多発性骨髄腫 (MM)の診断のための検査 画像検査と骨髄検査

2019-12-27

多発性骨髄腫細胞 骨髄液塗抹標本 Giemsa 強拡大

 

本項では多発性骨髄腫(MM)の診断のための検査のうち、CTやMRIなどの画像検査骨髄検査について解説します。

多発性骨髄腫は血液内科の悪性腫瘍の中では比較的頻度の高い疾患です。画像検査についても新しいことがだんだんわかってきています。

骨髄検査は多発性骨髄腫の必須の検査です。骨髄中の腫瘍細胞についても新しいことがわかってきており、それに基づいて診断基準も変わってきています。正確な骨髄検査とその解釈が重要です。

本項では、国外の文献を中心に参照しながら解説しています。国際骨髄腫作業部会(International Myeloma Working Group, IMWG)の診断基準にも少し触れつつ解説しています。

どのような画像検査を行うのか、骨髄検査はどのように行い、どのように見ていくのかについて見通しがつくでしょう。

 

多発性骨髄腫の診断 画像検査 (全身骨レントゲン、CT、MRI、PET-CT)

多発性骨髄腫(MM)の骨の病変をみるのに以前は「全身骨レントゲン検査」で十数枚のレントゲン撮影を行い、骨が溶かされているようにみえる箇所を“Punched out lesion”と呼んで、骨病変として確認していました。

 

多発性骨髄腫の診断時に「全身骨レントゲン検査」で、骨病変と判定できる症例は、およそ60%の症例です(Haematologica. 2007 Jan;92(1):50-5, J Clin Oncol. 2007 Mar 20;25(9):1121-8)。

たとえ痛みや骨病変があってレントゲン検査を行っても、異常が見つからないということもあります(下図 椎骨と骨盤 J Clin Oncol. 2007 Mar 20;25(9):1121-8)。

多発性骨髄腫 レントゲン

ところがMRI検査を行うと、レントゲン検査よりも高確率で骨病変を検出できます。多発性骨髄腫の診断時のおよそ70%~90%で検出可能です。上図と同部位のMRI検査では下図のようになります(下図 椎骨と骨盤 J Clin Oncol. 2007 Mar 20;25(9):1121-8)。

多発性骨髄腫 MRI 骨髄腫病変

MRI検査で見つかる骨病変は多ければ多いほど、長期的な生存にも影響します。骨病変が7つを超えると、統計学的にも明らかに全生存率が低下します(下図 p=0.0001, J Clin Oncol. 2007 Mar 20;25(9):1121-8)

多発性骨髄腫 MRI 骨髄腫病変数と全生存

PET-CTでも多発性骨髄腫の診断時には約70%の骨髄腫病変の検出率です(Haematologica. 2007 Jan;92(1):50-5)。

全身骨レントゲン検査よりもCTやPET-CTのほうが病変を見つけやすいです(Blood Cancer J. 2017 Aug 25;7(8):e599)。椎体や骨盤については、CTやPET-CTよりもMRIのほうが骨病変を見つけやすいです。

 

CTあるいは全身骨レントゲン検査で骨髄腫病変がない場合でも、MRI検査を行い病変を確認することを推奨します

骨髄腫病変がCTあるいは全身骨レントゲン検査で明らかな場合、MRI検査は必須ではありません。PET-CTも診断時には必須ではありません。

国際骨髄腫作業部会(IMWG)の提唱でも同様の推奨です(J Clin Oncol. 2015 Feb 20;33(6):657-64, Lancet Oncol. 2017 Apr;18(4):e206-e217)。

 

多発性骨髄腫の診断 骨髄検査(骨髄穿刺吸引・骨髄生検)の実施

多発性骨髄腫と診断するためには、骨髄検査は必須です。

骨髄というのは骨の内部で、血液を造っている(造血している)部位です。この骨髄に多発性骨髄腫細胞は集まりやすいです。

骨髄検査では、骨盤の腸骨という骨に針を刺して、骨髄の液体(骨髄液)を吸引したり、一部を削り取ったりします。骨髄液を吸引する検査を骨髄穿刺吸引、骨髄の一部を削り取る検査を骨髄生検といいます。

