多発性骨髄腫(MM)の再発の基準と再発後移植の有効性

2020-01-31

Multiple myeloma, Bone marrow biopsy, relapse from CR

 

多発性骨髄腫(MM)の治療成績は年々改善されていますが、それでも多発性骨髄腫は再発しやすい疾患であると言えます。完治する確率は残念ながらまだ高いわけではありません。

本項では多発性骨髄腫の再発の基準再発後の移植の有効性について解説します。新薬による化学療法については「再発・難治性の多発性骨髄腫 (MM) に対する化学療法」をご覧ください。

再発したとしても、症状が出る前の再発の初期段階で見逃さないようにして、早めに治療を行うことが、生存率にも生活の質の維持にも重要です。

本項では化学療法に自家移植もしくは同種移植の併用についても、文献や国内・国外のガイドラインを参照に解説します。

 

多発性骨髄腫の再発の基準 2016年IMWG基準

多発性骨髄腫(MM)の悪化の基準も効果判定と同様に2016年の国際骨髄腫作業部会(IMWG)基準を用います(Lancet Oncol. 2016 Aug;17(8):e328-e346)。

多発性骨髄腫の再発(PD)の基準は以下のいずれかになります。

●血清のM蛋白が最低値から25%以上上昇、かつ500 mg/dL以上の上昇を、2回連続で認める
●血清のM蛋白の最低値が5000 mg/dL以上の場合は、血清のM蛋白が1000 mg/dL以上上昇する(2回連続)
●24時間蓄尿でM蛋白が最低値から25%以上上昇、かつ200 mg/日の上昇を、2回連続で認める
●血清や尿のM蛋白の上昇がみられない場合は、遊離軽鎖の差が最低値から25%以上上昇、かつ100 mg/L以上の上昇を、2回連続で認める
●血清や尿のM蛋白の上昇も、遊離軽鎖の上昇もない場合は、骨髄中の腫瘍性形質細胞が10%以上増加する
●血清や尿のM蛋白の上昇も、遊離軽鎖の上昇もない場合は、血液中の形質細胞の50%以上上昇、かつ200/μL以上の上昇を、2回連続で認める
新規の溶骨病変や軟部組織の形質細胞腫が出現する、もしくは既存の腫瘤が50%以上増大する

例えば、完全奏効(CR)の状態から血清M蛋白が500 mg/dL検出されるようになって、再検してもやはり500 mg/dLあれば再発(PD)となります。

「2回連続」は間隔を問いませんが急に増えているときは1か月待つと予想外に悪化するときがありますので、早めにPDを確定させてしまって疼痛、骨折、腎障害などが発生する前に次の治療を始めたほうが良いです。

 

なお、2016年IMWG基準では「臨床的再発」の基準もあります。以下のいずれかです。

●新規の溶骨病変や軟部組織の形質細胞腫が出現する、もしくは既存の腫瘤が50%以上増大する
●血中カルシウム値が11mg/dLを超える
●治療の影響ではなく、多発性骨髄腫の悪化により、血中のヘモグロビン値が2g/dL以上低下する
●多発性骨髄腫の悪化により、血中のクレアチニンが2 mg/dL以上増加する
●血清M蛋白により過粘稠症候群をおこす

このような症状が起こってから治療を開始するより、PDの段階で治療を開始したほうが、生存率も生活の質も良好です。しかしながら、PDになる前に治療を開始する必要はありません

再発の確定や次の治療の開始前に骨髄検査を行うことは必須ではありません。ほとんどの症例で血液や尿のM蛋白もしくは遊離軽鎖(κとλ)によりPDが確定します。骨髄検査が再発の確定のために必要になることはまれです。

下図は、厳密完全奏効(sCR)からPDとなったときの骨髄生検のCD138染色です。腫瘍性形質細胞は数%のみでした。塗抹標本では形質細胞は1%です。検査する意味はあまりありません。

Multiple myeloma, Bone marrow biopsy, relapse from CR

 

ただし再発を繰り返していくと、多発性骨髄腫は非典型的になっていき、M蛋白や遊離軽鎖が上昇しない場合や、軟部組織に腫瘤を形成する場合や、血液中に形質細胞が異常に増殖し二次性の形質細胞性白血病となることが増えてきます。

骨髄検査でも多発性骨髄腫細胞の形態が形質細胞とはかけ離れたものになることもあります。

 

再発した多発性骨髄腫に対する、自家造血幹細胞移植の有効性

自家造血幹細胞移植は、多発性骨髄腫の初回治療では有効ですが、再発した場合に再度自家造血幹細胞移植を行うことに意味はあるのでしょうか?

