多発性骨髄腫(MM) 初回治療での同種造血幹細胞移植

2020-01-15

Multiple myeloma Bone marrow biopsy CD138

 

多発性骨髄腫(MM)に対する自家造血幹細胞移植の有効性は明らかになっています。

本項では、多発性骨髄腫に対する同種造血幹細胞移植について解説します。

急性骨髄性白血病などでは同種造血幹細胞移植の有効性が明らかになっていますが、おなじ血液の悪性腫瘍だからといって、同種造血幹細胞移植が多発性骨髄腫にも有効なのでしょうか?

本項では前向きの臨床試験の結果を確認しながら多発性骨髄腫に対する初回治療での同種造血幹細胞移植の有効性について解説していきます。

 

多発性骨髄腫の初回治療での骨髄破壊的前処置による同種造血幹細胞移植

多発性骨髄腫(MM)に対する初回治療で自家造血幹細胞移植を行うと全生存が改善することが明らかになった後、さらに治療成績を改善する試みが行われてきました。

同種造血幹細胞移植についても臨床試験が行われてきました。

 

「同種造血幹細胞移植」とは、自家造血幹細胞移植と異なり自分ではない人からの造血幹細胞を移植します。自分のものではない血球が移植後に増えてきます。

他者の造血幹細胞を移植すると、その細胞から他者の白血球・赤血球・血小板などが増えてきます。その最大のメリットは多発性骨髄腫細胞に対して、他者の血球による免疫反応が発生し多発性骨髄腫細胞を攻撃することです。移植片対腫瘍効果(GvT効果, Graft-versus-Tumor effect)といいます。

その一方で、同種造血幹細胞移植特有の有害事象として他者の血球による免疫反応により自分の正常な細胞が攻撃されることがしばしばあります。こちらは移植片対宿主病(GVHD, Graft-Versus-Host Disease)といいます。

急性白血病に対して同種造血幹細胞移植が有効であるため、同じ血液悪性腫瘍である多発性骨髄腫にも有効ではないかと考えられました。

同種造血幹細胞移植の場合も、抗がん剤化学療法(および全身放射線照射)からなる移植前処置を行います。

急性白血病では全身状態に特に大きな問題がなければ通常は移植前処置の強度は自家造血幹細胞移植と同等の強度である「骨髄破壊的前処置」を行います。

では、多発性骨髄腫に対して「骨髄破壊的前処置」を用いた同種造血幹細胞移植の治療効果はどのくらいあるのでしょうか?

 

多発性骨髄腫に対して、「骨髄破壊的前処置で同種造血幹細胞移植」「自家造血幹細胞移植」「化学療法のみ」を比較した大規模ランダム化臨床試験が行われ、2006年に結果が出版されました(J Clin Oncol. 2006 Feb 20;24(6):929-36)。

この臨床試験では、「骨髄破壊的前処置で同種造血幹細胞移植」は55歳以下細胞の型(HLA)が一致する兄弟姉妹がいる症例のみで行われました。初回化学療法はVAD療法であった時代です。

「骨髄破壊的前処置」は全身放射線照射12グレイ+大量メルファラン140 mg/m2でした。

ところが、同種造血幹細胞移植は早期中止となりました。移植後3か月以内の死亡率が約50%という非常に悪い結果となったためです(下図)。

多発性骨髄腫 骨髄破壊的前処置 MRD同種造血幹細胞移植 全生存

 

そもそもこの臨床試験が行われる前から、骨髄破壊的前処置による同種造血幹細胞移植は致命的な合併症が非常に多いことが指摘されていました(Blood. 1996 Dec 15;88(12):4711-8)。

臨床試験ではそのことを再確認しただけとなりました。

 

あまりにも高い早期死亡率のため「骨髄破壊的前処置による同種造血幹細胞移植」については初回治療では行わないことを推奨します。

2020年12月時点でのアメリカのNCCNガイドライン(NCCN Guidelines)では、初回治療であろうと再発後であろうと「骨髄破壊的前処置による同種造血幹細胞移植」を行うことは推奨していませんし、もし行う場合は臨床試験に限定するべきであるとしています。

日本血液学会の2018年造血器腫瘍診療ガイドラインでも、初回治療であろうと再発後であろうと「骨髄破壊的前処置による同種造血幹細胞移植」は選択肢に入っていません。

 

多発性骨髄腫の初回治療での自家移植後のミニ同種造血幹細胞移植の有効性

骨髄破壊的前処置での同種造血幹細胞移植は非常に高い早期死亡率のため推奨されない結果となりました。

自家造血幹細胞移植をいったん行ってから、その後に弱い前処置で同種造血幹細胞移植を行うことが検討されました。

 

