多発性骨髄腫(MM)の診断基準と鑑別診断

2019-12-29

IMWG updated criteria 2014

 

多発性骨髄腫(MM)の診断は2020年12月時点では「2014年改訂IMWG診断基準」というものを用います。本項ではこの「2014年改訂IMWG診断基準」について解説していきます。

今までの検査結果をふまえて診断を行うのですが、多発性骨髄腫は研究が盛んな疾患で次々と新しいことがわかってきているため、診断基準も改訂が行われています。

さらにその類似疾患の研究も進んでいます。多発性骨髄腫の類似疾患は場合によっては診断や区別が難しくなる時がありますが、診断というのは治療と予後に直接関連するため、正確であることが求められます。

本項では類似疾患の診断についても触れていきます。

 

多発性骨髄腫の診断 IMWG基準 骨髄腫瘍性形質細胞10%以上 形質細胞腫

IMWG updated criteria 2014

多発性骨髄腫(MM)の診断は2020年時点では、国際骨髄腫作業部会(International Myeloma Working Group, IMWG)による「2014年改訂IMWG診断基準」に基づいて行います(Lancet Oncol. 2014 Nov;15(12):e538-e548)。

多発性骨髄腫の診断についても、毎年のように新しいことがわかってきており、診断基準は定期的に改訂されています。骨髄中の形質細胞は10%以上というのが必須となりました。

「2014年改訂IMWG診断基準」では、多発性骨髄腫と診断するためには、まず以下のいずれかが必要です。

● 骨髄中に腫瘍性の形質細胞を10%以上認める

または

● 骨性または軟部組織の形質細胞腫を生検で認める

 

骨髄中の形質細胞は、可能であれば骨髄生検の病理標本で行うことが推奨されています。骨髄穿刺吸引と骨髄生検で形質細胞割合が異なる場合は、多いほうを用います

診断の際の骨髄中の形質細胞の割合については、フローサイトメトリを用いてはいけません。

腫瘍性かどうかについては、免疫染色やフローサイトメトリなどでκかλのいずれかに圧倒的に偏って染まることが必要です。

 

「フローサイトメトリ」は骨髄穿刺吸引で採取した骨髄液に対する検査の一つです。

形質細胞や多発性骨髄腫細胞の表面にはCD38CD138という特徴的な蛋白が発現しています。骨髄液に含まれている細胞をこれらの蛋白の陽性度に応じて、区別することができます。

下図ではCD38とCD138の両方が陽性になっている細胞集団を確認できます。

骨髄液フローサイトメトリ 形質細胞 CD38 CD138

この細胞集団の割合も算出できるのですが、信頼性が確立されていないため、「2014年改訂IMWG診断基準」では、このフローサイトメトリの形質細胞割合は用いてはいけません。

腫瘍性かどうかの判定にフローサイトメトリを用いることは可能です。上図の形質細胞集団をさらに、κやλの陽性度に応じて分けることができます。腫瘍性の場合は、圧倒的にどちらかに偏ります。

下図の場合はλ型の腫瘍性の形質細胞です。

骨髄液フローサイトメトリ 形質細胞 kappa lambda

多発性骨髄腫は、腫瘤を形成するときがあります。骨から飛び出しているようなときもあれば、骨と全くくっついていないときもあります。

その腫瘤の一部を採取することを「生検」と言います。

腫瘤を生検し、顕微鏡でみたときに、腫瘍性の形質細胞が多数認められれば「形質細胞腫」と判断します。腫瘍性なのでκかλのいずれかに圧倒的に偏っています。

 

この時点で、基準を満たしていなければ多発性骨髄腫と診断することはできません。満たしている場合は、以下の項目に続きます。

 

多発性骨髄腫の診断 IMWG基準 CRABとSLiM

IMWG criteria 2014 Multiple myeloma

2014年の改訂では腎障害基準の変更やSLiM基準が追加されるなどの変更がありました。

多発性骨髄腫と診断するためには、さらに多発性骨髄腫細胞が原因と推測される以下のいずれかが必要です。

● 血中カルシウム濃度が正常上限よりさらに1 mg/dLを超える、もしくは11 mg/dLを超える

● クレアチニンクリアランスが40 mL/min未満、もしくは血清クレアチニンが2 mg/dLを超える

● ヘモグロビン値が正常下限よりさらに2 g/dL低い、もしくは10 g/dL未満

● 5mm以上の溶骨病変が全身骨レントゲンやCTやPET-CTで1つ以上ある

● 骨髄中に腫瘍性の形質細胞を60%以上認める

● 血中の遊離軽鎖比が100以上である

● MRI検査で5mm以上の骨病変が2つ以上ある

 

前半の4つはCRABとよばれる基準です(Calcium, Renal insufficiency, Anemia, Bone lesions)

注意点として、2014年の改訂で圧迫骨折や骨粗鬆症は除外されました。5mm以上の溶骨病変が必須です。高齢者は多発性骨髄腫でなくても、圧迫骨折や骨粗鬆症が多いためです。

