多発性骨髄腫 (MM) 治療効果判定と測定可能残存病変(MRD)

2020-01-25

SPEP No M protein

 

多発性骨髄腫(MM)の治療の各サイクルで治療効果判定を行います。また自家造血幹細胞移植の約100日後にも治療効果判定を行います。

多発性骨髄腫の場合は奏効が深いほど一般に予後は良好です。

本項では、多発性骨髄腫の治療効果判定について解説します。

治療効果判定の基準である国際骨髄腫作業部会(IMWG)による基準、そしてごくわずかな病変(測定可能残存病変、微小残存病変、MRD)の検査についても記載しています。

多発性骨髄腫の治癒には深い奏効とMRDの陰性化が重要と考えられています。検査の意義を理解していただき、実際の効果判定を行いましょう。

 

多発性骨髄腫の治療効果判定基準 2016 年IMWG基準

2016 IMWG 効果判定基準

多発性骨髄腫の治療効果判定は、国際骨髄腫作業部会(International Myeloma Working Group, IMWG)の基準を用います。このIMWG基準は、新しい発見が続くことから定期的に更新されています。

2020年12月時点での最新の効果判定基準は、2016年IMWG基準です(上図 Lancet Oncol. 2016 Aug;17(8):e328-e346)。

 

効果判定を行うためには治療開始前のM蛋白の量と比較することになります。治療前のM蛋白の量は必須です。

初回治療後の奏効は深ければ深いほど予後は良好です。

化学療法では各サイクルの初日に、M蛋白などの検査を行い奏効を確認します。

自家造血幹細胞移植の効果判定は移植してからおよそ100日後に行います。

 

まずは部分奏効(Partial Response, PR)からです。部分奏効の基準は以下のすべてを満たすことです。

●血清蛋白電気泳動で血清M蛋白が50%以上減少

●24時間蓄尿の尿蛋白電気泳動で尿中のM蛋白が90%以上減少または200 mg未満に減少

●上記2つの基準を2回連続で確認できる(間隔は問わない)

●治療開始前に軟部組織に腫瘤を形成していた場合は、腫瘤が半分以下に縮小している

まれですが治療開始前から血中や尿中にM蛋白がほとんどない場合は、κとλの差が半分以下になることが必要です。

さらにまれですが治療開始前から血中や尿中にM蛋白がほとんどなく、かつκとλの差もほとんどない場合は、骨髄中の形質細胞割合が半分以下になることが必要です。

 

M蛋白の測定は必ず蛋白電気泳動の波形から行います。免疫グロブリンの値で判定してはいけません

治療により以下のようにM蛋白が減少していたとします。

SPEP PR

測定するM蛋白は以下の場所です。

PR M protein

近年の治療では約90%の症例で少なくとも部分奏効に到達します。

 

次に最良部分奏効(Very Good Partial Response, VGPR)です。基準は以下のすべてを満たすことです。

●血清蛋白電気泳動で血清M蛋白が90%以上減少もしくは消失

●24時間蓄尿の尿蛋白電気泳動で尿中のM蛋白が100 mg未満

●上記2つの基準を2回連続で確認できる(間隔は問わない)

●免疫固定法では血液もしくは尿からM蛋白がまだ同定できる

血清のM蛋白は以下のような状態です。

SPEP No M protein

 

次に完全奏効(Complete Response, CR)です。基準は以下のすべてを満たすことです。

免疫固定法で血液にも尿にもM蛋白が2回連続で検出されない

●軟部組織に腫瘤は確認できない

●骨髄穿刺で骨髄中の形質細胞が5%未満である

 

そしてさらに深い奏効として厳密完全奏効(Stringent Complete Response, sCR)というものがあります。基準は以下のすべてを満たすことです。

完全奏効(CR)である

遊離軽鎖の比が2回連続で正常範囲である

●骨髄生検で免疫染色(κ、λ)を行っても、骨髄中には腫瘍性形質細胞がない

 

以前はここまでが効果判定の基準として使用されていました。ここまででも奏効が深ければ深いほど予後が良好であることがわかっています。

 