強度の低い前処置として「骨髄破壊的前処置」というものがあります。

「骨髄非破壊的前処置」はリンパ球を減らすことはできますがその他の血球の減少は軽度で、たとえ移植をしなくても自分の血球が3週間くらいで回復するような移植前処置です。

「骨髄非破壊的前処置」そのものは多発性骨髄腫に対してほとんど無効で、移植した他者の血球による移植片対腫瘍効果(GvT効果)を主な治療の目的とします。

自家造血幹細胞移植をいったん行って多発性骨髄腫細胞を減らしておき、その後に「骨髄非破壊的前処置」で同種造血幹細胞移植を行う治療方法について、複数の臨床試験が行われました。

 

自家造血幹細胞移植を2回連続で行う「タンデム自家造血幹細胞移植」「自家造血幹細胞移植を行ってから全身放射線照射2グレイのみを前処置として同種造血幹細胞移植」を比較した前向きの臨床試験の結果が2007年に出版されました(N Engl J Med. 2007 Mar 15;356(11):1110-20)。

7年の長期追跡の結果も出版されています(Blood. 2011 Jun 16;117(24):6721-7)。

細胞の型が一致する兄弟姉妹が存在する症例は同種移植群に、存在しない場合はタンデム自家移植群に振り分けとなりました。初回化学療法はVAD療法の時代です。

結果、無増悪生存期間の中央値はタンデム自家移植群で2.4年であったの対して、自家移植→骨髄非破壊的前処置同種移植群では2.8年であり、統計学的にも明らかに改善がみられました(下図, p=0.005)。

多発性骨髄腫 tandem Auto vs Auto NMA allo, EFS

そして全生存期間の中央値はタンデム自家移植群で4.25年であったの対して、自家移植→骨髄非破壊的前処置同種移植群では未到達であり、統計学的にも明らかに改善がみられました(下図, p=0.001)。

多発性骨髄腫 tandem Auto vs Auto NMA allo, OS

 

2011年には、「自家造血幹細胞移植を行ってから全身放射線照射2グレイ+フルダラビンを前処置とした同種造血幹細胞移植」「自家造血幹細胞移植を1回または2回」の前向きの臨床試験の結果が報告されました(J Clin Oncol. 2011 Aug 1;29(22):3016-22)。

2013年には8年の長期追跡の結果も出版されています(Blood. 2013 Jun;121(25):5055-63)。

細胞の型が一致する兄弟姉妹が存在する症例は同種移植群に、存在しない場合は自家移植群に振り分けとなりました。初回化学療法はまだVAD療法の時代です。

完全奏効率は自家移植群で41%でしたが、自家移植→同種移植群では51%と、統計学的にも明らかに同種移植群のほうが良好でした(p=0.02).

8年無増悪生存率は自家移植群で12%であったのに対して、自家移植→同種移植群では22%と、統計学的にも明らかに同種移植群のほうが良好でした(下図, p=0.027).

多発性骨髄腫 Auto vs Auto NMA, PFS

さらに、8年全生存率は自家移植群で36%であったのに対して、自家移植→同種移植群では49%と、同種移植群では統計学的にも明らかに同種移植群のほうが良好でした(下図, p=0.030).

多発性骨髄腫 Auto vs Auto NMA, OS

 

以上から、自家造血幹細胞移植後に骨髄非破壊的前処置で細胞の型が一致する兄弟姉妹から同種造血幹細胞移植をおこなうと、自家造血幹細胞移植を1~2回行うよりも生存が良好であると考えられました。

 

多発性骨髄腫の初回治療での自家移植後のミニ同種造血幹細胞移植への疑問

2011年末に、2007年の臨床試験の倍以上の人数で、「タンデム自家造血幹細胞移植」と「自家造血幹細胞移植を行ってから全身放射線照射2グレイのみを前処置として同種造血幹細胞移植」を比較した大規模な前向きの臨床試験が行われた結果が出版されました(Lancet Oncol. 2011 Dec;12(13):1195-203)。

2019年には10年の長期報告がでています(Biol Blood Marrow Transplant. 2019 Nov 19. doi: 10.1016/j.bbmt.2019.11.018.)。このころの初回化学療法はサリドマイドが最も多く行われました。

標準リスク高リスクに分けて解析が行われました。

標準リスクでの10年無増悪生存率は自家移植群で19%、自家移植→同種移植群では18%であり、あきらかな差はありませんでした(下図)。

多発性骨髄腫 Auto Auto vs Auto NMA Allo, PFS

標準リスクでの10年全生存率は自家移植群で43%、自家移植→同種移植群では44%であり、あきらかな差はありませんでした(下図)。

多発性骨髄腫 Auto Auto vs Auto NMA Allo, OS

高リスク群では10年無増悪生存率は自家移植群で4%、自家移植→同種移植群では21%であり、明らかに同種造血幹細胞移植群が良好でした(p=0.03)が, 10年全生存率は自家移植群で29%、自家移植→同種移植群で37%であり、あきらかな差はありませんでした(p=0.45)。