 

骨髄検査を行うときは、うつ伏せになって背骨よりやや外側の骨盤の骨(腸骨)に針を刺します。骨髄穿刺と骨髄生検を合わせても検査そのものは通常10分くらいで終了します。骨髄穿刺吸引で骨髄液を吸引する一瞬は局所麻酔をしていても結構な痛みを伴います

骨髄検査についての詳細は、「骨髄検査(骨髄穿刺吸引・骨髄生検)の手技の実際 痛みや安全性は?」をご覧ください。

 

多発性骨髄腫の診断のために骨髄検査を行う場合は、骨髄穿刺吸引だけでなく、骨髄生検も行うことを推奨します。多発性骨髄腫細胞の割合は骨髄生検で採取した検体が最も正確です。

骨髄検査終了後は仰向けになってしばらく安静にします。

 

骨髄検査の項目はいくつかあり、全部の結果がわかるには少なくとも数日はかかります。

骨髄液の塗抹標本は検査後数時間で結果が分かります。骨髄液をスライドガラスに塗抹して、簡単な染色をして、顕微鏡でみるだけの簡単なものです。

骨髄検査で採取した検体は、塗抹標本だけでなく、病理検査・免疫染色、フローサイトメトリ、染色体検査、FISH検査など様々な検査に提出します。

 

骨髄中の腫瘍性形質細胞(多発性骨髄腫細胞) 塗抹標本と病理標本

多発性骨髄腫では、形質細胞に類似した細胞が腫瘍性に増殖します

診断時は形質細胞に似ていますが、再発を繰り返すたびに形態が崩れていって形質細胞かどうかもわからなくなることもあります。

 

骨髄液の塗抹標本での正常な形質細胞は楕円形で青みがかった細胞です。細胞の中には核という丸く濃い構造物がありますが。形質細胞の場合は、核は真ん中ではなく、やや外側にずれており、各のそばには核周囲明庭という少し白っぽい箇所がみられます。

ところが、多発性骨髄腫細胞となると、正常な形質細胞に形態は似ているときもありますが、形態が崩れたものも多くみられます(下図 Giemsa染色)。

多発性骨髄腫細胞 骨髄液塗抹標本 Giemsa 強拡大

骨髄液の塗抹標本では、正常な形質細胞も多発性骨髄腫細胞も「形質細胞」として数え、その割合を出します。核のある細胞を500個数えます。1個の細胞は0.2%に相当します。

骨髄液塗抹標本での「形質細胞」の割合は、骨髄生検と比べると低めに出ることがほとんどです。したがって、塗抹標本での「形質細胞」の割合は参考程度に考えてください。

 

採取した検体をホルマリンに漬けて固めた後、さらに固定して薄切・染色した標本を「病理標本」と言います。骨髄液の病理標本を顕微鏡でみると下図のようになります(骨髄液 HE染色)。

多発性骨髄腫 multiple myeloma 骨髄液病理標本 HE染色

骨髄液の病理標本では、骨髄液の塗抹標本と比べて、細胞の形態はわかりにくくなります。形態だけで形質細胞と判断することは、一部ではできても全部の細胞で行うことは困難です。

そのため、形質細胞と判断するために免疫染色という染色を行います。形質細胞はCD138と呼ばれる細胞の表面の蛋白を持っていることが特徴的であるため、CD138を免疫染色で染めます

すると下図のように、どれが形質細胞か一目瞭然になります。細胞の淵がそまっているものが形質細胞です(下図、形質細胞は約40%)。

多発性骨髄腫 multiple myeloma 骨髄液病理標本 CD138免疫染色

このとき、正常な形質細胞も多発性骨髄腫細胞も「形質細胞」として見ています。

この「形質細胞」が正常なのか多発性骨髄腫細胞なのか判定するために、さらに免疫染色を行います。

多発性骨髄腫は腫瘍性疾患なので、増えている細胞はκ型かλ型のいずれかです。どちらかが圧倒的に多くなります。たとえばIgG-κ型の多発性骨髄腫では、κ型の「形質細胞」だけが腫瘍として増殖しています。

