腫の予後を大きく改善した画期的な薬剤でした。プロテアソームという細胞内タンパク質を処理する酵素を阻害する働きがあります。

カルフィルゾミブもプロテアソームを阻害する薬剤ですが、ボルテゾミブと異なりカルフィルゾミブはプロテアソームをより強く、不可逆的に阻害します。

どちらもプロテアソーム阻害薬に分類されます。

 

ENDEAVOR試験では初回治療でボルテゾミブを使用している症例が多かったこともあり、BD(ボルテゾミブ・デキサメタゾン)療法を行うよりもKD療法(カルフィルゾミブ・デキサメタゾン)療法のほうが、奏効率・無増悪生存期間・全生存期間のいずれも有意に良好でした(Lancet Oncol. 2016 Jan;17(1):27-38, Lancet Oncol. 2017 Oct;18(10):1327-1337)。

再発症例の治療成績と作用機序からカルフィルゾミブはボルテゾミブよりも効果の高いプロテアソーム阻害薬と考えられました。

 

では最初からカルフィルゾミブを使用して治療を行えば、ボルテゾミブを使用するよりも治療成績が向上するのでしょうか?

以下、初回治療でボルテゾミブとカルフィルゾミブを比較した大規模ランダム化臨床試験の結果を見ていきます。

 

初回治療としてのボルテゾミブとカルフィルゾミブの比較試験 CLARION試験

2019年に大規模ランダム化臨床試験(CLARION試験)の結果が出版されました(Blood. 2019 May 2;133(18):1953-1963)。

この臨床試験では初発の多発性骨髄腫症例に対する、VMP療法(ボルテゾミブ、メルファラン、プレドニゾン)とKMP療法(カルフィルゾミブ、メルファラン、プレドニゾン)をランダム化して比較しました。

自家移植適応外の症例限定の臨床試験でした。どちらの治療も9サイクルまで行う試験でした。

結果、全奏効率はVMP療法で78.8%、KMP療法で84.3%でした。カイプロリスのほうが有意に良好でした(p=0.02)。

完全奏効率はVMP療法で23.1%, KMP療法で25.9%でした。完全奏効率は統計学的な差はありませんでした(p=0.14).

無増悪生存期間の中央値はVMP群で22.1か月、KMP群で22.3か月とあまり変わりありませんでした(下図、HR 0.906, 95%CI 0.746-1.101, p=0.159)。

多発性骨髄腫 CLARION KMP vs VMP, 無増悪生存率

全生存率も初回報告の時点ではほとんど変わりありません(下図)。

多発性骨髄腫 CLARION KMP vs VMP, 全生存率

重症な有害事象の発生率は両群でほとんど変わりありませんでした。

重症な腎機能障害心不全はカイプロリスのほうが多く発生しました。

重症な末梢神経障害はボルテゾミブのほうが多く発生しました。

この臨床試験ではKMP療法はVMP療法と比べて無増悪生存期間を延長させることはできないと判断されました。

 

初回治療としてのボルテゾミブとカルフィルゾミブの比較試験 ENDURANCE試験

2020年にはKRd療法VRd療法を比較した大規模ランダム化臨床試験(ENDURANCE試験)の結果が出版されました(Lancet Oncol. 2020 Oct;21(10):1317-1330).

Rはレナリドミド(商品名:レブラミド), dはデキサメタゾン(商品名:レナデックス)です。

この臨床試験では初回治療に自家造血幹細胞移植を行わない症例を対象としました。

VRd療法を12サイクルもしくはKRd療法を9サイクル行い、両群ともレナリドミドによる維持療法を行っています。

全奏効率はVRd療法で84%, KRd療法で87%でした。有意な差はありませんでした(p=0.26)。

しかし最良部分奏効率はVRd療法で65%, KRd療法で74%であり、有意な差をつけてKRd療法のほうが良好でした(p=0.0015)。

完全奏効率はVRd療法で15%, KRd療法で18%でした。有意な差はありませんでした(p=0.13)。

自家造血幹細胞移植を行っていないためか全体的に完全奏効率は自家移植を行っている臨床試験よりも低めです。

無増悪生存期間は中央値で、VRd群で34.4か月、KRd群で34.6か月でした。どちらもあまり変わりませんでした(下図, HR 1.04, 95%CI 0.83-1.31, p=0.74).

多発性骨髄腫 ENDURANCE KRd vs VRd, 無増悪生存率

全生存率もあまり変わりなく、3年全生存率はVRd群で84%、KRd群で86%でした(下図、HR 0.98, 95%CI 0.71-1.36, p=0.92)。

多発性骨髄腫 ENDURANCE KRd vs VRd, 全生存率

重症な末梢神経障害はVRd群のほうが多く8%にみられましたが、KRd群では1%未満でした。

一方で重症な心不全、敗血症、腎機能障害などはKRd群のほうが多い結果でした。

全体として重症な有害事象はKRd群のほうが多く、致命的な合併症もKRd群のほうが多い結果となりました。

この臨床試験ではKRd療法はVRd療法と比べて無増悪生存期間を延長させることはできないだけでなく、有害事象がかえって増加すると判断されました。

 

 

カルフィルゾミブはボルテゾミブと比べて有効な薬剤とは必ずしも言えず、初回治療からボルテゾミブの代わりに使用したとしても予後を改善するわけではありません。

初回治療でボルテゾミブのかわりにカルフィルゾミブを用いることは推奨しません。

 

ボルテゾミブ使用歴のある再発多発性骨髄腫に対しては、カルフィルゾミブは有効です。

 

まとめ 多発性骨髄腫初回治療でのベルケイドとカイプロリス どちらがよいか?

● 再発多発性骨髄腫症例ではBD療法よりもKD療法のほうが治療成績は良いです。

● 初発多発性骨髄腫症例に対しては、KMP療法はVMP療法と比べて無増悪生存期間を延長させることはできませんでした。

● 初発多発性骨髄腫症例に対しては、KRd療法はVRd療法と比べて無増悪生存期間を延長させることはできないだけでなく、有害事象がかえって増加する結果でした。初回治療でボルテゾミブのかわりにカルフィルゾミブを用いることは推奨しません。

参考文献

Meletios A Dimopoulos, Philippe Moreau, Antonio Palumbo, et al.
Carfilzomib and dexamethasone versus bortezomib and dexamethasone for patients with relapsed or refractory multiple myeloma (ENDEAVOR): a randomised, phase 3, open-label, multicentre study.
Lancet Oncol. 2016 Jan;17(1):27-38.

Meletios A Dimopoulos, Hartmut Goldschmidt, Ruben Niesvizky, et al.
Carfilzomib or bortezomib in relapsed or refractory multiple myeloma (ENDEAVOR): an interim overall survival analysis of an open-label, randomised, phase 3 trial.
Lancet Oncol. 2017 Oct;18(10):1327-1337.

Thierry Facon, Jae Hoon Lee, Philippe Moreau, et al.
Carfilzomib or bortezomib with melphalan-prednisone for transplant-ineligible patients with newly diagnosed multiple myeloma.
Blood. 2019 May 2;133(18):1953-1963.

Shaji K Kumar, Susanna J Jacobus, Adam D Cohen, et al.
Carfilzomib or bortezomib in combination with lenalidomide and dexamethasone for patients with newly diagnosed multiple myeloma without intention for immediate autologous stem-cell transplantation (ENDURANCE): a multicentre, open-label, phase 3, randomised, controlled trial
Lancet Oncol. 2020 Oct;21(10):1317-1330.

 

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