多発性骨髄腫 (MM) 診断と治療の概要

2020-02-07

多発性骨髄腫 CD138染色

 

多発性骨髄腫 (Multiple myeloma, MM)は、白血球の中の形質細胞と類似した細胞が腫瘍性に増殖する疾患の一つです。

血液内科の悪性腫瘍では比較的頻度が高く、年間で10万人あたりおよそ6~7人発症します。すべての悪性腫瘍のおよそ1%を占めます。

高齢者に多く発症年齢の中央値はおよそ70歳です。

 

形質細胞とは、リンパ球の一種であるB細胞がさらに成熟・分化した細胞です。抗体を分泌し、免疫機能の一部を構成します。

多発性骨髄腫はB細胞(もしくは形質細胞)が腫瘍化し、形質細胞様の細胞の腫瘍性増殖をおこすと考えられています。

 

多発性骨髄腫は新薬が毎年のように次々と開発されています。最新の治療は数年前の治療よりも高い治療成績を更新し続けている状況です。

 

本項では、多発性骨髄腫の診断と治療についての全体の概要を解説しています。

詳細な内容については、各リンク先のページをご確認ください。各項目では国内・国外の文献やガイドラインを参照しつつできる限り最新の診療情報を解説しています。

 

多発性骨髄腫の発症から診断まで

多発性骨髄腫は骨折、全身の痛みといった強い症状を伴う症例から、何の症状もなく健康診断などでたまたま採血した時に異常を指摘される症例まで様々です。

いずれの場合も悪化する前に早めに診断をつけて、必要な場合は早めに治療を行うことが重要です。特に骨折や重度の腎機能の低下を起こしている症例では1日でも早い治療が生存や症状の改善に極めて重要となります。

多発性骨髄腫では高カルシウム血症、腎機能障害、貧血、骨病変がよく起こります。骨や腎臓の問題が発生している場合は直ちに精査を行うことが重要です。

血清蛋白電気泳動(SPEP)という検査で、異常な免疫グロブリンではMピーク(M蛋白)が検出されます。M蛋白は正常な人には検出されません。

尿蛋白電気泳動(UPEP)で尿中のM蛋白の測定も行います。

血清蛋白電気泳動 SPEP, M蛋白 M peak
多発性骨髄腫 (MM) 症状と血液検査・蓄尿検査

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多発性骨髄腫と診断するためには、骨髄検査は必須です。正確な骨髄検査とその解釈が重要です。

骨髄検査の結果、形質細胞に類似した細胞が腫瘍性に増殖していることが確認できます。病理標本では形質細胞と判断するためにCD138免疫染色を行います。κとλに対する免疫染色とλに対する免疫染色の両方を行い比較すれば腫瘍性形質細胞かどうかわかります。

骨の病変の検出にはレントゲン検査、CT検査、MRI検査などを用います。MRI検査はレントゲン検査やCT検査よりも高確率で骨病変を検出できます。

多発性骨髄腫細胞 骨髄液塗抹標本 Giemsa 強拡大
多発性骨髄腫 (MM)の診断のための検査 画像検査と骨髄検査

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多発性骨髄腫の診断は国際骨髄腫作業部会(IMWG)の診断基準を用いて行います。SLiM CRABと呼ばれる項目について確認する必要があります。

また多発性骨髄腫と似たような疾患が存在するため、その確認と除外を必ず行います。多発性骨髄腫の類似疾患との区別が難しくなる時があります。診断は治療と予後に直接関連するため、正確であることが求められます。

IMWG updated criteria 2014
多発性骨髄腫(MM)の診断基準と鑑別診断

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多発性骨髄腫の予後とステージ分類

診断時の骨髄FISH検査の結果は予後に影響します。t(4;14)、del(17p)、del(1p) は予後に影響します。

多発性骨髄腫の診断のときにステージ分類も行います。多発性骨髄腫のステージは改訂国際病期分類(R-ISS)を用います。診断時の血清β2ミクログロブリン、血清アルブミン, FISH, LDHを用いてステージを決定します。