正常な形質細胞はκとλはおよそ2:1になります。

したがって、κに対する免疫染色とλに対する免疫染色の両方を行い比較すれば、CD138に染まっている「形質細胞」が正常か腫瘍かはっきりします。

κとλは免疫グロブリンの一部で軽鎖と呼ばれるものです。形質細胞の表面と内部の両方に染まります。下図ではκに染まっている細胞はほとんどなく、λに染まっている細胞がCD138に染まっている細胞と同じくらい見られています。

多発性骨髄腫 multiple myeloma 骨髄液病理標本 kappa lambda 免疫染色

上図ではλ型の腫瘍性形質細胞(多発性骨髄腫細胞)と判定できます。

 

骨髄生検の病理標本では、多発性骨髄腫細胞の割合が最も多くみられることがよくあります。血液が混入することが少ないためです。

上図は全て同じ症例ですが、骨髄生検では下図のように見えます。形質細胞は60~70%くらいです。やや大きめの細胞はほとんど多発性骨髄腫細胞です。

多発性骨髄腫 multiple myeloma 骨髄生検 病理標本 HE染色

同じ症例でも、骨髄生検の病理標本で60%もの多発性骨髄腫細胞がありながら、骨髄液の病理標本では40%くらい、骨髄液の塗抹標本では15%くらいになってしまっています。

 

腫瘍性形質細胞の割合は多発性骨髄腫の診断に極めて重要です

腫瘍性形質細胞の割合は、骨髄穿刺吸引と骨髄生検の結果で一番多いものを用いることを推奨します。

国際骨髄腫作業部会(IMWG)の診断基準でもそのように記載されています(Lancet Oncol. 2014 Nov;15(12):e538-e548)。

 

次項では、多発性骨髄腫の診断基準について解説します。

IMWG updated criteria 2014
多発性骨髄腫(MM)の診断基準と鑑別診断

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まとめ 多発性骨髄腫の診断のための検査 画像検査と骨髄検査

MRI検査はレントゲン検査やCTよりも高確率で骨病変を検出できます。CTあるいは全身骨レントゲン検査で骨髄腫病変がない場合でも、MRI検査を行い病変を確認することを推奨します。

多発性骨髄腫と診断するためには、骨髄検査は必須です。多発性骨髄腫の診断のためには、骨髄穿刺吸引だけでなく、骨髄生検も行うことを推奨します。

● 多発性骨髄腫では形質細胞に類似した細胞が腫瘍性に増殖します。病理標本では形質細胞と判断するためにCD138免疫染色を行います。κに対する免疫染色λに対する免疫染色の両方を行い比較すれば腫瘍性形質細胞かどうかわかります。腫瘍性形質細胞の割合は、骨髄穿刺吸引と骨髄生検の結果で一番多いものを用いることを推奨します。

参考文献

A prospective comparison of 18F-fluorodeoxyglucose positron emission tomography-computed tomography, magnetic resonance imaging and whole-body planar radiographs in the assessment of bone disease in newly diagnosed multiple myeloma.
Haematologica. 2007 Jan;92(1):50-5.

Magnetic resonance imaging in multiple myeloma: diagnostic and clinical implications.
J Clin Oncol. 2007 Mar 20;25(9):1121-8.

Whole-body computed tomography versus conventional skeletal survey in patients with multiple myeloma: a study of the International Myeloma Working Group.
Blood Cancer J. 2017 Aug 25;7(8):e599.

Role of magnetic resonance imaging in the management of patients with multiple myeloma: a consensus statement.
J Clin Oncol. 2015 Feb 20;33(6):657-64.

Role of 18F-FDG PET/CT in the diagnosis and management of multiple myeloma and other plasma cell disorders: a consensus statement by the International Myeloma Working Group.
Lancet Oncol. 2017 Apr;18(4):e206-e217.

International Myeloma Working Group updated criteria for the diagnosis of multiple myeloma.
Lancet Oncol. 2014 Nov;15(12):e538-e548.

 

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