多発性骨髄腫 (MM) 予後とステージ分類

2019-12-31

多発性骨髄腫 治癒率 multiple myeloma Cured fraction 14.37%

 

多発性骨髄腫(MM)と診断されたら、ステージ分類も同時に行います。多発性骨髄腫のステージは改訂国際病期分類(R-ISS)というものを用います。このときに多発性骨髄腫の診断時に提出した骨髄液のFISH検査の結果を用います。

本項では、FISH検査結果の生存への影響、改訂国際病期分類(R-ISS)について解説します。

もしかしたら多発性骨髄腫は完治しない疾患と説明されているかもしれません。本項では、何が生存に影響しているのか、長期生存の可能性はあるのかということについてご理解いただきます。今後の治療をきちんと行うためにも重要なことです。

 

多発性骨髄腫の予後に影響するFISH検査での異常

診断時にはFISH検査というものを骨髄検査で採取した骨髄液で行います。FISH検査は多発性骨髄腫の遺伝情報検査の一つです。「フィッシュ」とよびます。

骨髄液中の形質細胞(正常も異常も含む)だけを集めて遺伝情報の異常を見ます。この検査で見つかる異常は腫瘍細胞の異常です。正常な細胞には異常は見られません。

 

FISH 異常のt(11;14)は多発性骨髄腫症例で最も多くみられる異常で、多発性骨髄腫症例の約10~30%に見られます。Cyclin D1という蛋白の発現に関与する異常です。ただしこのt(11;14)はFISHで検出されても、多発性骨髄腫としては特別悪いタイプというわけではありません(Blood. 2002;99(10):3735)。

 

特別悪いタイプについて以下解説していきます。

t(4;14)が形質細胞のうち30%を超えて検出された場合は悪いタイプです(J Clin Oncol. 2013 Aug 1;31(22):2806-9)。このタイプは約10~15%にみられます。

治療が奏効しにくく、その結果として無増悪生存期間も全生存期間も多発性骨髄腫の中では悪いほうになります(下図 左:無増悪生存期間 右:全生存期間)。

t(4;14) 多発性骨髄腫 PFSとOS

 

del(17p)が形質細胞のうち60%を超えて検出された場合は悪いタイプです(J Clin Oncol. 2013 Aug 1;31(22):2806-9)。このタイプは約6%にみられます。p53というがん抑制遺伝子に関与しています。

無増悪生存期間も全生存期間も多発性骨髄腫の中では悪いほうになります(下図 左:無増悪生存期間 右:全生存期間)。

del(17p) 多発性骨髄腫 PFSとOS

 

del(1p) が形質細胞のうち30%を超えて検出された場合は悪いタイプです(Leukemia. 2014 Mar;28(3):675-9). このタイプは約20%にみられます。同様に無増悪生存期間も全生存期間も多発性骨髄腫の中では悪いほうになります。

 

悪いタイプかもしれないけれども、あまりはっきりしていないタイプもあります。

t(14;16)が検出されるタイプは約3%です。最初は悪いとされましたが少数例の報告でした。約1000例の多発性骨髄腫症例を解析して約30例のt(14;16)タイプの生存を確認しましたが特に悪いというわけではありませんでした(Blood. 2011 Feb 10;117(6):2009-11)。

同様に1q21gaindel(13q)などの異常も生存率を低下させるというわけではありません(Haematologica. 2014 Oct;99(10):1611-7, Blood Cancer J. 2017 Sep 1;7(9):e600)。

 

多発性骨髄腫の予後分類 改訂国際病期分類(R-ISS)

多発性骨髄腫の予後分類として、2020年12月時点では改訂国際病期分類(Revised International Staging System, R-ISS)というものを用います。

もともとは国際病期分類(International Staging System, ISS)というものが2005年に提唱されていました(J Clin Oncol 2005 May 20;23(15):3412-20)。

このISSでは、1981年から2002年までの多発性骨髄腫の症例を世界中から10000例を超えるデータを集めました。7400例くらいは臨床試験参加者から集めました。

様々な因子を解析した結果、診断時の血清β2ミクログロブリン血清アルブミンが全生存期間に影響することがわかり、その値に応じてステージを1から3まで決めました(下図)。

International staging system, multiple myeloma, 国際病期分類 ISS, 全生存

 

しかしこのころからFISH検査による予後の影響などについてわかってきました。

2015年にISSが改訂され、改訂国際病期分類(R-ISS)が提唱されました(J Clin Oncol. 2015 Sep;33(26):2863-9)。

11の国際前向き臨床試験の症例のみ約3000例を解析し、ISSとFISHを合わせたステージ分類を作成しました。ステージは1から3までで、以下のように決定します。

ステージ I:血清β2ミクログロブリンが3.5 mg/L未満、かつ血清アルブミンが3.5 g/dL以上、かつ血清LDH正常、かつFISHでdel(17p), t(4;14), t(14;16)が陰性である

ステージII:ステージIでもIIIでもない症例すべて

ステージIII:血清β2ミクログロブリンが5.5 mg/L以上で、LDHが正常上限を超えるかFISHでdel(17p), t(4;14), t(14;16)のどれかが陽性である

R-ISSによるステージ分類も無増悪生存期間・全生存期間に影響します(下図、左:無増悪生存期間 右:全生存期間, J Clin Oncol. 2015 Sep;33(26):2863-9).

