再発・難治性の多発性骨髄腫に対するイサツキシマブ+Pd療法

2020-06-30

イサツキシマブ・ポマリドミド・デキサメタゾン療法 1サイクル目

 

再発もしくは難治性となった多発性骨髄腫(MM)に対する新薬が次々と登場していますが、2020年6月末にイサツキシマブ(商品名:サークリサ)が日本で承認となりました。

2020年6月末の承認ではイサツキシマブポマリドミド・デキサメタゾンと併用での承認です。

本項ではイサツキシマブ・ポマリドミド・デキサメタゾン療法の実際の投与スケジュールや有害事象と注意点について解説します。

この治療で最も恩恵があるのは、ダラツムマブ未使用で、プロテアソーム阻害薬とレナリドミドに不応となった症例でしょう。

本項では、実際の大規模ランダム化臨床試験(ICARIA-MM試験)で発生した有害事象に基づいて注意点を解説していきます。

 

イサツキシマブ・ポマリドミド・デキサメタゾン療法の有効性と医学的根拠については「再発・難治性の多発性骨髄腫 (MM) に対する化学療法」をご覧ください。

イサツキシマブではない再発・難治性の多発性骨髄腫の化学療法の実際の投与と注意点については「再発・難治性の多発性骨髄腫(MM) 化学療法の副作用と注意点」をご覧ください。

 

イサツキシマブ・ポマリドミド・デキサメタゾン療法 開始前の注意点

イサツキシマブ(商品名:サークリサ)CD38に対する抗体薬です。

CD38は多発性骨髄腫細胞を含む形質細胞の表面に多く発現している蛋白です。同系統の薬剤にダラツムマブ(商品名:ダラザレックス)があります。

イサツキシマブは多発性骨髄腫細胞に対する直接作用が強い点がダラツムマブとの違いとなりますが、その違いが奏効や生存にどのくらい影響するかについてはまだよくわかっていません(Lancet. 2019 Dec 7;394(10214):2096-2107)。

 

注意点として、ダラツムマブやポマリドミドのいずれかに不応となった症例に対してイサツキシマブ・ポマリドミド・デキサメタゾンによる治療を行ったとしても、臨床試験ほどの効果はおそらくありません。

臨床試験ではダラツムマブ使用歴のある症例はほとんどなく、ダラツムマブ不応の状態でイサツキシマブが奏効するとは必ずしもいえません

KRd療法後の再発などが良い適応になるでしょう。

 

ダラツムマブと同様にイサツキシマブを用いる前に間接クームス試験などをあらかじめ行います。CD38は赤血球にも少ないですが発現しており投与後にこの検査を行うと高い確率で偽陽性になります。

イサツキシマブはIgG-κ型の抗体薬です。ダラツムマブと同様に血液検査の免疫固定法でIgG-κが偽陽性になることがあります。IgG-κ型の症例では効果判定のときは注意が必要です。

 

イサツキシマブ・ポマリドミド・デキサメタゾン療法 初回サイクル

イサツキシマブ・ポマリドミド・デキサメタゾンによる治療の初回サイクルは以下のようなスケジュールになります(下図)。

イサツキシマブ・ポマリドミド・デキサメタゾン療法 1サイクル目

1サイクルは28日間です。

初回サイクルのイサツキシマブは、毎週の投与です。一番初めの投与はかなりゆっくり投与します。3~4時間くらいかかります。2回目の投与は2~3時間くらい、3回目以降は1時間半くらいで投与します。

ポマリドミドは21日間内服し、7日間休薬します。

デキサメタゾンは毎週の内服です。イサツキシマブの日はイサツキシマブより先に内服します。

イサツキシマブを投与する前にデキサメタゾンに加えて、抗ヒスタミン薬、アセトアミノフェン、H2受容体拮抗薬で輸注反応に備えます。

 

75歳以上ではデキサメタゾンは半分の量になります。

肝機能障害腎機能障害がもともとある場合は、ポマリドミドが減量となることがあります。

 

イサツキシマブの初回投与では「輸注反応」がしばしば発生します。大規模ランダム化臨床試験のときは38%の症例で「輸注反応」がみられました。発熱、呼吸器症状、悪心、皮疹、掻痒などがおこります。

これらの反応がみられたら、イサツキシマブは一時停止し、症状を緩和させるような薬剤を用います。輸注反応が落ち着いたら、停止前の半分の速度から再開し、30分間何もなければ徐々に速度を速めていきます。

「輸注反応」がいつまでたってもおさまらない場合や、再開後にまた起こったら、イサツキシマブは投与終了です。今後も再投与は行いません。

かなりまれ(2%)ですが、重症な輸注反応が発生することがあります。その場合もイサツキシマブは投与終了です。今後も再投与は行いません。

 

初回投与では「腫瘍崩壊症候群」を起こす可能性があります。腫瘍量が多いことが想定される場合は点滴を多めに行います

ポマリドミドは催奇形性があります。妊婦の内服は絶対に避けてください。また、ポマリドミド内服中は男性も女性も確実に避妊してください。

 

