骨髄異形成症候群 (MDS) 高リスク群の治療の実際と効果判定

2019-12-21

骨髄異形成症候群 MDS Giemsa x400

 

骨髄異形成症候群(MDS)に対して治療が必要になったら、生存リスクに応じて、適切な治療を行います。どのような治療を行うべきかについては「骨髄異形成症候群 (MDS) 予後リスク判定、初回治療」をご確認ください。

低リスクの骨髄異形成症候群に対する赤血球造血刺激因子製剤の投与などは有害事象は少なく、大きな問題になることはあまりありません。

その一方、高リスクの骨髄異形成症候群への治療は合併症が多く、適切な管理が必要になります

本項では、高リスクの骨髄異形成症候群の治療の実際のスケジュールや副作用および治療をサポートする医療について解説します。

本項でも、国内や国外の文献やガイドラインを参照しつつ解説していきます。

 

高リスク骨髄異形成症候群の治療の実際 同種造血幹細胞移植

アザシチジンなどの薬剤は根治的でないことなどから、高リスクの骨髄異形成症候群の治療は、可能であれば同種造血幹細胞移植を推奨します。病勢が悪化する前に早めに行ったほうがよいです。

同種造血幹細胞移植の適応は、施設や担当医師により異なります。一般的には全身の臓器状態が良好であれば可能です。年齢だけを理由に移植適応外ということはありません。臓器機能が少し低下している場合は、「ミニ移植」も可能です。

同種造血幹細胞移植の実際のやり方も施設や担当医師により異なります。セカンドオピニオンや医療機関の変更を行う場合は、病勢が悪化する前に早めに検討してください。

 

2011年に出版された前向き臨床試験では、60歳から75歳までの症例を対象に同種造血幹細胞移植を行いました(JAMA. 2011 Nov 2;306(17):1874-83)。

その結果、5年生存率や無増悪生存率は各年齢によって低下するとは言えないということがわかっています(下図)。

年齢別同種造血幹細胞移植全生存

 

2020年12月時点でのアメリカのNCCNガイドライン(NCCN Guidelines)でも、年齢だけを理由に移植適応外とするべきではないとしています。

 

同種造血幹細胞移植の際は、HLA一致の兄弟姉妹からの移植が最も生存率がよいです。

HLAがアリルレベルで8/8一致の骨髄バンク(非血縁)からの移植が次に生存率が高いです。

7/8一致(1アリル不適合)移植臍帯血移植半合致移植などは生存率が明らかに低下しますので、行ったほうが良いかどうかははっきりしていません。ただしこの3つの中では、血縁からの一座不適合~半合致移植がおそらく最もよいでしょう(Biol Blood Marrow Transplant. 2019 Oct 23. pii: S1083-8791(19)30671-8. doi: 10.1016/j.bbmt.2019.10.014.).

 

同種造血幹細胞移植を行うときは、移植前に1週間くらいかけて、「移植前処置(いしょくぜんしょち)」という抗がん剤化学療法を行います。この移植前処置により、骨髄異形成症候群細胞を減らします。正常リンパ球数なども減らします。

この移植前処置を減量せずに行う場合は「骨髄破壊的前処置」といいます。かなり強い抗がん剤化学療法のため、一度前処置を行うと、移植しない限り、正常な血球は通常回復することはありません。

移植前処置を減量して行う場合は「強度減弱前処置」といい、移植前処置が軽微な場合は「骨髄非破壊的前処置」といいます。これらはミニ移植とよばれることもあります。

骨髄異形成症候群の場合は、骨髄異形成症候群細胞を減らして移植するため、「骨髄非破壊的前処置」を行うことはほとんどありません。

 

全身状態が良好であれば、「骨髄破壊的前処置」を推奨します。

全身状態が良好なのに「強度減弱前処置」を選択すると、再発率が高くなる懸念があります。

2017年に出版された大規模ランダム化臨床試験では、「骨髄破壊的前処置」と「強度減弱前処置」を比較しました(J Clin Oncol. 2017 Apr 10;35(11):1154-1161)。

しかし、「強度減弱前処置」群であまりにも再発率が高くなってしまったため、臨床試験は中止となりました。9か月で「強度減弱前処置」群の約40%が再発してしまいました。「骨髄破壊的前処置」では9か月でほぼ0%の再発でした(下図 骨髄異形成症候群症例のみ)。

骨髄異形成症候群 骨髄破壊的前処置 vs 強度減弱前処置

 