2013年に報告された臨床研究では、奏効別に予後を比較しました(J Clin Oncol. 2013 Dec;31(36):4529-35)。

その結果、無増悪生存期間完全奏効(CR)に到達した症例では明らかに良好で、そのうち厳密完全奏効(sCR)に到達した症例はさらに良好という結果でした(下図 J Clin Oncol. 2013 Dec;31(36):4529-35)。

多発性骨髄腫の奏効別 無増悪生存期間

全生存期間も、完全奏効(CR)に到達した症例は明らかに良好で、そのうち厳密完全奏効(sCR)に到達した症例はさらに良好という結果でした(下図 J Clin Oncol. 2013 Dec;31(36):4529-35)。

多発性骨髄腫の奏効別 全生存期間

 

VGPRに到達するころから、免疫固定法や遊離軽鎖の検査も行います。免疫固定法が陰性になったあたりで、骨髄穿刺と骨髄生検を行います。

骨髄検査は痛い検査ですが、CRやsCRを確認しておくことは今後のためにも重要ですので、最もよさそうなタイミングで一度行います。何度も行うことは極力避けます。

 

自家移植後も約40%の症例では100日以降もM蛋白が減り続けることがわかっています(Blood. 2013 Sep 5;122(10):1746-9)。特にIgG型の場合は半減期が長いためこのような現象がよく見られます。100日以降もM蛋白が減り続ける症例は予後が良いとされています。

自家移植後の場合は100日効果判定のときにVGPR以上であれば骨髄検査を行ってもよいでしょう。

 

多発性骨髄腫の治療効果判定 測定可能残存病変(MRD) EuroFlow

測定可能残存病変(Measurable Residual Disease, MRD)というものが、2016年の基準で含まれることになりました。微小残存病変とも言いますが、測定可能残存病変という用語のほうが正確であるとして、近年は用いられることが増えています。

 

骨髄中のわずかな病変を確認するための検査は、EuroFlowという高感度フローサイトメトリによる検査と、LymphoSIGHTという多発性骨髄腫細胞の遺伝子配列解析を行う検査があります。このどちらかで骨髄を確認します。

EuroFlowで骨髄中の腫瘍性形質細胞が検出されなければ、Flow MRD陰性と言います。

LymphoSIGHTで骨髄中の腫瘍性形質細胞が検出されなければ、シーケンシングMRD陰性です。

 

このうち日本でも検査可能なのは、EuroFlowです。

EuroFlow検査は欧州で開発された高感度フローサイトメトリ検査で、何百万もの細胞自動解析することでわずかな残存病変を見つける検査です。通常のフローサイトメトリ検査よりもはるかに感度が高いです。

 

EuroFlow検査と生存期間について臨床研究が複数行われています。

2008年に報告された臨床研究は、初回化学療法としてまだサリドマイドやボルテゾミブが使用されていない頃であり、通常の抗がん剤化学療法で初回化学療法を行いその後自家造血幹細胞移植を行った症例を対象として、移植100日後に高感度フローサイトメトリ検査も行いました(Blood. 2008 Nov 15;112(10):4017-23)。

約300症例を解析した結果ですが、高感度フローサイトメトリ検査で多発性骨髄腫細胞が検出されなかった症例は検出された症例とくらべて無増悪生存期間と全生存期間とも統計学的にも明らかに良好でした(下図 左:無増悪生存期間 右:全生存期間)。

多発性骨髄腫 マルチカラーフローサイトメトリ 陽性 vs 陰性 PFS, OS

奏効が良好な症例の予後が良いのは以前よりわかっていることですが、この研究では完全奏効(CR)に到達した約150症例のみでも解析を行いました。

結果、完全奏効に到達した症例でも、高感度フローサイトメトリ検査で多発性骨髄腫細胞が検出されなかった症例は検出された症例とくらべて無増悪生存期間と全生存期間とも統計学的にも明らかに良好でした(下図 左:無増悪生存期間 右:全生存期間)。