大規模に行うと再現性が失われたのです。たとえ高リスクでも生存の改善はみられませんでした

 

さらに2012年には「自家造血幹細胞移植1回」「自家造血幹細胞移植を行ってから全身放射線照射2グレイのみを前処置として同種造血幹細胞移植」を比較した前向きの臨床試験の結果が出版されました(Blood. 2012 Jun 28;119(26):6219-25)。

初回化学療法はVAD療法もしくはサリドマイドを含む化学療法です。

結果はやはり無増悪生存期間も全生存期間もあきらかな差はありませんでした(下図)。

多発性骨髄腫 HOVON Auto vs Auto NMA Allo, PFS

多発性骨髄腫 HOVON Auto vs Auto NMA Allo, OS

立て続けに再現性が認められませんでした。

同種造血幹細胞移植はたとえ骨髄非破壊的前処置であったとしても、自家造血幹細胞移植2回よりも有害事象も移植関連死亡率も高いため、長期的に全生存期間が同等であれば、同種造血幹細胞移植は行わないほうがよいと考えられます。

 

「骨髄非破壊的前処置」と「骨髄破壊的前処置」の中間の強度である「強度減弱前処置」というものがあります。

「ミニ同種造血幹細胞移植」「強度減弱前処置」もしくは「骨髄非破壊的前処置」を用いた同種造血幹細胞移植のことを言います。

 

高リスクの多発性骨髄腫限定で、「自家造血幹細胞移植後に強度減弱前処置による同種造血幹細胞移植」「タンデム自家造血幹細胞移植」を比較した前向きの臨床試験の結果の結果が2019年に出版されています(Leukemia. 2019 Nov;33(11):2710-2719)。

およそ7年半の追跡の結果です。

結果、無増悪生存期間の中央値は「タンデム自家造血幹細胞移植」群で21.8か月であったのに対して、「自家移植→強度減弱前処置同種移植」群では34.5か月と、統計学的にも明らかに同種移植群のほうが良好でした(下図).

多発性骨髄腫 Auto Auto vs Auto RIC allo, PFS

しかしながら、全生存期間の中央値は「タンデム自家造血幹細胞移植」群で71.8か月、「自家移植→強度減弱前処置同種移植」群で70.2か月であり、有意な差はありませんでした(下図)。

多発性骨髄腫 Auto Auto vs Auto RIC allo, OS

致命的な合併症がやはり同種移植群で明らかに多くみられました。

 

以上から「自家造血幹細胞移植後にミニ同種造血幹細胞移植」という治療方法は、自家造血幹細胞移植を1~2回行うよりも生存が良好であるとは言えない状況になっています。

それがサリドマイドなどの登場による影響かどうかは明らかではありません。

初回治療では「自家造血幹細胞移植後にミニ同種造血幹細胞移植」を行わないことを推奨します。

 

2020年12月時点でのアメリカのNCCNガイドライン(NCCN Guidelines)では、初回治療であろうと再発後であろうと「自家造血幹細胞移植後にミニ同種造血幹細胞移植」は臨床試験に限定するべきであるとしています。

 

日本血液学会の2018年造血器腫瘍診療ガイドラインでも、初回治療で「自家造血幹細胞移植後にミニ同種造血幹細胞移植」は、「十分な根拠はなく研究的治療である」として推奨はしていません。

 

次項では、多発性骨髄腫の造血幹細胞採取について解説します。

造血幹細胞採取スケジュール プレリキサホル先制使用
多発性骨髄腫 (MM) の自家造血幹細胞採取

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まとめ 多発性骨髄腫 初回治療での同種造血幹細胞移植

● 致命的な合併症が多いことから多発性骨髄腫に対して「骨髄破壊的前処置による同種造血幹細胞移植」は初回治療では行わないことを推奨します。

● 自家造血幹細胞移植後に骨髄非破壊的前処置で細胞の型が一致する兄弟姉妹から同種造血幹細胞移植をおこなうと、自家造血幹細胞移植を1~2回行うよりも生存が良好であるという結果が初期にはでていました。

● しかしその後サリドマイドなどの登場もあってか、大規模前向きの臨床試験を含めて有効性は確認できない結果が続き、同種移植が有効とは言えない状況となっています。合併症が多いことから初回治療で「自家造血幹細胞移植後にミニ同種造血幹細胞移植」を行わないことを推奨します。

参考文献

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Autologous haemopoietic stem-cell transplantation followed by allogeneic or autologous haemopoietic stem-cell transplantation in patients with multiple myeloma (BMT CTN 0102): a phase 3 biological assignment trial.
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Allogeneic transplantation in multiple myeloma: long-term follow-up and cytogenetic subgroup analysis.
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