2017年に出版された同様のランダム化臨床試験では、必ずしも再発率が高いわけではありませんでした(J Clin Oncol. 2017 Jul 1;35(19):2157-2164)。

臓器機能がやや低下している場合は、「強度減弱前処置」を選択します。

その他の同種造血幹細胞移植の注意点については急性骨髄性白血病と同様です。「急性骨髄性白血病の寛解後療法 同種造血幹細胞移植の実際」をご覧ください。

 

高リスク骨髄異形成症候群の治療の実際 アザシチジン

アザシチジン(商品名:ビダーザ)は移植適応ではない高リスク骨髄異形成症候群症例の全生存を改善させる抗がん剤の一種です。骨髄異形成症候群で使用する場合は「メチル化阻害薬」として作用しているとされます。

注意点として、アザシチジンの治療は根治的ではありませんので、いずれ効果が乏しくなってしまいます。

急性骨髄性白血病などで用いるような強力抗がん剤治療も奏効しますが、アザシチジンの場合は投与サイクル数に制限はありません外来での投与も可能です。

移植適応ではない高リスク骨髄異形成症候群症例に対しては、強力抗がん剤治療や少量シタラビン療法などよりも、アザシチジンの投与を推奨します

 

アザシチジンの投与スケジュールは、通常7日間連続投与して、21日以上休薬します(下図)。

アザシチジンの投与スケジュール

アザシチジンの投与は外来でも可能ですが、7日間連続投与の場合、土曜日や日曜日も投与する必要が出てきます。

それを避けるために「5日間の投与」や、「5日投与後2日休薬しまた2日間投与する」といったことが行われる場合もありますが、これらの投与方法が本来の投与方法と同等の効果かどうかは不明です(J Clin Oncol. 2009 Apr 10;27(11):1850-6)。

 

骨髄異形成症候群は非常に感染症を起こしやすい疾患です。

アザシチジンの投与は、少量シタラビン療法や強力抗がん剤治療と比べると重症感染症になる割合はかなり少なく、抗がん剤を使用しない場合とあまり変わりません(Lancet Oncol. 2009 Mar;10(3):223-32)。

しかしながら、骨髄異形成症候群そのものが感染症を起こしやすくするため、感染症には注意が必要です。発熱したら早めに病院を受診してください。受診が遅れると重症化しやすいです。

 

アザシチジンの投与は28日サイクルで行いますが、血球数の回復がしばしば遅れるため、28日サイクルで継続できないことがよくあります。

血球数の回復をまたずにアザシチジンの投与を行うと感染症のリスクがさらに上昇してしまいます。

1~2週間くらい遅れることがよくあると考えてください。頻回の通院が大変ですが、血球が回復しないまま無理に投与を行うことは推奨しません。

 

アザシチジンにより、好中球数が上昇していくということはあまり期待できません。感染症については、ずっと注意が必要です。

その一方で、赤血球数や血小板数は上昇が期待できます。アザシチジン投与により長期的には約半数の症例でいずれかの血球の上昇がみられます

何らかの奏効が得られるまで時間がかかります。9か月くらいして初めて何らかの奏効が得られることもあるため、明らかに悪化するというわけでなければ、根気強く継続してください(Haematologica. 2013 Jul;98(7):1067-72)。遅れて奏効した症例でも、アザシチジン投与による生存期間の明らかな延長がみられます。

 

アザシチジン投与の問題は、同種造血幹細胞移植と異なり、根治的ではないことです。

たとえ輸血が必要ないくらいに改善しても、いつか病勢は進行し、再び輸血が必要になったり、好中球減少が進行したり、急性白血病化したりします。

その時に、強力抗がん剤治療などを行っても、アザシチジン投与前の骨髄異形成症候群とは異なり、もはや抗がん剤治療に奏効しにくくなっています。輸血などの支持療法のみのほうが負担は少ないでしょう。

アザシチジン投与を開始する時点で、いつかこの時がくることを想定しておく必要があります

 

骨髄異形成症候群の治療効果判定(IWG基準)

MDS IWG criteria

骨髄異形成症候群の治療効果判定は国際ワーキンググループ(IWG)の基準を用います。

 

完全寛解などの基準はIWG 2006基準を用います。

完全寛解 (CR)の基準は以下のすべてを満たすことです(Blood. 2006 Jul 15;108(2):419-25)