多発性骨髄腫 CRのみ マルチカラーフローサイトメトリ 陽性 vs 陰性 PFS, OS

同じ完全奏効(CR)でも、高感度フローサイトメトリ検査で陰性になっている症例のほうが明らかに予後良好です。

 

スペインを中心に開発されていたこの高感度フローサイトメトリ検査は「EuroFlow」と名付けられ、2019年には日本でも行うことができるようになっています。

2019年には初回化学療法をVRd療法で行い自家造血幹細胞移植を行いその後VRd療法を追加で行った症例での前向き臨床研究の結果が出版されました(J Clin Oncol. 2019 Nov 26:JCO1901231.)。

約350症例で解析を行いました。初回VRd療法により28%がEuroFlow検査で陰性に到達し、移植後には42%が陰性に到達しました。

移植後のVRd療法後には45%が陰性に到達していますが、移植後の化学療法については奏効への有効性が乏しいことは以前よりわかっています。

移植後のVRd療法が終了した時点でEuroFlowで陰性に到達している症例は、陽性であった症例よりも、無増悪生存期間と全生存期間とも統計学的にも明らかに良好でした(下図 左:無増悪生存期間 右:全生存期間)。

多発性骨髄腫 EuroFlow 陽性 vs 陰性 PFS, OS

そして、完全奏効に到達した240症例のみでも、EuroFlowで陰性に到達している症例は、陽性であった症例よりも無増悪生存期間と全生存期間とも統計学的にも明らかに良好でした(下図 左:無増悪生存期間 右:全生存期間)。

多発性骨髄腫 CRのみ EuroFlow 陽性 vs 陰性 PFS, OS

この研究では移植100日後時点で最良部分奏効(VGPR)でも約35%でEuroFlow陰性でした。CRでは約70%で陰性でした。

M蛋白が消えるまで時間がかかることがありますので、移植後100日の効果判定時点でVGPRに相当する場合は骨髄検査をEuroFlow検査も含めて行うことを推奨します。

注意点として日本ではEuroFlowの他にマルチカラーフローサイトメトリ検査がありますが、EuroFlowと同等の感度とは言えませんのでご注意ください。

 

多発性骨髄腫の治療効果判定 PET-CTと持続性のMRD陰性

さらに、PET-CTで陰性化することも予後に重要です。

2017年にMRIやPET-CTによる画像の正常化と予後に関する前向きの臨床研究の結果が出版されました(J Clin Oncol. 2017 Sep 1;35(25):2911-2918).

結果、治療後のMRIで正常化してもしなくても無増悪生存期間と全生存期間の改善には関係ありませんでした(下図 左:無増悪生存期間 右:全生存期間)。

多発性骨髄腫 治療後MRI 陽性 vs 陰性 PFS, OS

ところが、治療後にPET-CTで陰性化していることは重要で、PET-CTで陰性化している症例は陽性のままの症例よりも無増悪生存期間と全生存期間は統計学的にも明らかに良好でした(下図 左:無増悪生存期間 右:全生存期間)。

多発性骨髄腫 治療後PET-CT 陽性 vs 陰性 PFS, OS

治療後にPET-CT陰性化している症例のほうが予後は良好です。

 

2016年のIWMGの効果判定基準の時点で、PET-CTについて記載されています(Lancet Oncol. 2016 Aug;17(8):e328-e346)。

骨髄の測定可能残存病変(MRD)が陰性化し、かつPET-CTでも陰性化していると「画像およびMRD陰性」と定義されています。

さらにそれを少なくとも1年以上維持すると、「持続性のMRD陰性」となります。

この「持続性のMRD陰性」を長く保つことが完治には重要と考えられます。

骨髄検査でMRDが陰性であれば、PET-CTも行うことを推奨します。

 

2020年にPET-CT検査の陰性と陽性の基準についてランダム化臨床試験の際に検証した研究結果が出版されました(J Clin Oncol. 2020 Nov 5;JCO2000386)。

2つのランダム化臨床試験では、治療前と維持療法前にPET-CT検査を行っていました。

PET-CTの評価は「Deauville点数」を用いた評価でした。一般にはDeauville点数が3点以下(集積が肝臓以下)だと陰性とされます

初回治療後の維持療法前PET-CT検査で、骨髄でのDeauville点数が3点以下だと、4点以上の症例よりも無増悪生存率も全生存率も良好でした(下図、左 無増悪生存、右 全生存).