Revised International staging system, multiple myeloma, 改訂国際病期分類 R-ISS, PFS OS

 

ISSもR-ISSも多発性骨髄腫の手強さの参考にはしますが、生存期間の予測としてはもはや全く機能しません。治療方法が古すぎるからです。R-ISSでも2005年~2012年ごろの臨床試験の症例です。治療成績が年々改善しているため、生存期間の予測には使用できません。

 

R-ISSを用いる注意点として、FISHについての研究は当時より現在のほうが進んでいるため、いくつかの問題の存在があげられます。

R-ISSのFISH検査で用いるのはdel(17p), t(4;14), t(14;16)の3つのみです。しかもt(14;16)が含まれています。上記のようにt(14;16)は予後に影響するかどうかはっきりしていません。

また、FISH検査陽性の基準が、11の臨床試験の中でバラバラでした。8%以上で陽性としたり、20%で陽性としたりと一致していませんでした。del(17p)も8%~20%以上で陽性と判定しています。

FISH検査の研究が進んでいるため、R-ISSは今後さらに改訂されるでしょう。

 

日本特有の問題がさらにあります。日本でのFISH検査は2020年12月時点で「形質細胞だけを集めてFISH検査を行うこと」が全国網のある検査会社ではできません。形質細胞だけを集めてFISH検査を行うことができる施設は日本ではかなり限られます。

 

R-ISSによるステージを実際には見ていきますが, いろいろな意味であまりあてにできません。参考程度です。

 

多発性骨髄腫の長期生存

多発性骨髄腫は完治しない疾患として長い間認識されていました。しかしこの認識は過去のものとなりつつあります。

2018年に国際骨髄腫作業部会(IMWG)の研究結果が出版されました(Blood Cancer J. 2018 Nov 23;8(12):123)。

国際前向き臨床試験に参加した自家移植可能な多発性骨髄腫症例の約7300例を解析し長期生存について研究しました。長期生存を見ているため、約90%の症例は移植前にはサリドマイドやそれ以降登場の新規薬剤を使用していません。

結果、長期生存に影響する因子をみていくと、上記解説のISSはもちろん予後に影響していましたが、完全奏効(CR)に到達したかどうかも重要な因子でした(下図 左は全生存期間 右は無増悪生存期間)。CR到達例は統計学的も明らかに予後良好でした。

多発性骨髄腫 1年でCR到達の有無別 PFS OS

 

そしてこの研究では、14.37%の症例が「治癒」に相当するとされました(下図)。生存曲線の低下率が、多発性骨髄腫でない全体の人々と同等になったためです。

多発性骨髄腫 治癒率 multiple myeloma Cured fraction 14.37%

移植前に新規薬剤を使用していない時代の治療でこのような治療成績です。現在の治療であればさらに高い治癒率が予想されます。

可能な限り良い治療でより深い奏効を達成することが長期的な生存には重要であると考えられます。

 

次項では、多発性骨髄腫の治療前準備とくすぶり型骨髄腫の治療について解説します。

多発性骨髄腫 Multiple myeloma Smear Giemsa
多発性骨髄腫(MM) 治療前検査、くすぶり型多発性骨髄腫、緊急処置

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まとめ 多発性骨髄腫 予後とステージ分類

● 多発性骨髄腫の診断時のFISH検査の結果は予後に影響します。t(4;14)、del(17p)、del(1p) は予後に悪影響があります。

● 多発性骨髄腫の予後分類として、改訂国際病期分類(R-ISS)を用います。診断時の血清β2ミクログロブリン、血清アルブミン, FISH, LDHを用いてステージを決定します。

● 長期生存には完全奏効(CR)に到達したかどうかも重要な因子です。そして多発性骨髄腫は治癒する可能性がみえてきています。

参考文献

Myeloma and the t(11;14)(q13;q32); evidence for a biologically defined unique subset of patients.
Blood. 2002;99(10):3735.

Chromosomal abnormalities are major prognostic factors in elderly patients with multiple myeloma: the intergroupe francophone du myélome experience.
J Clin Oncol. 2013 Aug 1;31(22):2806-9.

Deletion of the 1p32 region is a major independent prognostic factor in young patients with myeloma: the IFM experience on 1195 patients.
Leukemia. 2014 Mar;28(3):675-9.

Translocation t(14;16) and multiple myeloma: is it really an independent prognostic factor?
Blood. 2011 Feb 10;117(6):2009-11.

Chromosome 1 abnormalities in elderly patients with newly diagnosed multiple myeloma treated with novel therapies.
Haematologica. 2014 Oct;99(10):1611-7.

Prognostic implications of abnormalities of chromosome 13 and the presence of multiple cytogenetic high-risk abnormalities in newly diagnosed multiple myeloma.
Blood Cancer J. 2017 Sep 1;7(9):e600.

International staging system for multiple myeloma.
J Clin Oncol 2005 May 20;23(15):3412-20.

Revised International Staging System for Multiple Myeloma: A Report From International Myeloma Working Group.
J Clin Oncol. 2015 Sep;33(26):2863-9.

Clinical predictors of long-term survival in newly diagnosed transplant eligible multiple myeloma - an IMWG Research Project.
Blood Cancer J. 2018 Nov 23;8(12):123.

 

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