・好中球が1000/μL以上

・血小板が100000/μL以上

・ヘモグロビン値が11 g/dL以上

・採血検査で血液中に芽球がない

・骨髄検査で芽球が5%未満、かつ血球3系統の成熟がある

・骨髄検査で細胞形態の異形成があってもよい

 

血球数の奏効の基準はIWG 2018基準を使用します(Blood. 2019 Mar 7;133(10):1020-1030)。

非常に複雑であるため、詳細は割愛しますが、簡単に言うと、

赤血球輸血が必要になっていた症例では、赤血球輸血が必要ない状態が少なくとも8週間持続できれば良好な奏効と言えます。

血小板は30000以上の増加や2倍以上の増加で良好な奏効です。

好中球の場合は500以上の増加かつ2倍以上の増加で良好な奏効です。

 

骨髄もしくは採血で芽球が20%を超えると、急性骨髄性白血病に転化したと定義されます。

ただし、骨髄異形成症候群から徐々に進行し、急性骨髄性白血病になった場合は、通常の急性骨髄性白血病と異なり、進行はゆっくりです。

寛解導入療法などの強力抗がん剤治療も急性骨髄性白血病のようには奏効しません。2回の寛解導入療法でも完全寛解到達は約半数です。同種造血幹細胞移植が最も有効です。

 

移植後再発も含めて、骨髄異形成症候群が増悪した場合は有効な治療は少ないです。

移植後再発の場合は、再度同種造血幹細胞移植、ドナーリンパ球輸注、アザシチジン投与などが選択肢にあがります。根治は難しい状態と言わざるを得ません。

ドナーリンパ球輸注、再同種造血幹細胞移植については、急性骨髄性白血病と同様です。「急性骨髄性白血病に対する同種造血幹細胞移植後に再発した場合」をご確認ください。

骨髄異形成症候群では感染症が治らなくなってしまい生命に影響することが最終的には多くなります。

 

まとめ 骨髄異形成症候群 高リスク群の治療の実際と効果判定

● 骨髄異形成症候群の同種造血幹細胞移植は全身状態が良好であれば、「骨髄破壊的前処置」を推奨します。HLA一致の兄弟姉妹からの移植が最も望ましいです。

● 移植適応ではない高リスク骨髄異形成症候群症例に対しては、強力抗がん剤治療や少量シタラビン療法などよりも、アザシチジンの投与を推奨します。感染症に注意しながら、根気強く継続してください。奏効するまで時間がかかります。

● 骨髄異形成症候群の治療効果判定は国際ワーキンググループ(IWG)の基準(2006と2018基準)を用います。

参考文献

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JAMA. 2011 Nov 2;306(17):1874-83.

Prospective Randomized Study Comparing Myeloablative Unrelated Umbilical Cord Blood Transplantation versus HLA-Haploidentical Related Stem Cell Transplantation for Adults with Hematologic Malignancies.
Biol Blood Marrow Transplant. 2019 Oct 23. pii: S1083-8791(19)30671-8. doi: 10.1016/j.bbmt.2019.10.014.

Myeloablative Versus Reduced-Intensity Hematopoietic Cell Transplantation for Acute Myeloid Leukemia and Myelodysplastic Syndromes.
J Clin Oncol. 2017 Apr 10;35(11):1154-1161.

Dose-Reduced Versus Standard Conditioning Followed by Allogeneic Stem-Cell Transplantation for Patients With Myelodysplastic Syndrome: A Prospective Randomized Phase III Study of the EBMT (RICMAC Trial).
J Clin Oncol. 2017 Jul 1;35(19):2157-2164.

Hematologic response to three alternative dosing schedules of azacitidine in patients with myelodysplastic syndromes.
J Clin Oncol. 2009 Apr 10;27(11):1850-6.

Efficacy of azacitidine compared with that of conventional care regimens in the treatment of higher-risk myelodysplastic syndromes: a randomised, open-label, phase III study.
Lancet Oncol. 2009 Mar;10(3):223-32.

A multivariate analysis of the relationship between response and survival among patients with higher-risk myelodysplastic syndromes treated within azacitidine or conventional care regimens in the randomized AZA-001 trial.
Haematologica. 2013 Jul;98(7):1067-72.

Clinical application and proposal for modification of the International Working Group (IWG) response criteria in myelodysplasia.
Blood. 2006 Jul 15;108(2):419-25.

Proposals for revised IWG 2018 hematological response criteria in patients with MDS included in clinical trials.
Blood. 2019 Mar 7;133(10):1020-1030.

NCCNガイドライン(NCCN Guidelines)

 

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