イサツキシマブ・ポマリドミド・デキサメタゾン療法 2サイクル目以降

2サイクル目以降は、以下のようなスケジュールになります(下図)。

イサツキシマブ・ポマリドミド・デキサメタゾン療法 2サイクル目以降

イサツキシマブは2週間に1回の投与になります。イサツキシマブを投与前の薬剤も継続します。

ポマリドミドとデキサメタゾンは初回サイクルと変わりません。

イサツキシマブ・ポマリドミド・デキサメタゾンによる治療は、大きな有害事象がなければ再発しない限りずっと継続しますサイクル数に上限はありません

 

イサツキシマブ・ポマリドミド・デキサメタゾンによる治療では好中球数が500/μL未満になることが約60%であります。

好中球500/μL未満になったら、3剤とも休薬し、1000/μL以上になってから、ポマリドミドを減量して再開します。G-CSF製剤を使用しても構いません。

血小板数が25000/μLを下回ることがあります。その場合はポマリドミドを休薬し、50000/μL以上になってから、ポマリドミドを減量して再開します。大規模ランダム化臨床試験のときは血小板数25000/μL未満となる症例は約15%でした。

 

ポマリドミドにより肝機能障害を起こすことがあります。あまりに悪化したらポマリドミドを休薬し、改善してからポマリドミドを減量して再開します。

ポマリドミドでも皮疹は発生します。ポマリドミドによる重症皮疹を起こした場合は、ポマリドミドは投与終了です。今後も再投与は行いません。

 

イサツキシマブ・ポマリドミド・デキサメタゾンによる治療でも感染症にかかりやすくなります。

抗菌薬抗ウイルス薬予防投与を行います。大規模ランダム化臨床試験のときは、肺炎や気管支炎などの呼吸器感染症がしばしば発生しています。入院が必須の重症肺炎は約15%で起こりましたが、対象群のポマリドミド・デキサメタゾンでも同程度の発生率でした。

好中球数が低い状態での発熱は「発熱性好中球減少症」と呼ばれ、直ちに点滴抗生剤が必要になります。イサツキシマブ・ポマリドミド・デキサメタゾンで治療中に発熱したら、早めに医療機関を受診して下さい。

 

B型肝炎の再活性化がおこることがあります。過去のB型肝炎の既往が採血結果で確認できる場合は定期的なウイルス量チェックが必要です。

再活性化していることに気が付かないと、かなり悪化した状態で発覚し重篤な肝不全により生命に関わる可能性があります。

再活性化の初期段階でB型肝炎の治療(抗ウイルス薬)を行えば、重篤化することはほぼゼロになります。

 

イサツキシマブ・ポマリドミド・デキサメタゾンによる治療でもポマリドミドがありますので、血栓症予防が必要です。通常はアスピリンの内服を行います。

イサツキシマブ・ポマリドミド・デキサメタゾンによる治療でも、二次発がんを起こしやすくなる可能性があります。臨床試験では皮膚がんや骨髄異形成症候群などが発生しています。

 

イサツキシマブ・ポマリドミド・デキサメタゾン療法でも各サイクルで治療効果判定を行いながら継続します

有効な場合は長期間の投与になります。感染症に注意をしながら通院治療を行うことになります。ゾメタなどの併用薬も必要に応じて継続することを推奨します。

 

まとめ 再発・難治性の多発性骨髄腫に対するイサツキシマブ+Pd療法

イサツキシマブ(商品名:サークリサ)CD38に対するIgG-κ型の抗体薬です。多発性骨髄腫細胞に対する直接作用が強い点がダラツムマブとの違いです。

イサツキシマブ・ポマリドミド・デキサメタゾンによる初回治療では、「輸注反応」や「腫瘍崩壊症候群」に特に注意が必要です。

● 2サイクル目以降のイサツキシマブは2週間に1回の投与になります。大きな有害事象がなければ再発しない限りずっと継続します。好中球数や血小板数がかなり低下することがあります。感染症、とくに「発熱性好中球減少症」に注意が必要です。この治療でも各サイクルで治療効果判定を行いながら継続します。

参考文献

Attal M, Richardson PG, Rajkumar SV, et al.
Isatuximab plus pomalidomide and low-dose dexamethasone versus pomalidomide and low-dose dexamethasone in patients with relapsed and refractory multiple myeloma (ICARIA-MM): a randomised, multicentre, open-label, phase 3 study.
Lancet. 2019 Dec 7;394(10214):2096-2107.

Meletios A Dimopoulos, Xavier Leleu, Philippe Moreauet al.
Isatuximab Plus Pomalidomide and Dexamethasone in Relapsed/Refractory Multiple Myeloma Patients With Renal Impairment: ICARIA-MM Subgroup Analysis
Leukemia. 2020 May 23. doi: 10.1038/s41375-020-0868-z.

 

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