長期生存には完全奏効(CR)に到達したかどうかも重要な因子です。多発性骨髄腫は治癒する可能性がみえてきています。

多発性骨髄腫 治癒率 multiple myeloma Cured fraction 14.37%
多発性骨髄腫 (MM) 予後とステージ分類

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多発性骨髄腫の緊急処置・初回化学療法・支持療法

高リスクでないくすぶり型多発性骨髄腫に対しては、治療開始よりも経過観察のほうがよいと考えられます。

一方で高リスクのくすぶり型多発性骨髄腫に対しては、多発性骨髄腫の治療を開始してもよいと考えられます。

症候性となった多発性骨髄腫は治療が必要です。

多発性骨髄腫による急性腎機能障害、高カルシウム血症、過粘稠症候群(過粘稠度症候群)に対しては緊急で治療介入が必要です。

多発性骨髄腫 Multiple myeloma Smear Giemsa
多発性骨髄腫(MM) 治療前検査、くすぶり型多発性骨髄腫、緊急処置

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2000年ごろから10年くらいでサリドマイド、ボルテゾミブ、レナリドミドの初回治療の有効性が明らかになりました。多発性骨髄腫の場合は最初からこれらの治療を組み合わせで投与したほうが有効です。特にボルテゾミブとレナリドミドの組み合わせ(VRd療法)が最も有効です。

新薬であるダラツムマブを含む初回治療も有効で、D-VTd療法は2021年3月時点で最も有効な初回治療です。

初回治療からカルフィルゾミブを使用することは推奨しません。ボルテゾミブのほうが初回治療では有害事象の点でカルフィルゾミブよりよいです。

初回治療では支持療法としてゾレドロン酸レボフロキサシンを使用することを推奨します

多発性骨髄腫 VTd vs D-VTd CASSIOPEIA 奏効率
多発性骨髄腫(MM)の初回治療 新規薬剤を用いた化学療法

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多発性骨髄腫 ENDURANCE KRd vs VRd, 無増悪生存率
多発性骨髄腫(MM) 初回治療でのベルケイドとカイプロリス どちらがよいか?

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Myeloma cells, cell block
多発性骨髄腫(MM)の初回化学療法の投与の注意点、支持療法

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多発性骨髄腫に対する造血幹細胞移植と幹細胞採取

多発性骨髄腫の化学療法にならぶ有効な治療は「自家造血幹細胞移植」です。

多発性骨髄腫に対する自家造血幹細胞移植は奏効率、無増悪生存率、全生存率のいずれも改善させます。

しかしながら、自家造血幹細胞移植は有効であるかわりに有害事象も多く発生します。

移植後100日までに致命的な合併症が起こるのは数%以下です。

多発性骨髄腫 MPR vs ASCT
多発性骨髄腫(MM)の初回治療としての自家造血幹細胞移植

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大量メルファラン 自家造血幹細胞移植 白血球数推移
多発性骨髄腫 (MM) 自家造血幹細胞移植の実際と有害事象対策

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「骨髄破壊的前処置による同種造血幹細胞移植」は、致命的な合併症が多いことから初回治療では行わないことを推奨します。

自家造血幹細胞移植後に骨髄非破壊的前処置で同種造血幹細胞移植をおこなうと、自家造血幹細胞移植だけよりも生存が良好であるという結果が初期にはでていました。しかしその後、大規模前向きの臨床試験を含めて有効性は確認できない結果が続き、同種移植が有効とは言えない状況となっています。

Multiple myeloma Bone marrow biopsy CD138
多発性骨髄腫(MM) 初回治療での同種造血幹細胞移植

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自家造血幹細胞移植を行うためには、自分の造血幹細胞を採取して凍結保存しておく必要があります。この凍結保存した造血幹細胞を移植の時に解凍して投与します。

