多発性骨髄腫 (MM) 症状と血液検査・蓄尿検査

2019-12-26

血清蛋白電気泳動 SPEP, M蛋白 M peak

 

多発性骨髄腫(Multiple myeloma, MM)は、血液内科の悪性腫瘍の中では比較的頻度の高い疾患です。疾患の臨床研究も年々進んでおり、新しいことが次々とわかってきています。

本項では多発性骨髄腫の症状の出現から、血液内科の受診必要な血液検査・蓄尿検査について解説します。

発症した時の多発性骨髄腫は骨折、全身の痛みといった強い症状を伴う症例から、何の症状もなく健康診断などでたまたま採血した時に異常を指摘される症例まで様々です。

しかし、いずれの場合も悪化する前に早めに診断をつけて、必要な場合は早めに治療を行うことが重要です。特に骨折や重度の腎機能の低下を起こしている症例では1日でも早い治療が生存や症状の改善に極めて重要となります。

状況によっては、受診、診断、検査と時間の余裕なく次々と進んでいきます。どのような時に多発性骨髄腫が疑われ、どのような検査で診断が確定していくのかについて理解できれば少しは余裕ができるかもしれません。

 

症状・検査異常から多発性骨髄腫が疑われ血液内科を受診するまで

多発性骨髄腫(MM)の発症時は、無症状である症例から、痛みで動けないなどの重症な症例まで様々です。

健診でたまたま貧血総蛋白の増加を指摘され、受診して検査したら多発性骨髄腫と判明することもあります。

腰痛などで近医を受診して、レントゲン検査で問題なく、痛み止めで様子をみていたら、痛みの悪化骨折がおこり、精査したら多発性骨髄腫と判明する場合もあります。

採血で腎機能の低下を指摘されて精査したら多発性骨髄腫と判明する場合もあります。重篤な腎機能低下は緊急透析が必要になることがあります。

 

痛みや骨折は多発性骨髄腫の発症時にはとても起こりやすく、無理して動いているとさらに悪化します。重篤化するときもあります。骨や腎臓の問題が発生している場合は直ちに精査を行い、早めに多発性骨髄腫の診断をして、早めに治療を開始することが生命や臓器予後にはとても重要です

 

採血で貧血を指摘されるのはおよそ70%ですが、「疲れやすい」といった貧血症状がある人はおよそ30%です(Mayo Clin Proc. 2003 Jan;78(1):21-33)。

痛みは約60%で診断時にみられます。腰や背中や肋骨の痛みが多く、たいていは動くと痛みが強くなります。無理をすると折れます

多発性骨髄腫は骨をよく溶かし弱くします。痛みがある時は無理はしないでください

またこの時にカルシウムが血中で上昇(高カルシウム血症)し、採血で異常値を検出することが約30%であります。

腎臓の機能低下は約半数でみられます。ただし緊急透析が必要になる場合はあまり多くはありません。

その他、脊椎が圧迫骨折を起こすなどにより、麻痺やしびれが起きることが診断時の約5%でみられます。

これらの症状や異常はそれぞれの頭文字をとって、CRABと言われます(Calcium, Renal insufficiency, Anemia, Bone lesions)。CRABに該当する異常があるかないかは、診断基準にも用いられています

 

多発性骨髄腫の場合は、採血で「免疫グロブリン」という免疫蛋白の一種の異常高値もしくは異常低値がみられます。

多発性骨髄腫で最も多い免疫グロブリン型はIgG約50%です。IgGが異常高値だったりすると、そのあたりから多発性骨髄腫が疑われます。IgA型は約20%です。IgDやIgMやIgEが異常高値になることもあります。

免疫グロブリンがすべて異常低値になる場合もあり、その場合は尿中に免疫グロブリンの一部である「軽鎖」が異常に検出されます。この尿からでた軽鎖を「ベンスジョーンズ蛋白」とも言います。このベンスジョーンズ蛋白は、簡易スティック式の尿定性検査では検出できません

多発性骨髄腫が疑われたら、悪化してしまう前に血液内科を早めに受診して下さい

 

なお、採血検査で赤血球がくっついて棒状に連なっていく「連銭形成」というものがみられる時がありますがあまり特徴的というわけではありません。

以下、血液内科を受診したらどのような検査を行っていくか解説します。

 