多発性骨髄腫 維持療法前PET-CT 骨髄 Deauville score別 PFS OS

初回治療後の維持療法前PET-CT検査で、局所の病変でのDeauville点数が3点以下だと、4点以上の症例よりも無増悪生存率も全生存率も良好でした(下図、左 無増悪生存、右 全生存).

多発性骨髄腫 維持療法前PET-CT 局所病変 Deauville score別 PFS OS

これらの結果は多変量解析を行ってもどちらも重要な予後因子でした。

この研究からPET-CT陰性(CMR)と判定するには骨髄・局所病変のいずれもDeauville点数が3点以下になることと提言されました(下図)。

多発性骨髄腫 治療後PET-CT効果判定基準

当サイトでも多発性骨髄腫の治療後PET-CT検査の効果判定の基準はDeauville点数3点以下を推奨します。

 

次項では多発性骨髄腫の初回治療後の維持療法について解説します。

多発性骨髄腫 HE high
多発性骨髄腫 (MM) 初回治療後の維持療法と経過観察

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まとめ 多発性骨髄腫の治療効果判定と測定可能残存病変(MRD)

多発性骨髄腫の治療効果判定は2016年IMWG基準を用います。奏効が深ければ深いほど予後は良好です。

● 深い奏効を得た症例でも、EuroFlowなどの骨髄の測定可能残存病変(MRD)検査で陰性になっている症例のほうが予後良好です。

● 治療後にPET-CT陰性化している症例のほうが予後は良好です。骨髄の測定可能残存病変(MRD)でもPET-CTでも陰性していると「画像およびMRD陰性」で、さらにそれを少なくとも1年以上維持すると、「持続性のMRD陰性」となります。

参考文献

Kumar S, Paiva B, Anderson KC, et al.
International Myeloma Working Group consensus criteria for response and minimal residual disease assessment in multiple myeloma.
Lancet Oncol. 2016 Aug;17(8):e328-e346.

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Importance of achieving stringent complete response after autologous stem-cell transplantation in multiple myeloma.
J Clin Oncol. 2013 Dec;31(36):4529-35.

Gonsalves WI, Gertz MA, Dispenzieri A, et al.
Implications of continued response after autologous stem cell transplantation for multiple myeloma.
Blood. 2013 Sep 5;122(10):1746-9.

Paiva B, Vidriales MB, Cerveró J, et al.
Multiparameter flow cytometric remission is the most relevant prognostic factor for multiple myeloma patients who undergo autologous stem cell transplantation.
Blood. 2008 Nov 15;112(10):4017-23.

Paiva B, Puig N, Cedena MT, et al.
Measurable Residual Disease by Next-Generation Flow Cytometry in Multiple Myeloma.
J Clin Oncol. 2019 Nov 26:JCO1901231.

Moreau P, Attal M, Caillot D, et al.
Prospective Evaluation of Magnetic Resonance Imaging and [18F]Fluorodeoxyglucose Positron Emission Tomography-Computed Tomography at Diagnosis and Before Maintenance Therapy in Symptomatic Patients With Multiple Myeloma Included in the IFM/DFCI 2009 Trial: Results of the IMAJEM Study.
J Clin Oncol. 2017 Sep 1;35(25):2911-2918.

Elena Zamagni, Cristina Nanni, Luca Dozza, et al.
Standardization of 18 F-FDG-PET/CT According to Deauville Criteria for Metabolic Complete Response Definition in Newly Diagnosed Multiple Myeloma
J Clin Oncol. 2020 Nov 5;JCO2000386. doi: 10.1200/JCO.20.00386.

 

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