 

2014年に再発多発性骨髄腫に対する自家造血幹細胞移植を再び行うことの有効性についてのランダム化臨床試験の結果が報告されています(Lancet Oncol. 2014 Jul;15(8):874-85)。

この臨床試験では初回自家造血幹細胞移植から1年半以上経過してから再発した多発性骨髄腫症例に、再発後化学療法としてPAD(ボルテゾミブ、ドキソルビシン、デキサメタゾン)療法を行った後に、自家造血幹細胞移植もしくはシクロホスファミド内服にランダム化して比較しました。

結果、完全奏効率は自家造血幹細胞移植群で39%、シクロホスファミド群で22%であり、自家移植群のほうが良好でした。

無増悪生存期間の中央値は、自家造血幹細胞移植群で19か月、シクロホスファミド群で11か月であり、統計学的にも明らかに自家移植群のほうが良好でした(下図)。

再発多発性骨髄腫 自家造血幹細胞移植 PFS

4年以上の長期追跡の結果も報告されています(Lancet Haematol. 2016 Jul;3(7):e340-51)。

全生存期間の中央値は、自家造血幹細胞移植群で67か月、シクロホスファミド群で52か月であり、統計学的にも明らかに自家移植群のほうが良好でした(下図)。

再発多発性骨髄腫 自家造血幹細胞移植 OS

30か月くらいから徐々に差が開いてきます。そこまではほぼ同じです。

再発多発性骨髄腫に対しては、再び自家造血幹細胞移植を行ったほうが、奏効率・無増悪生存期間・全生存期間のいずれも改善すると言えます。

ただし多くの場合で再発後の自家造血幹細胞移植の効果は初回の自家造血幹細胞移植よりも落ちます。1回目の移植による奏効が乏しかった場合は2回目も乏しいです。

自家移植による治療に加えて、再発後は化学療法の重要性が初発時より高めになります。

この臨床試験当時はまだ新薬が現在より少ない状態でしたが、多発性骨髄腫に対する新薬が毎年のように登場しています。再発多発性骨髄腫の治療成績も年々上昇しています。

最も有効な化学療法、そして自家造血幹細胞移植の併用を行うこと、これらは再発多発性骨髄腫の場合でも初発の場合でも同様にとても大切です。その時で最大の効果を発揮する治療を行ったほうが手加減して治療するよりも良いです。

 

2020年12月時点でのアメリカのNCCNガイドライン(NCCN Guidelines)では、再発多発性骨髄腫に対して自家造血幹細胞移植を行うことを推奨(カテゴリー2A)しています.

日本血液学会の2018年造血器腫瘍診療ガイドラインでは、再発多発性骨髄腫に対する自家造血幹細胞移植は弱い推奨(カテゴリー2B)です。

 

再発した多発性骨髄腫に対する、同種造血幹細胞移植の有効性

では、再発した多発性骨髄腫に対する同種造血幹細胞移植は有効でしょうか?