多発性骨髄腫の診断のための検査 血清蛋白電気泳動と血清免疫固定法

免疫グロブリンが高値であったとしても、必ずしも多発性骨髄腫というわけではありません。正常な免疫グロブリンが高値になっている場合もあります。

正常な免疫グロブリンか、異常な免疫グロブリンか区別するためには、血液で血清蛋白電気泳動(SPEP)という検査が必須です。

異常な免疫グロブリンの場合は下図のような、「Mピーク」と呼ばれるものが検出されます。

血清蛋白電気泳動 SPEP, M蛋白 M peak

Mピークという名称は特徴的な「M」字型であることに由来しています。正常な血液ではMピークは決して検出されません。Mピークがない正常な場合は下図のようになります。

血清蛋白電気泳動 SPEP 正常パターン

左側の高いピークは「アルブミン」という、血中で最も多い蛋白です。最も多いため正常な血液でも高いピークがでます。Mピークは右側に出ている異常ピークです。この異常ピークは「M蛋白」とも呼ばれます。

この血清蛋白電気泳動検査では、M蛋白の総量も測定することができます。M蛋白の総量の測定は、今後治療効果判定にも使用しますので、診断時の量がどのくらいあるかはとても重要になります(下図)。

血清蛋白電気泳動 SPEP, M蛋白総量

注意点として、M蛋白総量を免疫グロブリンの値で代用してはいけません

たとえば、IgGが6000 mg/dLくらいだったとしても、MピークでのM蛋白の総量は5500 mg/dLくらいだったりします。今後も治療効果判定に用いるためM蛋白の正確な値は以降もずっと必要になります。

 

さらに、M蛋白の種類を確定させるために、血清免疫固定法(SIFE)という検査を行います。

多発性骨髄腫で最も多いM蛋白の型は、IgG-κというタイプです。IgGは免疫グロブリンのタイプを、κ(かっぱ)は免疫グロブリンの一部である「軽鎖」のタイプを見ています。

軽鎖にはκ(かっぱ)もしくはλ(らむだ)の2種類しかありません。免疫グロブリンはIgG、IgA、IgM、IgD、IgEの5種類です。免疫グロブリンが増えずに、軽鎖だけが増えるタイプもありますので、組み合わせは12種類です。

 

多発性骨髄腫は悪性腫瘍なので、通常は軽鎖も免疫グロブリンもそれぞれ1種類だけが増加します。たとえばIgG-κ型ではIgG-κのM蛋白がだけ上昇し、IgAやIgM、λなどはむしろ低下します。

血清免疫固定法は、上記の血清蛋白電気泳動ででているM蛋白の型を特定する検査です。非常に感度が高く、ごくわずかなM蛋白でも型を特定させることができます

下図のような結果がでます。

血清免疫固定法 (SIFE), IgG-lambda

上図の場合はIgG-λ型です。

 

多発性骨髄腫で最も多いIgG-κ型は多発性骨髄腫の約35%です。他には、IgG-λ型が約20%, IgA-κ型が約15%, IgA-λ型が約10%です。

軽鎖だけが増えるタイプ(ベンスジョーンズ型)であるBJP-κ型は約10%, BJP-λ型は約5~10%です。

IgD型はκ型とλ型を合わせても数%くらいですが、日本を含む東側のアジアでは比較的多くみられます。

IgM型は合わせても1%未満です。IgE型は極めてまれです。またごくまれに、免疫グロブリンが2種類ある場合や、いずれのM蛋白を検出できない非分泌型があります(下図、Mayo Clin Proc. 2003 Jan;78(1):21-33)。

Types of monoclonal protein

軽鎖だけが増えるタイプ(ベンスジョーンズ型)では、血清Mピークはほとんど検出されません。血清免疫固定法でも検出できない場合もあります。そのような症例では尿検査遊離軽鎖検査で検出します。以下で解説していきます。

 