多発性骨髄腫では自家造血幹細胞移植2回分の造血幹細胞の採取を目標とします。

造血幹細胞採取スケジュール プレリキサホル先制使用
多発性骨髄腫 (MM) の自家造血幹細胞採取

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多発性骨髄腫の治療効果判定と維持療法

多発性骨髄腫の治療の各サイクルで治療効果判定を行います。また自家造血幹細胞移植の約100日後にも治療効果判定を行います。

多発性骨髄腫の治療効果判定は2016年IMWG基準を用います。多発性骨髄腫の場合は、奏効が深いほど一般に予後は良好です。

深い奏効を得た症例でも、EuroFlowなどの骨髄の測定可能残存病変(MRD)検査で陰性になっている症例のほうが予後良好です。

治療後にPET-CT陰性化している症例のほうが予後は良好です。

SPEP No M protein
多発性骨髄腫 (MM) 治療効果判定と測定可能残存病変(MRD)

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多発性骨髄腫の初回治療と効果判定を終了したら、維持療法もしくは経過観察を行います。

自家移植後のレナリドミド維持療法は無増悪生存期間を延長させることができます。全生存期間ものびるかもしれません。感染症や血栓塞栓症など有害事象の頻度や悪性腫瘍発症率が増加します。

自家移植を行っていない症例のレナリドミド維持療法は、無増悪生存期間を延長させますが全生存期間の延長はみられません。

サリドマイド、ボルテゾミブ、イキサゾミブなどによる維持療法は、無増悪生存期間を延長させますが全生存期間の延長はみられていません。

多発性骨髄腫 HE high
多発性骨髄腫 (MM) 初回治療後の維持療法と経過観察

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多発性骨髄腫 再発・難治性の場合

多発性骨髄腫の治療成績は年々改善されていますが、それでも多発性骨髄腫は再発しやすい疾患であると言えます。完治する確率は残念ながらまだ高いわけではありません。

多発性骨髄腫の再発の基準は2016年IMWG基準を用います。「臨床的再発」となる前に「再発(PD)」の段階で治療を開始することを推奨します。

移植後18か月以上経過してから再発した症例では再び自家造血幹細胞移植を行ったほうが、化学療法のみで治療するよりも奏効率・無増悪生存期間・全生存期間のいずれも改善すると言えます。

再発多発性骨髄腫に対する同種造血幹細胞移植は致命的な合併症が多く推奨されません。

Multiple myeloma, Bone marrow biopsy, relapse from CR
多発性骨髄腫(MM)の再発の基準と再発後移植の有効性

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ボルテゾミブにもレナリドミドにも不応となっていても、ポマリドミドカルフィルゾミブは有効と言えます。Pd療法よりもEPd療法イサツキシマブ+Pd療法のほうが奏効や無増悪生存期間が良好です。

レナリドミド不応となっている症例ではKD療法、DKd療法、DBD療法、EPd療法、イサツキシマブ+Pd療法を化学療法として推奨します。

ボルテゾミブにもレナリドミドにも不応となっていたら、KD療法、DKd療法、EPd療法、イサツキシマブ+Pd療法がよいでしょう。

多発性骨髄腫 再発難治 HE
再発・難治性の多発性骨髄腫 (MM) に対する化学療法

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EPd療法 スケジュール
再発・難治性の多発性骨髄腫(MM) 化学療法の副作用と注意点

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イサツキシマブ・ポマリドミド・デキサメタゾン療法 1サイクル目
再発・難治性の多発性骨髄腫に対するイサツキシマブ+Pd療法

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再発・難治性の多発性骨髄腫は新規治療の臨床試験が次々と行われています。
セリネクソール、ベランタマブ マフォドチン、CAR-T細胞療法などが期待の新規治療です。

多発性骨髄腫 セリネクソール BOSTON, 無増悪生存率
再発・難治性の多発性骨髄腫(MM)の新薬などの臨床試験結果

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