 

再発の場合の同種造血幹細胞移植についてはランダム化臨床試験の結果はありません。いくつかの報告があります。

1996年に再発および難治性の多発性骨髄腫に対して「骨髄破壊的前処置」による同種造血幹細胞移植を行った結果の報告がありました(Blood. 1996 Oct 1;88(7):2787-93)。

移植後100日以内の死亡率が44%と異常な高値となってしまいました。これは初発時と同様の高い早期死亡率です。

骨髄破壊的前処置による同種造血幹細胞移植は、再発・難治の場合でも推奨できるものではありません。

 

自家造血幹細胞移植→ミニ同種造血幹細胞移植の場合の大規模な後ろ向き研究の結果が2013年に報告されています(Bone Marrow Transplant. 2013 Nov;48(11):1395-400)。

ミニ同種移植後1年以内の非再発死亡率が21.5%と、「骨髄破壊的前処置」よりはよいですが、やはり高いと言えます。無増悪生存期間の中央値は9.6か月でした。

後ろ向き研究なので信頼性はあまり高くはありませんが、自家造血幹細胞移植→ミニ同種造血幹細胞移植を行ってもあまり意味があるとは言えません。

 

2020年12月時点でのアメリカのNCCNガイドライン(NCCN Guidelines)でも、再発多発性骨髄腫に対する同種造血幹細胞移植はたとえミニ移植であったとしても、もし行うならば前向き臨床研究として行うべきであるとしています。

日本血液学会の2018年造血器腫瘍診療ガイドラインでも、再発多発性骨髄腫に対する同種造血幹細胞移植は一般的には推奨されず,臨床試験として実施すべきであるとしています。

実際には多発性骨髄腫に対する同種造血幹細胞移植の前向き比較試験はもはや行われることはないでしょう。事実上、多発性骨髄腫に対する同種造血幹細胞移植は推奨されていないと言えます。

そして再発の場合の前向き比較臨床試験の報告が乏しいことから、再発での同種造血幹細胞移植は初発時以上に医学的根拠の乏しい治療と言えます。推奨はしません。

 

再発した多発性骨髄腫に対しては、新薬による化学療法+自家造血幹細胞移植による治療を推奨します。初回治療時と比べて化学療法の重要性が高くなるので、どのような化学療法を選択したらよいのかということが大切になります。

 

次項では再発した多発性骨髄腫に対する、新薬による化学療法について解説します。

多発性骨髄腫 再発難治 HE
再発・難治性の多発性骨髄腫 (MM) に対する化学療法

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まとめ 多発性骨髄腫の再発の基準と再発後移植の有効性

● 多発性骨髄腫の再発の基準も2016年IMWG基準を用います。「臨床的再発」となる前に「再発(PD)」の段階で、治療を開始することを推奨します。

● 再発多発性骨髄腫に対して再び自家造血幹細胞移植を行ったほうが、奏効率・無増悪生存期間・全生存期間のいずれも改善すると言えます。

● 再発多発性骨髄腫に対する同種造血幹細胞移植は致命的な合併症が多く推奨されません。

参考文献

Kumar S, Paiva B, Anderson KC, et al.
International Myeloma Working Group consensus criteria for response and minimal residual disease assessment in multiple myeloma.
Lancet Oncol. 2016 Aug;17(8):e328-e346.

Cook G, Williams C, Brown JM, et al.
High-dose chemotherapy plus autologous stem-cell transplantation as consolidation therapy in patients with relapsed multiple myeloma after previous autologous stem-cell transplantation (NCRI Myeloma X Relapse [Intensive trial]): a randomised, open-label, phase 3 trial.
Lancet Oncol. 2014 Jul;15(8):874-85.

Cook G, Ashcroft AJ, Cairns DA, et al.
The effect of salvage autologous stem-cell transplantation on overall survival in patients with relapsed multiple myeloma (final results from BSBMT/UKMF Myeloma X Relapse [Intensive]): a randomised, open-label, phase 3 trial.
Lancet Haematol. 2016 Jul;3(7):e340-51.

Bensinger WI, Buckner CD, Anasetti C, et al.
Allogeneic marrow transplantation for multiple myeloma: an analysis of risk factors on outcome.
Blood. 1996 Oct 1;88(7):2787-93.

Auner HW, Szydlo R, van Biezen A, et al.
Reduced intensity-conditioned allogeneic stem cell transplantation for multiple myeloma relapsing or progressing after autologous transplantation: a study by the European Group for Blood and Marrow Transplantation.
Bone Marrow Transplant. 2013 Nov;48(11):1395-400.

NCCNガイドライン(NCCN Guidelines)

2018年造血器腫瘍診療ガイドライン

 

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