また2014年の改訂で、腎機能障害の基準が変わり、「クレアチニンクリアランス」を用いてもよいことになりました。クレアチニンクリアランスは蓄尿で測定してもよいですし、採血のクレアチニンの値から、MDRDと呼ばれる計算式で算出してもよいとなりました。

 

後半の3つは、2014年の改訂で追加されたSLiMと呼ばれる基準です(Sixty, Light chains, MRI)。CRABがなくても、SLiMがあればよいと変更されています。

合わせてSLiM CRAB(スリムクラブ)とよびます。

 

ここまでで、「2014年改訂IMWG診断基準」に基づいた多発性骨髄腫の診断は可能になります。

ただし多発性骨髄腫と似たような疾患がいくつか存在するため、その除外を必ず行います。別疾患の診断基準を同時に満たす場合やCRABの原因が他にある場合などもあります。

診断によって治療方法が変わりますので、診断は極力間違うことがないようにする必要があります。

以下、類似疾患の可能性について解説していきます。

 

多発性骨髄腫の診断 類似疾患の可能性の確認

意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(Monoclonal gammopathy of undetermined significance, MGUS)という疾患があります。エムガスと呼びます。

MGUSというのは、腫瘍性の形質細胞が骨髄中に数%見られ、とくに障害を起こしていない状態をいいます。健常人でも1~2%みられますが、70歳以上では約5%と、高齢になるほど増えていきます。

問題は、CRABが別の理由で見られる時です。

例えば、糖尿病は多くの方がかかる病気ですが、長く糖尿病を患っていると、腎機能障害や貧血(腎性貧血)が生じてきます。そのような方がMGUSも持っていると、本当にただのMGUSなのか、それとも多発性骨髄腫なのかわかりにくくなります。

MGUSの場合は以下の基準すべてを満たす必要があります

●血液中のM蛋白が存在するが3 g/dL未満、または尿中のM蛋白が存在するが24時間蓄尿で500 mg未満
●骨髄中の腫瘍性の形質細胞が10%未満
●腫瘍性の形質細胞によるSLiM CRABやアミロイドーシスがない

 

この一番下のCRABが糖尿病などの別の理由で存在した時でも、上の3つを満たしていればMGUSです。

MGUSの場合は、骨髄生検でも腫瘍性の形質細胞が10%未満であることを確認する必要があります。骨髄液の塗抹標本では診断にはほとんど無意味です。

下図の場合は塗抹標本で形質細胞は1.4%でしたが、骨髄生検では約8%です。

MGUS 骨髄生検 CD138

このようなことがよくあるため、2014年の改訂では「骨髄中の腫瘍性の形質細胞は10%以上」となりました。MGUSでも、1年に1%くらいの症例は多発性骨髄腫などに進行しますので通院は必要です。

 

 

孤立性形質細胞腫という疾患は、形質細胞腫が体内のどこかに存在しているが、SLiM CRABはないという疾患です。MGUSより多発性骨髄腫に進行しやすいです。

以下の基準すべてを満たす必要があります

●生検で形質細胞腫をみとめる
●形質細胞腫病変の他には、全身骨レントゲン、CT、MRIで異常を認めない
●骨髄中の腫瘍性の形質細胞が10%未満
●腫瘍性の形質細胞によるSLiM CRABやアミロイドーシスがない

この一番下のCRABが糖尿病などの別の理由で存在した時でも、上の3つを満たしていれば孤立性形質細胞腫です。通院は必要です

 

 

くすぶり型多発性骨髄腫(無症候性多発性骨髄腫)は腫瘍性形質細胞が多いけれどもSLiM CRABがない状態をいいます。診断基準としては、以下の基準の両方を満たす必要があります。

●IgG型もしくはIgA型の血清M蛋白が3 g/dL以上、または24時間蓄尿M蛋白が500 mg以上、または骨髄中の腫瘍性の形質細胞が10%以上60%未満
●腫瘍性の形質細胞によるSLiM CRABやアミロイドーシスがない

ところが、一番下のCRABが糖尿病などの別の理由で存在した時は診断が極めて難しくなります。とくに貧血や腎機能障害だけの場合は、くすぶり型多発性骨髄腫なのか症候性の多発性骨髄腫なのか区別はつきません

そのような場合は現時点では区別不能となり、診断技術の限界といえます。多発性骨髄腫として対処することになります。

 

ALアミロイドーシスという指定難病となっている疾患があります。

多発性骨髄腫と似ている点は、腫瘍性の形質細胞が原因となる病気であることです。

多発性骨髄腫と異なる点は、アミロイドという異常蛋白が体内のどこかで検出され、それが原因で臓器障害を起こしていることです。

ALアミロイドーシスと診断するためには、以下の基準すべてを満たす必要があります.