多発性骨髄腫の診断のための検査 蓄尿での蛋白電気泳動・免疫固定法と遊離軽鎖検査

尿検査でも同様に尿蛋白電気泳動(UPEP)という検査があります。

尿蛋白電気泳動の場合、通常はアルブミンは尿中にはほとんどないため、MピークはM字型になりません。M蛋白が検出される場合は下図のようになります。

尿蛋白電気泳動 UPEP, M peak

正常の尿からM蛋白が検出されることはありません。

尿のM蛋白の濃度は下図のように測定します。

尿蛋白電気泳動 UPEP, M蛋白量測定

尿中のM蛋白の総量を測定するときの注意点は、「24時間蓄尿」で測定することです。

24時間蓄尿は入院していなくても可能です。24時間の尿をすべて集めて、尿の総量とM蛋白濃度を測定すれば、24時間の尿中のM蛋白量がわかります。

この検査も今後の効果判定に使用するため、診断時の24時間尿中M蛋白量は必須です

 

尿中のM蛋白の型の特定には、尿免疫固定法(UIFE)を行います。ベンスジョーンズ型の場合は尿免疫固定法で型を特定することが大切です。

尿免疫固定法では下図のような結果がでます。

尿免疫固定法 (UIFE) BJP-lambda

上図の場合は、λだけ検出されており、BJP-λのM蛋白が検出されたと判定します。

軽鎖は尿中に出やすいため、尿では軽鎖が免疫グロブリンよりも検出されやすくなります。軽鎖が尿から検出されたら、その尿中軽鎖はベンスジョーンズ蛋白(BJP)と呼ばれます。

尿免疫固定法も非常に感度がよく、ごく少量のベンスジョーンズ蛋白でも検出可能です。

血液でIgG-λのM蛋白が検出されるとき、同時に尿からBJP-λのM蛋白が検出されることが良くあります。IgG-λ型のときは、λ軽鎖も多く発生していることが多いためです。同様にIgG-κ型のときは、κ軽鎖も多く出ていることが多いです。IgA型などの場合も同様です。

 

軽鎖そのものは、採血検査でも検出できます。「遊離軽鎖検査(フリーライトチェーン検査)」という検査です。血中のκとλの濃度を直接測定します。

異常がある場合は、必ずκかλのどちらかのみが大きく上昇し、κ/λ比も異常値になります。(例えばκが2.0 mg/dLなのにλが5000 mg/dLなど。)

多発性骨髄腫のベンスジョーンズ型の場合、この軽鎖の量があまりにも多くて、検査限界以上の濃度がでることがしばしばありますので、尿中M蛋白量の測定は必須です。

また、遊離軽鎖検査は多発性骨髄腫の診断基準の一つに入っているだけでなく、治療効果判定の際にも用いますので、これも必須の検査です(Lancet Oncol. 2014 Nov;15(12):e538-e548)。

 

血清免疫固定法と尿免疫固定法と遊離軽鎖検査を合わせると、ほぼすべての多発性骨髄腫症例の診断時には異常が検出されます。

これらの検査は血液内科の医師による解釈が必要になります。検査当日に結果が出るわけではありませんので、早めに血液内科を受診することを推奨します。

 

次項以降では、多発性骨髄腫と診断するための検査である、画像検査や骨髄検査などについて解説します。

多発性骨髄腫細胞 骨髄液塗抹標本 Giemsa 強拡大
多発性骨髄腫 (MM)の診断のための検査 画像検査と骨髄検査

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まとめ 多発性骨髄腫の症状と血液検査・蓄尿検査

CRABと言われる高カルシウム血症、腎機能障害、貧血、骨病変が多発性骨髄腫(MM)ではよく起こります。骨や腎臓の問題が発生している場合は直ちに精査を行いましょう。多発性骨髄腫では免疫グロブリンの異常高値もしくは異常低値がよくみられます。

血清蛋白電気泳動(SPEP)を行い、異常な免疫グロブリンではMピーク(M蛋白)が検出されます。M蛋白の型を確定させるために、血清免疫固定法(SIFE)も行います。

尿蛋白電気泳動(UPEP)で尿中のM蛋白の総量を24時間蓄尿で測定します。尿中のM蛋白の型の特定には、尿免疫固定法(UIFE)を行います。遊離軽鎖検査で血中の軽鎖(κとλ)の測定も行います。

参考文献

Review of 1027 patients with newly diagnosed multiple myeloma.
Mayo Clin Proc. 2003 Jan;78(1):21-33.

International Myeloma Working Group updated criteria for the diagnosis of multiple myeloma.
Lancet Oncol. 2014 Nov;15(12):e538-e548.

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