●生検でアミロイド沈着をCongo red染色により確認できる
●そのアミロイドがκかλ由来であることを質量分析や免疫電子顕微鏡などで確認できる
●アミロイド沈着による臓器障害がある(腎臓、肝臓、心臓、消化管、末梢神経など)
●血液や尿でM蛋白が検出される、または遊離軽鎖比が異常である、または腫瘍性の形質細胞が骨髄中に確認できる

ALアミロイドーシスと多発性骨髄腫は異なる疾患です。治療方法も予後も異なります。

ただし、ALアミロイドーシスの診断時に、多発性骨髄腫の診断基準も同時に満たしてしまうことがあります。とくに腎機能障害や貧血はALアミロイドーシスでも起こりえます。骨髄中の腫瘍性の形質細胞は10%を超えることが良くあります。場合によっては60%を超える場合もありSLIM CRABに相当してしまいます。

このような場合の診断はALアミロイドーシスです。

高カルシウム血症がある場合やCT・レントゲンで溶骨病変がある場合は、多発性骨髄腫を合併したALアミロイドーシスとなります。

逆に多発性骨髄腫の診断基準を満たしていても、それだけでは説明のつかないようなアミロイド沈着による臓器障害を疑わせる所見があれば、かならずALアミロイドーシスの可能性を考えます。

多発性骨髄腫とは治療方法も予後も異なりますので正確な診断が必須です。

 

 

形質細胞性白血病という疾患があります。

多発性骨髄腫と類似していて、腫瘍性の形質細胞が増殖する疾患です。多発性骨髄腫よりも予後は不良とされます。形質細胞性白血病の診断には以下の基準のいずれかを満たす必要があります。

●採血で末梢血の腫瘍性の形質細胞が2000 /μLを超える
または
●採血で末梢血の腫瘍性の形質細胞が、総白血球のうち20%以上を占める

形質細胞性白血病も診断時点で多発性骨髄腫の診断基準を満たしてしまう場合があります。この場合の診断は「形質細胞性白血病」です。

非常にややこしいことに、多発性骨髄腫の症例で再発を繰り返していくと、多発性骨髄腫細胞が進化し形質細胞性白血病の診断基準を満たすようになってしまうことがあります。その場合は「多発性骨髄腫」の診断に変わりはなく、「二次性形質細胞性白血病」化したといいます。

区別をはっきりするために最初から形質細胞性白血病の場合を「原発性形質細胞性白血病」とも呼びます。

 

 

POEMS症候群という非常に頻度の低い指定難病があります。

POEMS症候群の診断基準は複雑です。以下のすべてを満たす必要があります。

●末梢神経障害がある
●腫瘍性の形質細胞が認められる(ほぼ全例λ型)
●硬化性骨病変、キャッスルマン病、Vascular Endothelial Growth Factor Aの上昇、のいずれかがある(大基準)
●臓器腫大、体液過剰、糖尿病と甲状腺機能低下症を除く内分泌異常、皮膚変化、視神経乳頭浮腫、血小板増加・赤血球増加、のいずれかがある(小基準)

POEMS症候群でも、診断時に多発性骨髄腫の基準を満たしてしまうことがありますが、その場合は「POEMS症候群」です。

また逆に、多発性骨髄腫の診断基準を満たしたとしても、それだけでは説明不能な末梢神経障害があるλ型の症例では、POEMS症候群の可能性を考え、大基準と小基準の検査を行います。

なお、κ型のPOEMS症候群は極めてまれです。POEMS症候群自体がまれで、かつほぼ全例でλ型です。κ型のPOEMS症候群が疑われたとしても、POEMS症候群ではない可能性がかなり高いといえます。

 

 

原発性マクログロブリン血症・リンパ形質細胞性リンパ腫という疾患があります。

これらは通常はIgM型のM蛋白があって、骨に病変がなく、増えているのは腫瘍性B細胞なので診断にはあまり困りません。

しかしまれに、IgG型、IgA型、BJP型のM蛋白を持つリンパ形質細胞性リンパ腫が存在します。これは慢性リンパ性白血病など、他のB細胞性腫瘍でもありえます。

骨髄中の腫瘍性の形質細胞が少ないときは、B細胞性リンパ腫の可能性を考える必要があります。リンパ形質細胞性リンパ腫などは、多発性骨髄腫とは治療も予後も全く異なります。診断をきちんと行うことが重要です。

 

以上のように多発性骨髄腫の診断は、必ずしも簡単とは言えません。他の疾患との関連で非常にややこしくなる場合があります。しかし診断が異なると、治療も予後も異なるので、可能な限り正確に診断をすすめていくことが重要です。

 

次項では多発性骨髄腫のステージと予後について解説します。

多発性骨髄腫 治癒率 multiple myeloma Cured fraction 14.37%
多発性骨髄腫 (MM) 予後とステージ分類

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まとめ 多発性骨髄腫の診断基準と鑑別診断

● 多発性骨髄腫の診断は「2014年改訂IMWG診断基準」に基づいて行います。

● 腫瘍性形質細胞の基準を満たしたら、SLiM CRABの基準も満たす必要があります。

● 多発性骨髄腫と似たような疾患が存在するため、その確認と除外を必ず行います。

参考文献

International Myeloma Working Group updated criteria for the diagnosis of multiple myeloma.
Lancet Oncol. 2014 Nov;15(12):e538-e548.

 

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